『第77回トニー賞授賞式』受賞結果レポートが到着 井上芳雄「改めてウーマンパワーを感じました」
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ミュージカル作品賞受賞『アウトサイダー』 (写真提供:GettyImages)
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すべて見るアメリカ演劇界で最も権威のあるアワードとして知られる『第77回トニー賞授賞式』が、日本時間2024年6月17日(月) に開催、日本でもWOWOWで生中継・ライブ配信された。本稿では、世界のトップスターたちの圧巻のパフォーマンスを含め、華やかな授賞式の模様を紹介する。
ニューヨークのデイヴィッド・H・コーク劇場で行われた今年の授賞式。アリアナ・デボーズが3年連続でホストを務め、彼女のオープニングパフォーマンス「This Party’s For You」で華やかに幕を開けた。
ミュージカル作品では、『アウトサイダー』が作品賞、ミュージカル演出賞など4部門を受賞した。この作品は、フランシス・フォード・コッポラ監督が映画化したことでも知られるS・E・ヒントンの青春小説を原作に、アンジェリーナ・ジョリーがプロデューサーを務めたもの。本作にはジョリーの15歳の娘であるヴィヴィアンもジョリーのアシスタントとして参加しており、ふたりは揃って授賞式に出席。ミュージカル作品賞の受賞が決まった際には壇上に上がり、喜びを分かち合っていた。
このほか、映画『ハリー・ポッター』シリーズのダニエル・ラドクリフが『メリリー・ウィー・ロール・アロング』でミュージカル助演男優賞を獲得し初のトニー賞受賞を果たした。壇上でラドクリフは、共演陣や制作陣ら作品に関わった人々、さらに両親やパートナーのエリン・ダークらへの感謝を、手を震わせながら述べ感動的なシーンとなった。『メリリー・ウィー・ロール・アロング』はミュージカル・リバイバル作品賞、ミュージカル主演男優賞(ジョナサン・グロフ)など4部門で受賞した。
演劇作品では、『ステレオフォニック』が前評判通りの強さを見せ、作品賞、演劇演出賞、演劇助演男優賞など全体で最多の5部門で3受賞した。『ステレオフォニック』は、人気ロックバンドのアーケイド・ファイアの創始者であるウィル・バトラーが楽曲を書き下ろし、70年代のロックバンドがスターダムにのし上るまでを描いた作品。演劇作品としては史上最多の10部門で13ノミネートを受けていた。
なお今年の俳優部門の計8部門は、全員が初受賞となった。
毎年、話題を呼ぶパフォーマンスもトップスターたちがハイクオリティなショーを披露。アリシア・キーズがプロデューサーを務め、自身の半生をミュージカル化した『ヘルズ・キッチン』はミュージカル主演女優賞、助演女優賞に輝いた。パフォーマンスでは主演のマリア・ジョイ・ムーンらキャスト陣に加えて、アリシア本人も登場し、同作のフィナーレを飾る「Empire State of Mind」を披露。さらにアリシアとともに、同曲をリリースして第53回グラミー賞で最優秀ラップ・ソング賞など2部門を受賞したジェイ・Zがサプライズ登場。ふたりでパフォーマンスを披露し、会場は熱狂に包まれた。
またミュージカル・リバイバル作品賞などにノミネートされていた『キャバレー』のパフォーマンスでは、主演のエディ・レッドメインがオープニング曲の「Willkommen」を圧倒的な存在感のEmcee(エムシ=)として歌い上げ、会場を沸かせる。
同じくミュージカル・リバイバル作品賞ノミネートの『TOMMY』のパフォーマンスでは、プレゼンターとしてTHE WHOのギタリスト、ピート・タウンゼントがプレゼンターとして来場し、自らギターを演奏してパフォーマンスにも参加した。『TOMMY』はTHE WHOが1969年に発表したロック・オペラのアルバムから始まり、75年に映画化、93年にブロードウェイ・ミュージカル化された作品で、ピート・タウンゼントが作詞作曲、脚本を手がけている。
他にもプレゼンターとして、過去の受賞者やアスリートなど多くのスターが来場したが、ひときわ注目を集めたのが元大統領候補のヒラリー・クリントン。女性の参政権獲得に向けた活動を題材にし、2部門で受賞を果たしたミュージカル『サフス』のプロデューサーを務めていて、同作のパフォーマンスのプレゼンターとしてサプライズ登壇。社会に変化をもたらすことの難しさについて言及しつつ、女性参政権獲得のために戦った人々を称賛し「選挙の年だからこそ、投票の重要性を感じてほしいと思います」と呼びかけた。
