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『ミッション:インポッシブル』 映画シリーズ完全ガイドVol.1

人気のシリーズの映画の歴代作品をおさらいし、各作品の解説、あらすじ、作品が公開された背景、トリビア、そして最新作の情報をまとめて紹介します。

1分でわかる
『ミッション:インポッシブル』

✅ トム・クルーズ主演のアクション映画シリーズ。テレビドラマ『スパイ大作戦』を基に1996年にシリーズが開始。

✅ 変装の名人で圧倒的な作戦遂行能力をもつエージェント、イーサン・ハントと仲間たちがチームを組み、世界の危機を救うため実現不可能な作戦(ミッションインポッシブル)に挑む。

✅ これまでに全7作品が公開されている。毎作品、トム・クルーズのスタントなしの超絶アクションが話題になっている。

解説動画も合わせてお楽しみください

シリーズ作品の紹介

『ミッション:インポッシブル』

(1996年/米/110分)

監督:ブライアン・デ・パルマ
出演:トム・クルーズ、ジョン・ヴォイト、エマニュエル・ベアール、ジャン・レノ

1996年5月に全米で、同年7月に日本で公開された記念すべき映画シリーズ第1作。アメリカの極秘諜報部隊IMF(Impossible Mission Force)に所属するイーサン・ハントは、世界で活動中の工作員のリストの流出を阻止するべくプラハで作戦に挑むが、謎の襲撃者によって作戦は失敗。生き残ったイーサンは裏切り者として追われる身に。誰が真犯人なのか? イーサンの孤独な戦いが始まる。

『殺しのドレス』『スカーフェイス』のブライアン・デ・パルマが監督を務めた。CIA本部に潜入しワイヤーに吊るされたイーサンがリストを奪取する緊迫するシーン、欧州を走る特急TGVの屋根を舞台に繰り広げられるアクションなど見どころ満載。

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『M:I-2』

(2000年/米/123分)

監督:ジョン・ウー
出演:トム・クルーズ、ダグレイ・スコット、タンディ・ニュートン、アンソニー・ホプキンス

前作の4年後に公開されたシリーズ第2作。感染すると30時間で死に至る強力なウィルス“キメラ”とその治療薬が、イーサンと同じIMFエージェントのアンブローズに奪われた。イーサンは取り返すべくアンブローズの元恋人ナイアに近づき、アンブローズの目論見を阻止しようとするが、襲撃を受け作戦は失敗。さらにナイアはイーサンを助けるためウィルスを自身に投与してしまう。残された時間内にイーサンは治療薬をアンブローズから奪還できるのか?

『フェイス/オフ』のジョン・ウーを監督に迎え、前作以上に激しいアクションシーンが盛り込まれた。さらにイーサンの得意技である”変装”が物語で重要な役割を果たしており、観客の予想外の展開が次々に描かれる。

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『M:i:III』

(2006年/米/126分)

監督:J・J・エイブラムス
出演:トム・クルーズ、フィリップ・シーモア・ホフマン、ミシェル・モナハン、サイモン・ペッグ

愛する女性ジュリアとの出会いを機にスパイを引退し、教官として暮らしていたイーサンのもとに教え子の窮地を知らせる連絡が入る。現場に復帰したイーサンは闇の武器商人オーウェン・デイヴィアンの行動を阻止するべく行動を開始し、彼を捕えるが、輸送中に襲撃を受けオーウェンは逃走。さらにジュリアが拉致されてしまう。イーサンはオーウェンが入手したい“ラビットフット”を手に入れ、ジュリアを取り戻すことができるのか?

公開時、注目を集めていたスパイドラマ『エイリアス』を手がけていた新鋭J・J・エイブラムスを監督に迎え、作戦やアクションだけでなくイーサンの私生活も描いた意欲作。前2作は独立した映画として楽しめるが、本作から最新作までは同キャラクターが登場し、“シリーズ”の性格が強くなる。

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『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』

(2011年/米/132分)

監督:ブラッド・バード
出演:トム・クルーズ、サイモン・ペッグ、ジェレミー・レナー、レア・セドゥ

ロシアのクレムリンで潜入作戦にあたったイーサンたちは爆破事件に巻き込まれ爆破テロの首謀者にされてしまう。さらに米国政府はイーサンの組織を解体する“ゴースト・プロトコル”を発令。政府による助けを一切得られなくなったイーサンたちは独力で事件の首謀者を見つけ出し、事態を解決しようと行動を開始する。

『Mr.インクレディブル』『レミーのおいしいレストラン』のブラッド・バードを監督に迎え、“もし、イーサン・ハントが自分でチームメンバーを選べず、政府からの助けも得られない状況に陥ったら?”というテーマで物語が描かれた。劇中では世界最高峰の高層ビル”ブルジュ・ハリファ”でのスタントシーンや、可動する立体パーキングでの格闘シーンなど息詰まるアクションが次々に登場する。

