『生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界』特集③
【GOODS】夢二のデザインの世界を体現する 「カワイイ」グッズを大特集
本や雑誌の装幀などグラフィックの分野はもとより、文具や生活雑貨などのデザインを手がけ、デザイナーの草分け的存在でもあった竹久夢二。妻たまきとともにオープンした元祖ファンシーショップ「港屋絵草紙店」では、自らデザインしたオリジナル商品を販売し、当時の女性たちを虜にしたが、同展のミュージアムショップにも「港屋」さながらに夢二のデザインを活かしたかわいくてこだわりの詰まったグッズがたくさん。グッズの開発秘話も交えてその一部を紹介する。
夢二の図案を精密に再現した芸術的ショコラ パレスホテル東京「千代ちょこ-竹久夢二」
皇居外苑のすぐ近く、お濠を臨むロケーションに位置するラグジュアリーホテル、パレスホテル東京が開業以来、シグニチャーアイテムとして日本の伝統美を取り入れたさまざまなデザインで展開している「千代ちょこ」。厚さわずか約2mmという極めて薄く、繊細なショコラに、江戸千代紙や着物の柄などの模様を表現したまさに芸術品と『YUMEJI展』とのコラボレーションが実現した。パレスホテル東京ブランド戦略室の菅谷明子さんは、昨年、展覧会事務局から今回の企画提案を受けた時のことをこう振り返る。
「竹久夢二の作品とのコラボレーションというお話しを頂いたとき、夢二のデザインはもちろんですが、作品の色合いが当ホテルのイメージにすごくよく合うと感じました。『千代ちょこ』は、日本の伝統美や伝統的な文化を発信したいとう想いから生まれた商品で、千代紙をベースにしていることもあり、親和性があるのではないかと思いと、お引き受けさせて頂くことになりました」
その後、事務局と何度となく打ち合わせを重ね、約180点の出品作品のなかから「港屋絵草紙店」で販売されていた千代紙や雑誌『若草』の表紙絵など「千代ちょこ-竹久夢二」で再現する図案を決定。比較的ショコラでの再現がしやすいパターン柄の図案6点が採用されたが、何よりも苦心したのは、モダンな夢二作品の「色」の再現だったという。
「チョコレートは“洋”のものなので、それを着色する材料もビビッドな“洋”の色ばかりで“和”の色が存在しないのです。例えば「銀杏」の葉の緑や、「桜草」の背景の緑、「アール・デコ」のグレージュなど、夢二作品の淡い色、少しくすんだ色を出すのが本当に難しくて。今回のために新しく色を4色ほど作ってもらい、それをいろいろな配合で混ぜ合わせたりしながら試行錯誤を繰り返し、原画の色に近づけていきました」(菅谷さん)
厚さ約2mmという繊細なショコラゆえに、全てショコラティエの小林美貴さんらによる手作業だというのも驚きだ。商品開発の指揮をとったペストリーシェフの窪田修己さんが、その工程を説明してくれた。
「まず、デザインされたフィルムの上から温度調節されたベースのチョコレートを薄く引いていき、ひと晩じっくりと休ませて最後にフィルムをはがすという工程で制作しています。『千代ちょこ-竹久夢二』では多いもので7色くらい使っていますが、色数が多いとどうしてもわずかですが厚みが出てしまい、フィルムがきれいにはがれにくくなってしまいます。ですから本当は色数を減らしたいのですが、デザインをきれいに再現するためには多くの色を使いたい。そこのせめぎ合いもありましたね」
約半年の制作期間を経て完成した「千代ちょこ-竹久夢二」だが、実物を目の前にしても「これが本当にチョコレートなの?」と思ってしまうほど、そのクオリティの高さに驚かずにはいられない。当時の女性たちを虜にし、今見ても色あせることない夢二のモダンなデザインが、原画から感じとれる風合いを損なうことなくそのままに再現されている。
「展覧会で実際の作品をご覧になったお客様が見比べたときに、“これは夢二の作品とは違う”とは思われたくなかったです。よく“もったいなくて食べられない”と言って頂くんですけど、やはりお召し上がりいただくためのものですので(笑)。ミルクチョコレートやダークチョコレート、ストロベリーミルクチョコレートなど6枚全て味も違うので、夢二のデザインを楽しみながら、じっくりと味わって頂きたいですね」(窪田さん)
まだまだある! こだわりが光る『YUMEJI展』のグッズたち
アデリアレトロ「ゾンビーグラス」
昭和の食器を再現した「石塚硝子」のガラス食器ブランド「アデリアレトロ」とのコラボ商品。夢二の“千代紙「桜草」”をあしらった縦長のフォルムが美しいソンビーグラスは、メロンソーダや抹茶ミルクなどを注げば千代紙の色合いを再現できるはず。定番の柄「アデリアラプソディー」と「桜草」の2個セットでの販売。
デルフォニックス「ロルバーン」
