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下級武士が偽りの扮装をした理由は? 名作が再演

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新春を華やかに彩る「壽 初春大歌舞伎」が、東京・歌舞伎座で上演中だ。昼の部(11時開演)は、おめでたい舞踊二題の『當辰歳歌舞伎賑(あたるたつどしかぶきのにぎわい)』で開幕。続いて講談を歌舞伎にした『赤穂義士外伝の内 荒川十太夫』と、松本幸四郎と尾上右近のコンビで盛り上げる喜劇『江戸みやげ 狐狸狐狸ばなし』。夜の部(16時開演)は、祝祭舞踊『鶴亀』と、歌舞伎の様式美を堪能できる『寿曽我対面』。さらに英国の戯曲を江戸の市井に移し替えた名作『息子』、歌舞伎舞踊屈指の大曲に中村壱太郎と尾上右近がWキャストで挑む『京鹿子娘道成寺』と、今月も見逃せない演目が揃った。

今回は、昼の部から『荒川十太夫』をピックアップ。『忠臣蔵』の“その後”を描いた演目で、2022年に人間国宝の講談師・神田松鯉の口演による「赤穂義士外伝」を新作歌舞伎として初演。複数の演劇賞を受賞するなど大きな話題を呼んだ。再演となる今回も初演と同じ尾上松緑の主演で、義に生きる武士の姿を鮮やかに浮き彫りにする。
幕が開くと、赤穂義士の七回忌でにぎわう泉岳寺の門前。そこへ、立派な身なりをした荒川十太夫(松緑)がやってくる。偶然居合わせた同じ伊予松山藩松平家の目付役・杉田五左衛門(中村吉之丞)は、下級武士である十太夫が、それより上の身なりをしていることを見とがめる。その夜、十太夫は松平隠岐守(坂東亀蔵)から取り調べを受けることになり……。

松緑演じる十太夫は、いかにも「黙して語らず」といった骨太な武士の佇まい。隠岐守も彼が文武両道と知っており、奇妙な行動の理由を聞き出そうとするくだりから、物語は急展開を見せる。重い口を開き、討入りを果たした赤穂義士・堀部安兵衛(市川中車)の介錯をつとめた“あの日”のことを語りだす十太夫。上質なサスペンスのように客席をグイグイと引き込んでいく筋立ては、いかにも講談が原作ならではの面白さだ。意外な幕切れまで丁寧に物語を紡いでゆく松緑をはじめ、少ないセリフで言葉にできない想いを表す中車、大石主税役の尾上左近の表情も胸に迫る。緊張感が続く中、泉岳寺和尚長恩役の市川猿弥が温かい印象を残す。

本作と昨年12月の『俵星玄蕃』は、松緑自ら神田松鯉の協力を仰ぎ、講談を新作歌舞伎として上演したもの。講談と歌舞伎という二大エンタメが融合したからこそ立ち昇らせることができた香気と、しみじみとした味わい。ぜひ第3弾にも期待したい。

取材・文/藤野さくら 写真提供:松竹株式会社

<公演情報>
壽 初春大歌舞伎

公演期間:2024年1月2日(火)~27日(土)
劇場:歌舞伎座
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2347960

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