2ndツアーを控えた、あたらよインタビュー「季節シリーズをここで一旦完結させるくらいの感じかもしれない」
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あたらよ
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すべて見る切なくドラマティックでありながら、誰もがその曲の主人公となるリアリティや空気感をまとった初のオリジナル曲「10月無口な君を忘れる」で、一躍ブライテストホープとなったバンド、あたらよ。活動開始1年足らずでYouTubeの人気チャンネル「THE FIRST TAKE」に出演したほか、昨年秋からは連続配信リリースをスタートしてリスナーを広げている。
シンプルなバンドサウンドとひとみ(Vo&Gt)のエモーショナルな歌。飾り気のない形でいて、しかしいつしか、ふとした季節の風に街並みとともにその歌が思い起こされる。そんな歌心を持ったバンドだ。この春スタートしたテレビ朝日系 木曜ドラマ『ケイジとケンジ、時々ハンジ。』のオープニングテーマに、新曲「届く、未来へ」が決定しその名はさらに広がりそうだ。勢いに乗る現在について、そして4月29日(土) からの2ndツアー「“季億の箱”~2023~」について話を聞いた。
──昨年10月から連続配信リリースをしてきたところで、さらに新たにドラマ主題歌、映画主題歌が決定といい話しが続いていますね。バンドとしてかなりスピード感を感じてるのでは。
ひとみ(Vo&Gt) そうですね。ドラマや映画の曲にプラスして、連続配信リリースもあったので、昨年末から年明けにかけてがっつりと制作期間があって。3月くらいからやっと、ライブのタームに移ってきたかなという状況なんですけど。
──長い期間じっくりと腰を落ち着けて制作をしていくということでは、何かバンドとしてのテーマを設けたり、トライしようということもあったんですか。
ひとみ 連続配信リリースをしていく中でひとつ大前提としてあったのが、これまでは曲が先にあって、これってこういう曲に聞こえるよねって後付け的な感じでテーマができることが多かったんです。年末から作ってきた曲たちは先にコンセプトありきで──例えばクリスマスならクリスマスの曲、バレンタインならバレンタインの曲を作ろうとやっていて。そこは、新しい試みではありましたね。個人的には、コンセプトがないほうが書きやすいんですけど(笑)。でもこういう機会だからこそチャレンジしてみようって、レーベルの方やメンバー内でも話し合って。こういう機会がなかったら、私自身はクリスマスの曲は書かないしねっていう。
まーしー(Gt) 確かにね(笑)。
ひとみ 普段、自主的に書かないだろうなという曲がたくさん生まれたのはすごくよかったなと思います。
──連続配信ということで、より季節と寄り添ったリアリティもあれば、イマジネーションが膨らむ曲となっていたのが印象的です。3月にリリースした「憂い桜」はセリフからスタートする曲で、とてもエモーショナルでしたね。
あたらよ「憂い桜」MV
ひとみ 「憂い桜」は、卒業ソングを作ろうという話からスタートしたんです。もともとあたらよって季節に関連した曲をたくさん作っていて、春の曲もすでにあって。じゃあ、春の中でももう少し焦点を絞ったものをということで、卒業ソングになったんです。制作段階でいろんな人と話し合っている中で、あたらよではセリフが印象的な曲があるんですけど、このタイミングでそれを復活させるのはこの曲にとっても効果的なんじゃないかなっていうことで、セリフを入れていて。
──あたらよといえばセリフというのは、そもそもどんなところから生まれた発想だったんですか。
ひとみ 最初にセリフを入れようと思ったのは、専門学校時代に作っていた「10月無口な君を忘れる」で。それが初めてセリフをつけた曲だったんです。音楽の専門学校だったので、周りがつねに新しい曲を発信している状況で。何かほかとちがうことがやりたい、ほかとの差別化になるなと思ってセリフを入れたら、意外と曲の世界観が広がる感じがいいなと思って。これは強みになるかなと思って入れていたんです。ただあまりやりすぎてもあれなので(笑)。ある意味、タイミングを見計らっていたところもあったので、「憂い桜」でこれができてよかったなと思います。
──そして4月からスタートしたテレビ朝日系 木曜ドラマ『ケイジとケンジ、時々ハンジ。』のオープニングテーマとして、新曲「届く、未来へ」が起用されています。このドラマの話はいつ頃から動き出していたんですか。
ひとみ これは他の曲も同時進行でレコーディングしながらで、結構タイトで、制作期間も1、2週間くらいしかない感じだったんですけど(笑)。
まーしー 1月終わりとか、2月くらいだったよね。
ひとみ 先方がデモを気に入ってくださったところからはじまって。ドラマの書き下ろしなので、ドラマの世界観に合わせて歌詞やサウンド面で手直しをしていくのに時間をかけましたね。これまであたらよが書いてきた歌詞の世界観とドラマの世界観って、結構ギャップがあると思うんです。ドラマに沿った歌詞を書くことで、今まであたらよの曲では出てこなかった歌詞がたくさん詰まった曲になっているので。ある意味、これも新しい挑戦だったなと思います。
