Vol.1「小林私がマターリ歌う日」より
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すべて見る2023年12月15日に開催された企画ライブ『長い一日』終演後に発表されたイベントシリーズ『小林私の五日間』。当初は新しい音楽の楽しみ方を提案するイベントとして、Vol.1の「小林私とマターリ歌う日」のみの内容発表だったが、回を追うごとにいわゆる音楽ライブとしては逸脱した、毎回趣向の異なるライブを展開した。果たして『小林私の五日間』とは何だったのか? レポートで振り返る。
Vol.1「小林私とマターリ歌う日」
『小林私の五日間』と題されたシリーズライブのVol.1はタイトルの「小林私がマターリ歌う日」にふさわしく、ステージ上には小林の部屋を模したソファ、お菓子や飲み物が乗ったテーブル、ヨギボー、そしてアコギ2本とスタンドマイクがセットされている。明らかにまだ開演していないステージに小林が拍手もなく現れ、ソファに座りまんじりとも動かない謎の時間を経て照明が明るくなると「皆さんが何を期待しているかわかりませんが、何も起こらない日にしようとしています」という第一声。事前に飲食OK(ただし、麺類やスープ類などの汁物、匂いや音など周囲に影響する可能性のある食材はNG)、スマホいじりOKであることがアナウンスされており、肩肘張らず、汗もかかずなライブを意図したことがわかる。
オープンチャットが並走していることも現場で共有して、いよいよ開演である。ちなみにオープンチャットの知見は現場で拾いきれないゲームの内容などを補完する意味で非常に良かった。
15分ほど誰にむけるでもなく喋り続けたのち、やおら「可塑」を歌い始めると、何か忸怩たるものがジェットコースター級の展開で駆け巡る。オタクの会話のメカニズムを滔々と喋った後、本日2曲目は比較的新しい「鱗角」を披露する。メロディと言葉が先にあり、コードは後付けなのだろうなという予想が立つぐらい、言葉が怒涛のように溢れているのだ。一人喋りの達人たる小林も少々ネタが尽きてきた様子で、「何やろっかなあ」という独り言を発した自分を自嘲していた。
「俺はこれから普段やらない曲をやるので、皆さんは好きにしてください」というくだり以降、少しライブステージらしい流れに突入。3曲目はエレクトロスウィングっぽい「Two man cell.」で、言葉が止まらない感じのラップ調がレアな1曲だ。割と演奏がコンスタントになってきたところでレアな選曲の「香日」を演奏する。曲間にビーリアルの時間でした!」と、突然、SNSに投稿する唐突さも忘れない。そしてしばらくライブで封印していた「生活」の演奏はオーディエンスのリアクションから類推するに確実に刺さっていたようだ。この日、ナマで「生活」を聴けた満足感は高い。
終盤には空腹に耐えかねたのかスープパスタを作り、待っている3分間の間に「そして大人を」を歌う。さらにヨギボーエリアに移り、クラシックギターで「スープが冷めても」を披露し、空腹の不安より恋愛の不安を求めている感じがスープパスタを食した後のムードとリンクしたように映った。偶然なのだろうか……。そしてふと予定の90分をゆうに超過していることに気づき若干焦り始めた小林はコードの記憶が怪しいと言いながら歌のパワーで「遊歩する男」、これまでとは違うスイッチが入ったように「加速」と続けた。絶唱しつつも止まりがちな演奏でも決して逃げない。いや、そもそも自分の部屋で相手が見えない配信者として歌を放ってきた彼の態度はライブステージでも変わらないということだろう。ラストは新曲「スパゲティ」をぶん投げるような歌唱で披露した。遠心力と求心力がせめぎ合うような歌だなと改めて思う。リスナーの集中力も凄まじい。「マターリ歌う」と題しつつ、ライブのスタイルが予定不調和であればあるほど、曲の強さが際立つことを再認識したシリーズ第1回だった。
Vol.2 もののけ監修ライブ「診る」
Vol.2は小林のYouTube配信に突如現れることで知られる、イケボ弾き語り生主・東雲涼雅(しののめりょうが)を構成作家のもののけが密着取材した映像を小林、もののけの解説とともに鑑賞するという、シリーズの中でもかなり謎な回である。ちなみに Vol.2以降、オープンチャットはリスナー同士の情報交換と交流の場となり、小林ともののけがチャットのコメントをキャッチアップすることで、楽しみ方の幅が広がっている。