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『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』

(2015年/米/131分)

監督:クリストファー・マッカリー
出演:トム・クルーズ、ジェレミー・レナー、サイモン・ペッグ、レベッカ・ファーガソン、ショーン・ハリス、アレック・ボールドウィン

CIA長官により、イーサンの組織IMFが解体される中、彼は単独で謎の犯罪組織“シンジケート”の正体を探ろうとする。彼らは死亡・消息不明とされてきた各国の元スパイで構成された”ならずもの国家=ローグ・ネイション”だった。その首領ソロモン・レーンの極秘情報がモロッコの地下組織にあることを知ったイーサンは、彼を助ける謎の美女イルサと共に潜入を試みるが……。

本作から最新作まで脚本と監督を務めることになるクリストファー・マッカリーが正式参戦。イーサンがエアバスのドアに捕まったまま離陸する衝撃の展開で幕を開け、ウィーン国立劇場を舞台に繰り広げられる緊迫のミッション、モロッコでのカーチェイスなど注目シーンが満載。クライマックスにはシリーズ屈指の“ミッション”が描かれる。

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『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』

(2018年/米/147分)

監督:クリストファー・マッカリー
出演:トム・クルーズ、ヘンリー・カヴィル、サイモン・ペッグ、レベッカ・ファーガソン、ミシェル・モナハン、アレック・ボールドウィン

盗まれたプルトニウムの取引現場に向かったイーサンは、仲間の命を優先したため、“シンジケート”の残党にプルトニウムを奪われてしまう。イーサンは、武器仲買人の“ホワイト・ウィドウ”がプルトニウムを購入するという情報を入手し、接触をはかる。

前作で壊滅したはずの組織シンジケートの残党、新たな存在ホワイト・ウィドウ、そしてイーサンを陥れようとする謎の人物と複数の勢力の思惑が入り乱れるシリーズ第6作。これまでのシリーズで描かれることがなかった”イーサン・ハントの内面とモラル”にフォーカスを当てた野心作で、彼の心の葛藤や決意が物語で重要な役割を果たす。上空7620メートルから降下するヘイロージャンプや、トム・クルーズが自ら操縦して撮影されたヘリコプタースタントなど本作も熾烈なアクションが満載だ。

【インタビュー】主人公イーサンの“内面”に迫る。監督が語る『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』

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『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』

(2023年/米/163分)

監督:クリストファー・マッカリー
出演:トム・クルーズ、ヘイリー・アトウェル、サイモン・ペッグ、レベッカ・ファーガソン、ヴァネッサ・カービー、ポム・クレメンティエフ

これまでに進んできた距離や海流から現在の位置を推定して航行する推測航海法=デッドレコニングの試験中のロシア潜水艦に搭載されたAI(人工知能)が自我に目覚め、自ら船を沈没させた。同じ頃、イーサンはアラビア砂漠に潜伏する元諜報員が持つ十字架型の鍵の奪取を命じられる。それは、“エンティティ”と呼ばれるAIを制御可能な鍵のひとつだった。各国がAIを自らの手にしようとする中、イーサンはエンティティの完全破壊を決意し、残された“もうひとつの鍵”を求めて仲間たちと危険なミッションに挑む。

シリーズ初の2部作で描かれる物語の前編。ネットワーク上のあらゆる情報をかく乱し、無線通信さえ捏造してしまうエンティティの前にイーサンたちは最大のピンチを迎えてしまう。ヴェネチアの街を活用したサスペンスフルな追跡劇や、バイクに乗ったまま崖からジャンプルする壮絶スタント、クライマックスの列車破壊などシリーズ最大級のアクションが楽しめる。

水先案内人はこう観た!

そのほかの水先案内文はこちら

【インタビュー】映画『ミッション:インポッシブル』をつくる際の“ルール”とは? 監督が語る

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【ぴあ編集部による“新視点”】
シリーズの背景と時代

1:デジタル時代に対抗する生身のアクション

シリーズがスタートした1996年は『セブン』や『ツイスター』『Shall We ダンス?』が公開された年。3年前には『ジュラシック・パーク』が公開され、3年後には『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』が公開されるが、映画制作におけるCGやデジタル技術の導入はまだ限定的。撮影も当然ながらフィルムで行われていた。

しかし、シリーズが続く中でハリウッド大作に使用されるVFXのクオリティとシーン数は増えていき、それまでは実現不可能だったシーンやアクションが可能に。1999年公開の『マトリックス』でその潮流は決定的なものになり、ハリウッドスターがデジタルの力を借りて、生身のスタントでも実現できない超絶アクションをスクリーンで披露するようになった。

