日本の唱歌の謎に迫った“たきとも”が、8年ぶり4度目の上演 『瀧廉太郎の友人、と知人とその他の諸々』
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インタビュー

音楽劇『瀧廉太郎の友人、と知人とその他の諸々』稽古場より
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すべて見る日本の唱歌には“作者不詳”の曲が多く存在するが、その誕生の謎を“if”で紐解いていく音楽劇『瀧廉太郎の友人、と知人とその他の諸々』が8年ぶり、4度目の上演を迎える。そこで岡野貞一役の大久保祥太郎、幸田幸役の音くり寿、瀧廉太郎役の新正俊、野口役の小出恵介の4人に、稽古序盤の感触とともに、作品に寄せる想いを語り合ってもらった。
――それぞれの役どころについて、現段階ではどのように捉えていますか?
大久保 僕が演じる岡野(貞一)は、実在した作曲家であり、とにかく真っすぐな人ですよね。そして瀧のことが大好きで、そこまでドイツ語が出来るわけでもないのに、瀧に会いたいがために通訳を買って出てドイツまでやって来るという。
小出 通訳のくだりとか、わりとめちゃくちゃですよね(笑)。
大久保 ええ、その語学力でよくここまで来られたなって(笑)。逆に人がいいからこそ、ここまで来られたとも言えるのかもしれません。
音 (幸田)幸さんも実在した人物で、瀧さんと同じく素晴らしい経歴を誇る音楽家であり、国の期待を背負ってドイツに来ている女性です。最初の印象としては当時の日本の女性らしい、おしとやかで品のある人なのかと思っていたんですが、読み合わせをする中で意外な発見があって。いろいろ考えながら表現したいと思います。
新 瀧って初見の印象では、孤独な天才なのかと思っていたんです。でも実は岡野や幸など周りのこともいろいろと考えていますし、ただそれを表に出せない人で。それはやっぱり周囲の期待がプレッシャーとなり、繊細な部分が強調されてしまっているせいなのかなと思いました。
小出 野口は文部省の役人で、立ち位置としては体制側、芸術家たちとは対比となる存在だと思っていたんです。でも実際台本を読み進めてみると、かなりキャラクターがありますし、踊らされているというか、転がされているというか。今のところ愛嬌しかないですね(笑)。

――瀧廉太郎と言えば誰もが知る作曲家ですが、岡野、幸、野口にとってはどういった存在なのだと思いますか?
大久保 音楽で繋がっている親友であり、好き、憧れ、嫉妬など、岡野から瀧へいろいろな矢印が向かっているんでしょうね。だからただ好きとか、憧れってだけの芝居にはしたくないと思っています。
音 幼馴染のような、わりと近い距離にいる存在ですよね。さらに音楽の才能的にはライバル同士であり、憧れであり、それ以上にやっぱり好きっていう気持ちもあって。言葉にすると岡野に似ているというか、色は違うけれども、同じような矢印が瀧に向いているのかなと思います。
小出 野口から見れば全部を持っている人ですよね。才能はもちろん、孤高でありながら人としても好かれている。新くんはそういう人間を演じなきゃいけないわけで、それって結構きついんじゃないかなと。
新 相当なプレッシャーですね。瀧と僕が似ているところって、年齢だけですから(笑)。今はとにかく必死に台本を読み込んでいるところです。
――稽古はまだ始まったばかりとのことですが、ここまでの感触はいかがでしょうか?
大久保 最初に読み合わせをしたんですが、それがみんなで円になって、順番に1行ずつ読んでいくというスタイルだったんです。
小出 あれ、僕は初めて。
新 僕もです。
音 私も。
大久保 すごく新鮮でしたよね。演出の藤倉(梓)さんとしては、みんなに自分の役だけじゃなく、全体を把握して欲しいってことだと思うんですけど。
音 ほかの方が幸さんの台詞を読むことで、あ、そうやって受け取られているんだ、みたいなことが発見出来て。すごく面白かったです。
新 僕もです。瀧ってこう見えているんだと。いろいろ気づくことがあったので、また新鮮な気持ちで自分の役に向き合えそうです。
小出 でもちょっとハードル上がるよね。いざそれぞれの役に戻った時に、いよいよご本人が!みたいになるわけだから(笑)。
大久保・音・新 確かに!(笑)

――これからの稽古で、どんな舞台に仕上がるのか非常に楽しみです! では最後に、読者の皆さんにお誘いのメッセージをお願いします。
大久保 今回が4度目の上演となりますが、キャストもガラッと変わるので、また新しい“たきとも”になればいいなと思っています。ぜひ幅広い年代の方に見て、楽しんでいただきたいですね。
音 笑いあり、涙ありと、100分の間にいろいろな感情にさせられる作品です。さらに瀧さんの美しい音楽に乗せ、とても優しく、濃い時間を過ごしていただけるのではないかと思います。
新 事実と“if”を混ぜた明治時代の人たちの物語ではありますが、現代の人たちにも刺さる台詞がたくさんあると思います。少し大げさかもしれませんが、観た方の生きる糧になるような、なにか明日に繋がるような作品になればいいなと思います。
小出 とても折り目正しい、きれいで、学べることも多い作品だと思います。また僕にとっては初の音楽劇でもあり、存分に瀧廉太郎の楽曲を味わっていただけるのではないかと思います。
取材・文:野上瑠美子
<公演情報>
音楽劇『瀧廉太郎の友人、と知人とその他の諸々』
公演期間:2024年5月2日(木)〜4日(土・祝)
会場:下北沢・北沢タウンホール
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/takitomo/
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