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吉沢亮の“自信を保つコツ”「死ぬほど準備する。本番になったら忘れます」

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吉沢亮 (撮影:友野雄)

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「いつも、自信なんてないんです」と語る吉沢亮の表情には、それでも、あの“中華統一を目指す始皇帝”の面影がある。シリーズ最終章『キングダム 大将軍の帰還』の公開を7月12日に控え、あらためて彼にとっての『キングダム』シリーズの立ち位置、そして強さの源にもなる自信をどうやって保っているのか、そのコツについて聞いてみた。

吉沢亮にとっての『キングダム』「やっぱり、熱い」

シリーズ一作目からの撮影当時を振り返り、いまでも思い出されるのは「中国での撮影」だという。「大変ではあったけど、でも、楽しかったです」と語る吉沢の顔は、当時を思い出しているのか、自然とほころぶ。

「地方にも行ったし、いろいろなところをまわりましたけど、やっぱり中国での撮影が思い出深いです。圧倒されるような大きなセットで撮影できたのは、やっぱりこの『キングダム』が持っている規模感と、この作品だからこそ味わえる壮大さを感じられる経験でもありました」

吉沢自身が、戦災孤児の漂(ひょう)と、秦王である嬴政(えいせい)の一人二役を演じたことでも話題を呼んだ『キングダム』シリーズ第一作。同じく戦災孤児出身でありながら「天下の大将軍」になることを目指し、戦の場で頭角をあらわしていく信(山﨑賢人)とともに、あれからさまざまな困難を越えてきた。

「『キングダム』って、展開が読めなかったり、急に『ここでこの人が出てくるんだ!』って驚かされたり、熱すぎてカッコ良すぎて泣けてきたり……。とにかく魅力が詰まっている作品なんです」と自然と熱がこもる吉沢の声音には、仲間とともに困難を乗り越え、後に見守る立場になる嬴政自身の感慨も滲んでいるように思える。

「今回の『大将軍の帰還』も、相当カッコいいです。大沢たかおさん演じる王騎の立ち振る舞い、声の出し方からして、もう『カッコ良すぎて泣けちゃう』要素が詰まってます」

サブタイトル「大将軍の帰還」がどういった意味を持つのかも含め、ぜひ最初から最後まで余すところなく、スクリーンに注目してほしい。

(C)原泰久/集英社 (C)2024映画「キングダム」製作委員会

役作りのターニングポイントになった大河ドラマ

「物語が進むにつれ、嬴政は当事者から見守る側に変化していきました。戦をはじめ、物事の展開を当事者として受け止める視点から、少し距離を置いた地点で戦場を見守る立場になった。その変遷をたどるように、僕自身の表現も“受けるお芝居”になっていったのかな、と思います。攻めるお芝居よりも、難しさがありました」

一口に「受ける芝居」と言っても、さまざまなバリエーションがある。戦場で起こったこと、それに伴う変化を前にして、どんなリアクションを示すか。一辺倒にならないよう、差異をつけるのは大変だった、と吉沢は撮影当時を振り返る。

「嬴政の立場を考えると、彼の熱量は、戦場で命を賭けている彼らの熱とは別物なんです。でも、やっぱりどこか、彼らと対等でなくちゃいけない。自らが体験しているわけではないけれど、状況にのめり込んでいるお芝居をしなきゃならないというのは、相応の難しさがありました」

2024年は、吉沢にとって30歳を迎えた年でもあり、デビュー15周年を飾る節目でもある。多くの作品や役柄を経験してきた過程において、役作りのアプローチに変化はあったのか。

「大河ドラマ『青天を衝け』(2021)の撮影に入ったころから、変わった感覚があります。それまでは、どちらかというと、事前に動きを決めていたんです。自分のなかで『このシーンはこういう感情だから、目線はこう動くかな』とか、前もって全部決めていて。でも、大河ドラマを経験してから、ただ『その場にいる』ようになりました」

ただそこにいて、ほかの役者の動きを受けながら、自分の芝居を決めていく。そのほうが現場で臨機応変に動きやすいと、気づいたのだという。「相手のセリフの言い方ひとつとっても、台本で読んだときの印象と、現場で合わせたときとでは違う」という吉沢の解釈は、15年の経験に由来する柔軟性に満ちている。

