日本発のオリジナルイマーシブシアター『Anima』開幕レポート到着
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イマーシブシアター『Anima』 (撮影:Momoko Maruyama)
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すべて見る観客が演者と同じ空間に同居し、物語の一部として作品に参加する「イマーシブシアター(没入型演劇)」。日本発のオリジナルイマーシブシアター『Anima』が東京のアートホテル・BnA_WALLで上演されている。
本作は、東宝株式会社演劇部による制作協力のもと、イマーシブシアター制作チームdaisydozeが2022年に上演した『Dancing in the Nightmare -ユメとウツツのハザマ-』をブラッシュアップして制作した新作公演。2023年12月9日、10日、16日、17日の4日限定で上演中だ。
8日に行われたゲネプロ(総通し舞台稽古)を観た。その様子を過度なネタバレにならない程度にレポートしたい。
会場となるアートホテル・BnA_WALLは、新日本橋駅や人形町駅から徒歩圏内にあるが、大通り沿いではなく、やや奥まった通りのビルにある。受付を済ませると、手荷物を預け、部屋の番号が書かれたルームキーをもらう。そして、靴を履き替え、青白い光に怪しげに照らされたラウンジへ。ここでは、作品に登場する人物のプロフィールが閲覧できるほか、カンパリベースのお酒を飲むことができる(別料金)。“ホテルの学芸員”によればより夢の世界に入り込めるそうなので、お酒が苦手でなければ、観劇前に一杯飲むことをおすすめしたい。
他の観客の来場を待ちながら、ラウンジでくつろいでいると、本作のキャストが数人ラウンジに顔を出し、ルームキーの番号に基づいて作品世界へと案内される。イマーシブシアターには観客が自由に回遊できる形式と、キャストが誘導する形式とがあるが、本作は後者。言葉を介して誘導されるパターンもあれば、時に手招きされたり、時に肩を叩かれたり。誘導の方法自体はさまざまだが、キャストが作品世界に誘ってくれるので、初心者でも心配しないで欲しい。
この物語の主人公は、心理学者であり夢分析を専門とするユング。ユングは「宿泊者の夢が現れて浮かぶホテル」に助手と共に滞在していた。夢に出てくる人物たちには、夢見る本人のまだ気づいていない感情が投影されているという。つまり、夢を読み解くことで「魂の声」(=アニマの声)に気づくことができるわけだ。
ホテルのマネージャー、リネンの女らは、ホテルの宿泊者たちの様子を記録し、宿泊者が深い眠りにつけるよう、子守唄であるララバイや安眠酒を提供する。ユングは、自分自身も夢を見るようになり、「夜の海神(闇)」「誘惑」らに出会う。不思議なことに、ユングにはその自己が日本橋に伝わる「浦島」に姿を変えて見えて――というストーリー。
実際に体験してみて、まず何よりも感じたのは「場所」へのこだわりだ。BnA_WALLは、空間そのものを一からアーティストと創作しているという変わったホテルで、設計開始から完成まで2年を要したという。アートルーム(宿泊する各部屋)の雰囲気は一つ一つ全く異なるのだが、本作ではそのアートルームにあった内容の場面が展開され、会場の持ち味を存分に生かそうとする意図が見えたし、逆に言えばここでしかできない作品だと感じた。また「本作は実在した研究者であるカール・グスタフ・ユングの研究を元に、この日本橋の土地に残る浦島伝説を掛け合わせました」と作・演出の竹島唯が語っているように、内容に関しても場所へのこだわりが感じられた。
そして、キャストとの物理的な距離が非常に近く、その息遣いや表情、頭の先から足の先まで、間近で観賞することができるのもイマーシブシアターの面白いところ。13人のキャストのほとんどはダンサーで、ノンバーバルながら身体や表情で物語を紡ぐ。あまりの美しさに息を呑んだり、その思いを想像してきゅっと胸が締め付けられたり……。
進行は15秒ごと(!)に刻まれている上に、(誘導はあるものの)想像しているよりも複雑な経路を移動するので、そのちょっとした“混乱”もまるで旅をしているようで楽しい。1回の観劇で全員のキャラクターの物語をすべて把握することはできないけれど、それらを想像する余白があるのもいい。
また、個人的には、アートディレクターの近藤香による衣装が細やかで見応えがあった。「実在した人物、日本の昔話、感情など役柄のバリエーションが豊富なので、ひと目で記憶に残るシンボリックなデザインでありながらも、飛びすぎないバランス感覚も大切にしました」(近藤)という衣装は必見だろう。
上演時間は約90分。イマーシブシアターに初めて参加する人も、過去に参加したことのある人も十二分に楽しめるはずなので、ぜひお見逃しなく。そして再演や新作にも期待していよう。
取材・文:五月女菜穂 撮影:Momoko Maruyama
■作・演出:竹島唯(daisydoze) コメント
イマーシブシアター『Anima』開幕しました!
ずっと作りたかった、現実と夢が交差する世界。
ホテルの中を歩いていると、この土地に眠る人の記憶と気配が、ふわっと現れ、ふわっと消えていきます。
言葉にできない感情が、ダンスや歌、セリフを通して、多角的に訴えかけてきます。
本番を迎え、作品自体が作り手の手を離れ、独自に成長し、変化しているように感じ、毎公演驚くことばかりです。
ぜひ、これからご観劇いただく皆様には、この夢の世界に没入いただければ嬉しいです。
なお、開場時間からお越しいただくと、きっと楽しいと思うので、おすすめです!
■アートディレクション・演出:近藤香(daisydoze) コメント
約一年間の準備期間を経て、ついに『Anima』の幕が開けました。
気づけば、ダンス、歌、芝居の要素に留まらず、ウォールアートや特製ドリンクなど、『Anima』を中心に様々な要素が複雑に絡み合い、それらが影響しあいながら形づくる、立体的な作品になったと感じています。
シミュレーションを重ね、稽古を積んでいた場所に実際に人が入ったとき、ついに作品に命が宿った様に感じたことは言うまでもありません!
これからは、どんな夢を彷徨う旅になっていくのかは、お客様次第。是非貴方だけの『Anima』を見つけ、お愉しみください。
<公演情報>
イマーシブシアター『Anima』
作・演出:竹島唯(daisydoze)
アートディレクション・演出:近藤香(daisydoze)
【出演】
iona いのまいこ Kurumi Shiina 新藤静香 Jenes
Hagri Mitsuki YOH UENO Rion Watley RYOSUKE.
藤岡義樹 中村翼 大塚瑞季
2023年12月9日(土)・10日(日)・16日(土)・17日(日)
会場:東京・BnA_WALL
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/anima/
公式サイト:
https://www.daisydoze-immersive.com/anima
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