重岡大毅・ファーストサマーウイカがホラー初挑戦「小さな違和感の積み重ねが大きな怖さにつながる」
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インタビュー
左より)重岡大毅、ファーストサマーウイカ 撮影:友野雄
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最凶のタブーである「禁断のあそび」により、庭の盛り土は蠢き、死者が蘇る……! 幸せな家族を襲った不幸な事故が原因で、やがて“怨霊モンスター”が這い出し、次々と恐ろしい超常現象を引き起こして、“絶対に許さない”人々を襲っていく。
恐怖の連鎖にたじろぐ体感型ホラーエンターテインメント映画『禁じられた遊び』が、2023年9月8日から全国ロードショーとなる。本作は「リング」「スマホを落としただけなのに」シリーズのホラー映画の巨匠・中田秀夫監督が、橋本環奈と重岡大毅(ジャニーズWEST)を主演に迎え、作家・清水カルマの同名小説を映画化したもの。
今回、ホラー映画に初挑戦となった「伊原直人」役の重岡大毅と、その妻であり後にモンスターと化す「美雪」役のファーストサマーウイカに、話を聞いた。
怖さ以上に「これは面白い作品になる」と思った
──あらためてオファーを受けられた際のお気持ちと、役柄や作品の第一印象から教えてください。
重岡 まずオファーをいただいてうれしかったです。中田監督の作品ということもありますし、ホラー映画には出演したことがなかったので、むしろ挑戦したいとやる気になりました。ただ、いただいた台本を読みながら、僕が伊原直人を演じるとなると「大変やな」と思いましたね。妻の美雪が事故で亡くなって、息子が呪文を唱えていたら、奥さんがモンスターになって出てきて……。ホラー作品で超常現象が起こる中で、気持ちを込めてお芝居をするというのは、なかなかない経験ではありました。
ただ、台本を読んで感じた怖さ以上に、「これは面白い作品になるやろうなぁ」と思ったんです。特に、台本のト書き(動作や行動を指示する部分)で、美雪の描写が書いてあったところがすごくて。どういうふうに中田監督が美雪を撮っていくのか、台本に書かれた文字だけではわからないことでもあって、ワクワクしていましたね。
ウイカ 喜びと同時に「なぜ私に?怨霊役が私で大丈夫かな?」という驚きと不安もありました。でも、台本をいただいた時、私だけでなく全体的にキャスティングが個性的で、しかも意外性のある配役なのが印象的でした。重岡さんは、グループでは明るい元気印のセンターで、俳優としては色々な役を演じられてますが、ホラーの印象は無かったですし、橋本さんはコミカルだったり元気で可愛いヒロインといった役が多い印象だったのですが、今回はバリバリ働く映像ディレクター。みなさん意外な役のように思いましたが、それが新鮮で、どんな化学反応が起こるんだろうってワクワクしました。
重岡 確かに。
ウイカ そして他の出演者さんもクセ強めな方が多くて(笑)ホラー映画なの?という、全部が絶妙な塩梅。面白さと怖さがとても良いバランスで入り混じっている作品ですね。
中田監督が手がける“令和の貞子”が美雪
──映画『禁じられた遊び』は恐怖シーンも多いですが、素晴らしいエンターテインメント作品として昇華されていますね。ホラー作品でありながら、実は家族の話でもあって。
重岡 そうですね。
ウイカ 息子の純粋な願いから美雪は蘇りますが、美雪は愛する家族を奪われないようにと比呂子に襲いかかります。とても人間くさいというか、嫉妬という念が原動力になっているところはすごく共感できましたね。
──映画では、重岡さん演じる直人とウイカさん演じる美雪は夫婦ですが、現場では息を合わせるというよりも、ストーリーにそってどのように役と向き合っていかれたのでしょうか?
