【おとなの映画ガイド】豊川悦司主演、豪華キャスト、これが「時代劇、新時代」に賭けた映画人たちの仕事!『仕掛人・藤枝梅安2』
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『仕掛人・藤枝梅安2』 (C)「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社
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すべて見る今年は時代小説の名手、池波正太郎の生誕100年。それを記念した企画が目白押し。その中心になっているのが映画『仕掛人・藤枝梅安』だ。2月の第一作に続き、早くも第二作『仕掛人・藤枝梅安2』が4月7日(金) に公開される。豊川悦司の藤枝梅安、片岡愛之助の彦次郎はもちろん同じ。監督は2作とも、トレンディドラマのディレクターで最近は時代劇も多く手がける河毛俊作だ。「前作がフランス映画なら本作はアメリカ映画のテイスト」という。アクションシーンも増え、ロードムービーの作り。久しぶりの本格時代活劇、これぞおとなのエンタテインメントだ。
『仕掛人・藤枝梅安2』
江戸時代の、金で人殺しを請け負う“殺し屋”を、“仕掛人”と名付けたのは池波正太郎。それまで時代劇といえば、ヒーローはお侍かヤクザ、刀を使ったチャンバラアクションが当たり前だったけれど、池波は、職業が鍼医者、殺しの武器は「はり」、そんな斬新な趣向をもちこんだ。金が目的の殺人だが、殺していいのは世の中のためにならない本当の悪……と、自分なりのルールはある。“仕掛け”たら外さない。人知れず葬り去るプロ仕事。江戸の裏稼業を描く、藤田まことや東山紀之の“必殺シリーズ”の原点だ。
そんな、底知れぬ闇を背負ったダークヒーロー・藤枝梅安に扮するのは豊川悦司。これまで映画やテレビで演じた緒形拳、萬屋錦之介、小林桂樹、田宮二郎、渡辺謙などの歴代のスターと比べても、原作では「六尺に近い大きな体」と書かれているから、超高身長の豊川はピタリとくる。最も薄情そうだし、ワルっぽい。何よりも、若かりしころからにじみ出ていた渋味と艶っぽさが、今回ダダ洩れしている。
梅安が、そんな稼業に身を置くにはそれなりのわけがある。殺しで仕留めた相手が実は幼い頃に生き別れた妹だったというのが前作。本作はその続編ではなく、独立したストーリーではあるものの、梅安が仕掛人になったいきさつが語られる。さらに、同じ仕掛人の相棒、表の顔はようじ職人の彦次郎の過去が入り交じり、あらたな事件が起こっていくのだ。よりバディ・ムービーの要素が強い内容になっている。
京都で、梅安は自分を拾って育ててくれた恩人の鍼医者・津山悦堂の墓参りをするつもり。その道中、ふたりは、彦次郎の妻と子を死に追いやった仇に出くわしてしまう。彦次郎は「あの野郎、生かしちゃおけねえ」とうめきを発した。しかし、京に入り、梅安が墓参りに行くと、なんと、件の侍も同じ師・悦堂の墓を参っていたのだ。さて? これはどうしたことか……。偶然の出会いから事件が事件をよんでいく。
池波正太郎の小説「仕掛人・藤枝梅安シリーズ」は、短編・長編合わせて全20作が遺されている。この映画の第一作は、第一巻『殺しの四人』に収められた短編『おんなごろし』が、第二作は同じく第一巻の『殺しの四人』と『秋風二人旅』が原作となっている。第一巻から順に取り上げているということは、このあと、TVシリーズにするのか、映画でシリーズにするのか。ファンにとっては興味津々だ。
梅安に思いをよせるおもん役の菅野美穂、留守宅を守るおせき婆さん役の高畑淳子は2作とも変わらない。仕掛人の元締め・白子屋菊右衛門役に石橋蓮司、回想シーンの梅安の師・悦堂役に小林薫が扮している。その他のキャストをゲストスターと呼んでいるのは、明らかにシリーズの作り。『仕掛人・藤枝梅安2』のゲストは、佐藤浩市、椎名桔平、一ノ瀬颯。個性派というだけでなく立ち姿も粋に決まる役者たちが名を連ねる。
さらに、この作品の醍醐味は「時代劇、新時代」をめざすスタッフの意気込みが伝わってくることだ。例えば、ろうそくの灯しかなかった江戸時代の夜は、ずいぶん暗かったはず。その闇を、高感度4Kカメラを使い、リアルライティング、低照度で撮影。見事にそのイメージを体現させてくれる。同じように、風景もVFX、CGを駆使して、リアル感のある江戸が映し出される。
もうひとつ。池波正太郎作品の大きな魅力のひとつは「食」。これについてもこの作品は相当こだわっている。料理監修を担当したのは日本料理店「分とく山」の総料理長・野﨑洋光さん。『池波正太郎の江戸料理を食べる』という著書もあるほどの池波ファンだ。描かれている時代にふさわしい食材、調理法にも心をくばり、食べるシーンだけでなく、ただ隅に置いてある料理も、すべて実際に野崎さんが作った。もし口にしたらおいしいだろうなと、観る人が感じるようにできたてを供したという。
暗闇のなかの闘い、湯気たちのぼる鍋……。映画の神様は細部に宿る、と信じた映画人たちの仕事の数々。映画館の大スクリーンで観てこそ、と思う。
最後にひとこと。おみやげ映像あります。エンドロールがでても、すぐに席をお立ちにならないように……。
文=坂口英明(ぴあ編集部)
【ぴあ水先案内から】
平辻哲也さん(映画ジャーナリスト)
「……椎名桔平、小林薫、佐藤浩市ら脇を固める俳優も豪華。大人が楽しめる時代劇になっている」
(C)「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社
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