新国立劇場で間もなく開幕。古代インドが舞台のバレエ『ラ・バヤデール』の魅力
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新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』
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すべて見る新国立劇場が2024年ゴールデンウィークに上演するバレエは、『ラ・バヤデール』。現在頻繁に上演されている数々の古典バレエの中でも、飛び抜けてエキゾチックでドラマティック、かつ壮大なスケールで描かれる名作だ。舞台は古代インド。次々と見どころが押し寄せる本作の魅力とは──?
マリウス・プティパの傑作『ラ・バヤデール』が新国立劇場にレパートリー入りしたのは、2000年の秋。当時の芸術監督、牧阿佐美が手がける古典バレエ改訂版の第1作として上演された。まず目を奪われたのは、古代インドの寺院や王宮、人々が纏う衣裳の息を呑むほどの美しさ。しかもそこで展開されるのは、古典バレエらしいおとぎ話ではなく、ヒリヒリするような人間ドラマだ。
ヒロインは寺院に仕える舞姫(バヤデール)のニキヤ。戦士ソロルと恋仲だが、ソロルは王の娘ガムザッティとの結婚を承諾し、物語は悲劇へと突き進む。権力への服従、恋敵のふたりの諍い、裏切り、後悔──さまざまな立場の人たちの愛憎渦巻くスリリングなストーリー展開は、おとぎ話を敬遠しがちな大人をも惹きつける。
初演以来度々上演を重ね、新国立劇場の人気レパートリーとして定着したが、それを支えたのは、表現力豊かな歴代ダンサーたち。今回主役を演じるダンサーは、小野絢子・福岡雄大、柴山紗帆・速水渉悟、米沢唯・渡邊峻郁、廣川みくり・井澤駿の4組だ。さらにガムザッティ役には木村優里、直塚美穂が配され、日替わりで充実の舞台を展開する。劇場では日々、各々の個性、役柄への深い洞察が存分に活かされた舞台が生み出される。
もちろん、傷心のソロルが夢に見る「影の王国」のコール・ド・バレエの幻想的な美しさも圧巻。ひとり、またひとりと現れるニキヤの“影”が、静かな歩みでスロープを降りてくる。後から後から次々と。その夥しい数の “影”が、ぴったりと呼吸を合わせて踊るさまの、何と美しいこと──。主役たちが繰り出す華やかな踊りはバレエの大きな魅力だけれど、コール・ド・バレエが放つ不思議な美しさに浸ることができるのも、『ラ・バヤデール』だからこその特別な体験だ。
古代インドが舞台だけに、この作品ならではのユニークな踊り、キャラクターも登場。とくに、第2幕に登場する黄金の神像=ブロンズ・アイドルは、本作のシンボルともいうべき存在だ。全身を金に塗り、目の覚めるようなテクニックで観客の目を釘付けにする。この役も、奥村康祐はじめ4人のダンサーたちが日替わりで踊る。誰がどんな存在感で魅せてくれるのか、ワクワクしながら劇場に向かう。それもまた、バレエの愉しみ。
公演は4月27日(土)〜5日(日・祝)、東京・新国立劇場オペラパレスにて。
文:加藤智子
<公演情報>
新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』
振付:マリウス・プティパ
演出・改訂振付:牧阿佐美
音楽:レオン・ミンクス
編曲:ジョン・ランチベリー
美術・衣裳:アリステア・リヴィングストン
照明:アリステア・リヴィングストン/磯野睦
出演:新国立劇場バレエ団
指揮:アレクセイ・バクラン
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
2024年4月27日(土)~5月5日(日・祝)
会場:新国立劇場 オペラパレス
公式サイト
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/labayadere/
チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2347579
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