重岡 家族の幸せの瞬間は序盤だけで、美雪はすぐお亡くなりになるので……。
ウイカ しかも生前から美雪は比呂子に怒っているので、そもそも直人と美雪はなぜ結婚したのか、とは考えました。でも、馴れ初めは映画には描かれてはいない部分でもあって。恋愛結婚なのかもしれないですが、美雪から執拗に直人に迫っていった可能性もあるんじゃないかなあと思ったり(笑)。
重岡 ははははは(笑)。
ウイカ もしくは、直人の一目惚れみたいな感じかもしれないとか、さまざまな可能性を考えながら演じていましたね。
重岡 確かに、あまり映画では描かれてはない直人と美雪のふたりの時間や、子どもの春翔が生まれてからの家族3人の時間といった部分のウェイトをちゃんと役に自分で持たせないといけない。そういった部分も考えながら、残された側としてどう生きるのかなと向き合いました。
ウイカ 美雪が直人の過去の心情みたいなものを知る瞬間があるんですが、「なんでそうなるんやろう?」と最初に思ったんですよね。夫婦関係は円満だったのか、はたしてお互いが本音を話し合える環境だったのか。
重岡 どこか危うさをはらんでいるふたりというか。
ウイカ 美雪はある種、不思議ちゃんな部分が生前からあったと思うんですが、それに直人が気づいているのかどうかも気になりましたし。美雪に対して、直人はどういうスタンスだったんだろうなと。
重岡 そもそも中田監督が手がける“令和の貞子”みたいなものが美雪ですからね。普段のウイカさんを知っていますが、美雪とは、まったく違いますから(笑)。
ウイカ でも、劇場に足を運べないぐらい「ホラーが苦手」という方にも観ていただきたいので、そういう方には、「あれは特殊メイクをしたファーストサマーウイカ」と、ぜひそう思いながら劇場へ来てほしいです(笑)。
エンタメ的ホラーとしてどこまでやり切れるか
──重岡さんは、以前TBSドラマ『#家族募集します』(2021年)でもシングルファーザー役でしたが、父親役は二回目ですね。中田監督が「重岡さんは息子役の子と長時間にわたるリハーサルを真摯に行ってくださった」とコメントされていますが、今回の父親役はいかがでしたか?
重岡 二回目の父親役ですが、やっぱり難しいですよね。実際には、僕に子どもはいませんし、結婚しているわけでもない。父親の気持ちをわかっていないなかで演じるのは大変ですが、わからないなりに父親の気持ちを探す作業でもあるので。こんな僕だからこそのやり方があると思っていますし、僕なりにできるものはあると信じて演じました。
──息子の春翔役の正垣湊都くんとは、撮影の合間にどのように距離を縮めていかれたのですか。
重岡 正垣くんはかわいくて、撮影の合間にめっちゃしゃべりました(笑)。僕自身、しゃべることが好きなので、短い時間ですが濃い時間を過ごしましたね。
ウイカ 正垣くんは、感情も台詞も眼差しも真っ直ぐこちらに向けてくださるので、そこが春翔の怖いほど真っ直ぐすぎる性格と重なり合って、時々ゾッとする瞬間すらありました。
重岡 本当に、正垣くんは撮影的にも大変だったと思うんですが、プロでしたね。でも一番ハードだったのは、ウイカさん! 間違いないです、プロ根性がすごかった。
ウイカ そんな!恐れ入ります。美雪は「絶対に許さない」という感情がキーになるんですがそこを刺激してもらえたのは、重岡さん環奈さんお二人のおかげで。重岡さんと環奈さんとビジュアルが本当に本当に良くて(笑)どんなに恐れ慄いてドアップになっていても、恐怖と同じくらい美しさがあって。「なんでこんなに可愛いんやこの2人は!綺麗すぎるやろ!」と、追いかけながらずっと心の中で叫んでました(笑)まさに嫉妬ですね、許せないくらい美しすぎるお二人でした。
重岡 ははは。ということは、美雪を演じるうえでのエネルギーは、自然とわいてきたということですね?
ウイカ そうなんです、自分の旦那がこんな可愛い子と…と思うと「そりゃ蘇るわ!死んでられない!」と(笑)
重岡 ウイカさんのこの感じもありますが、監督も、今回「エンタメ的ホラーとしてどこまでやり切れるか」とおっしゃっていて。そういう意味では、橋本さんも、僕も、ウイカさんも、役者一本できているわけじゃないですよね。テレビタレントとしての一面もありますし、もちろん歌って、踊ったりもしますし。今回、そういう方たちが集まってませんか?
ウイカ 確かに、そうですね!
