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「はじめまして、タデクイです」【後編】ぴあ音楽編集部イチオシアーティストインタビュー

音楽

インタビュー

ぴあ

左から)下倉幹人(vo/g)、OMI(ds)、廣野大地(b) Photo:吉田圭子

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Text:吉羽さおり Photo:吉田圭子(インタビューカット)

北海道釧路市の阿寒湖畔出身で、幼馴染の3人で結成したバンド、タデクイ。札幌を中心に活動をし、今年3月には初音源「日常」、「屁理屈」を配信リリース。3月8日には1stワンマンライブ「ブルースを蹴飛ばせ」を札幌cube gardenで行なった。また現在は、10代限定夏フェス「マイナビ 閃光ライオット2024 produced by SCHOOL OF LOCK!」にエントリーし好感触を得るなど、今年はバンドが大きな一歩を踏み出していく年となっている。

タデクイというバンド名は、ことわざ“蓼食う虫も好き好き”からきたもので、ジャンルにとらわれず自分らしくある思いで冠した。ここからその歌とライブでリスナーを増やしていくだろう3人にインタビューをした。前編ではタデクイの音楽について、後編ではライブやこれからへの想いを語ってもらった。

★前編はこちら

──タデクイのライブについて聞いていきます。今年3月8日には1stワンマン「ブルースを蹴飛ばせ」も行ないましたが、結成からライブを重ねてきて、サウンド面での変化はもちろん、ライブへの姿勢など変わってきたことはありますか。

廣野大地(b) ロックバンドにしかない魔法というか、力みたいな。俺は最近結構そういうものは感じるし、意識するかな。

下倉幹人(vo/g) たしかにね。最近観たNOT WONKとかめっちゃやばかったしね。

大地 本当にすごかった。そのときのNOT WONKはベースがふたりとドラム、ギター・ボーカルという編成だったんですけど、基本NOT WONKはタデクイと同じ3ピースだから、バンドとしての練度の差をひしひしと感じたというか。

3月8日1st ワンマンライブ「ブルースを蹴飛ばせ」 @cube garden Photo:HAJIME NOHARA

──NOT WONKもまた、彼らでしか鳴り得ないようなアンサンブルであり、NOT WONKならではの空気感を放っていますね。

下倉 そうですね。ただああいう感じにはなりたいけど、俺は意識しすぎると寄っていっちゃう気がするから。

大地 それはすごくある。

下倉 そこが難しいところですよね。

──ちなみに3月のワンマンのときに登場SEでマディ・ウォーターズの「Mannish Boy」を使っていたじゃないですか。以前からあの曲で登場しているんですか。

OMI あの曲はthe hatchの宮崎良研さん(g)に教えてもらったんですけど。これやばくない?っていうので、昨年「しゃけ音楽会」に出たときにノリで一回SEに使ってみたらすごくよかったんですよね。

下倉 気合いが入る。

OMI そう、あのはじまりのじわじわ具合とかが。

3月8日1st ワンマンライブ「ブルースを蹴飛ばせ」 @cube garden Photo:HAJIME NOHARA

──すごく印象的だったんですよね。いろんなアーティストにカバーされている、これぞブルースな名曲SEで3人が出てきて、いきなりぐっと観客を掴んでいく演奏で魅せるっていう。それもまたこのタデクイならではの空気を作る入り口になっていたなと思いますね。

大地 逆にハマりすぎてウケたよね。

下倉 お客さんがめっちゃ湧いてるんですよ、え、SEで?っていうくらい(笑)。

──幅広い世代に引きがありそうな選曲ですよね(笑)。

下倉 みんなで聴いて、これかっこよくね?ってなるのめっちゃ楽しいじゃないですか。バンドでも、そういうのをやりたいんですよね。

3月8日1st ワンマンライブ「ブルースを蹴飛ばせ」 @cube garden Photo:HAJIME NOHARA

──タデクイというバンドの音楽的な幅広さも伺いましたが、タデクイをはじめたときって、こんなバンドになろう、こういうバンドになりたいっていうのはあまり作らなかった感じですか。

下倉 全然なかったかな。とりあえず3人でセッションをしていた感じだったので。

大地 元々が音楽性で集まったバンドじゃないからね。

OMI ほんとそうだね(笑)。

大地 今やろうとしているバンドはめっちゃそういう話をする。

下倉 へええ!

