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矢井田 瞳“大人の大人による大人げない盛り上がりが楽しい”デビュー25周年記念弾き語りツアー開幕 

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『弾き語りツアー〜GUITAR TO UTA 24-25〜』矢井田 瞳

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Text:宮本英夫 Photo:スエヨシリョウタ

矢井田 瞳がシングル「B'coz I Love You」でメジャーデビューを果たしたのは、2000年7月のこと。あれからいくつもの思い出を積み重ね、デビュー25周年を記念する『弾き語りツアー〜GUITAR TO UTA 24-25〜』がいよいよ始まった。7月28日の東京・duo MUSIC EXCHANGEから来年4月まで、およそ9カ月をかけて全国を回るロングツアーは、たったひとりの弾き語りで、25周年を振り返るヒット曲や人気曲をファンと共有する特別なステージ。満員の観客と共に最高のスタートを切った、初日公演の模様をレポートしよう。

矢井田 瞳『弾き語りツアー〜GUITAR TO UTA 24-25〜』に選ばれたのは、小さめのホールやライブハウス。身近な距離でファンと共に25周年を楽しもうという、ヤイコらしい企画がうれしい。初日の客席には彼女と同年配の男女、親子連れも目に付く。ヤイコがデビューした2000年、子供たちはまだ生まれていなかったはずだ。それぞれの人生を乗せたアニバーサリーツアー、アットホームな空気の中で、いざ開幕。

ステージには二畳ほどのラグと、マイクスタンドとアコースティックギターだけ。温かい拍手と歓声を浴びて登場したヤイコが、ほの暗い照明の下でおもむろにギターを抱えて歌い出す。オープニングは「MOON」。華やかなアニバーサリーの始まりを、胸の内でぐっと噛みしめるような歌詞がやけに身に沁みる。「ハロー東京!」――ふんわりとした紫がかったレイヤードのチュールワンピース、ツアーTシャツに、ステージの照明で発色することを考えられて(この日のために)制作されたという、蛍光色のチュールベストを身に着けた矢井田 瞳は、25年選手に向かって言う言葉ではないが、とてもとてもかわいらしい。

「暑い中、ようこそおいでくださいました。元気にしてた? 今日はみなさんと一緒に楽しい時間を過ごしたいと思っています。久しぶりの曲もたくさんやっていこうかなと思っているので、最後までよろしくお願いします」

最初のセクションは、メジャーコードの曲調と力強いストロークで開放的に。ここから始まるセクションは、ややテンポを落としてメランコリックに叙情的に。「久しぶりにこの曲を」と言って歌った「孤独なカウボーイ」は、イントロなしの歌い出しでいきなり大歓声が沸き上がる人気曲。言葉にならないDA LA LAと歌う独特のフェイク、無国籍感のあるメロディは、21年の時を超えて未だに新鮮だ。この後も、雨の音や都会の雑踏のSEを曲にまぶしたり、足元のエフェクトを駆使して音色を変えたりディレイをかけたり。シンプルな弾き語りとはいえ、様々な工夫とカラフルな感情を交えながら聴かせる。ツアー初日の緊張感もあるはずだが、声の張りも艶も伸びも申し分ない。

「デビュー25周年を記念したツアーです。25年も音楽ができるなんて思っていなかったので、本当にみなさんのおかげです。年齢を重ねると、嫌なことだけではなくていいなと思うこともたくさんあって。切り替える力、受け入れる力、ちょっとやそっとのことでは動じない力が湧いてきている気がします」

ヒット曲ではないし、どちらかといえば地味な曲だし、でもみなさんのリクエストが多くて、私にとって大切な曲。そんなふうに紹介した「Maze」は、生きる不安と恋の喜びを、ゆったりスローバラードの中に閉じ込めた佳曲。初期ヤイコのエッセンスを詰め込んだ、こういう曲を弾き語りでゆっくり聴けるのが、このツアーの醍醐味のひとつかもしれない。中盤の構成は緩急自在な曲調を散りばめ、徐々に一体感を増しながらライブは進む。