重岡 だからこそ、お芝居の世界の中での異物感があるのではないかなと。どこか役者さんにはできない表現の仕方を、僕たちは絶対持っていると思うので、そこはこの映画に出せたんじゃないかと思っています。
挑戦とやりがいのあるホラー作品での芝居
──撮影の際、印象的だったことはありましたか。おふたりとも中田組は初参加です。
重岡 中田組は初めてでしたし、演出の面では新鮮でした。映像にした時に音や照明の特殊効果をつけるので、どれだけ演技をオーバーにやっても大げさにならないからやってほしい、と言われたのは印象的でした。
ウイカ 舞台出身の自分は、映像作品ではもっとナチュラルに、とか声量を抑えて、と言われる事が多くて。でも今回は役柄もあってむしろどんどん出してと。「オーバーに!」と言われる事ってあんまりないですよね?
重岡 それもそうですし、映画はスクリーンが大きいので、あまり大げさな演技をして大丈夫かと思うこともあったんですが、監督からは「そこはぜひオーバーにやってほしい」と最初から言われていました。怖がるシーンでは、目をもっと大きく見開いてほしい、もっと息づかいを大きくしてほしいと言われたり。ただ目を見開くだけなら誰でもできてしまうので、そこに血を通わせられるように、どの芝居も自分の中でアジャストして演じていました。ホラー作品ではどんなふうに仕上がるのか、演出していただかないと自分ではわからないところもあったので、そこは挑戦でしたし、やりがいがありました。
──そうしてお芝居をされて完成した作品をご覧になってみて、いかがでしたか。
重岡 実際にCGも含めて、「こういうふうに音や映像が付くのか」と、どの場面にも驚きながら観ていました。大きい音がするタイミングや、ホラー映画特有の、後ろに誰かいそうだけど、いない。でもいないと思ったら、いる……というような恐怖感の塩梅が面白かったです。
小さな違和感を積み重ねて大きなホラーになっていく
──ウイカさんは完成した作品をご覧になってみて、いかがでしたか。
ウイカ 現場ではなんとも思っていなかったシーンが、思いのほかめっちゃ怖くて(笑)。
重岡 ああ、あるある! ひとつ覚えているのは、比呂子の家で、後ろに人が立っているように見えたんです。でもそれは、普通にハンガーに洋服がかかっていて、そこにカバンがかけられていただけで。絶対、これは恐怖心をあおるためにわざとやっているなと(笑)。ホラー映画独特のワークがあるというか。
ウイカ そうなんです、細かいところまでこだわりがあって。劇中では美雪の指がポイントになってくるんですが、監督が「手を印象付けるためにネイルを塗りたい」とおっしゃっていて。そこで私は、ホラーだったら赤い爪かな? いや、でも、美雪はキャラクター的にギラッとしたネイルアートをしているイメージじゃない。主婦だしプレーンな感じの爪がいいんじゃないかなと最初は思ったんですが、監督は「黄色のラメでいこう」と。え? 黄色のラメ!? って(笑)。
重岡 ははははは(笑)!
ウイカ 美雪のキャラで、黄色のラメ? まったく思いつかないし、私も美雪と同世代の女子としては感覚的には一番選ばない色(笑)。
重岡 逆に、印象に残るからなのかもしれないですね?
ウイカ そうなんです。たぶん、違和感がポイントで。美雪タイプの性格、服の趣味の人が日常的に使いそうにない、イメージから遠いのが黄色ラメのネイルだと思う(笑)
重岡 へぇ〜、そうなんや(笑)!
ウイカ なので、これを即座にチョイスできる監督の感性が本当にすごいなと。美雪の指が見えるシーンでは、チラッと見えるだけでちょっと「気持ち悪い」と感じるんですよ。そういう小さな違和感みたいなものを積み重ねて、大きなホラーになっていくんだろうなと思ったので、小道具から芝居まで全部、緻密に計算されていることが最後にスクリーンで観て「わあ、こういうことか!」と腑に落ちました。
重岡 ぜひみなさんにも、劇場で体感していただきたいですね。
『禁じられた遊び』9月8日(金) より全国公開
取材・文/かわむら あみり
撮影/友野雄
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