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前川知大×安井順平×森下創×大窪人衛にインタビュー 舞台『奇ッ怪 小泉八雲から聞いた話』がまもなく開幕へ

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左から)前川知大×安井順平×森下創×大窪人衛 (撮影:五月女菜穂)

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「イキウメ」による舞台『奇ッ怪 小泉八雲から聞いた話』が2024年8月9日(金) から東京芸術劇場 シアターイースト、9月5日(木) から大阪・ABCホールで上演される。

小泉八雲『怪談』を原作として、前川知大の脚本・演出で2009年に初演された本作。古びた旅館を舞台に、ある事件を追ってきた男たちと、そこで出会った人々によってかわるがわる語られていく奇怪な物語だ。今回は、15年ぶりのリメイク上演となる。

どんな舞台になるのか。脚本・演出の前川知大、出演する劇団員の安井順平、森下創、大窪人衛に話を聞いた。

ーー今回は15年ぶりのリメイク上演です。どのようにリメイクされるのでしょうか?

前川知大(以下、前川) 15年前の自分の作品を読み直すと、今の自分とはちょっと違う書き方をしているというか、手触りが今と少し違ったんです。「今の劇団でやったらどうなるんだろう?」という思いから始まりました。

……15年前の作品をビデオで見返すと、自分から小泉八雲の世界に近寄っていくような感覚を感じなかったんです。今回は“小泉八雲っぽさ”とは何かをしっかりと考えて、演出に取り入れていこうと思います。

具体的に言うと、前回はビジュアルだったり、視覚的にびっくりさせたりしていたんですけど、やっぱり小泉八雲って“言葉の人”というか“聴覚の人”だと思うんです。「再話」として、語られたものを聞き、そしてまた語っていくことを重視していた。もともと演劇って聞くものだったと思うし、視覚的な効果ももちろんあるけど、今回は何かお客さんの耳元で語っているような感覚、語られているような感覚を狙っていきたいなと思っています。

前川知大(撮影:田中亜紀)

ーー稽古場で“小泉八雲講座”のようなものも実施されたそうですね。

前川 そうですね。小泉八雲に関するテレビの特集を見たり、今回の原作を持ち込んだりして、みんなが小泉八雲とちょっと距離感を縮められるようにしています。

ーーそれは初演のときはあまりやらなかった作業ですか。

前川 そうかもしれません。僕の記憶だと、2009年に初演を上演して、2010年がちょうど八雲の生誕160周年だったので、(八雲の縁の地である)松江に行って、イベントに参加させてもらったんですよね。八雲が実際に過ごした街や住んでいた家を訪れたり、いろいろなイベントで彼のことに触れたりして、小泉八雲との距離がぐっと縮まった記憶があるんです。

だから初演時はそういった部分を手がかりにするというよりは、多分自分の方に原作をぐいっと引っ張って作ったんだろうと思います。

ーー「奇ッ怪」シリーズを他にもやられてきた中で、なぜ今回あえて初演に戻ろうと思われたのですか?

前川 ひとつは、みんながあのときの先輩方の年齢になったというのが大きいかな。それから僕らは意識的に語りものをやるようになった。語り手と聞き手がいて、語られている物語を演劇として立ち上げていく手法をずっと続けてきたんです。語りとシーンとがシームレスな演出。それがみんなすごくうまくなったんですよ。もう異常に進化したと言っていいぐらい。

「奇ッ怪」という構造が、語りと演劇みたいなものが、僕の中でも、劇団の手法としても、どんどん進化していったからこそ、そのスタート地点に戻ってみるのは面白いと思ったんです。

撮影:田中亜紀

ーー改めて小泉八雲の魅力はどういうところにあると思いますか?

前川 文章もすごくシンプルだし、そんなにおどろおどろしくしないんです。きっと八雲自身がそういう人だったと思うんですけど、騒がしいのが嫌いで、静かに人の話を聞いてドキドキしているようなタイプだったと思います。

八雲は妻のセツさんに毎日のように物語を語ってもらいました。記憶が曖昧だとしても、セツさんの中で変わっていくことを良しとしていた。話が人の中を通って変わっていくことを受け入れていたし、むしろ、それを大切にしていた人だった。そういう柔軟さとか優しさとか寛容さとか、よく八雲を語るときにオープンマインドという言葉が出てきますけど、ピュアに現象や人間を見るタイプの人だったと思うんですよね。

自分の意図みたいなものをそんなに強く出さない。自分が美しいと思ったものを美しく書き記したい。怪談もいっぱい書いているけど、それで人を怖がらせようという意図が全然見えない。それがすごく良くて。

「よし、怖がらせてやるぞ!」という作品もお化け屋敷みたいで面白いんだけど、ただ「こんなことあったね」と言われるだけで、人によってはゾッとするし、人によってはホッとするような話もある。「人間ってこうだよね」みたいなことをすっと差し出すような感じが小泉八雲の本にはあります。

そういうところが八雲らしいなと思うし、自分が作品を作ったり、本を書いたり、演出したりする上でも、近い感覚があるんですよね。

ーー出演される皆さんは、今回の脚本を読んでどんな感想をお持ちですか?