スクリーンを挟んで小林ともののけが映像について突っ込むスタイルなのだが、まず東雲のプロフィールが映し出され、小林曰く「うっすいプロフィール」(アーティストを目指したきっかけが「みんなの笑顔が見たくて」などのことだろう)に場内に同感の笑いが起こる。そこから終日密着がスタートし、まずは東雲の自宅から。
家財道具のない部屋にポツネンと置かれた電子レンジが物入れだったり、東雲のピザの食べ方のクセが強すぎたり、都度映像を止めて小林が突っ込んでいく。その間、オープンチャットには「これ(オモコロのライター)鎧坂さんの部屋じゃない?」とXの投稿をアップ。リスナーも総力戦で参加するのが2回目にして恒例になってきた。
さらにレンタカーで川原に移動し歌う練習。運転すると気弱な東雲の態度が変わることやたいして声量がないことに対するツッコミは小林からもリスナーからも当然の如く起きる。喫茶店に移動し、「こういうところで作詞するのは憧れ」と言いつつ、その実、バズった他人のツイートを若干改変した内容を投稿しているだけという気弱かつ狡猾な側面を見せたりして、どんどんイケボ弾き語り生主のメッキが剥がれていくのだった(そもそもイケてるアーティストだと誰も思っていないフシもあるのだが)。終日密着らしく、その後は東雲おすすめのラーメン店(とはいえチェーン店)、ゲームセンターでなぜかレトロなゲームばかりに手を出し、ボーリングでは隣のレーンの高校生に笑いを持って行かれ、カラオケではここでも「売れている曲だから」という理由でVaundyの「怪獣の花唄」にチャレンジしたり(著作権の関係で音声はなし)、東雲の軸のなさが暴かれていく。
終日密着のラストは東雲の弾き語りライブだったが、その詳細は映し出されておらず、楽屋に戻り、撮影終了を告げると人格が一変。どれが実像でどれが虚像なのだろうか?という疑問だけを残すモキュメンタリーだった。
映像のエンディングはもののけ作詞、小林作曲によるイベントタイトルと同名の「診る」に乗せたクレジットが流され終了し、一体我々は何を見せられたのだろう?という気持ちと同時に東雲涼雅をお題にこれほど笑える時間が共有されたという事実も残った。もののけが美麗なコーラスを添えた「花も咲かない束の間に」の弾き語りでこの日は終演した。
Vol.3 絶対中止になるライブ
Vol.2当日に発表された第3弾ライブのタイトルは「絶対中止になるライブ」。その時点で10組以上の出演者が決まっているにも関わらず、このタイトルは何を意味しているのか?
SNSやグループチャット上でさまざまな憶測が飛び交う中、同時に出された小林のコメントが下記の内容だ。
「俺が通っていた高校は山のなかに生えるように立っていて、電車やバスを使い、往復2時間かけて通っていた。
ある大雪の日にいつもは直行するはずのスクールバスが停車した。違和感に車内は少しざわざわとした。
「学校から連絡です。今日は休校になったそうで、今から駅に引き返します。……あまりはしゃがないように」
運転手からのアナウンス、一瞬の静寂を切り裂くように歓喜の渦が巻き起こった。
俺はコロナ禍発のアーティストだ。様々な理由で中止になったライブを見てきた。
開催するだけがライブではない。当日へ向かう力が宙に放られたときのカタルシスを、どんなに楽しみな予定さえ少しだけ憂鬱に思ってしまうお前達と共有したく思う。
俺はこのライブを開催させる。そして、必ず中止にする。」
中止になるライブのチケットは販売されず、しかし10数名まで出演者が膨れ上がった当日のタイムテーブルが発表され、なんと開演から終演まで30分しかないにも関わらず、ライブ以外にビンゴ大会などの余興も組み込まれている。一人持ち時間2分もないじゃないか……と、誰しも突っ込むのが当然な密度になっている。さらに前日にはレトロリロン、気鋭のシンガーソングライターjo0ji、茶封筒らの名前も。もう持ち時間1分もないのではなかろうか……。リスナーは当日に向けてグループチャットで「絶対中止になるライブを見たい」とか「こばやんは絶対中止になるライブをある意味やりたがってる」とか「中止になったら空いた時間をどう遊ぶのか報告会したい」とか、完全に小林の主旨を汲んでいる。
