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アイナ・ジ・エンドが気づいた人間の性「依存も共存もなるようにしかならない」

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アイナ・ジ・エンド (撮影:友野雄)

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「女の人と生きるにあたって、絶えず暮らしに潜んでいるのが情念だと思うんです」と、語るアイナ・ジ・エンドは、どこから見ても無邪気な少女のような目をしていた。かつ、この世のすべてを知る高貴なクイーンのように、泰然とした雰囲気も併せ持っている。

『劇場版モノノ怪 唐傘』の主題歌「Love Sick」では、ふたたびTK(凛として時雨)プロデュースのもと、映像の色彩をそのまま音や声に落とし込んだ世界観を展開。彼女の脳内には、どんなイメージが広がっていたのだろうか。

「女って怖いな、って思います」

この「Love Sick」には、中毒性がある。一度聴いたら、またもう一度再生したくなる魅力、いや、魔力がある。最初にそう投げかけると、アイナは「ほんとうですか? お腹いっぱいにならなかったですか?」とカラッと笑う。

「この『劇場版モノノ怪 唐傘』って、映像における色彩感覚が、もう唯一無二なんですよね。煌びやかだけど、どこか歪にも見える。めちゃくちゃおもしろくないですか?」

今回の楽曲は、TK(凛として時雨)による作詞・作曲プロデュース。『機動戦士ガンダム 水星の魔女』Season2のエンディングテーマ『Red:birthmark』以来だ。彼のつくるサウンドも、アイナいわく「煌びやかだけど歪で、綺麗だけどエキセントリック」。『劇場版モノノ怪 唐傘』の色彩感覚とリンクするような音像を前に、彼女自身も挑戦した。

「自分も負けないように、いろいろな引き出しを開けて、この歌い方をしよう、あの歌い方はどうだろう、と試行錯誤しました。この映画って、女の人の情念がものすごく渦巻いている映画だと思うんです。女の人と生きるにあたって、暮らしのなかには絶えず情念が潜むものだし、女って怖いな〜って思うし(笑)。でも、それが可愛らしくもあるというか。「Love Sick」にも、歌詞の至るところに女の人の情念が滲んでいるんですよね」

彼女が挙げた、映画と楽曲の共通点は「情念」。急勾配なメロディに、負けじとついていくような歌詞を追いかけていくと、確かにいまにも壊れてしまいそうなデリケートな心が見え隠れする。それでも、最後に仄めかされるのは「光」だ。

「最後は、ちょっと希望が見える歌詞で終わらせてもらっています。壊れてしまいそうだけど、でも会えそう……っていう、光みたいなものが見えて終わる。この部分に至るまでに、いろいろな歌い方をしてみました。いつもより声を歪ませたり、「Love Sick(ラブシック)」ではなく『ラブジック』に聞こえるように歌ったり。私なりの情念を模索した結果を聴いてもらえたら嬉しいです」

共依存を表現に昇華するのが、楽しかった

「Love Sick」という曲名の意味は「甘い病」。ほかにも「恋に悩む」「恋に疲れる」「愛のために惨めに生きる様」といった意味合いもある。アイナ自身が、ちょっと疲れちゃうくらいに好きな“愛の対象”は? と問いかけると、即答で「飼っている犬です!」と返ってきた。

「間違いなく葉蔵(ようぞう)です。今年(2024年)の4月上旬に、私がアメリカに行ってたんですけど、帰ってきて久しぶりに葉蔵に会ったら、ぜんぜんハウスから出てきてくれなくなっちゃって。2〜3日くらい様子を見てたんですけど、もうご飯も食べないんです。一緒に寝てたのに寝てくれないし、病院に連れて行っても異常なしで。もう心配やし、寂しすぎてエグいくらい泣きました。犬にもそういう、反抗期みたいなのあるらしいんですよ。あんまりにも寂しすぎて、無理やりハウスから出して抱っこしようとしちゃったんですけど、抵抗されちゃいました」

人も生き物も、好き! という気持ちを押し付けて無理やり距離を詰めようとすると、避けられてしまう。「人間関係に置き換えられるな、と思って、勉強になりました」と過去の経験を振り返ったアイナ。当時の彼女の脳内には、まさに「Love Sick」が流れていたとか。

何かを好きになりすぎたり、依存しすぎたりすると、まさに「病」のように我を見失うこともある。アイナ自身は、行き過ぎた愛や依存を、どのように捉えているのだろう。

「それこそ、若いころは……とか言っちゃう年齢になってきたんですけど(笑)、若いころは共依存とかを経験すると、それを表現に昇華するのがすごく楽しかったんです。歌詞にしたり、振り付けにしたりするのが楽しくて。共依存、大好きだったんですよね」

しかし、年齢を重ねるにつれ、気づいたことがある。それは、物事はなるようにしかならない、ということ。

「たとえば、何か悲しいことが起こったとき。無理して笑えば笑うほど、よけいに悲しくなるってことに気づいちゃった。人を好きになりすぎることも、依存することも、共に依存し合うことも、もう全部なるようにしかならないし、仕方ない。だから、それが良いか悪いかっていうよりは、寂しいもんね、人間の性だもんね、って思うようになりました」

