GWは静岡へ「ふじのくに⇄せかい演劇祭2023」全プログラム紹介
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ふじのくに⇄せかい演劇祭2023ビジュアル
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すべて見る毎年ゴールデンウィークに開催され、世界各国から優れた舞台芸術作品を招聘・紹介するSPAC‐静岡県舞台芸術センターによる「ふじのくに⇄せかい演劇祭2023」が今年は4月29日(土・祝)から5月7日(日)まで開催される。去る3月15日に発表された、同演劇祭と駿府城公園をはじめとする静岡の市街地各所にて同時開催される「ふじのくに野外芸術フェスタ2023静岡」の全プログラムを紹介する。
開幕を飾るのは中国・フランスを代表する演出家の日本初演作
まず注目したいのが、開幕日に上演される2作品。ひとつ目は、せかい演劇祭としては13年ぶりの中国からの招聘作品となる、中国を代表する演出家、孟京輝(モンジンフイ)による『アインシュタインの夢』。アインシュタインが残した手紙や会話の記録などからインスピレーションを得た実験的な作品で、演出の孟京輝は中国で最も歴史ある中国国家話劇院に演出家として所属する傍ら、小劇場の運営や国内の複数の演劇フェスティバルのディレクターを務めている。スピーディな対話や歌唱・生演奏、恋愛メロドラマなどその多彩な作風で若者の共感を得ており、中でも『恋愛的犀牛』(’99年初演)は2,500回の公演を重ね、中国国内で「現代の恋愛バイブル」として知られるなどブームを巻き起こし、観劇がステータスになるほど若者の熱狂的な支持を集めている。
『アインシュタインの夢』※日本初演
ジャンル / 製作都市・国:演劇 / 北京・中国
公演日時:4月29 日(土・祝)13:30、30日(日)13:30
上演時間:75分(途中休憩なし)
会場:静岡芸術劇場
そしてもうひとつが2014年から2022年までアヴィニョン演劇祭のディレクターを務め、2月に、パリ・シャトレ座のディレクター就任が発表されたばかりのフランスを代表する劇作家・演出家オリヴィエ・ピィによる『ハムレット(どうしても! )』。アヴィニョン演劇祭の市民参加型シリーズ企画として翻訳・演出し、俳優や一般市民、俳優学校の学生らとともにリーディング形式で2021年に上演、大きな評判を呼んだ本作は全10作に及び、そのエッセンスを凝縮したエピソード11が『ハムレット(どうしても!)』として上演される。ピィの演劇を貫くのは「ことばの力が世界を変える」という信念。傑作戯曲を新たな視点で体感できそう。
『ハムレット(どうしても! )』※日本初演
ジャンル / 製作都市・国:演劇 / アヴィニョン・フランス
公演日時:4月29日(土・祝)17:00、30日(日)17:00
上演時間:140分(途中休憩なし)※各回開演25分前よりプレトークあり
テキスト:ウィリアム・シェイクスピアに基づく
翻訳・演出:オリヴィエ・ピィ
会場:舞台芸術公園 野外劇場「有度」
バラエティ豊かな韓国発の3作品
若手演出家の新たな視点による作品から巨匠による意欲作まで、バラエティ豊かな作品が揃った韓国からの招聘作品も見逃せない。韓国の社会問題を細やかに描くスタイルで知られるチョン・インチョルよる演出の『XXLレオタードとアナスイの手鏡』。――大学入試を控えたジュノ。彼はレオタードを着ると幸せを感じるが、友人やガールフレンドには絶対に言えない。ところがある日、レオタード姿の男性の自撮り写真が流出、同級生たちが写真の人物を特定しようと騒ぎはじめた…...。一体誰が、何の目的で拡散させたのか? ――。2014年のセウォル号沈没事故をきっかけに、事故の犠牲となった高校生たちが暮らしていたアンサン市の協力を得て制作され、2015年の初演以来上演を重ね2022年にはロンドンでも上演され話題を呼んだ。「いま」を生きる若者たちの心の機微をポップに描き出す作風に注目だ。
『XXLレオタードとアナスイの手鏡』※日本初演
ジャンル / 製作都市・国:演劇 / アンサン・韓国
公演日時:5月3日(水・祝)14:00、4日(木・祝)13:00
上演時間:90分 ※各回開演25分前よりプレトークあり、5月3日(水・祝)公演終演後アーティストトークあり
演出:チョン・インチョル 作:パク・チャンギュ
会場:静岡芸術劇場
ひとりの歌い手が太鼓(プク)のリズムに乗せ、独特の節回しで喜怒哀楽を語る朝鮮の民俗芸能「パンソリ」。その技能保持者でもあるパク・インヘが州(チェジュ)島に伝わる〈家の神々の起源譚〉を、6人の“群唱”による叙情豊かな音楽劇に仕立てた『パンソリ群唱 ~済州島 神の歌~』。伝統芸能よりも創作手段としてのパンソリに注目し、活動するパクが、伝統的な家のあり方を映す神話を家族がコミュニケーション不全を乗り越え再生していく物語として昇華する。演劇祭最終日の7日にはパンソリの代表的な曲目や民族楽器の実演など、パンソリへの理解が深まるレクチャーも開催される予定。