安井順平(以下、安井) 僕は初演には出ておらず、観客として観にいきました。当時の台本は持っていないんですけど、多分そんなに変わっていないと聞いています。

仲村トオルさんや池田成志さんら、初演時の先輩たちが出ている演目を僕らがやること自体がまず感慨深いですけども……ただ、恐らく当時の成志さんの年齢より、今の僕の方がちょっと上なんですよね。 そうしたら「それ以上のものをやらなきゃしょうがねえな」と思っていますよ。

今回はイキウメ流の『奇ッ怪』Part1となればいいなと思っています。

安井順平(撮影:田中亜紀)

ーー“イキウメ流”というのは、どの辺りに出るのでしょうか。

安井 うーん、口で説明するのは難しいな。最終的にはお客さんが思うことですしね。いろいろお芝居観ていて、「来た来た!」「来ましたね、この感じ!」という感覚ありません?その感じは残しつつですね……最近は、めちゃめちゃトリッキーな演出ーー例えばコロスをやったり、演者にとって難易度の高い演出がありましたけど、 そういうのは今回はあんまりやらずに、その初期の頃のイキウメに戻りつつ……丁寧に紡ぐのはもちろんなんですけど、雑味みたいなものをプラスできたら。

なにせ「小泉八雲から聞いた話」ですから。小泉八雲から直接聞いた人は、別の人にその話をし、またその人も別の誰かにその話をし……だから、もしかしたら話がだいぶ変わっているかもしれないし、それぞれが話を盛るなどアレンジしているかもしれない。そういう雰囲気を劇で出せないかという発注が前川さんからあったんです。だから究極、台本覚えずに、うろ覚えで喋るのもありかもしれない。そんなことに、今回は挑戦してみようかなと思っています。

ーー森下さん、大窪さんはいかがですか?

森下創(以下、森下) 僕も安井さんと同じような感覚を持っています。初演は客席から観ていました。

トオルさんや、成志さん、小松(和重)さんたちがすごいエネルギーを出していましたが、今の僕らがこの作品をやるといったときに、俳優としては全然違う立ち位置と、キャラクターで……自分はどういうことができるのか。稽古場でチャレンジしています。

劇団でやるということについては、僕らは個々でというよりは、全体でひとつに収束していくというやり方をずっとやってきているので、今回もきっとお話の見え方がずいぶん変わるんだろうなと思っています。

森下創(撮影:田中亜紀)

大窪人衛(以下、大窪) 僕は初演のときは、20歳で専門学生でした。当時のことは全然知りません。前回を生で観ていないから、そんなに先入観がないんです。

DVDを見たのですが、印象としては、先輩たちが大暴れしている感じです。前川さんの作品なんだけど、はみ出てる部分がいっぱいあって、そこをお客さんがすごく楽しんでいる印象を受けました。

イキウメは居(い)方を稽古場で探る集団だと思うので、安井さんが仰っていた雑味みたいな部分は残しつつ、イキウメ流の居方も出していく。その真ん中を狙うのが今楽しくもあり、難しくもありという感じです。

大窪人衛(撮影:田中亜紀)

ーー客演の松岡依都美さん、生越千晴さん、平井珠生さんについてはいかがですか。

前川 今回1番大きく台本を書き直したのは、前回は劇中劇にしか出てこなかった人物がいたのですが、今回は現実にも存在するという設定にしています。全員が現実というか、一応の見た目上の現実に存在していて、その人たちで物語を紡いでいく形です。

そんな中で、旅館の女将といったら、もうすごい松岡さんがぴったり(笑)。何より着物を着たときの説得力がすごかったです。

安井 確かに女将さん感が半端なかった。

前川 だからもう既に高得点を叩き出しています(笑)。

そして、生越さんについては、ふたりいる仲居のどちらでもいけそうな感じがしていて、とりあえずスケジュールを聞いてみたところ、なんと生越さんは松江の人で!高校の同級生が、小泉八雲のひ孫の小泉凡さんのお子さんと同級生だったそうなんですよ。そのご縁もあって、今回の話が来たことをすごく喜んでいました。小泉八雲って、そういうご縁とか偶然とかシンクロニシティみたいなことがすごく好きなんですね。だから、これも「よし!」という感じがすごくあって(笑)。

平井さんは以前別の作品のオーディションで来てくれたんですが、少女っぽい雰囲気の中に、ちょっと妖怪っぽいイメージもあるのがこの作品にいいなと。ペアになる(大窪)人衛とのバランスも考えて今回お願いしました。初参加で緊張していますけど、面白い感じが出てきています。

撮影:田中亜紀

ーー最後に観客の皆さまへメッセージをお願いします!

森下 真夏に劇団公演をやるのは、初めてです。時期にマッチした作品です。

大窪 夏のスケジュール帳を照らし合わせて、楽しみにしていただけると劇団一同嬉しく思います!

安井 ひとつだけ声を大にして言いたいことがあって。怪談話というと「とても興味があるんだけど、怖い話がダメなので、今回は行きません」という人が一定数いるんですよ!「怪談なら行かない」と。

ちょっと待った!そんなに怖くないです!(笑)。
「小泉八雲から聞いた話」なので、尻切れトンボで終わったり、「なんだったんだろう、あれは?」とどちらかというと不思議な現象だったりするんです。大きな音で驚かせるとか、真っ暗を見たらぐちゃぐちゃの人体が……みたいな場面はないですから!

そこはあんまり心配せずに観ていただきたい。怖さと笑いは表裏一体で、怖い話であればあるほど、裏には笑いが潜んでたりすると思いますし、きっとエンターテイメントに仕上がっていくと思います。

前川 もともとプロデュース公演用に書いたし、原作があるし、普段のイキウメよりも分かりやすいというか、間口が広いと思います。原作があるからこそできる“ベタっぽい感じ”もあって、初めてイキウメを観る人も多分面白いんじゃないかなと思います。劇場でお待ちしています。

撮影:五月女菜穂

取材・文:五月女菜穂

<東京公演>
イキウメ『奇ッ怪 小泉八雲から聞いた話』

公演期間:8月9日(金)~9月1日(日)
会場:東京芸術劇場 シアターイースト

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2416318

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