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『三島喜美代―未来への記憶』練馬区立美術館で開幕 約1万個のレンガを敷き詰めた圧巻のインスタレーションも

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三島喜美代《20世紀の記憶》(部分)1984〜2023年 個人蔵

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1950年代から現代美術家としての活動を開始し、91歳となった現在も制作を続ける三島喜美代。彼女の70年にわたる活動を主要作品を通して概観する展覧会『三島喜美代―未来への記憶』が、5月19日(日) より練馬区立美術館で始まった。近年あらためて評価されている三島の魅力、そして実像に迫っていく。7月7日(日) までの開催となる。

1932年大阪府生まれの三島は、1950年代から絵画を出発点に創作活動を開始。画家で三島の夫となる三島茂司(1920〜1985)を通して先端の美術の動向に触れ、当初描いていた具象画から、抽象画、版画、陶など次第に作品の幅を広げていく。この展覧会は、近年国内外から改めて注目されている三島の70年にわたる創作の軌跡を改めて振り返るものだ。

展覧会は4章で構成。第1章「初期作品」では、活動初期に描いていた具象画や60年代に制作したコラージュ作品を取り上げる。

三島喜美代《かぼちゃ》1952年 個人蔵

当初、具象画を描いていた三島は、具体美術協会の吉原治良に師事していた夫の茂司のアドバイスから、コラージュを使った作品を制作し始める。茂司が集めていた洋雑誌の切り抜きや、競馬の馬券、出走表などを使用したコラージュ作品は、のちの印刷物を陶に転写する作品を予感させる。

第一章 展示風景より
三島喜美代 《ヴィーナスの変貌V》1967年 個人蔵

第2章「割れる印刷物」は、三島の代表的な作風である、新聞やチラシ、雑誌やフィルムなどを陶に転写した作品を紹介する。紙のたわみや折れ皺など、非常に精巧に作られており、陶であることも認識しづらいほど。そして、単なる超絶技巧で作られた作品の域を超え、私たちが日々営む「日常」や「情報」を改めて問い直している。

第2章 展示風景より
三島喜美代《Comic Book ‘80》(一部)1980年 滋賀県立陶芸の森 陶芸館
左:三島喜美代《サンキスボックス》2005年 岐阜県現代陶芸美術館 右:三島喜美代《バナナボックス》2007年 岐阜県現代陶芸美術館
三島喜美代 《WORK C-92》1991-92年 岐阜県現代陶芸美術館

世の中に氾濫する膨大な情報に着目し、陶の作品を制作していた三島の問題意識は、やがてその情報の発信源である新聞や雑誌がすぐにゴミになってしまうことから、ゴミなどの廃棄物へと移っていく。第3章「ゴミと向き合う」は、三島が収集した廃棄物を使った作品などを展示する。

三島喜美代 《Work 17-POT》2017年個人蔵

マンガ雑誌を模した巨大な作品《Comic Book》シリーズの3点は、産業廃棄物を1400℃の高温で焼成して生成されるガラス状の粉末、溶融スラグで作られた、原料もモチーフもゴミから作られている。

手前 三島喜美代《Comic Book 03-1》2003年 ポーラ美術館蔵 左奥 三島喜美代《Comic Book 03-3》2003年 個人蔵 右奥 三島喜美代《Comic Book 03-2》2003年 ポーラ美術館蔵
三島喜美代《Work 22-P》2022年 個人蔵
三島喜美代《Work 17-C》2017年 ポーラ美術館

なお、空き缶を模した作品に触ることができる特設コーナーも設置されている。ずっしりとした重みや質感など、実際に触って確かめてみよう。

陶でできた空き缶の作品に「さわれる」コーナー

そして、本展のハイライトとなる第4章「大型インスタレーション」では、1つの展示室全体を使ったインスタレーション作品《20世紀の記憶》のみを展示する。1万個以上の耐火レンガブロックを床に敷き詰めた本作は、三島が20世紀の100年間から抜き出した新聞記事を転写したレンガを使用している。レンガにはひとつひとつに重い内容の事件が刻み込まれているものの、多数集まることで瓦礫にも見える作品の一部となってしまう。毎日多くの情報や事件に流されて生きることへの問いかけにも感じられる作品だ。

三島喜美代《20世紀の記憶》(部分)1984〜2023年 個人蔵
三島喜美代《20世紀の記憶》(部分)1984〜2023年 個人蔵

70年以上のキャリアを持ち、未だに制作を続ける三島喜美代。一見ユーモラスながらも、鋭く現在の問題点をあぶりだす彼女の作品をじっくりと楽しもう。

取材・文・撮影:浦島茂世

<開催概要>
『三島喜美代―未来への記憶』

2024年5月19日(日)~7月7日(日)、練馬区立美術館にて開催
公式サイト:
https://www.neribun.or.jp/event/detail_m.cgi?id=202401281706414617

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