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高橋一生・飯豊まりえのバディがパリへ「ジョジョの黄金の精神はとても勇気づけられるもの」

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左から)飯豊まりえ、高橋一生 撮影:映美

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「ヘブンズ・ドアー! 今、心の扉は開かれる」

高橋一生演じる人気漫画家・岸辺露伴が、人の心や記憶を本にして読み、指示を書き込むことができる特殊能力を発動する際に言うこのせりふにゾクッとさせられながらも、ワクワクが止まらない人も多いだろう。

荒木飛呂彦による傑作漫画「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズのスピンオフ「岸辺露伴は動かない」の同名実写ドラマは、第1期の2020年から第3期の2022年まで放送された人気シリーズ。同漫画の人気エピソードのひとつ「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」は、国内外の漫画家が参画するフランス・ルーヴル美術館のバンド・デシネプロジェクトのために、2009年に荒木が描き下ろした読み切り作品だ。

同作を原作に、怪異に遭遇する露伴役の高橋一生、露伴の担当編集・泉京香役の飯豊まりえなどドラマのキャストとスタッフが再集結し、実写化した映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』が、5月26日より公開中だ。

物語は、「この世で最も黒く、邪悪な絵」の謎を追い、露伴がルーヴル美術館を訪れるサスペンスだ。これまでドラマでは描かれなかった、露伴の知られざる過去が明かされる。 高橋と飯豊に、話を聞いた。

最初に出力した露伴に一周して戻ってきた

――映画では、露伴が青年時代に淡い思いを抱いた女性・奈々瀬(木村文乃)が登場し、知られざる露伴の過去がわかります。ドラマの世界観と少し違うニュアンスもあるかと思いますが、いつもと違う感覚で演じられたところはありましたか。

高橋 僕はドラマの第1期の露伴に戻した感覚があります。1期、2期、3期と演じさせていただいてきましたが、そもそも荒木先生が漫画の世界観で描かれているスピンオフ「岸辺露伴は動かない」のシリーズと、露伴が登場するジョジョの本編第4部「ダイヤモンドは砕けない」のシリーズとでは、人間的な違いが出ている部分もあるんです。

そういった同じ人物での性格の乖離というような面白さは、僕がお芝居をやるにあたって、いろいろと実験させていただいている部分もありまして。ひとりの人間において、対峙するものが違うと本質的なものも変わっていってしまう人間の素性の曖昧さのようなものを、1期と2期の違いで出してみたり、2期と3期の違いで出してみたりしています。

そんなちょっと人柄が違う感じも、露伴というこの強烈なビジュアルで一本串刺しにできることは実験上わかったので、映画に参加させていただくときに1期のものを引っ張ってきても、2期と3期を通って“一周した露伴”は違ったものになれるだろうという、そこはかとない自信はあったんです。

なので、最初に出力した露伴に一周して戻ってきた感じを『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』では出しています。

飯豊 泉くんと露伴先生の長年バディとして積み重ねてきた距離感や関係性は変わっていません。でも今回、担当編集として露伴先生とルーヴルに行きますが、台本を読ませていただいた時に「少しは露伴先生を支えられるようになってきたのかな?」と感じましたし、その部分を意識しながら、今回も楽しく演じさせていただきました。

露伴と泉は不思議なバディ感がある

――露伴と泉の関係性を映画版として構築したときに、あらためて気づかれた部分はありますか。

高橋 僕は、1期、2期、3期とシリーズを重ねてきて、はっきりよくわかってきたのは、泉くんはある意味、露伴にとって一番の強敵じゃないかということです。怪異を持ち込んできてしまいますから(笑)。ドラマでは、タイトルの通り露伴は動かない姿勢でいるのに、動かすネタを持ってきてしまうのは泉編集者なので、そういう認識でいます。だから、不思議なバディ感はあるんじゃないかなと。

飯豊 良くも悪くも、露伴先生のことを思っての行動なのですが、裏目に出てしまいます(笑)。泉くんは、露伴先生とは少し違う方向から問題に迫っていきますが、デコボコ感があって、その関係性はずっと変わらないです。

高橋 そうですね。

飯豊 映画でも、その雰囲気は出ているなと思います。

高橋 泉くんはまったく怪異に影響を受けないので、それはすごいですね。そこもまた面白い関係性です。

飯豊 そういう意味でいえば、能力がありますよね。

高橋 そのような、能力がわかってないというバディ感はおもしろいなと。なかなかないとは思います。

――ある種、あのメンタルはギフトなのかもしれないですね。

飯豊 これだけ長い期間一緒にいるのに、露伴先生の「ヘブンズ・ドアー」の能力にまったく……。

高橋 そう、まったく気づいていない。

飯豊 面白いですね、毎回(笑)。

――高橋さんは常々「総合力」「スタッフワークも含めて役になっていく」とおっしゃっていますが、このチームならではのルールみたいなものはありますか。

高橋 それぞれのアイデアの持ち寄り方に、押し付けがないことじゃないでしょうか。僕、こういうの用意してきたんで、と主張する人は誰ひとりないんです。それはお芝居のなかで「用意スタート」となった時に、それこそ総合芸術的に見えてくるものなんです。本棚にあるものが1期とは違っているなと気づいたり。こんなペンを用意してくれていた、原稿がこの位置でデフォルトになっている、などと。