──頭から勢いのある、力強い曲になりましたね。
ひとみ どんどん前に進んでいく強い意志を曲にのせてほしいというのがあったので、そこからはブレないようには作っていきました。どちらかというと前向きな歌詞を書いていると、むずがゆくなっちゃうタイプなんですけど(笑)。Dメロでは、あたらよっぽい気持ちを描けたのはよかったなと思います。
──ドラマのオープニングテーマでも、とくに今回は物語の導入となる高揚感を担う曲だと思いますが、サウンド面もそこは意識していますか。
まーしー そうですね。頭から勢いをつけて思い切りプレイするっていうことで、ギターも多分頭から3、4本くらい重ねていて。普段はAメロで、ちょっとトーンを落としていくのがつねなんですけど、今回はサビに向けてガンガン、ガンガン突っ走っていく、頭から終わりまでギターが鳴り止むことがない状態で。普段よりもかなり激しめにギターが入っていると思います。
──こういう新しいタイプの曲が1曲入ることで、今後のライブの流れも変わりそうですし、ターニングポイントになる曲になりそうですね。ドラマで初めてあたらよを知る人もきっとたくさんいるでしょうし、これまで聴いてきた人が新鮮さをもって聴いてくれる。反応が楽しみな曲ですね。
ひとみ ちょっと怖いですけどね。
まーしー エゴサしないと(笑)。
──そして6月には映画『スパイスより愛を込めて。』の主題歌「僕はそれを愛と呼んだ」がリリースとなります。こちらも映画への書き下ろし曲ですね。
ひとみ そうですね、個人的には好きな曲になりました。この楽曲を書くときに先方から、あたらよの「夏霞」という曲が大好きで、そのまま使いたいくらいだっていう話もあったんです。でもせっかくだから書き下ろしさせてくださいとなって。だから、メロディとかコード感に「夏霞」が香る気がしますし。とくに何も指定がなかったんです、あたらよさんの好きなように書いてくださいと言っていただけたので。それはそれですごくうれしかったですね。
──連続配信リリースに加えて、立て続けで主題歌を担当するという前向きなチャレンジな状況が続いていますね。自分たちとしては今の状況をどう感じていますか、何かバンドのヴィジョンとして思い描いてることはありますか。
たけお(Ba) 想像もしてなかったし、考えていなかったことですね。
ひとみ このバンド自体、初めてのオリジナル曲「10月無口な君を忘れる」が幸運なことにいきなり広まって、それが最初の曲になっているので。常にストックがないんです(笑)。曲のストックもなければ、先のことを考える余裕もないままに日々が過ぎていく感じがまだあって。目の前のことに必死になるのもいいんですけど、今後はもう少し長い目で見た制作をやっていきたいなとは思っているんです。
あたらよ「10月無口な君を忘れる」MV
──こうなりたい、こうなろうという前にバンドが走り出してしまった感覚なんですね。
ひとみ 本当にそんな感じで、止まっている暇がないから、今できることをやっていこうっていう。それこそ連続配信リリースを続けていた時は、正直この書き方私に合ってる?って思いながらやっていたんです(笑)。曲を書きはじめれば早くて1日とかで書けてしまうんですけど。曲になる以前の、吸収する期間が必要だなって。散歩をしたり、本を読んだりするのが好きなんですけど。散歩をしていると日本特有の四季の感じ……ああ、春の匂いがしてきたなとか、夏の匂いがしてきたなって肌で感じられるし、それが好きなんですよね。詩人みたいな感じというか、きっと正岡子規とかもこういう感覚を味わって詩に残したくなったんだろうなと考えたりもして。なかなかそういう時間が取れないまま、次の曲、次の曲をとなっていたので。何を書けばいいんだろうっていうのはあって。
──残るは自分自身しかないですもんね。
ひとみ 本当にそうでした。自分の過去を虫食いみたいに食べていくしかないんです。その過去が残っていれば残っているほど書ける曲って増えてくるし。やっぱりそこを残すためにも、少しずつインプットをしていきたいなって。とにかく過去からかいつまんでいった感じだったので、もうすっからかんです(笑)。
──それはまーしーさんやたけおさんも同様ですか。
まーしー そうですね。でも例えば街で流れている音だったり、どこかで何かを聴いているので。そこから何かの拍子にリフとかが頭に出てきて、録音しておくというのはありますね。僕の場合は意識的にインプットするということは、昔からそんなにないんです。どこかで聞いたものが頭に残っていて、それが何かと混ざり合ってできるというか。
ひとみ まーしーはひらめき派な気がする。写真を見て曲が浮かんだとか──前に私がオムライスの写真を送ったら、曲ができたって送ってきたり(笑)。
まーしー オムライスってこういう感じかなって。
たけお (笑)。
