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なぜ『シティーハンター』は“唯一無二”なのか? こだま兼嗣総監督インタビュー

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『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』

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シリーズ待望の最新作『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』の公開がはじまった。本作は最強のスイーパー冴羽獠と、その相棒・槇村香の活躍を描く人気作で、これまでに数々の難事件が描かれてきたが、本作の公式サイトには“The Final Chapter Begins”の文字が表示されている。

いよいよ、本シリーズはクライマックスに突入するのか? これまでとは異なるシリアスなトーンのドラマになってしまうのか? 大丈夫。本作はこれまで以上に劇的な展開を見せながらもファンが愛し続けた『シティーハンター』の世界が描かれる。物語は激しくなっていくのに、シリーズの世界観は決して損なわれない。なぜなのだろう? アニメシリーズで初代監督を務め、本作でも総監督を担当したこだま兼嗣総監督に話を聞いた。

『シティーハンター』は週刊少年ジャンプに連載されていた北条司のコミックが原作。1987年にテレビアニメシリーズが始まり、スペシャルや映画など数々の傑作が生まれ、多くのファンを獲得したが、1999年を最後に新作は途絶えていた。しかし、2019年、シリーズは映画館で突如、復活する。『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』の登場は往年のファン、新たなファンを驚かせた。

「もうこのシリーズをやることはないだろうと思っていましたから、20年ぶりに声がかかった時には本当に驚きました」とこだま総監督は笑みを見せる。

「『新宿プライベート・アイズ』は“シリーズを復活させること”が目的でした。シリーズをずっと応援してくださっている方たちが認めてくれなければ、このシリーズの未来はない。だからテレビシリーズの世界が映画館にそのままワープしてきたような作品にしようと思ったんです」

結果として映画は観客動員100万人を突破する大ヒットを記録。そして今年、新たな映画『天使の涙(エンジェルダスト)』が登場することになった。

「制作が決まった当時はアニメーション制作ではない仕事をしていたのですが、『監督ではなくオブザーバーというかたちでも参加いただけませんか?』と言われて参加したところ、やはりやっていくうちに楽しくて夢中になってしまった、という感じでしたね。

『シティーハンター』にしかない“絶妙なバランス”

最新作のタイトルになっている“エンジェルダスト”は、戦場の兵士を超人化する闇のテクノロジー。かつて獠の身体を蝕み、パートナーだった槇村秀幸を死に追いやった存在だ。新たな依頼人の登場から始まる物語はやがて、獠の過去と因縁を呼び寄せ、宿命の対決の幕が開く。

本作はついに始まるクライマックスへの突入編で、劇中の展開も目が離せない出来事の連続だが “前半は笑えて、後半はシリアスに”ではなく、どんな展開でも笑いとシリアスが混ざり合う“シティーハンター”にしかない語り口が貫かれている。

「テレビシリーズを始める際、最初に北条先生にお会いした時に『原作はハードボイルドからはじまって、だんだんとコメディに変わっていった。自分は本当はコメディをやりたかった。だから最初のシリアスな頃はそれほど人気が出なくて、自分の描きたかったコメディ路線に変更したら人気が出てきた』と伺ったので、本作をアニメーション化するのであればコメディ路線でいこうと最初から決めていました。

私自身が北条先生の『シティーハンター』の大ファンでしたので、自分が感じた魅力はアニメーションになっても変えるわけにはいかない。そのことは強く思っていました」

冴羽獠はスゴ腕のスイーパーで、銃や戦闘の腕は超一流、どんな細かな変化も見落とさず、何があっても依頼人を守り抜く。この上なくカッコいい男だ。しかし、それだけでは冴羽獠ではない。どんな窮地に陥っても、目の前に美人やギャルがいれば飛んでいく。どんな攻撃もよけるが香のハンマーは必ず食らう。この絶妙なバランスが本シリーズを唯一無二な作品にしている。

「そのことはいつも考えています。このシリーズに初めて参加する方はシリアスな展開に走ってしまうんですけど、『シティーハンター』はそこに明るい部分や笑える部分がほしいんです。だから戦いに向かう過程であっても、どこかには笑える部分が入ってきますし、そこがつくる楽しみでもあります。」

時に笑える場面や、コミカルな展開は物語の進行を妨げてしまうことがある。しかし、本作は笑いのすべてがキャラクター表現になっており、荒唐無稽に思えるギャグも実はキャラクター表現だったり、ドラマの伏線だったりする。シリーズを長年に渡って手がけてきたこだま総監督だから出せる“バランス感覚”は本作でも冴えきっている。

「自分では深く考えているわけではなくて、感覚的にやっているんです(笑)。でも、長く続けてくると、自然と『シリアスな時間がこんなにも続いてはいけない』とか『香がこんなにも真剣な顔を続けていてはダメだ』とわかるようになるんですよ。

シリアスな方向だけを突き詰めていくのであれば、香はいらなくて、冴羽獠だけいればいい、ということになってしまう。それでは『シティーハンター』じゃないんです。やはりコメディの部分があって、かと思えばシリアスでカッコいい部分もちゃんとある。

時代によってストーリーに変化はありますけど、『シティーハンター』というものは変わらないんです。さらに作品の根っこには原作があるわけですから、北条先生の世界は絶対に破壊してはならないと思っています」

『シティーハンター』は北条先生の作り上げたもの

こだま総監督が語る通り、本シリーズのユニークなバランスと世界観は、原作者の北条司が生み出したものだ。

「この作品は北条先生のものであり、どの作品も先生の考えを取り入れていくことが基本です。歴代のプロデューサーがアニメーションのスタッフと北条先生との間をちゃんと取り持ってくれて、非常に良好な関係を築くことができてきました。

そして何よりも、私が北条先生の描かれた原作のファンであることが大きいと思います。だから、仮に北条先生が新しいアイデアを出したら、私は何とかして取り入れるでしょうし、対立するなんて絶対にありえないんです(笑)。『シティーハンター』は北条先生の作り上げたものですから」

原作への限りない愛情、コメディ/シリアスな展開/アクションがつねに同居する唯一無二のバランス、そして何よりも魅力的なキャラクターたち。過去に『シティーハンター』を観ていなくとも、本作を観れば瞬時に作品に入り込めるはずだ。

「テレビアニメシリーズをやっている時から、ここにいるキャラクターは放送が終わっても、未来にも残っていくと信じていました。こうして映画になっても冴羽獠の魅力は変わらないし、現代にも受け入れられるものだと思っています。

シリーズがこの先、どうなっていくのか僕もまだわかっていないですけど、結末に向かって戦いはどんどん激しくなっていくでしょうし、獠と香の距離も少しずつ変化していくことになると思います」

『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』
公開中
(C)北条司/コアミックス・「2023 劇場版シティーハンター」製作委員会

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