やっぱり総合力と時間の積み重ねだと思います。それぞれが岸辺露伴の世界像を持ち寄った結果、僕がそれを全て受けてお芝居として出力していくわけです。出演者に渡してくれるまでの総合力として、押し付ける人が誰ひとりいないというのは、とてもうれしいことです。

飯豊 撮影のセッティングの間に、露伴先生の書斎の本棚を見ると、1期と2期と全然違う本に入れ替わっていて、そのときのエピソードにまつわった書籍を置いてくださっているので、すごく面白いです。

けっしてルーヴルでは終わらない話

――パリではルーヴル美術館をはじめ、名だたる名所での大規模ロケを実施されたそうですね。

高橋 僕がとてもうれしかったことは、(渡辺)一貴監督が日本で撮影しているテイストそのままに撮ってくださったこと。海外の撮影だからとカットを無駄にたくさん撮っていくようなら、一貴さんでも幻滅しちゃうなと思ったのですが、そういったことはまったくなかった。いままで通りに作り込まれて、いままで通りに、サッと終わっていく。

飯豊 そうでしたね。

高橋 これは撮影時間が短いから良いわけではなくて、一貴さんの中で、何かがもう完全に決まっているんです。そのうえで、僕ら俳優をコマとして置いてくれるという、自信の表れなんです。仮に迷ったとしても「本番!」と言った時にはもう、迷いがない。僕は2016年頃からご一緒していますが(2017年放送の高橋出演のNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」、ドラマ「岸辺露伴は動かない」シリーズは今作の渡辺監督が演出を担当)、まったく変わっていない。海外だからと、浮き足立っていないんです。

1期が終わったあと、一貴さんとお話しした時に、あまりにドラマの反響が強かったので「なんだか不思議なことが起きていますね」と、お互いに言っていたんです。そんな感覚のなかで、「浮かれないでやりましょう」と言ったことを覚えていて。パリの撮影でも、まさに浮かれていないので、僕は本当に「一貴さん好きー!」と思いました(笑)。

――露伴と泉がパリに行って、どうなるのかは、気になるところです。

高橋 この作品の面白いところは、少し先回りしてお話ししてしまうと、けっしてルーヴルでは終わらない話になっているところです。あるルーツに回帰していく話なので、それがある意味、フランス映画のようであったり、昔の日本映画のようでもあったり。昨今の映画的ではない、たとえばアンドレイ・タルコフスキーのような、不思議な世界観が表現できています。

さらに、それがルーヴル美術館の中で展開し、且つ戻ってきて露伴の根源的な話になっていくまでが描かれるという、よく作られた脚本だな、と思いながら演じていました。今回の映画の色味が欧米的ではないところがあるので、起承転結もどこか軸がずれていて、作品としてアーティなものになっている印象です。

現地と日本のスタッフのバランスも素晴らしい

――現地のスタッフの方もいながら、日本のスタッフの方の空気感はそのままだったそうですね。

高橋 そのままです。スタッフの皆さんも本当に全世界共通だなと思います。音声さんは、フランスでも音声さんだな、とわかる格好をしていますし(笑)。それは日本とまったく変わらなかったです。そんなみなさんが真摯に「露伴はどんなことをするんだろう?」と思いながら見守ってくださいました。現地のスタッフの方々と日本から入ったスタッフの方々の融合も、僕らが行く前から作られていましたし、そのバランスも素晴らしかったです。なんの違和感もなく、撮影できました。

飯豊 撮影に入る時にはもう、「ここで撮る」「ここでワンカットです」など、画を決めてくださっていたので、日本での撮影と変わらず撮影に臨むことができました。

高橋 たとえば、スタッフの中で意見が割れたり、相違があったりすると肌で感じ取れるんですが、まったくなかったです。

――パリの印象深い思い出はありますか。

飯豊 観光バスで凱旋門をまわるシーンがあったのですが、道の交通を止めることができないので、普通の交通に混ざって凱旋門の周りを50周くらいして撮影しました(笑)。

高橋 凱旋門を50周するなんて、人生であまりない経験でした。凱旋門は道が中心から放射状にのびているので、ぐるっとまわりながら目指す道に抜けて行くということがとても難しい。交通量との兼ね合いもある中で、けっこう奇跡的なことをやろうとしていたらしくて。バスにはもうひとり地元の素晴らしい女優さんがいらっしゃって、この3人はほのぼのと「もう1回やりますか?」と言いながらお芝居をしているんですが、下では(カメラに映っていないところでは)戦場のようになっていたという。

