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【高柳明音×町田慎吾×中島庸介対談】高柳明音がキ上の空論10周年記念公演にて初主演「面白かったではなく、刺さったと言って欲しい」

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左から)町田慎吾、高柳明音、中島庸介(キ上の空論主宰) 撮影:浅水美保

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中島庸介主宰の演劇ユニット『キ上の空論』が、旗揚げから10年を迎え、10周年記念公演『幾度の群青に溺れ』を、7月5日〜9日まで東京・紀伊國屋ホールにて上演する。10周年記念公演では、元SKE48メンバーで現在は女優として舞台やドラマとマルチに活躍中の高柳明音さんと、演出家としても注目されている町田慎吾さんをW主演に迎え「ありそうでなさそうな日常」を切り取った口語演劇を繰り広げていく。今回は、稽古を直前に控えた主演の2人と主宰の中島さんの3人の初顔合わせに同行させてもらい、3人に10周年記念作品にかける想いを伺った。

――10周年おめでとうございます。今の心境をお聞かせください。

中島 嬉しいですね。20席ほどの小劇場からスタートしたユニットですので、10年経って憧れの紀伊國屋ホールで上演させていただけるというのは本当に光栄です。

――高柳明音さんと町田慎吾さんをW主演に抜擢した理由を教えてください。

中島 今回は、これまでの10年間で、ご縁のある方にお声がけしたいと決めていました。まっちー(町田)さんは、5年前に出演していただいて以来のご縁で、今回で3作目。相談に乗っていただくことも多く、人としてもかっこいい存在、ぜひお声がけしたいと思っていたんです。高柳さんは、元々はマネージャーさんとご縁があったのですが、僕が好きな演出家倉本朋幸さん(オーストラ・マコンドー)の舞台に出演していて、倉本さんから「素敵な人だよ」と伺ったことが重なって、深いご縁を感じたんです。

高柳 初めての主演ということで、お話をいただいた時は、私に務まるのか不安もありました。でも、台本を読ませていただき、これまで演じたことのない役柄への挑戦になるとわかって、私も今はとても楽しみです。

町田 10周年という記念公演に呼んでいただけたことが純粋に嬉しいです。初めて出演させていただいた時から中島さんだけにしか作れない世界観が伝わってきて、僕はそういう人に魅力を感じるんです。またご一緒したいと思っていたので夢が叶って嬉しいです。

――『幾度の群青に溺れ』は、どのような作品なのでしょうか?

中島 これまでのキ上の空論の作品は、自分の半径3メートル以内の話がメインで、いわゆる普通の人たちの恋愛や人生観などのちょっとこじれたストーリーを描いてきました。今回は10周年記念ということで半径数100kmまで話を膨らませ、とある宗教団体を軸にしたSF(すこし・ふしぎ)を描きます。

――難しいテーマですね。

中島 僕自身、ずっと演劇という集団の中にいることもあり、『集団』を描く事に興味がありました。今作は、実在する事件から着想を得た物語ですが、事件をクローズアップするのではなく、あくまで人間模様を描いていきます。実際、本当に難しくて、今回はかなり難産。皆さんにはまだ前半部分の脚本しかお渡ししていないんです。

高柳 それだけ考えて生み出している特別な作品に出演できることは役者としては光栄なこと。これから初めて開く絵本を目に前にしたようなドキドキ感があります。絵本には、さまざまな絵柄や物語があるように、舞台では演出家さんの数だけ楽しみがあると思っているんです。後半が気になって、連載の続きを待っているような気持ちもあります。

町田 僕はここまでの脚本を読んで「あぁ、中島さんの世界だな」と思いました。アーティスト寄りの方だなと感じていて、作品がとても綺麗なんです。中島さんの作品は舞台なのに、まるで映画や映像のような世界観があって、演出面でも驚かされることが多く、初めてご一緒した時から衝撃を受けていました。今回は難しいテーマですが、これからどんな風に色付けされていくのか楽しみでもあり、自分もしっかり頑張らなくてはと気を引き締めています。

――漫画のような設定を口語演劇で「ありそうでなさそうな日常」を描くそうですね。セリフが重要になってくるのでしょうか?

中島 僕は脚本を書く際、文字を綴るというより、登場人物に頭の中に立ってもらってそれを追いかけながら書いていくんです。だから、実際に現場に行ってご本人に会うと全く違う演出になったりすることもあります。今回も台詞に頼るというより、台詞はただの上っ面で「この言葉は本当なのか? 嘘なのか?」と、迷わせながら進んでいく作品なんですよね。

――主演の高柳さんは、唾液を飲むと誰もが眠ってしまうという謎めいた女性を演じるとのこと。役柄に対してどのようにお考えですか?