スタジオでは、ナビゲーターを務める井上芳雄と宮澤エマ、スペシャル・サポーターの京本大我(SixTONES)が、演劇ジャーナリストの影山雄成、音楽ジャーナリストの高橋芳朗らとともに授賞式の様子を見守った。井上と宮澤は、番組のオープニングで今年の注目作品の楽曲のメドレーを披露。宮澤は2013年に日本で上演され、舞台初出演となった『メリリー・ウィー・ロール・アロング』への強い思い入れをたびたび口にし、同作の4冠獲得に歓喜していた。
京本は『ハリー・ポッター』シリーズと『ファンタスティック・ビースト』シリーズが大好きということで、ダニエル・ラドクリフのエディ・レッドメインが同じ年のトニー賞にノミネートされていることに大興奮。レッドメインの『キャバレー』の圧巻のパフォーマンスを称賛するとともに、ラドクリフの助演男優賞受賞のコメントに「感情があふれていて、こっちも嬉しくなりました」と喜びを口にしていた。
今年は演劇部門、ミュージカル部門合わせて7人の女性が演出部門でノミネートされたが、井上は受賞結果や受賞者たちのスピーチから「改めてウーマンパワーを感じました。みなさんが(スピーチで)おっしゃっていた“夢をあきらめないで!”ということ――それはずっと言われていることですが、説得力をもって伝わってきました。時代はどんどん変わろうとしているのが、今年のトニー賞から目に見えて感じられました。僕たちもぜひ一緒に前に進みたいなと思いました」と今年も受賞者たちから大いに刺激を受けた様子だった。
『第77回トニー賞授賞式』の模様は、WOWOWオンデマンドで2024年6月23日(日) 14時59分まで配信中。字幕版は6月23日(日) 15時よりWOWOWで放送・配信される。
『第77回トニー賞授賞式』受賞結果
【ミュージカル部門】
★作品賞:『アウトサイダー』
★リバイバル作品賞:『メリリー・ウィー・ロール・アロング』
★演出賞:ダンヤ・テイモア(『アウトサイダー』)
★主演男優賞:ジョナサン・グロフ(『メリリー・ウィー・ロール・アロング』)
★主演女優賞:マリア・ジョイ・ムーン(『ヘルズ・キッチン』)
★助演男優賞:ダニエル・ラドクリフ(『メリリー・ウィー・ロール・アロング』
★助演女優賞:キーシャ・ルイス(『ヘルズ・キッチン』)
★脚本賞:シェイナ・タウブ(サフス)
★装置デザイン賞:トム・スカット(キャバレー)
★衣装デザイン賞:リンダ・チョー(グレート・ギャツビー)
★照明デザイン賞:ブライアン・マックデヴィット&ハナ・S・キム(アウトサイダー)
★音響デザイン賞:コディ・スペンサー(アウトサイダー)
【演劇部門】
★作品賞:『ステレオフォニック』
★リバイバル作品賞:『アプロプリエイト』
★演出賞:ダニエル・オーキン(『ステレオフォニック』)
★主演男優賞:ジェレミー・ストロング(『民衆の敵』)
★主演女優賞:サラ・ポールソン (『アプロプリエイト』)
★助演男優賞:ウィル・ブリル(『ステレオフォニック』)
★助演女優賞:カラ・ヤング(『パーリー・ヴィクトリアス:ア・ノン・コンフェデレート・ロンプ・スルー・ザ・コットン・パッチ』)
★演劇装置デザイン賞:デヴィッド・ジン(ステレオフォニック)
★演劇衣装デザイン賞:ディディ・アイーテ(ジャジャズ・アフリカン・ヘアー・ブレイディング)
★演劇照明デザイン賞:ジェーン・コックス(アプロプリエイト)
★演劇音響デザイン賞:ライアン・ルメリー(ステレオフォニック)
【ミュージカル・演劇 共通部門】
★オリジナル楽曲賞:サフス(作詞作曲:シェイナ・タウブ)
★振付賞:ジャスティン・ペック(イリノイズ)
★オーケストラ編曲賞:ジョナサン・チューニック(メリリー・ウィー・ロール・アロング)
【事前発表受賞者】
★功労賞:ジャック・オブライエン、ジョージ・C・ウルフ
★特別賞:アレックス・エデルマン、エイブ・ジェイコブ、ニキヤ・マティス
★地方劇場賞:ウィルマ・シアター
★イザベル・スティーヴンソン賞:ビリー・ポーター
★名誉賞:ウェンダル・K・ハリントン、コリーン・ジェニングス=ローゲンサック、ジュディス・O・ルービン、劇作家組合財団、フリードマン・ヘルス・センター
★演劇教育活動賞:シージェイ・フィリップ
<番組情報>
『生中継!第77回トニー賞授賞式』
WOWOWオンデマンドで2024年6月23日(日) 14:59まで配信中
『第77回トニー賞授賞式 字幕版』
6月23日(日) 15:00~WOWOWライブで放送/WOWOWオンデマンドで配信(7月8日(日) 8:59まで)
※井上芳雄、宮澤エマ、京本大我の出演するスタジオパートは一部抜粋編集して放送。
ナビゲーター:井上芳雄、宮澤エマ
スペシャル・サポーター:京本大我(SixTONES)
影山雄成(演劇ジャーナリスト)、高橋芳朗(音楽ジャーナリスト)
番組公式サイト:
https://www.wowow.co.jp/stage/tony/
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