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原田美枝子インタビュー ショーン・ホームズ演出『桜の園』は、どんな相乗効果が生まれるのか今から楽しみ

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原田美枝子 撮影:石阪大輔

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チェーホフの四大戯曲として知られる『桜の園』を、『FORTUNE』、『セールスマンの死』で日本でもその評価を一気に高めたショーン・ホームズが演出。物語は、“桜の園”の領主ラネーフスカヤが5年ぶりにパリに戻って来るところから始まる。一族はすでに借金で首が回らなくなっているが、かつての栄華を引きずったまま。実業家ロパーヒンの助言も聞かず、のらりくらりと現実を見ようとしない。だが桜の園が競売にかけられる日は、確実に目の前に迫っていて――。稽古開始を前に、ラネーフスカヤ役の原田美枝子に話を訊いた。

チェーホフの台詞は発する度に新しい扉が開いていくよう

――チェーホフ作品には過去、『かもめ』(1999年)と『三人姉妹』(2000年)に出演されていますね。

はい、蜷川幸雄さん演出の『かもめ』と『三人姉妹』に出演しました。それまでチェーホフを観たことはあったんですが、あまりピンとこなくて。でも実際に芝居をやってみると、どんどん奥に入っていけるような感覚がありました。それ以前に、蜷川さん演出の『リア王』に次女の役で出させていただきました。シェイクスピアに出てくる女性って、強くて怖い、男をダメにしてしまうような悪役が多い(笑)。私はもうちょっとナイーブな芝居をやりたいと思っていて。そうしたら40歳になったころ、『かもめ』をやる機会をいただき、これがすごく面白かったんです。

――演じたからこそ実感する、チェーホフ作品の面白さとは?

どんどん台詞が深くなっていく感じがするんです。最初は表面しか見えないのですが、稽古を進めるうちにどんどんその世界に入っていける。とても奥行きがあるというか。悪い例で言うと、3回やったら飽きちゃうような脚本もあるんです(笑)。でもチェーホフは、1か月稽古をしても、何度上演しても、どんどん違う扉が開いていく。

俳優の仕事って役の内側にダイビングしていくような、中からその人物に触れていくようなところがあるんですが、チェーホフの台詞はその一つひとつを発する度に、こんな深い意味があったんだとか、こんな深い感情があったんだってことが見えてくるんです。しかもロシア人が書いた、ロシアの話であるにも関わらず、今の私たちがやっても十分にわかるわけですから。それはきっとチェーホフが、国とか言語とか文化とかそういったことの奥にある、“人”というものを深く見て、きちんと書いていたからだと思います。

――今回演じられる“桜の園”の女主人ラネーフスカヤについては、現状どんな女性だと捉えていますか?

憧れますよね、お金の心配をしないで生きていられる貴族なんて(笑)。私たちが生きていくためには働いて、お金を稼がないといけないわけですが、彼女はそうじゃない。「お金がないなら、あるところから持ってくればいいじゃない」と。その発想がすごく楽しいなって。自分はお金なんて少ししか持っていないのに、貧しい人に「くれ」と言われたら全部あげてしまうし、「こんなこと明日から絶対しないわ」と言っているのに、結局はまたあげてしまう。それでも憎めないというか、すごくチャーミングな、魅力的な女性だと思います。

“喜劇”か“悲劇”かどうかは、観た人が決めればいいこと

――チェーホフは『桜の園』を“喜劇”として書いたそうですが、原田さんは本作の喜劇性をどんなところに感じますか?

たぶん“喜劇”とか“悲劇”って、端が決めればいいことだと思うんです。自分ではものすごく真剣に悩んで、「ああでもない、こうでもない」なんて思っていても、端から見れば「なにやってんだか」みたいなことはいっぱいあるわけですから。

――それはつまり、舞台上の登場人物たちと観客の関係にも同じことが言えるのでしょうか。

そう思います。そしてそれが喜劇かどうかは、観てくださった方が決めればいいかなと。ラネーフスカヤだって、視点を変えればめちゃくちゃな人ですからね。娘に「ロシアに帰るお金すらないかもしれない」なんて心配されているのに、全部チップとしてあげちゃうし。でもなんか最終的にはみんな明るいというか。そこがたぶん、チェーホフの人に対する愛情なんでしょうね。ラネーフスカヤに限らず、それぞれのキャラクターが本当に面白い。で、みんな好き勝手なこと、無駄なことをしゃべっているように見えて、実はその人の生き方がちゃんと出ていたり、すごく哲学的な素敵なことを話していたり、やっぱり無駄話だったり。そういうキャラクターの描き方も、チェーホフはとてもうまいなぁと思います。

――では役者として取り組む上では、彼女たちの人生を、ただ一生懸命に生きるということでしょうか?

そうです。自分自身の人生と同じように、ラネーフスカヤの人生も一生懸命に生きる。『三人姉妹』の最後にも、そんな台詞がありますよね。「生きていかなければ」って。これも私がすごく好きな台詞です。

――演出は『FORTUNE』(2020年)、『セールスマンの死』(2022年)を手がけられた、イギリス人のショーン・ホームズさんです。すでに顔合わせされたとのことですが、どんな印象を受けましたか?

ショーンさんってすごくパワフルで、それでいて繊細。そして明るいから、普通にお話出来るのがすごく嬉しかったです。なにか構えたりせず、ものを作る者同士として話し合える感覚がある。ちょっと聞いた演出プランも、すごく面白そうで! オーソドックスなドラマというよりも、ちょっと現代アートのような切り口になるんじゃないかと思います。そしてイギリス人のショーンさんが、日本人の私たちと、ロシアの作品を手がけることで、どんな相乗効果が生まれるのか。今から楽しみでなりません。

取材・文:野上瑠美子 撮影:石阪大輔

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靴/銀座かねまつ(銀座かねまつ6丁目本店 TEL03-3573-0077)
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PARCO劇場開場50周年記念シリーズ
『桜の園』チケット情報
https://t.pia.jp/pia/search_all.do?kw=%E6%A1%9C%E3%81%AE%E5%9C%92

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