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【おとなの映画ガイド】ゲーマーがプロのレーサーに! 夢のような、でも実話の映画化──『グランツーリスモ』

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『グランツーリスモ』

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全世界の販売数が累計9000万本を突破したプレイステーションのゲームソフト『グランツーリスモ』が、ハリウッドで映画化され、いよいよ9月15日(金)から日本公開となる。先行して8月25日(金)に封切られた全米では、興行収入が1740万ドル(約25億円)を超え、公開週末の興行ランキングで1位に躍り出た。日本発のゲームソフトの映画化といえば、最近爆発的にヒットした『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』や、『バイオハザード』シリーズが思い浮かぶけれど、本作は、ゲームそのものの世界を描いたそれらとは発想がちがう。これは、ヒューマン・ストーリー、実は、熱血感動スポーツ・ドラマなのだ。

『グランツーリスモ』

『グランツーリスモ』は、リアルなクルマの動きを再現し、カー・ドライブの楽しさを味わうゲーム、いわゆるドライビング・シミュレーターだ。そこがキモ。もちろん、このバーチャルドライブの世界をとことん映画化することもありだと思うが、この作品はそうではない。

このゲームにハマって技術を習得した、いわばバーチャルのプレイヤーが、リアルのレーシングドライバーになり活躍したという、前代未聞の実話を映画にしている。ル・マン24時間耐久レースでの活躍は、カーレースファンのあいだでは、ついにそういう時代がきたか、と話題になったできごとだ。

まさにドリーム・カム・トゥルー。ちょっと信じられないけれど、あるんだね、こういうことが。

ストーリーは、かなりエンタテインメント仕立てになっているが、ほぼ事実に基づいている。

2008年に、日産、プレイステーション、ポリフォニー・デジタル(ソフト開発会社)が手を組み、革新的なドライバー発掘・育成プログラム「GTアカデミー」を設立する。世界中からゲームのすご腕プレイヤーを集めて、プロドライバーに仕立てる、というもの。ここから育ったひとりがヤン・マーデンボロー。この映画の主人公だ。

ヤン(アーチー・マデクウィ)はイギリスの労働者階級の家庭で育った高校生。子供のころからレーサーに憧れていた彼は、たちまち『グランツーリスモ』に夢中になった。ゲームばかりして…と心配する家族をよそに、どんどんのめり込んでいく。ある日「GTアカデミー」の話を聞きつけ、地区予選から参戦。見事に勝ち抜き、アカデミーに選出されるが、そのリアルレーサーへの道は、予想をはるかに超えるものだった。

そのヤンと、プロジェクトの発案者で日産のマーケティング担当ダニー・ムーア(オーランド・ブルーム)、そして、かつて伝説的なレーサーだったチーフ・エンジニアのジャック・ソルター(デヴィッド・ハーパー)、この3人それぞれの思いが絡みながら物語は進行していく。

17インチのモニターでしかレース運転経験のないゲーマーのヤン。何千回とドライブシミュレーターで経験しても、運転席に乗り込んで、時速320kmの、まるでロケットに乗るような体感はリアルでないとわからない。ゲームなら「ゲームオーバー」ですむけれど、「コースアウトをしたら死を意味する」のが現実のレースだ。

また、ゲーマーがリアルドライバーになることへの、業界関係者の反発、反感は相当なもので。競争相手からは「シムレーサー(ごとき)が」という言葉が頻発される。チーフ・エンジニアのジャックですら、最初は「できるわけがない」と思っている。

味方になるはずの家族も、ゲームばかりやってないで…から、そんな危険なことを…にスタンスは変わるが、理解が得られるまでには時間がかかる。

そんな、イノベーターに押し寄せる周りの不理解との戦いも、うまく描かれている。

最大級の危機にも直面し、周囲のバックアップと死に物狂いの努力の末に栄光を勝ち取る。まさに王道のスポーツ映画。米映画サイトCinemablendは「レースカーが出てくる『ロッキー』」と評している。

監督は、エイリアンが地球に住み着いてしまうSF『第9地区』で知られるニール・ブロムカンプ。実は、日産のGT-Rを3台も所有する大のクルマ好き。この作品でもっともこだわったのは、現実世界、つまり、究極のリアルさだ。

走行シーンの撮影は実際のサーキットで、本物のレーシングカーが使われた。スロバキア・リンク、ドバイ・オートドローム、オーストリアのレッドブルリンク、ハンガリーのハンガロリンクではル・マンのレースシーンも撮影されるなど、モータースポーツファンならよく知るコースが多数登場する。車両もさまざま。

極めつけは、実際のヤン・マーデンボロー本人が、スタントドライバー役をつとめていることである。

撮影方法もかなりのこだわりようだ。コックピットの内外から「高速で追いかける車のフロントの低い位置にあるリモートヘッドのカメラを使い、地面の上、数センチの所から外側を撮ることで、競り合う車同士のスピード感が非常によく伝わる映像が撮れた」と監督。フルスピードで走るマシーンを追う空からの撮影は、ドローン・レーシングで使用されるFPVドローンと、カーレースのTV中継などでも使用されるシネマティック・ドローンが使われた。この迫力が圧巻だ。

国際的なカーレースを扱った映画では、ジョン・フランケンハイマー監督の『グラン・プリ』が今でも人気の一本だ。F1モナコグランプリが舞台。日本チームを率いる、三船敏郎が演じた本田宗一郎を思わせる自動車会社社長の存在が印象的だった。本作でもひとり、カッコいい大人の日本人がでてくる。『グランツーリスモ』の開発者、山内一典。平岳大が演じている。

この映画、クルマ好きにはレースシーンの大迫力を満喫してほしいし、ゲーム好きは「すごいでしょ」とちょっと自慢げに楽しんでほしい。その両方に明るくない映画ファン(私含め)は、熱血スポーツものとして感動できます。

文=坂口英明(ぴあ編集部)

【ぴあ水先案内から】

真魚八重子さん(映画評論家)
「……まさに正統派スポ根映画に仕上がっていて、夢や挫折、事故からの再起といった定番がすべて詰まっており、意外にも泣かされてしまうのである。……」

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