ひとみ 意味わかんないですよね(笑)。
まーしー かわいげのある感じというかね。
ひとみ 確かにあの曲はポップだったね。まあ、ちょっとそれはボツにしちゃったんですけど。でも着眼点が面白くて。
まーしー 風景的なものとか自分の頭の中で勝手に作り上げて、それに合いそうな音とか音楽がなんとなくあって。それを作って、みんなに聴いてもらうというのが多いかもしれない。
ひとみ こういう感じで私が曲を作る場合と、まーしーがトラックを作ってそこに私が歌詞とメロディをのせる場合とで、作りはじめる段階の影響を受けたものがだいぶ違うので。だからこそいろんな曲ができるし、楽しいなって思ってます。
──制作のタームも落ち着いて、4月29日(土) からはいよいよツアーがスタートします。連続配信リリースもあって、今後につながっていくものにもなりそうですが、今回のツアーにはどういう思いがありますか。
ひとみ ツアータイトルが「季億の箱」で。“記憶”でなく、季節の“季”と1億、2億とかの“億”で“季億”なんです。人によって季節の記憶って違うものだと思っていて。私の持つ夏の記憶と、まーしーやたけおの持つ夏の記憶って絶対に違うと思うし、人の数だけ季節の思い出や記憶があるんじゃないかなって。あたらよには季節が香る曲がたくさんあるので。そういうあたらよの曲と一緒に、ファンの皆さんそれぞれの季節の記憶をライブハウスという箱に持ってきていただいて。あたらよの曲と一緒にライブハウスという箱に閉じ込めていくというコンセプトがあるんです。なので、これまで書いてきた季節ものシリーズをここでぎゅっと一旦完結させるくらいの感じかもしれないですね。
まーしー コンセプトありきのライブはやったことないよね。
たけお たしかに。
ひとみ 前回のツアーはコンセプト云々よりある曲を全部やるというくらいだったので(笑)。でも今回は、コンセプトに沿って曲を書いてきたからこそ、コンセプチュアルなライブができると思うので。それもまたいいなと思ってます。
たけお それぞれの曲をしっかり伝えられるように頑張りたいですね。
まーしー 照明さんとかもその曲その曲でこだわって作ってくれると思うので、面白いライブが作れるんじゃないかなと。
──今回のツアーでは、声出しもOKとなっているので以前のツアーとはまた雰囲気も変わるのでは。
まーしー 全然違うよね。声出しありで、こんなにライブって楽しくなるんだというのはあるので。
ひとみ あたらよはコロナ禍で活動を始めたので、ライブではずーっとマスクをした無表情なお客さんがこちらを見ているというか……だからライブが怖くて、正直苦手だったんです。でも、今年2月にワンマンライブ「あたらよ Special Limited Live“季億のカケラ”」で初の声出しのライブを経験して。そのとき、それまでずっとあたらよのファンは大人しめだと思っていたんですけど、これが意外と。
たけお すごかったよね。
ひとみ ワーワー言うやん!と思って。そういうふうにファン層がリアルに見えてすごく楽しかったんです。まーしーのファンは“まーしー!”って呼ぶし。たけおのファンは、“たけおー!”って呼ぶし。その聞こえてくる声が、まーしーの場合は野太い男性の声が多かったりとか(笑)。たけおは逆に女の子の声が多かったりして。それぞれのファン層が見えてきて、声出しのライブってこういうのもわかるんだなって面白かった。
マーシー ひとみとたけおの前は、女性と男性のお客さんがいいバランスでいるんですけど、自分の前はなぜか屈強な男性が多いんですよ(笑)。
ひとみ それこそまだ東京でしか声出しのライブをしていないので。今回の名古屋、大阪と地域ごとの特性も新しく見えてくるのかなって思うと、ツアーで回るのが楽しみですね。
Text:吉羽さおり
<ライブ情報>
あたらよ 2nd TOUR "季億の箱"~2023~
4月29日(土) 名古屋 SPADE BOX
開場16:30 / 開演17:30
4月30日(日) 大阪 梅田シャングリラ
開場16:30 / 開演17:30
5月21日(日) 東京 WWW X
開場16:30 / 開演17:30
チケット発売中:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2342087
<リリース情報>
あたらよ「届く、未来へ」
配信中
https://asab.lnk.to/todokumirai
あたらよ「憂い桜」
配信中
https://asab.lnk.to/ureisakura
あたらよ「眠れない夜を君に」
配信中
https://asab.lnk.to/nemurenaiyoru
あたらよ「空蒼いまま」
配信中
https://asab.lnk.to/soraaoi
あたらよ「雪冴ゆる」
配信中
https://asab.lnk.to/yukisayuru
公式サイト:
https://atarayo-band.jp/
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