おなじみドイツの文具メーカー「デルフォニックス」の人気シリーズ「ロルバーン」からは、 夢二作品の《ベルリンの公園》と《千代紙「椿」》を表紙にあしらった2つのアイテムが登場。ノートのデザインにあわせてそれぞれの作品のカラーリングがアレンジされており、レトロモダンで洗練されたテイストに仕上がっている。
図録セット(箱入り、レターブック付き)
本棚にもピッタリと収まるB6判の展覧会の公式図録は、単体での販売に加え、箱入り(レターブック付き)の図録セットも用意されている。箱の柄は「桜草」「若草」「青い小径」「猫」の4種類。夢二のデザインがひとつひとつ手作業で丁寧に貼り付けられた風合いのある貼箱は、小物を入れるなど別の用途に使うことも可能。24枚セットのレターブックは両面すべて異なるデザインで、紙質も表裏で異なるものを使用しているというこだわりよう。手紙を送る相手によって、選ぶのが楽しくなりそう。
生誕140 年記念 竹久夢二×原条令子グッズ
夢二郷土美術館が、アートディレクター、ブックデザイナーの原条令子とコラボレーションしたオリジナルグッズ。マグネットや手鏡、トートバッグなど、レトロモダンな世界観を暮らしのなかで気軽に楽しめるアイテムが揃っている。倉敷帆布バッグは縦44×横40cmの大型サイズ。裏面も表側にして持ちたくなるようなデザインがほどこされており、ポケットの内側には、夢二の「猫」の絵が隠されているという遊びごころも。
竹久夢二×高梁紅茶
※岡山会場にて販売
高梁紅茶は、岡山県の備中地域の城下町・高梁で農薬を使わずに栽培・加工された和紅茶。夢二作品をあしらったオリジナル缶に入っているのは、ファーストフラッシュの香りとセカンドフラッシュの豊かな味わいが存分に楽しめる夢二郷土美術館オリジナルブレンドのティーバッグ。飲み終わった後は小物入れとしても楽しめ、プレゼントにもおすすめ。
夢二郷土美術館監修・手刷り木版画
夢二郷土美術館が版木を所蔵管理し、一色一色手摺りする色鮮やかな木版画も販売。夢二が描いた猫を加藤版画研究所が竹久夢二豆本「猫」の出版の際に本版画で復刻した「夢二のねこ版画」や「夢二式美人画」のシリーズなどが揃っている。ミュージアムショップでは一部の作品が展示されているが、カタログが用意されており、多彩な作品を購入することができる。
ほかにも絵はがきやクリアファイル、マスキングテープなどの定番アイテムほか、ストールや扇子など、夢二のデザインをいかしたさまざまなグッズが揃っている。「暮らしの中の美」を追い求め、人々の生活を彩る多くのアイテムを世に送り出した竹久夢二のデザインを持ち帰り、毎日の暮らしに取り入れてみてはいかがだろうか。
撮影(千代ちょこ-竹久夢二):源賀津己
<開催概要>
『生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界』
会期:2024年6月1日(土)~8月25日(日)
会場:東京都庭園美術館
時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)※7/19~8/23の毎週金曜日は~21:00(入館は20:30まで)
休館日:月曜(7月15日、8月12日は開館)、7月16日(火)、8月13日(火)
料金:一般1,400円、大学1,120円、中高・65歳以上700円
※第3水曜日は65歳以上の方は無料
公式サイト:
https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/240601-0825_yumeji/
〈イベント〉
『生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界』ぴあプレミアムナイト
美術館の閉館後、「ぴあアプリ」ユーザー限定でゆっくりと鑑賞していただく貸切鑑賞会。夢二のデザインをあしらった箱入りで、付録の「レターブック」がついた豪華図録セットのお土産、ギャラリートークも聴講できるプレミアムな鑑賞会。
■日時:6月29日(土) 18:30~20:30(入館は20:00まで)
■料金:【ぴあニスト】 ¥5000 【よくばりぴあニスト】 ¥4,000
※チケットの購入には「ぴあアプリ」のダウンロードが必要です。
■内容:
・展覧会鑑賞(通常:1,400円)
・図録セット (箱入り・レターブック付き/通常:4,500円)
・ギャラリートーク
講師:岡部昌幸(本展監修者:帝京大学名誉教授・群馬県立近代美術館特別館長)
■応募ページ:
https://lp.p.pia.jp/article/news/370022/index.html
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