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LAST ALLIANCE 11年ぶりに音源を発表「リリースまで長かったけど、やっぱりいいでしょ?と言える出来栄えになった」

音楽

インタビュー

ぴあ

LAST ALLIANCE Photo:umihayato

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Text:荒金良介

LAST ALLIANCEが8月1日に4曲入りデジタル・シングル「Bring Back Blue」をリリースした。正式音源はなんと11年ぶりになる。作品発表〜レコ発ツアーという通常のサイクルにこだわらず、マイペースかつ不定期にライブ活動を続けていた彼ら。そして、久しぶりの新曲リリースの報に、色めき立つファンも多かったのではないか。パンクを軸足にエモーショナルかつメロディアスな日本語詞を掲げ、ツイン・ヴォーカル体制で他とは一線を画したオリジナリティを誇示。そのスタイルをキープしたまま、今回の新曲は11年前に戻るのではなく、サウンドやアレンジを含めて、「2024年の新しいラスアラ」をきっちりと打ち出された珠玉のナンバーが揃っている。ANZAI(vo/g)、MATSUMURA(vo/g)、HIROSHI(ds)、KEITA(g、サポートメンバー)のメンバー4人に話を聞いた。

――LAST ALLIANCE(ラスト アライアンス/以下ラスアラ)として11年ぶりに4曲入りデジタル・シングルがリリースされました。曲調はラスアラらしい強烈な個性を放ちながらも、2024年バージョンのサウンドとしてきっちりアップデートされてます。そして何より楽曲やアレンジの良さはもちろん、ラスアラの普遍的なメロディの良さに打ちのめされました。まずは11年ぶりに新曲を出そうと思った経緯から教えてもらえますか?

ANZAI どうだったかなあ……去年だよね?

MATSUMURA うん。まあ、復活だなんだと言われているけど、僕らは11年前に解散とも休止とも謳ってないんですよ。お客さん目線からすると、アナウンスが必要な案件ではあるけど、解散しても復活するバンドの姿をいろいろと見てきたし……多分どのバンドも千差万別の理由があると思いますが、僕らの場合はバンドを続ける中で、メンバーそれぞれの人生もあって、音楽との向き合い方を考える時期が11年前にあったんです。それでプライベートのことを含めて、守るべきプライオリティが変わり、メンバー全員バンドが一番だったところから変化したという。ただ、解散してないし、休止に近い状態ではあるけど、それをあえて言うのもどうなのかなと。俺らはいずれライブはやるつもりだったから、解散も休止も謳わず……ファンに対しては察してくれよって。その中で年に1回、年に4回のときもあったけど、ライブは続けてましたからね。

――ええ。

MATSUMURA 俺らも年齢が50に差し掛かってきたときに時間的な余裕も出てきたし、今がやるタイミングかなと。ANZAIと飲んでいるときにそういう話をしたんですよ。

――それが去年ですか?

MATSUMURA ちょいちょい話はあったけど、それが具現化したのは去年ですね。「じゃあ、どうしようか?」、「音源出そうよ!」って。僕らは7枚アルバムを出していて、『TEARS LIBRARY』、『VAP』、『One-Coin LABLE』(日本テレビ音楽内のインディ・レーベル)と、それぞれに原盤の権利関係もあり、自分たちで逸早くジャッジできたものはサブスクで出したけど、2ndアルバム『UNDERGROUND BLUE』、3rdアルバム『Me and Your Borderline』は虫食い状態になっていて。それも出したいねという話の流れで、新曲も出さない?という感じになったんですよ。それでオプションだった新曲の話が大きくなり、それがメインに切り替わったという。

――そういう流れだったんですね。

MATSUMURA 「新曲、何か持ってる?」、「じゃあ、とりあえず1曲録ってみよう!」と。それからほかの曲も録って……4曲録れるならやろうと。で、これはANZAIの意向が強いんだけど、出すからにはここで止まったら、いままでと変わらないから。俺たちはここで動いて、タームはわからないけど、いずれアルバムを出して、自分たちの最高到達点を超えることを50歳でもやれるでしょ!って。やれたらかっこ良くない?って。

――そこまで具体的に話し合ったんですね。

MATSUMURA 俺はANZAIに言われてハッとした感じですね。ANZAIは虎視淡々とその気持ちを核に持っていて、ふたりで飲んだときに俺も熱くなって、やろうぜ!って。それで今回の8月1日の新曲リリースに繋がったんですよ。

――ANZAIさんの中ではラスアラに対する火はずっと消えなかったと?

