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【観劇レポート】孤高の死刑執行人を稲垣吾郎が魅力的に演じきる 舞台『サンソン-ルイ16世の首を刎ねた男-』

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舞台『サンソン-ルイ16世の首を刎ねた男-』より、シャルル=アンリ・サンソン役・稲垣吾郎 撮影:引地信彦

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安達正勝『死刑執行人サンソン』(集英社新書)を原作として、中島かずき(劇団☆新感線)の脚本、白井晃の演出によるダークな歴史劇。

先祖代々パリで死刑執行人を務める一族の当主、シャルル=アンリ・サンソン(稲垣吾郎)。彼は生業故に貴族たちから忌み嫌われる一方、「ムッシュー・ド・パリ」と呼ばれている。

そんな彼が、事故死だったにも関わらず父親殺害の罪に問われたジャン=ルイ・ルシャール(佐藤寛太)の処刑をめぐって、彼の友人であるトビアス・シュミット(崎山つばさ)、ルイ・アントワーヌ・サン=ジュスト(池岡亮介)らと関わりを持つことに。ジャンを救おうとする市民たちのエネルギーは、フランス革命へと繋がる時代のうねりとなっていった。サンソンもまた、その波に巻き込まれていく……。

パリは「花の都」とも呼ばれるけれど、サンソンたちが生きた18世紀のパリにはそのような華やかさは感じられない。観客は民衆のエネルギーが荒れ狂うフランス革命を、共和制の下での粛清の嵐を、つぶさに目撃することとなる。

その際使われたのは、ジョゼフ・ギヨタン(田山涼成)とサンソン、そしてジャンとトビアスが職人として協力し開発した、今では「ギロチン」として知られている機械。それが処刑人の負担を減らし、かつ相手の身分に関係なく平等に処刑するために作られたこと、その際有益なアドバイスをしたルイ16世(大鶴佐助)自身もその犠牲となったこと、そして簡単に処刑できるからこそ死刑判決が増えたこと、なんとも皮肉な成り行きと言うほかない。

悩み苦しみながらも孤高に生きるサンソンを演じる稲垣吾郎の、陰影あふれる演技には胸を打たれずにはいられない。18世紀ヨーロッパの華麗な衣裳の数々で、ビジュアルも魅力的だ。またサンソンが人としても惹かれ、忠誠を誓うルイ16世も、知的で穏やかな人柄を印象づける。ふたりの関係性が、人間ドラマに奥行きをもたらした。

さらに、ジャン、トビアス、サン=ジュストもそれぞれの持ち味を発揮して好演。パリの闇をまとう作品の中で、彼らの輝きは貴重な光だ。またナポリオーネ・ブオナパルテ(落合モトキ)の存在や、ドラマティックに表現される民衆のエネルギーもこの物語になくてはならない。明るい内容ではないが、観劇後に重厚な満足感がある作品なのだ。

東京公演は東京建物Brillia HALLにて4月30日(日) まで。その後、大阪・松本公演あり。

取材・文=金井まゆみ
撮影=引地信彦

舞台『サンソン—ルイ16世の首を刎ねた男—』チケット情報 https://w.pia.jp/t/sanson-stage/

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