そして4月24日正午。公式から中止のアナウンスがX上に流れると、SNS上には中止を惜しむ出演者の投稿が溢れた。また、会場の池袋Club Mixaまで足を運んだリスナーが撮影した中止のフライヤーがグループチャットに投稿されたり、過日の「診る」で明らかになった東雲涼賀が訪れた場所の聖地巡礼に切り替える人も。さらには中止になったにも関わらず、「絶対中止になるライブ」のデジタルパンフレットはオンラインで販売され、ラインナップされていた出演者との対談など、かなりボリューミーな内容が展開していたことにもリスナーから突っ込みが入っていた。
また、当日22時過ぎからYouTubeで「ライブが中止になった男の配信」と題した生配信も実施。そこでは「曲作るのが幸せなだけで、みんなそんなにライブしたいのかな」と、自らのスタンスを語りつつ、ライブそのものについては「歌詞間違えたら良くないとか、俺の前の時代の成功者の話だから。もっと自由な場だろ!」と自論を展開していた(配信の大半は漫画『トリコ』考察だったが)。
が。初期から小林を追いかけていたリスナーは「あれを実現したんだな」と勘づいたかもしれない。そう。そもそも彼はこんなツイートを1年8カ月前にしていた。
本ツイ(1年8カ月前):
https://x.com/zokubu_tsu/status/1558326375215669249
上のツイートの引用リツイートが下記だ。
派生:
https://x.com/zokubu_tsu/status/1559871998008135680
(ところで気になるのは空いた時間、小林は何をしたんだろう?)
Vol.4 公募ライブ「小林私とおまいら」
シリーズVol.4は小林のデビューのきっかけが公募ライブだったことから、いつか自分も公募ライブを実現したかったという経緯で実現した。まずオープニングアクト(!?)として小林がステージに登場し、戦いを勝ち抜いた4名の出演者の選考理由を語る。ちなみに応募件数は108件。小林の楽曲をカバー動画が応募の条件だが、その数とクオリティに驚いた様子だった。
そんな応募者の中から小林のお眼鏡に叶い、“おまいら”に厳選されたのは中林宙昊、あちき、蔦田宗汰、神崎の4名。奇しくもこの4名、17歳と18歳という。
まず、中林宙昊は「ここでがなっときまーす、みたいな小林私っぽい歌い方ではなく、自分なりの解釈がいいなと」という評価だ。あちきは「まず名前が面白い。そして原曲はスローな「飛日」をアッパーにカバーした意外性、しかもブッダブランドの「人間発電所」等幾つかサンプリングをしている曲で、ラップのフロー的なアプローチも良かった」とのこと。蔦田宗汰については応募動画が顔を下から捉えたものだったことをはじめ、「とにかく面白い」とし、神﨑は「(驚いて)ペットボトルの水をこぼしてしまうぐらい上手い」というのが選考理由だ。すでに楽屋で仲良くしており、小林は年長者の威厳を見せつけるべく(?)スマブラで全員を倒したという。全くおとなげない。選考理由を述べた後、小林は「加速」を披露。歌い始めると一気に場の空気が引き締まり、本家の存在感が光るのだった。
公募者ライブのトッパーは中林宙昊。登場早々「叶うなら後ろ向いて歌いたい。だって怖くないですか?」と言いつつ、「花も咲かない束の間に」を独特なしゃがれ声のシャウトで聴かせ、オーディエンスの驚きを誘う。どこかチバユウスケを想起させるボーカルだ。続けて「光を投げれば」を披露。弾き語りでありつつ、この人ならではのロックな表現を見せつけ、大きな拍手が沸き起こった。
続いては名前の印象とは真逆に高身長のあちきが登場。姉にオリジナルではなく「小林私さんの歌を歌ってるんだから(私じゃなくて)“あちき”ぐらいだろ」と言われたことが名前の由来だと説明し大いに笑わせる。「飛日」の歌い出しで間違え、堂々と「もう一回いいですか?」と言えるあたりも大物感が漂う。そして歌唱は独特のフロウがありユニークだ。もう1曲の「HEALTHY」ではギター巧者なところも見せてくれた。
続く蔦田宗汰は短パンで首から白タオルという見るからに懐っこいキャラクターが笑いを起こす。しかも歌に入るまでにかなり喋るのだ。弾き語りの動画だけを送ってもパンチが足りないという理由で、喋りの動画を無言にして送ったという謎の行動も小林のリスナーには好意的に捉えられていた。肝心の弾き語りは「地獄ばっかり」も「スープが冷めても」も、自分の解釈でダイナミックに演奏。ただのお調子者ではないところを存分に見せつけた。