ANZAI そうですね。7thアルバム『Seventh Sense』の後にVAPと契約解除になったときにやり切った感というか、一度無になりたかったんですよ。それを経て……ラスアラに対する思いは常にありました。

――やり残したことがまだあると?

ANZAI いや、やり残したというか、やっちゃいけない理由はないから。うまく言えないけど……メンバーみんなの個々の能力やスキルが凄すぎて、ラスアラ休止前の後半はそれがうまく機能しなかったんですよ。でも、今やってもきっとかっこいいものができると思っていたから。歳を取ったら感覚も鈍るみたいな気持ちもないし、いつリスタートしても大丈夫という状態でしたね。

ANZAI(vo/g)

――HIROSHIさんはこの11年間にどんなことを考えてました?

HIROSHI 今言ったことと同じことは思ってたよ。ラスアラが10年、20年経っても老化、劣化はないなと。乗っかったような発言になっちゃったけど、俺もずっとそう思っていたから。

MATSUMURA 結局、持っているセンスは10年、20年経っても変わらないんですよ。全力で振り切っているバンドに対して負い目まではないけど、それはそれで凄いなというリスペクトはあるし、俺らもそれはやってきたから。そこから一度離脱して、違うものを人生のプライオリティ1位にして、(バンドを)2位にしたからといって、俺らが1位のときにやっていたものを作れないとは思わない。ただ、10年前と同じものは絶対にやりたくないなと。音質、メロディ、アレンジ、パフォーマンスを含めて、10年前を超えてやろうと。結局、俺らはメロコア・バンドで、極論を言えばハードコアなトラックにアコギ一本でも成り立ついいメロディを乗せる……メロディ至上主義に変わりはないんですよ。

――ラスアラの音楽性の核は変わらず?

MATSUMURA そうですね。サブスクで流行っている音楽でもちんぷんかんぷんなものもあるし、10年後もその曲を聴くのかなと思っちゃうから。でも俺らは普遍的にいいメロディを追い求めているし、今日のライヴ(『焼肉ロックフェス』)で18年前に出した「KONOYUBITOMARE」もお客さんに刺さっていたから。今回の新曲についても10年、20年後にプレイしても、俺は刺さると信じてますからね。その根底には普遍的なメロディがあるから。ただ、10年前よりもサウンド、アレンジ面に関しては各々の人生の経験値を踏まえて・・・酸いも甘いも知った者という部分が歌詞、音色、メロディ、プレイにも乗ってくるから。ほかの誰々じゃなく、10年前の俺たちを超えていきたいという目標はありました。それは俺もANZAIもHIROSHIも絶対にあったと思う。

――自分たちのバンドに対する自信というか、ブランド力に関しては揺るぎない気持ちがあったと。

HIROSHI そう! ブランド力だよね。それは懐メロにならないんだよ。

MATSUMURA 10年前はメンバーそれぞれ個性が強いから、壁にぶち当たってまとまらないことが多かったけど。今回はみんな大人になっているし、お互いにリスペクトがあるから、「お前が言うなら、そうしよう!」と。だから、作業はスムーズに進みました。

――メンバー内の関係性も10年前と変化しました?

MATSUMURA 全然違うと思う。細部にこだわりはあるけど、それは細部であってさ。肉は削られてもいいけど、骨だけが残ればいいみたいな。そして、肉の部分は思い入れが強い奴に譲る。ただし、骨の部分はもちろん話し合いは必要ですけどね。

――ラスアラも大人になったんですね。

MATSUMURA おじさんですよ(笑)。でも作業は楽しかったですよ。

――改めてラスアラが持つ普遍的なメロディの良さは、他のバンドに負けない圧倒的なオリジナリティがあります。実際の曲作りはどういう風に進めたんですか?

ANZAI 「盲目のストレンジャー」が取っ掛かりで、それはまっちゃん(MATSUMURA)から送られてきたんですよ。昔、違う形で出そうと思っていたけど、「この曲、ANZAI歌って!」と軽いノリで言われたんですよ。オケがあったから、歌入れしたのが去年だったかな? 僕だけレコーディングして、歌を歌いたかったからワクワクしてたんですよ。その1曲目がきっかけかな。

――「盲目のストレンジャー」はいつ頃にあった曲なんですか?

