今度は都知事選と誘拐事件! “黒幕”が日本を動かす!
WOWOW『連続ドラマW フィクサー Season3』特集
今年4月に放送をスタートすると同時に大きな反響を呼んでいる『連続ドラマW フィクサー』がついにSeason3に突入する。
政治や経済、報道、福祉……私たちをとりまく社会には日々、様々な動きがあり、私たちはニュースでその様子を眺めてはふと思ったりしていないだろうか? 「本当は報道されていない“裏の物語”があるのでは?」 本作が描くのは、そんな社会の裏側で暗躍し、駆け引きを繰り広げる者たちの物語だ。政界や事件の裏で暗躍するフィクサー=設楽拳一を主人公に、先の読めないドラマと人間の“むき出し”の姿が描き出される。
そのクオリティの高さと、観始めると止まらなくなる物語運びは各所で高評価を集めており、Season1が日本民間放送連盟賞・番組部門(テレビドラマ番組)優秀に輝くなど快進撃を続けている。ついに訪れるSeason3は、これまでの物語がさらに加速し、視聴者の予測を凌駕する驚愕の展開が待っている。
『フィクサー』を操る男、西浦正記監督に直撃インタビュー!
唐沢寿明主演の『連続ドラマW フィクサー』のSeason3の放送と配信がスタートした。前2シーズンでも次から次へと予想外のことが起こったが、主人公・設楽拳一は危機や逆境のすべてを自分の計画のコマに変え、権力を手に入れてきた。そして本シーズンでは、誘拐事件と都知事選の行方、東京湾の埋め立て事業に絡む政治家たちの思惑が絡む壮大な人間模様が描かれる。
物語の舵を取った西浦正記監督は、本シリーズの魅力を、先の読めない「不明のワクワク感」だと語る。新シーズンではどんな迷路が待っているのか? その出口に待っているのものは? 監督に話を聞いた。
先が読めない、状況を把握できないからこその“不明のワクワク感”
今年4月からスタートした本シリーズは、じっくりと練られた脚本、重厚な演出、演技力のある俳優陣の活躍が好評を集め、大人の観客も魅了する人気作になったが、過去を振り返れば、政財界で暗躍する黒幕=フィクサーを主人公にしたドラマや映画は少ない。人によっては黒幕という響きから“悪役”をイメージする人もいるかもしれない。
「だから、僕も最初は厳しいと思いましたよ」と西浦監督は笑顔で振り返る。
「フィクサーというのはカタチのあるものではないですよね。社会的な枠組みがあるわけではないですし、多くの人から認知されている存在でもない。つまり、“お仕事ドラマ”になる存在ではない。そんなフィクサーをどうやって描けばいいのか……そこが最初にぶち当たった壁でした」
監督が語るとおり、“フィクサー”には明確な定義があるわけではない。一般的には財力や人脈を駆使して、相手を動かし、政治、行政、経済界の揉め事を調停したり、時に自分の思惑どおりに動かすことで、さらに権力を手にしていく存在だ。政治家や経営者と違って、その存在はニュースに登場することはない。
本作でも主人公の拳一は、政治家、ジャーナリスト、新聞記者など様々な人物に接触し、困りごとを解決すると申し出てはコネクションをつくり、時に相手の弱みを握って、そのすべてを手玉にとっていく。ポイントは、ある段階まで“拳一の計画の全貌”が分からないことだ。そこに本作の面白さがある。
「そうなんです。脚本は本当に面白くて、場面ごとの展開はよくできているんですけど、キャラクターが何を考えているのかは分からない。そこで考え方を変えて、“不明のワクワク感”と言いますか、先が読めなくて、状況が完全に把握できないからこその面白さ、少し怖いんだけどワクワクする感じ。暗闇の中に放り込まれたときに感じる不安と面白さを狙ってみようと思ったんです」
そこで西浦監督は本作ではあえて、登場人物たちを広い画角で描いている。カメラを少しだけ引いて、複数の登場人物を同じフレームの中に収めることで、彼らの距離感や立っている位置、身体の動きまでをしっかりと捉えているのだ。彼らはいま、どういう状態にいるのか? 両者の関係は? 視聴者はまるで迷路を歩くように、暗闇をライトで照らすように、拳一と周囲の人々の世界を丁寧に読み解けるようになっている。
「観ている方が画面から何かを読み取ったり、物語を観ながら何か考えてもらえるような画づくりが大事になると思っていました。その上で“あざとい映像や演出”は削ぎ落としていく作業も行いました。もちろん、刺激的な映像やカットもあるんですけど、“ここから先は観ている方に考えたり、想像してほしい”というラインをしっかりと引いて、ワンシーンずつ丁寧に描いています」
