「人を楽しませるなら 落語がいいんじゃないか」古今亭始 改メ 古今亭伝輔インタビュー
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インタビュー
古今亭始 撮影:源賀津己
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すべて見る高校卒業後に専門学校で介護福祉士の資格を取得し、介護職を経て、2009年に古今亭志ん輔師匠に弟子入りした落語家、古今亭始。入門から15年、2024年9月21日(土) から真打昇進が決定し、古今亭伝輔に改名して新たな道を歩き出す彼に、落語家になった経緯やこれからめざす将来像などを語ってもらったインタビューをお届けします。
──落語家になった経緯を教えていただけますか。
元々勉強しなかったんですよね、サッカーをやっていて。中学で埼玉県選抜だったので、高校はサッカー推薦で行ったんです。高校2年の最後の頃に怪我をしてしまい、これから先サッカーを続けるのもな……と思い、じゃあどうしよう。大学に行って遊ぼうと思ったんですけど勉強してないので入れないと(笑)。じゃあボランティアで推薦を目指そうってんで、高校の貼り出しをみたら、保育と介護があったんです。みんな子供のほうが可愛いからって保育を選ぶんですよね。介護のほうがポイント高いんじゃねえかって、実習みたいなボランティアに行ってレクリエーションをやったんです。
元々人を楽しませるのが好きだったので、こういう道もいいなと思って専門学校に通って資格を取って働くようになって。レクリエーションをいろいろやったんですよ。劇をやったり、紙芝居やったり。ネタがなくなったなと思ってたちょうどその頃、ドラマ『タイガー&ドラゴン』をやっていて、“落語だったらじいさん、ばあさん知ってるかな?”と思って。それで興味を持って寄席に行って、面白いなと思って見よう見まねでやってみて。それでどんどん寄席に通うようになったんです。介護の世界って出世するにはケアマネージャー取ったりして現場から離れなきゃいけない。それじゃあやりたいことじゃないなと思って、人を楽しませるなら落語がいいんじゃないかと足を踏み入れました。
──古今亭志ん輔師匠に弟子入りした経緯を教えて下さい。
寄席に通ってるときに師匠の華やかな芸が好きで。明るくなるんですよね。最初は出待ちしたんですけど、師匠は出てくるとお客さんと飲みに行っちゃうんですよ。機会がなかったので師匠の独演会チケットを頼んだら送られてきたものに住所が書かれていたので家に行きました。おかみさんと娘さんが居て、玄関先で“やめたほうがいいよ”って(笑)。“あなたが思っているような世界じゃない”と。何度か通ったら“今日、お父ちゃん居るから上に行っていいよ”って言われて、師匠に会えても許されず何度か通って。“うちは駄目だと思ったら辞めてもらうけどそれでもいいなら”と許されました。弟子入りして、好きになった落語だから自分の芸がどうしても師匠に似るんですよね。目指すのは当たり前だから。それをどう表現するか、が難しかった。
──真打昇進が決まったお気持ちをきかせていただけますか。
私たちは、半年前に(三遊亭)わん丈、(林家)つる子に抜かれてるんです。だから真打になれたという嬉しさより悔しい気持ちのほうが強かったです。でも後々みんなから“おめでとう”と言われるようになって、嬉しいという実感が沸いた感じですね。
──週刊少年ジャンプに連載されている話題の落語マンガ『あかね噺』のイベントで、6月に開催された『第二回あかね噺の会』に登壇されたきっかけは。
このマンガの落語監修を務める林家けい木と仲が良いからだと思うんですけど。けい木が言うには、登場人物の“阿良川ぐりこ”に似てるって。明るいキャラも似てるし、妹弟子もたまたまできたし。謝楽祭で『あかね噺』を皆で語るコーナーを、配信でわいわいやったんです。そのときも出させてもらって、それで声がかかったみたいで、イベントでも“ぐりこ”のネタをやってくれって。この会は『あかね噺』10巻を買って応募しないと来られなくて。150くらいのキャパに応募が1800件あったんですって。マンガで興味を持った方々にもっと寄席に来てもらいたくて、登壇者全員、マクラは『あかね噺』から入って落語に引き込んでいく噺をしたんですよね。すごいありがたかったです。落語を知らなかった方がマンガを通じて本物に触れてくれて、これから寄席に来てくれればいいなって。「ぴあ落語ざんまい」も同じような感じで、きっかけで観るようになって寄席に来てもらえれば一番いいかな、と。
──ありがとうございます。「ぴあ落語ざんまい」は、コロナ禍でどうにもエンタメをお客様が直接生で体験できない環境下で、“配信”で生き残りを賭けたのがきっかけなので、噺家さんにそう言っていただけて光栄です。
コロナのときは全部無くなったじゃないですか。そうなると稽古もしなくなるんですよね。これはマズイということで、大阪の(桂)紋四郎や(林家)けい木とすぐに配信を始めたんですよ。配信を始めたのは噺家の中でも早いほうで。それがきっかけで、今でこそ配信を有料にしたりして観られるのも少なくなったけど、そのときは無料で全部観れるようにしたのもあってすごい反響があって。そのとき観てくれた地方の方々が今でも観てくれたり、北海道から来てくれたりするので、これから先もコロナ禍じゃなくても、配信は続けなきゃと思ってます。配信だけで満足せずに、生は絶対来てもらいたいんですけど。
──将来的に実現したい夢は。
私は、修行の形態も(古今亭)志ん朝師匠からの“古典を大事にする”という古き良き環境で育ってきたんですけど、時代が少しずつ変わってくるので、根っこはそのまま、少しずつ対応できるようにしていきたいと思っています。根っこをしっかり持ったまま、いろんなことに挑戦したいですね。コロナのときに配信ってうちの師匠はその頃は嫌がったと思うんですよ。あそこで時代はガラっと変わったので、今は師匠も配信をやっている自分を“よくやった”と言って下さる。そして師匠も配信をやっていますし。いくら時代が変わっても根っこはそのままで、それを持ったまま、幅広いことをやっていきたいなと思っています。
取材:文=浅野保志(ぴあ)
撮影=源賀津己
<プロフィール>
古今亭始 改メ 古今亭伝輔(ここんてい はじめ(あらため)でんすけ)
1984年7月2日生まれ、埼玉県出身。2009年、古今亭志ん輔に入門、前座名「半輔」。2014年6月、二ツ目昇進。「始」と改名。2024年9月、真打昇進(予定)、「伝輔」と改名(予定)。
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