飯豊 先導が大変なので運転手さんは顔を真っ赤にされて運転してくださっていました。

高橋 先導する車の運転手の方が、その2階建てバスを誘導してくれました。映画では、長いシーンではないのでサラッと流れてしまっていると思いますが……。

「岸辺露伴を知らない」という方も楽しめる作品

――高橋さんは第1期の撮影時に今作の渡辺一貴監督と『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』がもし実写化されればとお話をされていたそうですが、実際に決定されてふたりでお話をされましたか。

高橋 何も話していないです。『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』については、けっこう前からちょっと冗談めかして話してはいたんです、一貴さんから「そのお芝居はルーヴルのために取っておいてください」なんて言われたり。その時はまさか本当に実現するとは思っていませんでしたが、「作品が自然に来てしまった」と、ちょっと不思議な感覚ではあります。

飯豊 驚く間もないくらいでした。「もしかしたら続編があるかも?」というお話はいただいていたのですが、『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の映画化は予想していなかったのでうれしかったです。

高橋 スタッフの方々が、日本からパリに行くまでの流れをとてもスムーズに作ってくださっていた感じがします。

――ドラマシリーズのファンの方、原作を知らないけれどドラマがきっかけで漫画を読むようになった方、原作もドラマも好きな方など、幅広い層に人気があります。この度、実写映画化にあたって、もしかすると原作もドラマも知らない方など、よりたくさんの方々が劇場へ足を運ぶかもしれません。岸辺露伴の世界に入りやすいポイントといえば、どこでしょうか。

高橋 昔、鳥肌実さんが出ている映画で『タナカヒロシのすべて』(2005年)という作品があったんですが、そういうものだと思って観に来ていただければ(笑)。最近、登場人物の名前が作品に出ているものは、わりと敬遠されてしまいやすい風潮にあるのかもしれないと思っていて。どこかタイトルに負けてしまうというか、タイトルにすごくバイアスがかかってしまうというか。

また、何気なく映画を観に行こうとした時に、「これシリーズもの?」と知ると「前も観ておかないと」と思う方々が大分増えているような気がしているんです。ですが、いろいろなものを全部取っ払って、『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』をひとつの作品として自由に観ていただいて、面白がっていただけたらと。

「岸辺露伴を知らない」という方が観ても、楽しめる作品になっています。……あの、ごめんなさい。『タナカヒロシのすべて』は例えになっていなかったですが、まあ、いいと思います。あの映画、とても好きなので(笑)。

飯豊 あはは(笑)。

「黄金の精神」は、とても勇気づけられるもの

(C)2023「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」製作委員会 (C)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

――もしも露伴のような特殊能力を身につけられるとしたら、どんな能力が欲しいですか?

高橋 「ヘブンズ・ドアー」一択ですね。台本など、普段から本も読み慣れていますし。

飯豊 私はジョジョ第4部の「ダイヤモンドは砕けない」に登場するトニオ・トラサルディーの能力ですね。レストランをやっているシェフのキャラクターなのですが、トニオさんみたいに、自分の作った料理を食べた人の身体の不調を治すという、良い能力が欲しいです。食べることが好きなので、何かご飯を作って、食べただけでもう病気が治っているというのはとても魅力的です。

――おふたりとも納得の選択です(笑)。ドラマシリーズでは、美術セットや衣裳などのディテールにもこだわりを感じる素敵なデザインで、映画では芸術の都・パリへ行きますね。いつも泉くんは可愛いファッションですが、映画ではいかがですか。

飯豊 今回は、紫の衣裳と黒い衣裳を着ています。なかでも、オークション会場に行くシーンは、シースルーを何枚も重ねて作られている紫のドレッシーなお洋服を着ているのですが、「もっとドレスっぽいものを着たかった」というようなセリフがありまして。露伴先生には「思いとどまってくれて良かったよ」とツッコまれています(笑)。

――そのシーンにも注目ですね。ところで、実写では高橋さんの露伴も4年目となり、定着し好評を得ていますね。ご自身ももともとジョジョがお好きということで、役への愛情がさらに増すこともあるかと思いますが、あらためて高橋さんにとっての「岸辺露伴」とは?

高橋 純粋な存在かもしれないです、欲求に対して。露伴は自分が生きていること、漫画家として何かを表現をすることに、誰かの目線を気にすることなく、貫いている。よく「読者のために」と言いますが、読者の向こうにいる“自分”にボールを投げているような人間だと思います。

自分が向こう側にいる。自分と向こうの間に、常に読者を入れているような人間なのではないかと感じています、僕もそうなので。彼の精神というか、志というか、出しているもの。ジョジョ的な言葉を借りるなら、「黄金の精神」のようなものがあるんです。

――「黄金の精神」というと、「ジョジョの奇妙な冒険」においての、正義の輝きのなかにある精神といいますか。

高橋 はい。「黄金の精神」は、僕にとってはとても勇気づけられるものなんです。そのことを忘れないで、芝居をしているところがあります。

取材・文:かわむら あみり 撮影:映美

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