今年中学三年生になる、娘の言葉にインスピレーションを受けて書いたという「駒沢公園」は、25年前にはきっと歌えなかった、近年のヤイコを象徴するようなメッセージ色の濃いフォークソング。子供たちが自由に羽ばたける世界でありますように――。今回のライブで、このセクションがたぶん最深部。かみしめるように祈るように、ギターを爪弾きながら歌う声が胸を打つ。時の流れと人の流れを経た、25年前とは違うしたたかな強さがそこにある。

「ここからは元気な曲をお届けしようと思うんですが。立てるよという人がいたら立ってください。行くぞー!」

待ってましたのラストスパートは、シングル連発でいやがうえにも盛り上がるキラーチューン祭り。「B’coz I Love You」も「My Sweet Darlin’」も、惜しげなく投下される大ヒットに大合唱が止まらない。今聴いても斬新なメロディと歌詞の絡み合いを、今の歌声でフレッシュに響かせるヤイコが凄い。リズムに合わせてクラップしたり飛び跳ねたり、20数年前に覚えた動きを今も完璧に決める観客がいとおしい。ラストは全員揃って大ジャンプで締めくくる、大人の大人による大人げない盛り上がりが楽しい。これがヤイコと観客の25年。

「今日は本当にありがとう。みんなそれぞれに大変な日々があると思いますが、そんな日々をたくましく生き抜いてほしい、そんな願いを込めて書いた曲を最後にお届けします」

ラストを締めるのは、昨年リリースの最新曲「アイノロイ」。支える手拍子のリズムと力強いストロークに乗って、80分間歌い切って未だみずみずしい歌声が映える。幸せの形は私が決めるの。25周年の音楽人生を生き抜いて、さらに先を目指すヤイコらしいフレーズが素晴らしい。

アンコールではまさかのサプライズ、「ハッピー・バースデー」の大合唱とバースデー・ケーキの登場に、本気で驚くヤイコ。そう、7月28日はナニワの日でもあり、そして矢井田 瞳の誕生日。「レベル46になりました!」と力強く宣言し、「まだまだ楽しいことを探していきます」と所信表明する、矢井田 瞳は未だ進化中。アンコールに応えながら「明日からも頑張れよー」と叫ぶ、この底知れぬパワーとエネルギーをもらうために、僕らはまた矢井田 瞳のライブに足を運ぶだろう。

長い25周年ツアーは始まったばかり。弾き語りの自由さゆえ、途中でセットリストのチェンジなどもあるだろう。季節の変化もあるし、ひょっとして新曲も加わるかもしれない、何が起きても楽しみしかない矢井田 瞳の『弾き語りツアー〜GUITAR TO UTA 24-25〜』。次はあなたの街の近くで、ぜひ。

<公演情報>
『矢井田 瞳 弾き語りツアー 〜GUITAR TO UTA 24-25〜』

●2024年
8月12日(月・祝)大阪・BIGCAT SOLD OUT!!
8月17日(土)仙台・誰も知らない劇場
8月18日(日)福島・郡山Hip Shot Japan
8月23日(金)北海道・PENNY LANE24
9月16日(月・祝)愛知・THE BOTTOM LINE SOLD OUT!!
10月19日(土)神奈川・Billboard Live YOKOHAMA(1日2回公演)
10月25日(金)大阪・Billboard Live OSAKA(1日2回公演)
10月31日(木)東京・Billboard Live TOKYO(1日2回公演)
11月30日(土)熊本・熊本ぺいあのPLUS
12月1日(日)福岡・福岡ROOMS
12月6日(金)石川・金沢市アートホール
12月7日(土)山梨・甲府CONVICTION
12月13日(金)神奈川・Yokohama mint hall
12月15日(日)沖縄・TopNote
12月21日(土)愛媛・松山市総合コミュニティセンター・コスモシアター
12月22日(日)香川・高松オリーブホール

●2025年
3月8日(土)栃木・高根沢ちょっ蔵ホール
3月9日(日)新潟・新潟県民会館 小ホール
3月15日(土)京都・京都磔磔
3月16日(日)兵庫・月世界
3月20日(木・祝)三重・松阪M'AXA
3月22日(土)島根・さんびる文化センター プラバホール
3月29日(土)山口・防府アスピラート 音楽ホール
4月4日(金)東京・WWWX

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/yaidahitomi-guiter-to-uta/

矢井田 瞳公式サイト:
https://yaiko.jp/

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