『パンソリ群唱 ~済州島 神の歌~』※日本初演
ジャンル / 製作都市・国:音楽劇 / ソウル・韓国
公演日時:5月5日(金・祝)12:30、6日(土)13:00
上演時間:95分 ※各回開演25分前よりプレトークあり
演出・作・音楽監督:パク・インへ
ドラマトゥルク:イ・ギョンファ
会場:舞台芸術公園 屋内ホール「楕円堂」
「ふじのくにせかい演劇祭2023」最終日に上演されるのが“韓国のピナ・バウシュ”とも評され、2002年FIFAワールドカップオープニングセレモニーの振付を務めるなど、長年にわたり国際的に高い評価を受ける振付家・アン・ウンミ振付・演出の『Dancing Grandmothers 〜グランマを踊る〜』。アン・ウンミが故郷を巡る旅で出会ったグランマたちが自由に踊る姿を記録した映像と、鍛え抜かれたカンパニーのダンサーの身体とが化学反応を起こしポジティブなエネルギーが満ちる本作を、今回は静岡に暮らす“グランマ”たちと共演するスペシャルバージョンで上演する。会見でSPAC芸術監督の宮城は「そんなところにダンスはないよと思われるようなところにわざわざ出向いて、そこにダンスを発見していった。自分とは異なるものの中にリスペクトすべき文化を発見し、それを理解しようとする。アン・ウンミさんの仕事は今非常に重要な仕事じゃないかなと思っています」と称えた。劇場がダンスフロアと化すこと必至の演劇祭フィナーレをぜひ見届けたい。
『Dancing Grandmothers 〜グランマを踊る〜』※日本初演
ジャンル / 製作都市・国:ダンス / ソウル・韓国
公演日時:5月7日(日)14:00 / 19:00
上演時間:90分 ※各回開演25分前よりプレトークあり
振付・演出:アン・ウンミ
会場:静岡芸術劇場
駿府城公演で上演される『天守物語』、注目アーティストの作品を身近に楽しむ「ストレンジシード静岡」
演劇祭と同時開催される、広場や公園、路上など、身近な場所でアートに出会える「ふじのくに野外芸術フェスタ」では今年、宮城演出の代表作『天守物語』が上演される。1996年の初演以来、日本国内のみならずインド、パキスタン、中国、韓国といったアジア各地やヨーロッパなど世界30都市で上演を重ねるうちに、「アジアの文化がいかにダイナミックに交流してきたか。そして地下水のように共有しているものがあるということが実感としてわかってきた」(宮城)という本作を駿府城公園で上演する。宮城演出の特徴である「俳優による生演奏」と「二人一役の手法(ひとつの役を“台詞”を担当する俳優「語り手」と“動き”を担当する俳優「動き手」のふたりで演じる)」をはじめ、アジアの多様な演劇の伝統を現代の新しい創作につなぐ趣向が散りばめられた“祝祭音楽劇”。SPAC公演ならではの特徴として、「時間の感覚だけは現代の人間の時間間隔にマッチするよう意識した」(宮城)というあたりにも注目したい。
なお、2日には「東アジア文化都市2023静岡県」春の式典でも上演され、5月27・28日には浜松城公園での野外上演も決定している。
SPACレパートリー
『天守物語』
ジャンル / 製作都市・国:演劇 / 静岡・日本
公演日時:5月3日(水・祝)、4日(木・祝)、5日(金・祝)、6日(土)※各日18:45開演
上演時間:65分 ※各回開演35分前よりプレトークあり
演出:宮城聰 作:泉鏡花 音楽:棚川寛子
会場:駿府城公園 紅葉山庭園前広場 特設会場
【ストレンジシード静岡2023全ラインアップ】
5月4日(木・祝)~6日(土)に開催されるストリートシアターフェス「ステレンジシード静岡2023」では、「ストリートシアターってなんだ?」をテーマに掲げ、「日本では定着していない“ストリートシアター”について参加アーティストと共に考えたい」(ストレンジシード静岡フェスティバル・ディレクター:ウォーリー木下)という今年、一部海外作品を除き、国内アーティストは全て新作を発表。駿府城公園周辺の市民の憩いの場となっている駿府城エリア、静岡の街の中心地となっている市役所エリア、個性あふれる店舗が並び発展をし続けている人宿町、毎日江崎ビルエリアを舞台に、ストレンジシード静岡がプロデュースする作品を含むまさにフェスティバルの核となる「コアプログラム」、ストレンジシード静岡とタッグを組んだアーティストがストリートシアターの魅力を最大限に引き出す作品を上演する「オフィシャルプログラム」、公募により選ばれたストリートシアターの可能性に挑戦するアーティストによる「オープンコールプログラム」の3つのプログラムで展開する。コアプログラムでは、「本物の空、本物の風が起こってる中で、どうやって観客の想像力を使った演劇が作れるかということを試してみたい」と語る、フェスティバル初のウォーリー演出による作品も上演される。