しかし、トム・クルーズはその流れに逆らうかのように『ミッション:インポッシブル』でスタントを使わず、自分で過酷なスタントに挑むようになる。世界最高峰の高層ビル、ブルジュ・ハリファで豪快なアクションを実際に撮影し、エアバスに捕まったまま離陸するスタントで観客を驚かせ、スタントでも挑まない遥か上空からの降下“ヘイロージャンプ”にも挑戦した。

どんな熾烈なアクションシーンも観客が“CGを使って実現している”と思ってしまう時代だからこそ、トムはあえて生身のアクション、自分でスタントに挑むことで公開前から話題を呼び、観客を熱狂させてきた。もちろん、本シリーズは多くの場面でVFXが使われているが、デジタル技術が進歩を続ける時代だからこそ、あえて“生身”にこだわったアクションを映画のハイライトに置くようになったと言えるだろう。

なお、通常のハリウッド大作ではいくら俳優に意欲があっても、本シリーズのような極めて危険なスタントが行われることは少ない。しかし、本シリーズは全作品でトム・クルーズがプロデューサーを務めており(彼の記念すべき最初のプロデュース映画が1996年の『ミッション:インポッシブル』だ)、彼は自分の映画づくりにかける想いやビジョンを極限まで追求できる環境にある。

現在では『ミッション…』の新作が発表になるたびに“トムは次にどんなスタントをするのか?”が話題になり、公開前にはその撮影の裏側が公開されるのが恒例になっている。

2:冷静終結後のアクション映画

第二次世界大戦以降、多くのスパイ映画が“東西冷戦”下で活躍するスパイの姿を描いてきた。しかし、本シリーズがスタートした1996年にはすでに冷戦は終結しており、それまで暗躍していた諜報員の意義や作戦・情報収集で彼らが果たす役割は変化していた。

本シリーズは時に「スパイがチームを組んでミッションにあたるアクション映画」と呼ばれるが、シリーズの開始時から基になったテレビドラマ『スパイ大作戦』の描く定石を覆す展開を描いている。

シリーズ第1作目では冒頭からミッションが失敗してチームが崩壊。主人公のイーサンはほぼひとりで行動することを余儀なくされ、彼を罠に陥れた黒幕が判明すると、その男は「東西冷戦の終結後にスパイはもう生きていけない」と語る。続く、2作目でもイーサンはほぼ単独で行動。3作目ではシリーズの原点に回帰するべくチーム戦が物語の中心に置かれるが、敵は国家組織ではなく、相手がどんな国であっても武器を売りさばく闇の商人だった。

その後も本シリーズでイーサンと仲間たちは”スパイ”というイメージからは遠い超法規的な活動や、国家の後ろ盾のない状況でのミッションを繰り広げる。国際情勢の複雑化に伴い、新作のストーリーも“複数の勢力”が絡み合う内容になっていき、誰か悪いやつひとりを倒せば問題が解決する、というものではなくなった。その結果、イーサン・ハントの倫理観が描かれ、彼は繰り返し、なぜ命をかけても現場のエージェントとして戦うのか? が問われることになる。

『ミッション:インポッシブル』はアクション満載のエンターテイメントシリーズだが、物語を丁寧に観ていくと、作品がつくられた時代の変化、国際情勢や現代における“正義”のあり方がストーリーに反映されていることが分かる。

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【続編】今後の展開は?

現在、7作目のキャスト・スタッフが続投し、シリーズ8作目の制作が進行中。2025年の公開を予定しているが、2023年7月から始まった全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)のストライキによって撮影は中断。多くシーンがすでに撮影されているが、いくつかの重要な場面の撮影が残っているようで、今後の動向を多くのファンが注視している。

なお、製作が発表されているのは8作目までだが、先ごろトム・クルーズは、ハリソン・フォードが81歳で『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』に主演したことに刺激を受け、「僕もあの年齢まで『ミッション:インポッシブル』を作り続けたい」と発言。

新たな設定、メンバーを加えながら当面シリーズが続くことが期待できそうだ。

【ニュース】トム・クルーズ、80歳まで『ミッション:インポッシブル』に意欲

(C)2022 PARAMOUNT PICTURES.

◎文:中谷祐介(ぴあ編集部)
ぴあ編集部所属。映画、レジャーなどの取材、記事執筆、インタビューを行っている。これまでにマーティン・スコセッシ、クリストファー・マッカリーら映画監督や、ハリソン・フォード、マーゴット・ロビーらハリウッド俳優にも取材。イベント、配信番組への出演も多い。Voicyにて音声番組「ぴあ映画のトリセツ」を担当中。好きな食べ物はちくわ。

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