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『お母さんが一緒』江口のりこ・内田慈・古川琴音の三姉妹バトル、ここまでヤレばむしろスッキリ!橋口亮輔監督9年ぶりの新作──【おとなの映画ガイド】

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『お母さんが一緒』 (C)2024松竹ブロードキャスティング

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数々の映画賞に輝いた『恋人たち』から9年ぶりに、橋口亮輔監督の新作映画が公開される。タイトルは『お母さんが一緒』。公開日は7月12日(金)。今回は、これまでのようなミニシアター系での上映だけでなく、シネコンでもかかる。江口のりこ、内田慈、古川琴音が三姉妹を演じる“ホームドラマ”。リラックスして楽しめる内容だ。ではあるのだけれど、なにせ、長女は江口のりこ。一筋縄ではいきません!

『お母さんが一緒』

橋口亮輔監督の作品は、決して難解ではないが、娯楽映画とかエンタテインメントとはタイプが異なる。派手ではなく人間の心の深層をじっくり描くものが多い。

高校生の時から自主制作で映画を撮り始め、PFFアワードグランプリ受賞のあと、PFFスカラシップ作品『二十才の微熱』(1993) で劇場映画デビュー。その後、『渚のシンドバッド』がロッテルダム国際映画祭でグランプリ受賞し、世界でも名をはせた。これまでに発表した長編映画は5本、寡作の監督だ。そのほとんどが、映画賞や映画ベストテンで高い評価を得るなど、絶賛されている。

9年ぶりの新作は、CS「ホームドラマチャンネル」の開局 25 周年ドラマとして制作したオリジナルドラマシリーズ全5話を再編集し、劇場版映画にしたこの作品だ。

ペヤンヌマキ主宰の演劇ユニット「ブス会*」が2015年に上演した舞台の脚本を、橋口亮輔監督が脚色した。

もちろん橋口監督にとって、こういうスタイルは初のチャレンジだ。

「こんな感じの作品になればいいなと思ったのは、向田邦子さんのエッセイです。描かれるのは日常の些細なできごとだけど、 人生ってそうかもなと思わせる深みがあって、最後にはふっと抜けていくような読後感がある。グッと中に入り込んでいくけど、軽快で決して重くなりすぎない、そんな人間ドラマになればいいなと思いました」と語っている。

ドラマは、温泉旅館のある一夜の話。

長女・弥生(江口のりこ)と次女・愛美(内田慈)は東京で、三女・清美(古川琴音)は母と実家で暮らす、という家族。お母さんの誕生祝いに、みんな揃って温泉旅行に行こうということになった。わりとひまな次女が幹事役だ。

バースデーケーキは旅館に頼んだ。長女はちゃんとプレゼントを買って用意している。結構ラフな次女は、旅行の手配で手一杯。三女はお姉ちゃんたちにも内緒の、サプライズを仕込んでいた。宴席で結婚発表を母へのプレゼントに、というアイデアで、彼氏を旅館によんでいたのだ。母が喜んでくれて、めでたしめでたし! の、はずだったのに……。

気づけば、物語は盛大な姉妹喧嘩の修羅場と化す。三人は、これまでのわだかまりを一挙にはきだす。それぞれをなじりあいながら、考えている結婚観、人生観、そしてずっと抱えてきた気持ちを吐露する。「母親みたいな人生を送りたくない」というのが共通の思い。たぶん騒ぎの元凶であろう母は、自室にこもって姿はみせない。

三女の彼氏・タカヒロ(ネルソンズの青山フォール勝ち)はいいとばっちり。でも彼は、なんとも人のいいナイスガイ。ドラマ全体でも、彼の存在がいいクッション役になっている。

三人の女優の“演技バトル”も、みどころだ。

最初は、『恋人たち』のように、ワークショップから新人のキャストを選ぶ方式を考えたが、原作が舞台作品のため、セリフも多く、力のある俳優で作るべきと思い直してキャスティングされた。

中心となる長女役には早くから江口のりこの名があがっていたという。ダメもとで、超人気者の江口にオファーしたところ、「橋口監督の作品なら」と脚本も読まずにOKがでた。

次女役の内田慈は、原作の舞台でもこの役を演じている。橋口作品の『ぐるりのこと。』で映画デビューし、『恋人たち』にも出演している。

長女と次女は常日頃から軽い口喧嘩をしていそうだが、三女はみんなにかわいがられている存在。

三女役の古川琴音は、初の橋口作品出演。映画『言えない秘密』ではSixTONESの京本大我と、この夏のドラマ『海のはじまり』ではSnow Manの目黒蓮と共演。ことしの顔のひとりといっていい。

この3人がひたすらしゃべり、はてはつかみ合いのバトルまで繰り広げる。その本音のぶつかりあいがハラハラさせ、かつ楽しい。

なかでも、江口のりこはでてくるだけで、場をさらう。黒縁のめがね。鼻になにやら白い絆創膏のようなものをつけ、登場するなり、不気味オーラを発散する。うっくつを全身で表し、人の話をきかず、相手批判を速射砲のようにくりだす……。実際に近くにいたら大変だが、映画なら安心してなすがままを愛でられる。

見終わると、たぶん、自分の家族や親戚、身内のなかで、うっとうしい、面倒な誰かのことを思い出す。そして、まてよ、自分がその誰かではないだろうなと胸に手をあてて、そうでないことを願う。

文=坂口英明(ぴあ編集部)

【ぴあ水先案内から】

佐々木俊尚さん(フリージャーナリスト、作家)
「……シンプルさが逆に効を奏して、三女一男の四人の関係性がキレイに浮き彫りになり、それぞれの愛らしいところと嫌味なところという性格の両面も見事にわかりやすく描かれる……」

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