高柳 私はこれまで人を動かす立場ではなく、影響されていく役柄を演じることが多かったんです。人物像も正論を貫くようなまっすぐなキャラクターばかりでしたが、今回は嘘をついたり、掴みどころがない女性役。初めてなので、どう魅せていくのか、まだ想像もできないですね。ただ、私自身は、周りには絶対に嘘をつきたくない分、自分に嘘をつくことは結構あるんです。お仕事が大好きなので、たまに辛いことに遭遇してしまったら「辛くない!」と。

中島 かっこいいですね!

高柳 しかも、周りに見せている陽陽陽キャの仮面を脱いだあとは、人見知りの陰陰陰キャ。そういう一面を今回のお芝居で出して、いつもと違う私を楽しんでいただけるといいなと思っています。

町田 その気持ちはすごくわかります。僕も周りには嘘をつきたくないので、高柳さんと同じです。

――一方、町田さんは、ストレスで胃痛を抱えるホストクラブの店長役。

町田 これまでの中島さんの作品では、僕はなぜかいつもサイコパスのような役だったのですが、ここまでの脚本を読んで、今回はサイコパスは高柳さんで、僕は普通の人のような印象でした。どんな役でも全力でやらせていただきます。

中島 これはまっちーさんのことを考えながら作った役なんです。まっちーさんは演出家としても素晴らしいですし、役者としてはコメディも完璧に演じられるし、ダンスも素晴らしい華やかな人です。でも、最初に出演をお願いしたときに、役に真剣に向き合ってくれるがあまり酷い口内炎になって、食事も摂れなくなって、どんどん細くなってしまったんです。作品との向き合い方は華やかではないんですよね。

町田 僕自身は、A型の典型だと思うくらいに普通の人間だと思っているんです。それなのに、僕が変わっていると思う人から「変わってるね」と、よく言われるんですよ。だから、最近はそうなんだろうなと受け止めるようになりました。普段はかなりフワッとしてます(笑)。

中島 そんな普段のまっちーさんを感じてほしいですね。今回はホスト役なのですが源氏名は『まっちー』。身内が笑ってくれればいいなって。

高柳 町田さんとは今日が初対面で、台本の役が第一印象であるのですが、確かにすごく想像しやすいですね。本当にフワッとした優しい印象です。私の出演シーンの9割が町田さんとのシーンなので、たくさんお世話になります。

――最後に10周年記念作品かける意気込みをお聞かせください

中島 10周年というと気合が入っているみたいになっちゃいますけど、気合いはいつも十分で、いつ見にきていただいても面白い作品を提供できるようにと思っています。それでもどうしても今回は力が入っているのかもしれません。節目となる10周年の作品ですので、ぜひ間近で見ていただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。

町田 10周年という記念の公演に呼んでいただいたので、期待にお応えできればと思っています。中島さんの作品は観た後にずっと心に残ります。観た方がそれぞれ考えさせられるような作品で、僕も中島さんの作品のファンです。個人的な話ですが、僕自身がこの作品が今年最後の舞台出演になりますので、思いっきり楽しんで、役として地に足つけて、お客様に喜んでいただけるよう全力を尽くします。

高柳 10周年という記念になる作品で座長を任せていただいたその期待に添えるよう精一杯頑張ります。この2年、いろんなことがありましたが、この作品は、今だからこそ刺さる物語。観てくださる方それぞれの思いを重ねて、俯瞰しながらも楽しめる内容だと思います。「面白かったね」というより「あの時に観たあの作品は刺さったね」と思い返していただけるような舞台になるよう頑張ります。

「作品が重たい分、稽古場は笑いを絶やさないようにしたい」と話す中島さんの思いをそのままに、終始、リラックスムードで行われた今回の会談。舞台上でも、高柳さん、町田さんがこれまで見せることのなかったまっさらな素顔を垣間見ることができるのではないかと、今から期待が膨らんでいく。

取材・文・撮影:浅水美保

<公演情報>
キ上の空論 10周年記念公演『幾度の群青に溺れ』

7月5日(水)~9日(日) 東京・紀伊國屋ホール

チケット一般発売中:
https://w.pia.jp/t/kijyooo-10th/

公式サイト:
http://kijyooo2013.com/gunjyooo-10th/

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