「飛躍力を鍛えて」宮沢りえが挑む、KERAの新作『骨と軽蔑』
ステージ
インタビュー
宮沢りえ (撮影:石阪大輔)
ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)の過去戯曲を様々な演出家たちが新たに創り上げるシリーズ「KERA CROSS」。そのラストをKERA自身が新作を書き下ろして手掛ける。登場するのは女性7人のみ。そのひとりとなる宮沢りえにKERAとの創作について聞いた。
KERAさんの作品には両極端なものを感じます
──これまでKERAさんとは、『三人姉妹』(15年)、『ワーニャ伯父さん』(17年)、『桜の園』(20年/稽古のみで全公演中止)のチェーホフシリーズでご一緒されてきました。KERAさんの作品にはどんな印象をお持ちですか。
演じても観ていても、両極端なものを感じます。痛いけれど笑っちゃう、笑っちゃうけど悲しいというようなところがあるなと。それを演じるのは大変ではありますけど。ある生々しさみたいなものも要求されますから。
──気づきや刺激なども多い現場でしたか。
広いイメージを私たちにくれることもあれば、具体的におっしゃることもありました。『三人姉妹』では、「空気をどんどん壊すような女でいてほしい」とおっしゃったり、「宮沢りえが出したことのない音で高笑いしてください」と言われたり。そうやって毎日くれる課題に応えていくことにワクワクしましたし、自分が出したアイデアを採用されるのも嬉しかったです。
──今度の『骨と軽蔑』では、初めてKERAさんの新作に出演されることになります。現時点ではキャストだけが決まっていて、「手練れの女優7人と一緒に辛辣なコメディを作ってみたい。会話劇だ」とのコメントを寄せておられます。手練れのおひとりとして、今、どんな心持ちでいらっしゃいますか。
私は全然ダメですけど(苦笑)、本当にいい役者さんが揃っているので、その個性の中で自分がいかに届くような芝居ができるかというのは、大きな課題だなと思っています。
──宮沢さんご自身がいいな、素敵だなと思われるのはどんな役者さんですか。
今回ご一緒する役者さんは皆さん、自分が担っているものを理解して、惜しまずやっていらっしゃるイメージが強くあります。その意味で破壊力しかない(笑)。それから私は、チェーホフシリーズですごく勉強になったことがあって。チェーホフの戯曲には喋らなくてもその空間にいる人物がいて、その話を聞いているだけの人を見ると物語がわかってくるんですね。その人がいい居方をしていると喋っている人も生きてくる。そんな“主”もできるし“脇”もできるという私の憧れるスタイルを持っていらっしゃるところも、今回の皆さんの強さだろうなと思っています。
2024年は舞台の年になりそう
──KERAさんの作品も、誰もが主で誰もが脇という印象があります。今回もそうなりそうな気がしますが、『骨と軽蔑』というタイトルからどんな想像をされていますか。
私はこのタイトルを見たときに、「好き!」って思ったんです。骨というのは命が果てた後に剥き出てくるものなので、それがどんなふうに出てくるのか。きっと楽しい会話劇ではないだろうなと思いますけど(笑)。強さと弱さとか、美しさと醜さとか、怖さと面白さとか、さっきお話したような両極に振れる世界観なのかなとは思っています。
──これが2024年の最初の舞台になります。ご自身に期待するのはどんなことでしょう。
24年は舞台の年になりそうなんです。どれもすごく飛躍をしなければ成立しないような作品や役ばかりなので、常に今までの自分ではダメだと思っていますけど、それをより強く感じる1年になるのではないかなと。だから、できるだけ高いところに飛べる力を鍛えながら、誠実に一つひとつ乗り越えていけたらなと思っています。
取材・文:大内弓子
撮影:石阪大輔
<公演情報>
KERA CROSS第五弾『骨と軽蔑』
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:宮沢りえ、鈴木杏、犬山イヌコ、堀内敬子、水川あさみ、峯村リエ、小池栄子
【東京公演】
2024年2月23日(金・祝) 〜3月23日(土)
会場:日比谷・シアタークリエ
ほか、福岡・大阪公演あり