──大地さんは今年進学で上京をしているんですよね。東京で、タデクイとは別にバンド活動をしようという感じですか。

大地 最近はじめようとしています。

下倉 そういうのも面白そうだよな。

大地 それで改めて思ったけど、この3人でやっているときの感覚は、どのバンドにもないんじゃないかなって。バンドのはじめ方が違いすぎるから。

3月8日1st ワンマンライブ「ブルースを蹴飛ばせ」 @cube garden Photo:HAJIME NOHARA

──幼馴染という関係性は、また特別なものはあるでしょうね。

大地 OMIとは僕が2歳のときから一緒ですからね。幹人とは、僕が5歳で幹人が6歳で会っているんですけど。しかもOMIとは家が隣同士なんですよ、やばくないですか?

──お隣同士で育ってきて、今こうしてバンドやっているというのはなかなか聞いたことがないですね。

下倉 今さら何の話するの?みたいなことですよね(笑)。それでも真面目な顔してバンドの話とかするわけでしょ? たまに笑っちゃいますよ、不思議だよねって。

OMI でもやっぱりセッションするときは他の誰とやるよりも楽っていうか、やりやすい感じはするかな。

下倉 爆発するのが早いよね。

大地 それぞれ楽器をはじめたタイミングは違うけど、3人とも前身バンドが初めてのバンドだったし、その頃は今より3人とももっと下手だったし。そこから成長段階がずっと一緒だったのは大きいと思う。

下倉 おもしろかったよな。その中学のときの前身バンドでは、ブルーノ・マーズとかコピーしてたんですよ。

大地 ブルーノ・マーズとディープ・パープルとくるりみたいな(笑)。すごい変な取り合わせで。

下倉 何がやりたいの?みたいな。やりたいことしかやってませんみたいなことをやってたんですよね。

──ある種それは、タデクイの原点と言えるかもしれないですね。

下倉 間違いないですね。めっちゃ楽しかった。

タデクイ 1stワンマンライブ「ブルースを蹴飛ばせ!!」より「グレア」「やさしさ」

──そうやって前身バンドからいろんな音楽やジャンルをやっていって、タデクイになったときの自分たちの色とか、こういうのが好きかもなっていう輪郭が見えてきた感じですかね。

下倉 そうですね。自分で見つけることもできるんだっていう感覚かな。好きなものが増えていくし、観るものも増えたし。その上で、これは好きで、これはそうでもないなという気持ちが出てきたというか。それまでは、音楽に対して受け身だったんです。俺のお袋がミュージシャンなんですけど、ライブについていって、その場にいたから聴けた音楽みたいな感じだったけど。自分でライブに行って観る・聴くとか、自分でSoundCloudでディグって見つけて、これめっちゃかっこいいじゃんってこともできる。友達がやってるバンドを観て、かっこいじゃんっていうのも増えたし。それは阿寒湖畔にいたからじゃなくて、札幌に出たから広がったものでもあるし。そういう移ろいに比例して、自分たちもまた広がったというか。さらに今は、大地が東京に行ってるし。

──東京での交流から広がることや、新しいバンドとのつながりもできそうですね。

大地 ひとりで音楽を聴いているときよりも、友達や環境でもだいぶ音楽は変わっていますよね。

──音楽を作る上でやライブでも、タデクイの音楽を聴いてくれる人がいるという、リスナーを意識することっていうのはあるんですか。

下倉 そこは正直ごめんなさいなんですけど、ないんですよね。

大地 俺は最近やっとお客さんというか、観てくれる人というのは意識するようになったかな。

下倉 ライブではないんですけど、ただ歌の対象というのはなんとなく決めたりはしていますね。それは人だけじゃなくてものとか、概念とかもそうだし。例えば、これは海に歌う歌だっていうものとか。どんなにバンドの規模感が変わっても、やっていることは同じにしたいんですよね。

──なるほど。今年、閃光ライオットにエントリーをして、6月には第3次ライブ審査まで進んでいますが、こうしたオーディションにトライして得ている感触はありますか。

下倉 オーディション自体に弱いバンドだと思っていたので、3次審査に行けると思ってなかったんです。昨年も応募をしてて、2次審査で落ちてしまっていて。だからやったーって思ったのと同時に、伝わればいいなっていうのはありますね。今、あまり聴き馴染みのある感じの歌ではないかもしれないから、好きになってもらえるかなっていう不安はあるんですけど。コンディションはいい感じなので。

──普段、これだけたくさんの同世代のバンドと一緒になる機会もそうないのでは?

大地 前に釧路でも一回あったんですよね。そのときに出会っている友達とかは、今も仲が良かったりするんです。というか、逆に後になってつながった感じがあったのかな。その当時に出会ってこんな人たちがいるんだなって思っていたら、その後に札幌でも会うようになったりとか。

下倉 だから長い付き合いになるよね。

──同世代と一緒にやる、閃光ライオットのようないろんなバンドが出ているなかで、よりタデクイの個性が自分たちでも見えてきそうですよね。その辺りはどうですか。

下倉 結構、浮き彫りになっちゃうかな。きっと、何が足りないのかもわかるし、どこが強みかもわかればいいなって思うし。

──現時点で、バンドの強みだなって思うのはどういうところですか。

下倉 ジャム感みたいな。各々の技量と、この3人ならではの感覚の部分ですよね。ただそれは周りに伝わるものなのかって言ったら、そうでもないのかな。人から見たらどうなんだろう?