彼女自身、何かに依存している自分に気づき、嫌悪感に苛まれたことも多かった。「早く打破したい、こんな自分がイヤで仕方ない……。そんな不甲斐ない心で生きてたんですけど、もう、それに疲れちゃいました」と笑うアイナは、あっけらかんとしている。ガールズグループ・BiSHとして、一人の表現者として、駆け抜けてきた過去は軽くはない。それなのに、あまりにも明るく笑うギャップは、愛おしみに溢れている。

一緒につくる人によって、作品は変わる

『劇場版モノノ怪 唐傘』の舞台は大奥。新人女中として大奥にやってくる、二人の女性キャラクターがいる。一人は気立てがよく能力もあり、すぐに大奥のルールに馴染んだアサ。そしてもう一人が、なかなか仕事をうまくこなせず、大奥に疎外感を持つカメだ。

「私はカメに共感します。アサとカメの関係性って、私が初めて主演させてもらった映画『キリエのうた』に出てくるイッコ(広瀬すず)とキリエ(アイナ・ジ・エンド)に、なんとなく似てるな〜と思っていて。すずちゃんのイッコはしっかりしていて、お姉さんっぽくって、アサに似てる。私のキリエはおっちょこちょいで、妹っぽくて、カメみたい。シスターフッド感があるな、って。カメに共感しつつ、でも推したいのはアサですね」

できないことがあったら、できるようになるまでコッソリ努力するタイプのアサ。そんなところがいじらしく、愛おしいけれど、アイナが共感するのはカメのほう。自身をカメのキャラクターに重ねて「できないことはできない! と伝えて、人に甘えてしまう」と分析するが、女優や声優など、現在のソロアーティスト活動以外にも表現のステージを増やし続けている彼女を見ていると、決して甘えは感じない。

「いやもう、必死です。現場ごとに必死! 『この人の名前覚えないと〜』とか『この人はこういう立ち回りをしてるんや〜』とか、頭の後ろにも目をつける勢いで必死(笑)。でもその必死さを表には出さないから、周りからは『楽しんでるね!』って言われます。一緒に携わってくださる方によって、作品の表情も変わっていきますよね」

自分でも、自分の変化が楽しみ

必死でありつつも、現場ごとの作品づくりを楽しめる秘訣は「人の良いところを見つけること」。アイナは過去のインタビューでも、繰り返し「人が好き」と公言している。

「本人が気づいていない長所を見つけて、伝えるのが得意なんです。みんな『難しい!』って言うけど、ほんとうはできるんですよ。人の良いところを見つけ出す、その感性を研ぎ澄ませるほど、周りも自分のことを知ろうとしてくれるし、良い空気が漂ってくる気がします。だから、新しい現場で新しい挑戦をするときの恐怖や緊張は、『どんな出会いがあるかな?』『どんな人がいるかな?』っていう楽しみ、ワクワク、好奇心に変えるんです」

恐怖や緊張は消えない。それでも、その感情ごとワクワクに変換する。BiSHとして活動していた初期、馬糞まみれでMVに出演したり、スクール水着でライブに立ったりしていた彼女だからこそ、底知れない説得力がある。どんな現場でも臆しないでぶつかる、そんなアイナの姿を、誰もが放っておかない。

「めっちゃブチ切れてる人がいたら、『あの怒鳴り声、シャウトみたいやな……』とか思って、あとで言いにいくんです。そしたらご本人も『ちょっと怒りすぎたかな……』って態度が柔らかくなって、少し和やかになるというか。そういう空気を変えていきたい。なるべく、怒ってる人を減らしていきたいんですよね」

2024年9月、アイナ・ジ・エンドとしての初武道館公演が控える。「8年間、BiSHとしてやってきました。一人きりでステージに立つことに、ようやく実感が持ててきたところです」と現在地を確認するように、新たな挑戦を前にした心境を教えてくれた。

「怖い、失敗したらどうしようって、不安です。でも、楽しみでもあります。武道館の日までに、自分がどんな進化をしているか、自分がいちばん楽しみにしている感じ。これまではライブパフォーマンス中に倒れちゃうこともあったんですけど、そろそろね、落ち着いてほしいですよね(笑)。でも、もう自分のこと、操れないんですよ。武道館の日も、自分で自分を操れないと思います。だから、自分がどんなふうになっているか、楽しみなんです」

なりふり構わず突っ走ってきた。そんな言葉が似合う彼女だ。自らをアンコントローラブルな存在として解放しているアイナ・ジ・エンド。次々と新しい挑戦をし、引き出しを増やし続け、人が好きだ! と高らかに言う彼女に、これからもついていくしかない。

取材・文:北村有 撮影:友野雄

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<作品情報>
『劇場版モノノ怪 唐傘』

7月26日(金) 全国公開

『劇場版モノノ怪 唐傘』本ポスター (C)ツインエンジン

配給:ツインエンジン ギグリーボックス

公式サイト:
https://www.mononoke-movie.com/

9月11日(水) に開催されるアイナ・ジ・エンド初の日本武道館公演『ENDROLL』のチケット情報はこちら:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2452975

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