MATSUMURA ラスアラの休止後かな。

――『Seventh Sense』発表後ですね。

MATSUMURA ラスアラ用とも定めてなくて、バンドがストップしちゃうんだという悲しさもありつつ、悶々とした中でKEITAと一緒に仕上げました。ずっと温めていた曲ですね。

――このタイミングで出そうと思った理由は?

MATSUMURA ここしかないだろうと。いい曲だし、一番遠くに届けるタイミングを狙っていただけです。それはラスアラしかないから、ANZAIに歌をお願いしようと。

MATSUMURA(vo/g)

――「盲目のストレンジャー」はMATSUMURAさんの作詞作曲で、通常ならば自分でリード・ボーカルを取ってもおかしくないのに、ANZAIさんに歌を託した理由は?

MATSUMURA ラスアラ休止後、俺がボーカリストとして世に出ようとは1ミリも思ってなくて。ANZAIがいるから、オプション的なボーカルだと自分では思っているから。以前は俺が俺がになっちゃって、ANZAIを食っちゃうようなせめぎ合いもあったけど、ラスアラのメイン・ボーカルはANZAIだから。そこが揺らいだゆえに俺たちは右往左往して、後悔まではいかないけど、反省点が自分なりにあったんですよ。ラスアラはもっとこうしていたら、よかっただろうなと。今回はその二の足は踏みたくなくて。「盲目のストレンジャー」は俺が歌った方が俺のイメージには近づくけど、歌唱力やキー、ラスアラ・ファンに深く刺さるのはANZAIのボーカルだなと。歌い分ける曲でもないし、「まっちゃんが歌えばいいじゃん?」とANZAIからも言われたけど、この曲はANZAIが歌った方がいいなと。そこは確信があったんだよね。いざやってみたら、やっぱりいいなあと。

――ラスアラ・ファンはツイン・ボーカル体制に魅力を感じている人が多いんじゃないですか。

ANZAI それで僕は困っちゃってるんですよ。10年を経て、僕はツイン・ボーカルでもっとやるべきだと逆に思っていて。まっちゃんが「どうぞ!どうぞ!」と言う必要はないし、歌いたい曲は歌うべきだし、曲によってはまっちゃんが歌った方がいい曲もある。そこがラスアラの個性だった側面もあるわけじゃないですか。それをあえて消す必要はないのかなと。

MATSUMURA まあ、極論の話ね。「シオン」でANZAIが歌ったけど、俺も歌わせろみたいなパートもあるから。ツイン・ボーカルは勝手に出てくるし、消えるわけではないからね。

ANZAI 昔、僕はお客さんのことを全然考えられなかったんですよ。自分で精一杯だった。でも今は考えるようになって、お客さんが何を求めているかと言えば……いろいろと聴きたい要素に中にツイン・ボーカルがあるのかなと思います。

――バンド内に歌えるメンバーがふたりいるのは強味ですからね。

MATSUMURA いや、歌いますよ。

ANZAI どっちやねん(笑)!

MATSUMURA 以前みたいに俺が俺がって、ANZAIを押しのけてまで歌う感覚はないんですよ。ベターな選択をできればいいなと。

Photo:umihayato

――では、ここから1曲ずつ話を聞ければと。まずは「盲目のストレンジャーズ」から行きましょう。

MATSUMURA サウンド的には一番実験的ですね。だって、HIROSHIが最初に全然出てこないじゃないですか。

HIROSHI ははははは。

MATSUMURA 打ち込みに傾倒した感じだから。ラスアラはメロコアから始まり、ギター2本、ベース、ドラムで成り立つサウンドをやっていたから。で、KEITAが今回の4曲はサウンド・プロデューサーとしてアレンジに深く関わっているんですよ。「盲目のストレンジャー」はラスアラ用に作ったわけではなく、俺とKEITAのユニットみたいな感じで作ったから、KEITAの色が出てますね。でもHIROSHIが叩けばラスアラになるし、ANZAIが歌えばラスアラになるし……それはちょっとビックリしました。

――メンバーの個性を改めて認識した曲になったと。

MATSUMURA サビまで2分以上かかりますからね(笑)。最近のサブスクに溢れている音楽とは逆行しているから。温めて温めて、HIROSHIのドラムで爆発して、サビでまた来るという、そこはサウンドのテーマでした。

――いままでにないタイプの曲を作ろうと?