──伝わるんじゃないですか。ライブの映像でも、この3人の独自の空気感は伝わってきたくらいですから。さらに、今後ここを伸ばしていきたいなというところはありますか。

下倉 ちょうど昨日話していたんですけど、アレンジをもっと詰めたいんですよね。どうしても3人でスタジオに入るとジャム・セッションになりすぎていて、こういう展開をするっていうふうに決めてやることがあまりないから。逆に作り込んでやってみたいんですよね。そういうタイミングや時間を作りたい。合宿とかしたいですね。

──やりたいことや音楽性はどんどんこれからも出てきそうですが、バンドとしての展望、こういうバンドになっていたいという未来像っていうのはありますか。

下倉 俺、今日マイケル・ジャクソンになりたいって言ってたんですよね(笑)。マイケル・ジャクソンの「キャプテンEO」のTシャツを着てきてるんですけど──。

──ディズニーランドにあったマイケル主演のアトラクションでしたよね(3D映画アトラクション)。

下倉 「キャプテンEO」って、マイケルが愛のビームを撃つんですけど、音楽で魔女たちを天使に変えるというのが最高なんですよね。曲もめっちゃかっこいいし、これってリアルでもできるじゃんって思って。それにめっちゃなりたいんですよね。マイケル・ジャクソンは憧れますね。あとは「tiny desk concerts」(米国公共放送NPRがネット展開する音楽コンテンツ)にいつか出たい。

OMI 日本版の方で?

下倉 日本版もいいけど、向こうに呼ばれるくらいになりたいかな。

──さっきのマイケルの話ですけど、魔女をやっつけるじゃなくて天使に変えるという、その発想がいいなという感じですか。

下倉 そう。愛で救うんですよね。みんな幸せになれるじゃんっていう。サマー・オブ・ラブですよね(笑)。それをやりたい、俺はね。

大地 俺はまだ、ポップスを聴いてきて好きだからやっているだけで、ポップスをやっている人たちが言うような、“みんなを”っていう感覚がまだあまりなくて。好きだからやっているというのが大きいかなあ。

下倉 もちろん、俺もそれが根底にはある。めっちゃ好きで、その上でそれをきっかけに幸せになれる人がいるみたいなね。自分が好きでやっているものの、その向こう側に人がいるのって、結構あり得なくない?

OMI そうだね。

大地 俺はまだライブ規模でやっと考えられるようになっている感じかな。誰かのライブを観て自分が最高だなってなった感じを、自分も誰かにさせられたらいいなっていうのはやっと意識したくらいだから。

──これから東京でライブをするペースっていうのは、増えそうですか。

下倉 今のところ年1回くらいになっているので、今年中にまた来たいなというのは思っていますね。

OMI 僕と幹人は札幌ですけど、今は大地が東京にいるから、いろいろできることもあると思うし。

──対バンはどういう感じがいいとかあるんですか。

下倉 かっこよかったらいいなって思います。

大地 今、札幌とかもやばいからね。

下倉 知ってます? テレビ大陸音頭とか。

──SNSで話題になって、ニュースでも取り上げられていた高校生のバンドですよね。タデクイもそうですけど、若くて、おもしいことをやっているバンドが出てきてるようですね。

OMI あれは、やばいですよね。

──テレビ大陸音頭がっていうことじゃなく、SNS等でバズるっていうことに対してタデクイはどう思っているんですか。

下倉 バズりたいですよね(笑)。でもじわじわとやっていくのもいいかなと思うので。

大地 うん、バズるっていうのは結構危ないよね。

下倉 バンドに興味を持ってくれる人が増えるのはいいんですけど。俺らの感覚としては、たまにひいばあちゃんに会って一万円もらったくらいの感じがあったらいいなっていうか。

大地 それがバズるってこと!?

下倉 バズじゃなくても、200いいねついたとかでもいいんですよ、それってめっちゃうれしいじゃん? それがひいばあちゃんからお年玉じゃなくおこづかいで一万円もらう感覚っていう(笑)。バズを乗りこなす自信がないわけじゃないけど、どうしてもそれに引っ張られてしまう、そういう引力ももちろん生まれてしまうとは思うので。バンドとして、ちゃんと確信を持ってやりたいんですよね。

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