男性4人のダンサーが集うエンターテイメント・フラメンコ『LUZ Y SOMBRA(ルスイ・ソンブラ)』。中原潤インタビュー
ステージ
インタビュー

中原潤
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すべて見る日本フラメンコ界を担うフラメンコダンサー中原潤が、JITAN.、土方憲人、出水広輝(Farolito)といった同世代の男性ダンサー4人に声をかけ、LOS 4 FLA MEN COS(ロス・クアトロ・フラメンコス)として公演を行うことが決定した。出生も、踊りのバックボーンも違う強者ダンサー4人が揃ったとき、ステージではどんな相乗効果が生まれるのか? プロデュースを務める中原潤にオリジナルストーリーで紡がれる『LUZ Y SOMBRA(ルスイ・ソンブラ)』公演の詳細を聞いた。
ーーどんな想いを持って今回のプロデュース公演を企画されたのですか?
フラメンコをたくさんの人に知って頂きたいという気持ちからです。今、フラメンコを観に来てくれるお客さまはこれまで支えてくださっているリピーターの方がメインです。なかなか新しい方が興味を持って観に来てくれることが少ないと感じています。そこで今回は男性4人のダンサーを揃えて、今までにない公演をすることで、フラメンコを見たことがない人にも興味を持って貰えたらと思いました。
ーー男性4人が揃う公演はかなり珍しいのでは?
珍しいかもしれません、元々、男性のフラメンコダンサーは少ないのですが、故に面白いものになるのではないかと思います。なので、グループ名“LOS 4 FLA MEN COS”のなかに“4”と“MEN”を入れて、直感的に4人の男たちがいるとわかるようにしています。
ーー一流のメンバーが同じ目標を持って集うのは貴重な機会です。どんな声をかけていかれたんですか?
新しくフラメンコをはじめる人が減っている現状と、フラメンコに興味を持ってくれる若い世代に刺さる機会が減っているんじゃないか? という将来への危惧感を伝え、自分たちの世代でフラメンコを広めていこう、という話をひとりひとりに会って話しました。みんなからは「是非、広めていこう」と熱い返事を貰いました。
ーーなぜこの4人だったのでしょうか?
全員が第一線で活躍しているメンバーです。それぞれ個性が違うところが面白いと思っています。まず、JITAN.くんは僕とは全然、踊りの種類が違います。フラメンコってそもそもはジプシーの人たちがやっていた踊りで、それがいつしか芸術として評価されて、アカデミーとかで習うようになったという歴史があります。
ーースペインではフラメンコを学ぶ学校があるんですね。
そうですね。僕がスペイン留学をした場所は時間割がしっかり組まれている学校でした。一緒に学んでいたのは、のちにスペイン国立舞踊団に行くような人たちだったので、レベルが高い授業を受けることができました。そこでは踊りはもちろん、どうやって劇場公演を作っていくかなどの作品作りを肌で感じることができたので貴重な体験をさせて貰ったと思っています。
ーーみなさんが留学経験があり、しかもそれぞれルーツが違うという部分も面白いです。
そうですね。僕はフラメンコだけじゃなく、スペインの伝統的な踊りや、バレエ、コンテンポラリーダンスなどを学んできたので、それを武器にした自分の表現を見せたいと思っています。
ーーJITAN.さんはまた違うルーツが?
JITAN.くんはどちらかというとオリジナルの形に近い、昔ながらのスタイルです。スペインでも有名な家系の師匠の家に直接習いに行っているので、リズムの強いダンスが特徴です。
ーー土方憲人さんは?
土方さんは、コンテンポラリーダンスを習っていた経験があるので、フラメンコとミックスした創作ダンスのような形を作るのに長けていて、身体の動きもしなやかですね。
ーー出水宏輝(Farolito)さんは?
Farolitoくんはリズム感が凄い。あと、彼は大阪出身ということもあるせいか、リズムの捉え方が僕と違うんですよね。スペインでも地域によって踊りが違うように、日本国内でも身体に流れるリズム感があって、その違いを感じます。
ーー全く個性が異なる4人が揃って踊るだけに、どんな内容のステージになるのか気になります。今回の公演は『LUZ Y SOMBRA(ルスイ・ソンブラ)』と題されていますがストーリーのようなものがあるのでしょうか?
ひとりの人間がプロのフラメンコダンサーになっていくまでを描くオリジナルストーリーです。僕とJITAN.くんで作りました。ダンサーを目指す男が、自分に1番似合うダンスのスタイルはどんな形だろうとか、自分が表現したいものはなんだろうか? を葛藤しながら自分のスタイルを模索していく物語になっています。その心の動きを『LUZ Y SOMBRA(ルスイ・ソンブラ)』=光と影というテーマで表現したいと思います。
ーーJITAN.さんとはどういう形で作られていったんですか?
いろいろですね。例えばミュージシャンから送っていただいた曲を聴いたことで、自分が経験した感情に思い出して反映させたり。嬉しかったこと、悲しかったことなど自分たちの体験や経験を組み合わせて作っていきました。
ーー使用される楽曲も楽しみです。
かなりオリジナルの曲が披露されると思います。フラメンコは既存曲でもメロディや歌詞など自分で作って組み替えるのは自由なんです。なにしろ譜面がありませんからね。
ーー譜面がないんですか?
ミュージシャンも譜面を見ずに演奏するので全く同じ公演をやっても必ず即興の要素が入ります。今回、一緒にやるギタリストに関しては今はまだ言えないのですが、家族よりも長い時間を共にしているので、僕がこういうメロディが欲しいというのもわかってくれますし、阿吽の呼吸が作れています。
ーーお互いのことを知り尽くしていないとできないパフォーマンスですね。
今、歌がこんな感じで来ているから、裏打ちを一発入れようというのを反射神経でやります。そこに関してはすでにチームワークが出来上がっています。
ーー積み重ねた鍛錬のうえに、即興によって繰り出される技が見れるわけですね。
歌も情熱的な歌声のなかに甘い声があったりする方なので、その表現の幅の広さも聴きどころだと思います。パーカッションの方はフラメンコ畑の方ではないのですが、違うジャンルの方だからこそビックリするようなリズムが出てきて、こちらも刺激を受けて相乗効果が生まれています。なので、今回の公演はなかなか集まることがないメンバーが揃いますので貴重だと思います。
ーー会場は銀座の王子ホールです。
『LUZ Y SOMBRA(ルスイ・ソンブラ)』は光と影がテーマですので、今回は劇場の照明をシンプルなものにして、白と黒のモノトーンで表現しようと思っています。シンプルにすることで、踊りのモーションを楽しんでもらい、観終わったあとはモノクロ映画を観たような気分になっていただけたらなと。
ーーカッコいいステージが目に浮かびます。初めてフラメンコを観に来る方へ声をかけるなら?
スペインに行って技を磨いて帰ってきた若い世代が、どんな表現をするのか是非、見届けに来てください。
ーー公演を楽しみにしています。本日はありがとうございました。
(取材・文/高畠正人)
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2347523
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