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勘九郎・七之助ら中村屋一門の魅力がたっぷり味わえる巡業公演

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左から)中村七之助、中村勘九郎 (撮影:武田敏将)

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中村勘九郎・中村七之助ら中村屋一門が「初めて歌舞伎を観るお客様にも楽しめるものを」と、選りすぐりの演目にトークコーナーを加えて各地を回る巡業公演。20年という節目になる今年は、ふたりの父・十八世中村勘三郎の十三回忌の年でもあり、1年を通して「十三回忌追善」を銘打った興行が続いている。10月2日(水) から20日(日) まで全国11カ所で催される『中村勘九郎 中村七之助 錦秋歌舞伎特別公演2024』も、祖父(十七世勘三郎)から父、そしてふたりへと受け継がれた作品を上演。7月24日、都内で行われた合同取材会の様子をお届けする。

今回は東京の3カ所と、群馬、神戸、和歌山、大阪、香川、広島、宮崎、鹿児島と回るスケジュール。各地の観客に毎回人気なのが、幕開きすぐのトークコーナーだ。

「客席の方たちと直接やりとりできる“質問コーナー”では、美味しいお店を教えてもらって実際に食べに行ったりしています(笑)。一方で、『今回初めて歌舞伎をご覧になる方はどれぐらいいらっしゃいますか?』と聞くと、7、8割のお客様が手を挙げられるんですね。やっぱり最初にご覧になる歌舞伎って大事ですから、見た目にも楽しく、音楽や振付も面白く見られる演目を選ぶようにしています」と勘九郎。

中村勘九郎

七之助も「演目の解説をしたり質問に答えたりと、僕たち自身も楽しみにしているのがトークコーナー。『こんな風にくだけた感じで歌舞伎を観ていいんだ』とか、『(解説の後なので)舞台を観ても入りやすかった』という言葉もいただいていますから、ぜひリラックスして劇場に来ていただければ」と話す。

トークコーナーの後は、『若鶴彩競廓景色(わかづるいろどりきそうさとげしき)』。吉原の年中行事「吉原俄(にわか)」に集まる江戸っ子たちを描く『俄獅子』を下敷きにした舞踊だ。ここでは中村屋の巡業公演で常連の澤村國久と中村屋一門が、それぞれ鳶頭と芸者に扮して踊る。

勘九郎は「まさに“見た目にも楽しく、音楽や振付も面白く見られる”という演目。祖父も父も、『お祭り』という演目でよく鳶頭を演じていたので、父を偲ぶ意味でも粋な鳶頭と芸者の踊りを全国の方にご覧いただきたいと思いました」と選んだ理由を語る。

七之助もうなずきながら、「鳶頭は中村仲助と中村仲侍が、芸者は澤村國久さんと、もうひとりの芸者は中村仲四郎(昼)と中村仲弥(夜)がWキャストで勤めます。春の巡業公演と同じ演目ですが、配役の違いも楽しんでいただけたら」とアピールした。

最後は、こちらも春に続いての上演となる『舞鶴五條橋(ぶかくごじょうばし)』。「五條橋」は京都の五条大橋のことで、牛若丸(のちの源義経)と武蔵坊弁慶の出会いの場として知られる。十七世勘三郎の俳名「舞鶴」が付けられていることから分かるように、十七世のために作られた1974年初演の舞踊劇だ。

勘九郎は「前半は常盤御前(七之助)と牛若丸(中村鶴松)の親子の場面が綴られ、それから堀川太郎(中村山左衛門)と室町次郎(中村いてう)の“間狂言”が入ります。後半では牛若丸と武蔵坊弁慶(勘九郎)の出会いで豪快な立回りが盛り込まれるなど、演じてみて構成の見事さを実感しました。常盤御前と牛若丸の親子の情、主従関係になる牛若丸と弁慶の情という、両方の“情”を改めて伝えられれば」と想いを語る。

七之助は「常盤御前は『昔ね、小さいあなたがた三兄弟と寒い中逃げて行ったのよ』と(身振り手振りで語る)“仕方話”など、その場の情景が浮かぶように演じなければならない難しいお役。今回も物語の流れが伝わるように、ひとつ一つ丁寧に踊ることを心がけたいです」と意気込む。

中村七之助

江戸時代に完成し、現存する中では日本最古の芝居小屋といわれる旧金毘羅大芝居(金丸座、香川県)や、昭和初期に建てられたながめ余興場(群馬県)、今回初めて訪れる翁座(広島県)など、昔ながらの“芝居小屋”での公演も注目だ。

「父が勘三郎襲名の際、『歴史のある芝居小屋も見学して終わりじゃなくて、実際に役者が立って汗と息吹を吹き込まなければ“芝居小屋”にはならない』という想いで、各地の芝居小屋を回ったのを覚えています。今年は中村屋が大切にしてきた“巡業公演”、プラス父が言っていた“芝居小屋を巡る”という、二重の意味で父を偲ばせていただけることが嬉しいですね」と言う勘九郎。

続けて七之助も「役者とお客様が触れ合ったり、空間そのものを楽しんだりするのが“芝居小屋”の楽しさ。もう20年も巡業公演で回っていると各地に知り合いもたくさんできましたので、おなじみの方々とまた会えるのが嬉しい。もちろん初めての方もお会いできるのを楽しみにしています」と笑顔で語った。

取材・文:藤野さくら
撮影:武田敏将
衣裳協力:YOHJI YAMAMOTO Inc.

<公演情報>
中村勘九郎 中村七之助 錦秋歌舞伎特別公演 2024

公演日程:2024年10月2日(水) 町田市民ホール
ほか、〜10月20日(日) まで全国十一カ所

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/kinshu2024/

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