最後は小林が上手さに圧倒されたという神﨑が務める。奈良からやってきた彼は東京に到着した途端、鼻血を出し着ていたシャツをお釈迦にしてしまったそうだ。それを「17歳のクソガキです」と自嘲する態度も好ましい。選曲がまだ音源になっていない「目下」と「スパゲティ」だったことにも注目したいのだが、畳み掛けるような言葉の連射も迫力があり、小林私楽曲のカバーであることを超えてステージに釘付けになってしまった。
半信半疑でいたオーディエンスも4人の熱演に感銘を受けている様子で、シリーズで最も音楽的なライブになった印象だ。再び登場した小林は「俺ってこんな感じなんだ。俺を見てるみたいな感じ」と非常に楽しそうで、自ずと自身のライブにも熱が籠る。「線・辺・点」でオリジネーターの迫力を見せつけ、「改めまして、シンガーソングライターの小林私です。よろしくお願いしますー」と、自己紹介した後、いつもなら無関係なMCに移行しそうなところを続けて「冬、頬の綻び、浮遊する祈り」へと繋いだ。MCでは小林自身はかなり長い間、ギターのレギュラーチューニングができていなかったことを告白、挑戦者たちのレベルの高さを暗に示唆していた。しかも頼もしさだけじゃなく、4人に対する仲間意識もあるのだろう。この日の小林の弾き語りは勢いと楽しさに溢れていたのだ。スリリングな「遊歩する男」、小林流のシティポップ感がコードワークに伺える「冷たい酸素」、そして久しぶりにライブで披露された「サラダとタコメーター」まで、怒涛の如く駆け抜けるライブを展開したのだった。
全ての演奏が終わると、出演者一同で集合写真を撮影する段取りとなり、年長者である小林がちょっと引率者めいた存在に見えたのも非常にレアだった。音楽表現として素直に刺さる演奏をしてくれた4人に対する大きな拍手が収まると、場内にはスーパーの閉店音楽のように「蛍の光」が流れる。直後に背景のスクリーンにはVol.3からVol.1までの振り返り映像が時間を逆回しに映し出され、程なくして「Vol.0」の文字が。小林の影アナウンスで「ご来場、ご観覧の皆様、小林私の五日間はこれにて全公演が終了いたしました」という音声にオーディエンスは当然キョトンとしている。え? まだ4公演しかやってなくね?という意味で、だ。すると明転したステージの背景にVol.0の配信がこの後行われる旨の映像が投影され、この日の公演は終演とあいなった。現地組もグループチャットもしばし「ゼロとは?」と、キツネにつままれていたのは言うまでもない。
vol.0
『小林私の五日間』と題されていながら、なぜ vol.5がないのか。その答えは5月18日の「vol.4 小林私とおまいら」の終演後に発表された通り、実はvol.1以前の2月7日、すでに開催されていた。それは無観客ライブを映像化するというスタイルをとっていたのだ。「vol.0」開催に向けての小林のステートメントは下記の通りである。
例えば諸君が悪の組織に入るとして、 あるいは強さで序列が決まる魔法学園の生徒だとして、 ないしは真相が闇に包まれた秘密結社の会員であるとして、 諸君一人一人に何らかの番号が振られるとしよう。
そしてその番号を自ら決めていいとしたら、 俺なら迷わず0を選ぶ。 0とはそれだけの引力を持つ。
「小林私の五日間 vol.0」
タイトルは無く、ただナンバーがあるだけ。 小林私を含む3人の演者がステージに上がる。 事前に言えるのはそのくらいだ。
では既に記録された映像「vol.0」を実際に見てみよう。なお、構成や演出はお馴染みもののけによるものだ。
一番手は小林私。「自分はコロナ禍アーティストというか、デビューから1年半ぐらい、配信ライブをやっていた。お客さんがいたらいたで、ここ俺の居場所じゃないなと思うけど、いないならいないで、孤独だなと思う。ま、曲やるか」と、弾き語りで「線・辺・点」を披露。小林が弾き語りが好きだという理由を改めて実感する、この組み合わせでしか味わえない生=ライブ感である。続けて「花も咲かない束の間に」の彼流のロマン主義とでも言えそうな世界観が景色を変える。演奏を終えると「無風、みたいなの久々ですね。これは嬉しい」とポツリ。さらに圧倒的な言葉数を吐き出す「並列」を歌い終え、「シンガーソングライター小林私でした」と深々とお辞儀をしてステージを去った。