西浦監督の演出の緻密さは細部にまで及んでいる。本作に登場するのは、相手を手玉にとろうと暗躍する拳一をはじめ、政治家や官僚など“本心を話さない”人物ばかりだ。彼らは時に嘘をつき、時にお世辞を言い、時に相手にカマをかけて情報を引き出そうとする。そこで本作では彼らの“口から出る言語”とは別に、彼らを捉えるカメラのアングルや動き、彼らの仕草、そこにある小道具の扱いなど“言葉にならない言語”がふんだんに盛り込まれている。
「本作のキャラクターはセリフでダイレクトに本心を言うわけではないので、その点は狙いすぎにならない程度に意識して描いています。嘘を言っている人間は、どんな行動をするのか? それはエピソードやシーンによって変わってくるのですが、ひとつひとつ意識しながら撮っていきました」
例えば、本シリーズでは様々な場面で食べ物が登場する。政治家たちが料亭で密会する場面で出される豪華な日本料理、ジャーナリストの沢村玲子が拳一と情報交換する際に手渡すテイクアウトのコーヒー、新人記者の渡辺達哉が帰宅した際に食卓に並ぶ母の料理……それらのいくつかは登場人物が実際に口に運び、いくつかは口をつけない。彼らはどのタイミングでフードを口にするのか、あるいはしないのか。このポイントを見るだけでも画面に映っているキャラクターの関係性や本心が見えてくるはずだ。
「ですから、こちらの意図をちゃんと汲んでくださる俳優さんが揃ったのは本当に大きかったです。撮影中もコミュニケーションがしっかりととれて、監督と俳優が同じテンションで、同じ場所を見ているというのは、作品にとって幸せな状況ですから」
唐沢寿明は現場で何をお願いしても必ず「うん、分かった」と言ってくれる
本シリーズの緻密で多層的な演出を最も理解し、体現しているのが、拳一を演じた唐沢寿明だろう。拳一は接する相手によって距離感や言葉選びを巧みに変化させ、穏やかな表情で相手の懐に入り込み、小さな変化やシグナルを絶対に見逃すことはない。一方で、拳一の本心や真の狙いを誰もが掴めずにいる。
「本作が目指す“不明のワクワク感”を唐沢さんにも感じるんです。唐沢さんと話していると、悪い意味ではなく『これは本心で話しているのかな?』と感じることがあるんです。だから彼と話しているときに受ける不思議な感じを、そのまま描くことがこの作品では大事になると思いました。
本当にありがたいことなんですけど、唐沢さんは僕の演出に対して、一度も“ノー”と言わないんです。僕が現場で何をお願いしても必ず『うん、分かった』と言ってくれる。何も言っても必ず『うん、分かった』と言ってくれるので、やっていくうちにだんだん怖くなってきたぐらい(笑)。でも、おそらく唐沢さんも最初の頃はすごく考えながら演じていたと思いますし、悩んでいたと思うんです。
その後、撮影が続く中で少しずつ信頼関係ができていって、何かをお願いしたときに『うん、分かった』と返答してくれるまでの時間がどんどん短くなっていった。さらにはこちらの意図だったり、唐沢さんが考えた部分を共演者に話してくれるようになった。それはすごくありがたかったですね」
唐沢は演じている拳一と同様に、相手に穏やかに近づき、魅了し、共演者の演技に影響を及ぼすことのできる稀有な俳優だ。
「相手を巻き込むことのできる俳優さんなんですよね。とは言え、相手に過剰に近づいたり、人を引きつれたり、座長感を出す方ではないんです。どちらかと言えば、撮影現場の片隅にそっといて、じっと台本を読み込んでいる。でも、カメラがまわって演じると、グッと周囲を惹きつけることができる。本当にすごい人だと思います。
おそらく自分の中にすごく広いフィールドを持っている方なんでしょうね。だから、相手との共通言語を見つけるスピードも速いですし、仮に明確な答えがすぐに見つからなくても、こちらに行けば正解に近い場所には行けるなと思って演技している。そんな感じがします」
Season2で“ある時代”が終わり、Season3から“新たな時代”が始まった
本作ではそんな唐沢の柔軟で、相手を巻き込む能力が最大限に発揮されている。というのも、フィクサーはすべてを自分で行動して解決するのではなく、相手を動かし、相手を説き伏せ、相手を翻弄する人物だ。つまり、本作ではキャラクター単体の動機や意思ではなく、“そこにいるふたり”の間に発生する関係性の変化や思惑の交差が積み重なって物語が動いていくのだ。