『青天を衝け』以降も、吉沢はドラマ『PICU 小児集中治療室』(2022/フジテレビ系列)や映画『ファミリア』(2023)、『かぞく』(2023)など多くの現場を経験している。確かにそのどれもが「そこに存在する」ことの意義を問うている作品であるように思える。

準備はしっかり。本番では「忘れる」

『キングダム』シリーズは、グッと全身に力が入るようなアクションシーンや、その勢いに圧倒される壮大な戦のシーンも見どころの一つ。本作をはじめ、数々の実写化作品でメインを張る吉沢自身、どうやって日々のプレッシャーに打ち勝っているのか。

「僕はもう、基本的にあんまり、自信がないタイプなので」と、そっと笑いながら教えてくれる。

「完全に自信がない状態だけど、やってみないとわからないですから。やるしかないんです。やってみて周りの反応が良かったら、やっと自信満々になる! みたいな。リアクションがないと、ずっとネガティブなことを考えちゃいます」

これはもともとの性格なので、克服できるものならしたいんですけど、と自身について語る吉沢には、気負いがない。『キングダム』で見せる嬴政の堂々とした風格や、『東京リベンジャーズ』で見せるマイキーの飄々とした佇まいの裏には「やってみなければわからない」という一周まわった達観があるのかもしれない。

「死ぬほど準備して、本番では忘れるんです。何も考えずに臨むほうが、プレッシャーを跳ね除けられる。さっきの『ただその場にいることを大事にする』って話にも通じるかもしれません。できる限りの準備さえしていれば、あとは考えなくても身体が覚えてくれていますから」

力が抜けている、というよりも、入れるべきところに力を入れている、という印象が、吉沢の演技にはある。「今でも緊張しちゃって『もうダメだ〜』ってなることもあります」とお茶目に語ってくれるが、とても想像できない。

「緊張したときは、良い意味で諦めます。やっぱりすごく思い入れが強かったり、こだわりを持ちすぎたり、『練習してきたことの120%を出さないと!』って力が入ったりすると、空回りしちゃうので。練習や準備はしっかりしていくけど、70%くらい出せたら大丈夫、と。100%じゃなくてもいい、本番で悩んでもしょうがないから」

完璧な自分で在ろうとしない。多くの期待やプレッシャーを背負いながらも、いつだって凛と静かに立っているように見える彼の原点は、ここにあるのかもしれない。

やりたいことを我慢しないのが、心地よく過ごすコツ

思い返せば2023年、吉沢は「仕事はもちろん、プライベートも大事にしたい」と話していた。彼にとっての節目が重なった2024年、ファンクラブの開設や写真集の発売など、個人活動にも精力的だ。

「昨年に引き続き今年も、ありがたいことにたくさんお仕事をさせてもらっています」と20代を思い返す吉沢は「自分のやりたいこととか、夢も大事にしたい」と考えるようになったという。

「もっと自分の夢にもフォーカスを当てられれば、より人生を充実させられるんじゃないかな、と思うようになったんです。仕事も、夢を追うことも、同じくらい楽しむ。そうすればもっと『頑張ろう』って気力がわいてくるはずだから」

そんな吉沢に、人生を心地よく過ごすコツは? と水を向けてみると「やりたいことを我慢しないこと」と返ってくる。

「たとえば食事制限中に『ジャンクフード食べたいな』と思ったら、変に我慢しない。そういうときは、食べても良いときだと思うんです。ストレスがない範囲で、健康体でいること。とくにこの時代はストレスが溜まりやすいと思うので、やりたいことを我慢しないマインドが、より大事になってくるんじゃないかな」

心身ともに綺麗であることが、幸せに繋がる気がします、と訥々と語る彼の表情は穏やかだ。今後も『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(2024公開予定)や『国宝』(2025年公開予定)など公開作が控えている。強く完璧な姿で表舞台に立つ吉沢のなかには、自信のない自分さえ丸ごと受け入れている、等身大の彼がいる。

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『キングダム 大将軍の帰還』7月12日公開
https://kingdom-the-movie.jp/

(取材・文/北村有、撮影/友野雄)

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