2番手は vol.2「診る」で密着取材映像が公開された東雲涼雅だ。覚えているだろうか。あの映像の中での東雲のライブ場面のくだりを。それがこの「vol.0」ライブだったのである。顔出ししていない東雲はバックライトに照らされ、ライブでも顔は判然としない。か細い声でライブの開始を告げると、1曲目は少しローファイヒップホップのテイストもある「レシピ」という楽曲を披露した。「あんまりライブとかしないので、こういう場は緊張しちゃうんですけど……」と、MCも振る舞いもぎこちない。その割にグッズの宣伝はしっかりやるのが東雲らしい。もう1曲は「行方」という曲で、一転してアッパーでグルーヴィ。サビでの力強い歌唱は少し小林に似ていなくもない声質に感じられた。
トリは井上りるるという小学生アーティスト。紅白帽と水筒を首から提げて登場した(見た目は小林私以外の誰でもないのだが)。まず、今日のために作ってきたという「ぶらんこ」という初恋をテーマにしていると思しき素朴な曲を披露した。MCの代わりに書いてきたという作文は“最適な通学路”に関するもので、いきなり噺家のような口調に変貌。シュールなアーティスト性に小林と通じるものを感じずにいられなかった。2曲目は「大事なものを考えながら書いた」と話す、「空中散歩」という小学生とは思えないエレジーっぽい雰囲気の曲で、かなり驚かされる。歌い終わるとぎこちなく走り去り、3マンライブは全て終了した。
淡々と進んだ無観客ライブの最後は3人がステージに揃い、お辞儀をして終演と相なったのだが、最後に小林から「ということで、vol.1、2、3、4の裏で事前にこんなことが行われていたとは! ま、ただやりたかったからやったんですけど」と身も蓋もない種明かしが行われた。さらにサラッと今夏の4thアルバムリリースとそれに伴うツアーが開催されることを発表。だがツアーについては……
「僕は許した覚えはないんで抗っていくつもりですけど」と、不敵(!?)な表情でステージを後にしたのだった。
え? このツアーは果たして実現するのだろうか? なお、グループチャットには「井上りるるめっちゃ良かった」「キャラはあれだけど曲普通に良かった」など、意外に真っ当に評価されており、ちょっとやそっとのことで驚かない小林のリスナー像が伺えたのだった。
常々、ワンマンライブが好きではないこと、あくまでも曲を作ることと弾き語りが好きであることを公言している小林私。今回のイベントシリーズはそれでもライブステージを求められる上で、小林が考え得るライブの楽しみ方を可能な限り追求したものだった。それが結果的にライブの定石を覆す試行錯誤が満載されていたのは正しく小林私というアーティストを表していたと言えるだろう。5月25日には今回のシリーズ Vol.2「診る」にも参加した構成作家のもののけと振り返り生配信も実施。シリーズの意図が語られるのか? 引き続き注目したいところだ。
文=石角友香
<小林私主催「小林私の五日間」SET LIST>
■2024年2月24日(土) Vol.1「小林私がマターリ歌う日」
01. 可塑
02. 鱗角
03. Two man cell.
04. 香日
05. 生活
06. そして大人に
07. 繁茂
08. スープが冷めても
09. 遊歩する男
10. 加速
11. スパゲティ
■2024年5月18日(土) Vol.4 公募ライブ「小林私とおまいら」
小林私(O.A)
1. 加速
中林宙昊
1.花も咲かない束の間に
2.光を投げれば
あちき
1. 飛日
2. HEALTHY
蔦田宗汰
1. 地獄ばっかり
2. スープが冷めても
神﨑
1. 目下
2. スパゲティ
小林私
1. 線・辺・点
2. 冬、頬の綻び、浮遊する祈り
3. 遊歩する男
4. 冷たい酸素
5. サラダとタコメーター
「小林私とおまいら」SET LIST PLAYLIST:
https://open.spotify.com/playlist/7DSQ0IHbmoHXHLCXqtELtz?si=cb8f6d9b8c9f4b75
■「小林私の五日間」振り返り生配信 Vol.X『語る』
日時:5月25日(土) 19:00~
出演者:小林私、もののけ
https://youtube.com/live/An5ttkWWlL8
「空に標結う」MV(TVアニメ『ラグナクリムゾン』2ndクールエンディングテーマ)
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