『マティス 自由なフォルム』展示風景をレポート 「切り紙絵」を中心にマティス芸術の軌跡をたどる
アート
ニュース
ヴァンスのロザリオ礼拝堂(内部空間の再現)
続きを読むフォトギャラリー(14件)
すべて見る20世紀美術を代表する画家のひとり、アンリ・マティス。彼が晩年、精力的に取り組んだ「切り紙絵」に焦点を当てた展覧会『マティス 自由なフォルム』が5月27日(月) まで、国立新美術館にて開催中だ。
アンリ・マティスは1869年生まれ。20世紀初頭に鮮やかな色彩を大胆に用いたフォーヴィスムの中心人物として頭角を現し、1954年に生涯を閉じるまで60年以上にわたり美術の世界を牽引し続けた。同展は、彼が後半生を過ごした南仏、ニースにあるニース市マティス美術館のコレクションを中心に、絵画や彫刻、素描などから切り紙絵にいたるまで、約160点が紹介されている。
展覧会は、マティスの作品をテーマごとに並べつつ、ゆるやかな時系列を持つよう5つのセクションで構成されている。マティスが明るい色彩に関心をもつようになるまでの道のりをたどるセクション1「色彩の道」、ニースのアトリエで描かれた作品やアトリエを主題に描かれた作品を中心に展示するセクション2「アトリエ」、衣装デザインや装飾壁画、テキスタイルの領域まで創作の範囲を広げたセクション3「舞台装置から大型装飾へ」と順路に沿って歩みを進めていくと、色彩がどんどん豊かになり、造形は自由になり、そして次第に作品のサイズが大きくなっていくことが見て取れる。
マティスは1930年、アメリカの実業家、アルバート・C・バーンズに壁画《ダンス》の制作を依頼された。同展では、この《ダンス》のための習作や、制作中の写真などが展示されている。《ダンス》の制作過程で、構図調整のためにマティスは「切り紙絵」の技法を使うようになったという。
セクション4「自由なフォルム」では、いよいよ同展でフォーカスしている「切り紙絵」の作品を紹介する。晩年、体調が悪化し、思うようにキャンバスに向かえなくなったマティスは、アシスタントに色を塗ってもらった紙をハサミで切り抜き、それらを組み合わせる手法を考案。絵筆とキャンバスのかわりに、色紙とハサミを使うことで、マティスが長年にわたって追い求めてきた「色」と「かたち」の表現はより自由になり、「切り紙絵」によってマティス芸術は新しい境地へと達することとなる。
日本初公開となる《花と果実》は、高さ4.1メートル、幅8.7メートルという大作。アメリカ人コレクターのための壁画の習作として制作された本作はこの展覧会のために修復され、初来日を果たしている。
そして、同展のクライマックスとなるセクション5「ヴァンスのロザリオ礼拝堂」へ。ニースから約20kmの場所にある小さな村、ヴァンスでマティスは1948年から4年の間、ヴァンスのロザリオ礼拝堂の建設に携わった。室内装飾はもちろん、典礼用の調度品や、祭服などデザインのほとんどに携わり、全体をひとつの作品として作り上げたのだ。
ヴァンスのロザリオ礼拝堂の壁面を彩るステンドグラスの青色、黄色、緑色は生命の木がモティーフ。透過する色鮮やかな光が、白い陶板の上に描かれた《聖ドミニクス》など3つの図像上に降り注ぐように設計されている。同展の展示室内にほぼ原寸大で再現された空間では、太陽の動きをスピーディーに再現。朝から夕方までの光の動きを体験できる。
何度見てもあたらしい発見と感動を与えてくれるマティスの絵画。ヴァンスのロザリオ礼拝堂の空間再現では美しい光の流れと、空間の心地よさを会場でぜひ体感してほしい。
取材・文:浦島茂世
<開催情報>
『マティス 自由なフォルム』
会期:2月14日(水)~5月27日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室2E
時間:10:00~18:00(金・土は~20:00)※入館は閉館の30分前まで
公式サイト:
https://matisse2024.jp
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2347426
フォトギャラリー(14件)
すべて見る