[コアプログラム]
・『χορός/コロス』(日本)※新作
ギリシャ演劇で生まれた「その他大勢」と「殺す」というふたつの意味を持つタイトルで、自身の記憶に今でも残っているという1985年の豊田商事会長の刺殺事件を下敷きにした作品を想定しており、演劇祭ならではの祝祭感のなかにほんの少し毒が入ったような作品になりそうとのこと。
公演日時:5月4日(木・祝)~6日(土)※各日11:00開演
上演時間:約40分
作・演出・構成・美術:ウォーリー木下
振付・演出・出演:いいむろなおき、金井ケイスケ、黒木夏海、冨田昌則
音楽:吉田能
出演:いいむろなおき / 金井ケイスケ / 黒木夏海 / 冨田昌則 / 公募で選ばれた出演者
会場:フェスティバルgarden(駿府城公園 東御門前広場)
・『Woman with Flower』(韓国)
空中パフォーマンスに特化した韓国のカンパニーが、江崎ビルをキャンパスに、ゴッホの絵を手がかりに、ダンサーが空中パフォーマンスにより壁面で絵を描く。
公演日時:5月4日(木・祝)、5(金・祝)、6(土)※時間未定
上演時間:約30分
演出:アン・ウィスク
振付:キム・ジジョン / アン・ウィスク
テクニカルディレクター:ファン・ソンタク
テクニカルアシスタント:キム・ミンテ
プロデューサー:イ・ランヒ
出演:キム・ジジョン / パク・ジェヒョンコ・ギョンミン / イ・ミニョン
会場:毎日江﨑ビル
きゅうかくうしお、江本純子、マームとジプシーらが静岡の街で創作
[オフィシャルプログラム]
・きゅうかくうしお『素晴らしい偶然をつないで』
ダンサーの辻本知彦、森山未來が立ち上げた、さまざまなジャンルのアーティストで構成される「きゅうかくうしお」。2022に城崎国際アートセンターで創作した作品「醸す」を、人宿町全体にインストール(街をジャックする形で展開)する。メンバーが作品を展開するポイント(店舗や劇場、倉庫、道路等)を辻本と森山が踊りながら繋いでいくパフォーマンス。 ※辻󠄀本知彦の「辻󠄀」のしんにょうは点1つが正式表記
・江本純子『おでミずむ(仮)』
劇団「毛皮族」主宰の劇作家・演出家・俳優、江本純子が、ストレンジシードでは初めて本格的な夜のプログラムを創作。1月から静岡の街をリサーチしており、フェミニズムなど社会的なテーマを扱った、歌などを伴った作品を想定しているとのこと。
・マームとジプシー『break-fast』
岸田國士戯曲賞や読売演劇大賞優秀演出賞を受賞した藤田貴大が作・演出を務めるカンパニー。公園内の芝生や木々に囲まれたなかで寝泊まりしてそこで朝食を作り、食事をするといったキャンプの形を利用した物語を計画しているとのことで、今後の海外展開も想定したポータブルな新作をプロトタイプで上演する。
・tupera tupera(ツペラ ツペラ)いえやすんぷ プロジェクト 『フラワー家康といっしょに ちょんまげ行列』
絵本作家としても活躍するユニット。駿府城をつくった徳川家康にちなんで、家康が実はガーデニングを愛していたというエピソードから着想したワークショップを開催する。
・エンニュイ『平面的な世界、断片的な部屋 ストレンジシードver.』
お笑いコンビ・クレオパトラのメンバーとしても活動する長谷川優貴が主宰する劇団。児童公園を舞台に、公園の風景の中の人たちを切り取って、同時多発的に起きてるものを捉え普段とは違う景色に見せてくれるという。
[オープンコールプログラム]
・TACT(TAkasaki Community Theater)『スパイダー糸の件』
・DANCE PJ REVO『STUMP PUMP SHIZUOKA』
・安住の地『わたしが土に還るまで』
・ダンスカンパニーデペイズマン『ギガ超獣ギガ』
・お寿司『怪獣回しし』
そのほか関連企画として日本・中国・韓国の演出家たちが自由に語り合う「スペシャルトーク」(4/30)、宮城聰とアーティスト・論客たちが駿府城公園の開放的な空気のもと自由に語らう「広場トーク」(5/5)、舞台芸術公園の入口にオープンする「せかいの劇場ミニミュージアム『てあとろん』」、お茶摘み体験なども開催予定。
各公演チケット発売中!
※詳細は特設サイトにてご確認ください。
◆ふじのくに⇄せかい演劇祭 特設サイト:https://festival-shizuoka.jp
◆ストレンジシード静岡 公式サイト:https://strangeseed.info
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