「そうなんです。登場人物ひとりの動機だと、“1人 X 何か”で済むんですけど、この作品の場合は“2人 X 何か”が基本で、その計算がどんどん積み重なっていく。だから、ねずみ算式に感情が増えていって、気がつくと初回からは想像もしなかった遠い場所にまで行ってしまった感じがするんです(笑)。
でも、それをやり過ぎてしまうと、ワクワク感は続いて面白いのかもしれないですけど、すべてのエピソードが終わったときに『うーん』という気持ちが残ってしまう。それは避けたかったんです。だから、すべてを観終わったときの楽しさや爽快感を保つために、物語の冒頭で描かれた関係性にどのタイミングで戻すのか、どうやって戻すのか……そこを考えるのが本当に難しかったですね」
本作は複雑な形のパズルを積み上げていくように物語が語られる。積み上がった感情や関係のパーツはグラグラと揺らいでいて観客をハラハラさせるが、その塔は奇跡的なバランスを保っていて崩れることはない。本作はストーリーを楽しむだけでなく、そこに積み上げられていく感情や関係性の変化を丁寧に追っていくことで、さらにスリリングなものになるだろう。そしてSeason3で西浦監督は、ここにさらに新たなパーツを加えたようだ。
「まず、本シーズンでは映像がこれまでよりアクティブになっています。今回の物語上、そういう画が必要だったということもありますが、それ以上にこれまで観てくださっている方を良い意味で裏切りたい、という想いがありました。これまでのトーンではあるんですけど、“あれ? これまでとちょっと違うよね”と思ってもらって新シーズンに引き込みたいという想いがありました」
画づくりだけでなく、物語も前2シーズンとは違った展開が待っている。これまですべてを動かし、少し離れた位置で状況を操ってきたフィクサーの拳一が、本シーズンでは時に変化を迫られたり、本心の一端を見せる瞬間が描かれるのだ。これまでの物語を観てきた人も油断は禁物。誰もが楽しめる間口の広さがありながら、そこにはまだ誰も知らない“不明のワクワク”が待ち受けている。
「僕はどの作品でも間口は広くしたいと思っています。その上で本作には“不明のワクワク感”があり、どこまで行っても先の読めない感覚を意識して描きました。僕は、Season2である時代が終わって、本シーズンから“新たな時代”が始まったと思っています。そんな時代を拳一がどうやって作っていくのか? だからここが終わりではなく、ここから新しくスタートするという想いでいます」
Season3ではどんな物語が、どんな関係性の積み重なりが、そしてどんな結末が待っているのだろうか? 本作は観客が自分で遭遇して、発見して、ワクワクするのが醍醐味の作品のため、多くは語れない。そこで最後に西浦監督のこんな発言を紹介してインタビューを締めくくることにする。この言葉を頭の片隅に置いて、Season3を最終話まで楽しんでほしい。
「シリーズを通して唐沢さんと繰り返し話をしたのが、この作品では“笑う”にポイントがある、ということです。笑いは他の動物にはない、最も人間的な感情です。だから、笑うのか、笑われているのか、実は怒っているのに笑顔なのか、不安を隠すために笑っているのか……キャラクターがどういう風に笑うのかがすごく大事で、そこに集中したいと思いました、だから、全シーズンを通して観ると、キャラクターが笑っているカットがかなりあると思いますし、そこは最後の最後まで忘れずに描いていきました」
WOWOW『連続ドラマW フィクサー Season3』
【放送】毎週日曜午後10:00[第1話無料放送]【WOWOWプライム】【WOWOW4K】
【配信】各月の初回放送終了後、同月放送分を一挙配信 [無料トライアル実施中]【WOWOWオンデマンド】
・Season1:全話配信中(全5話)
・Season2:全話配信中(全5話)
・Season3:10月8日(日) スタート(全5話)
出演:唐沢寿明
町田啓太 小泉孝太郎 要潤 徳重聡 大友花恋 加藤雅也 斉藤由貴
石坂浩二(特別出演) / 白洲迅 大倉孝二 高島礼子 古田新太 内田有紀 小林薫
脚本:井上由美子
企画・プロデュース:青木泰憲
監督:西浦正記、池澤辰也
音楽:得田真裕
プロデューサー:村松亜樹、髙田良平、黒沢淳
制作協力:リオネス
WOWOWオンデマンド 「連続ドラマW フィクサー」特集ページ
WOWOWオンデマンドにてSeason3第1話の無料配信がスタート!
「連続ドラマW フィクサー Season3」感想投稿キャンペーン
番組公式Twitterもチェック!→@fixer_wowow