MATSUMURA そうですね。いままでこんな構成はなかったから。歌詞は私小説のようなテイストが好きだから、それを押した感じです。1本のムービーのようにストーリー仕立てにしようと。本質はわかりやすいですけどね。焦燥感というか、「ふざけんな、てめえ!」という曲です。

ANZAI 口が悪い(笑)。

――歌詞には怒りがこもってますよね。

MATSUMURA アングリーな感じですね。

ANZAI 僕も怒りを込めて歌ったよ。怒りはかなり出てると思う。

――この曲は歌詞、歌声、メロディが際立った1曲ですね。

MATSUMURA そこでしかないですね。アレンジはKEITAに力を借りた曲ではあるけど……。

――当時から大きくアレンジは変わらず?

KEITA 変わってないですね。

MATSUMURA 変わってないけど、この曲でKEITAは覚醒した感じはあるかな。知識、技術、センスが上がってますからね。

KEITA 「盲目のストレンジャー」のアレンジは家で作業して、俺もTRAIBAL CHAIRが解散した後だったから楽しかったですね。リリースまで長かったけど、やっぱりいいでしょ?と言える出来栄えになったから。まっちゃんの歌詞とリンクするアレンジを心がけました。時間はかかったけど、よくできたなと。ストレンジャーがどんどん蝕まれている感じというか、絶望感みたいなものを表現したくて。歌詞の内容から作画をするような感じでアレンジを進めました。

KEITA(g、サポートメンバー)

――「盲目のストレンジャー」が出来た後、残りの3曲はどういう形で進めたんですか?

MATSUMURA 「ANZAI、デモ何があるの?」って、お互いに曲を出し合ったんですよ。「Rewind」はANZAIがフルで作ってきた曲ですね。それが良くも悪くもラスアラの時代から変わらないデモの作り方なんですよ(笑)。デモとしての仕上がりはミニマムだけど、肉はどうでも良くて、骨がしっかりとANZAIらしいデモに仕上がっていたから。KEITAが関わったことですごくかっこ良くなりました。

――デモからブラッシュアップされたと。「Rewind」はANZAIさんはどんなイメージで?

ANZAI ラスアラ休止後にストックしていた曲のひとつです。その当時はラスアラの次のアルバム用に作った感じですね。僕の場合、デモはある程度きっちり作るんだけど、当時のラスアラのみんなのニュアンスを踏まえて作りました。

――「Rewind」は場面展開があり、ストーリー性豊かな曲調です。

ANZAI 今みたいにわかりやすい緩急を付けながら、ドラマチックに仕上がったのはKEITAの手が加わった部分が大きいですね。KEITA、凄いなあと思いました(笑)。

KEITA 手探りではあったけど、荒金さんが冒頭で言ったような「2024年のラスアラ」というイメージはありました。ラスアラをアップデートさせる要素として、ピアノ、ストリングス、ギターの音色、ドラムのフィルでかっこいい感じを出して……そういうものをごちゃ混ぜにしつつ、まとまりがあるように仕上げたいなと。これも時間がかかりました。デモを貰ってから1、2週間かかったんですよ。

――「Rewind」は新しいラスアラ感が強烈に打ち出されてます。

MATSUMURA これは言っていいのかわからないけど、TK from 凛として時雨が大好きで、「ああいうものをやりたいなあ」とKEITAに甘く振ったんですよ。だから、KEITAの頭の片隅にあったのかもしれない。この曲はANZAIが作ってるし、ANZAIが歌っているから、一番フィットしているしね。それでHIROSHIが叩くと、またラスアラっぽくなるんですよ。メロディ至上主義ではあるけど、このインストだけを聴いてもエンンターメント性があるし、面白いなと。お茶の間にも刺さるだろうし、でもすげえ尖ってる。これはわりとラスアラの新境地かもしれない。HIROSHIもドラムは「Rewind」が一番面白かったんじゃない? HIROSHI節が詰まっているから。

HIROSHI KEITAが打ち込んでくれたものを聴いたら、その時点で俺のフレーズが盛りだくさんだったから(笑)。手癖だらけのフレーズだからね。

MATSUMURA KEITAのデモを聴いたときに「これHIROSHIじゃない?」って(笑)。あれはKEITAにしかできないよな。

HIROSHI だから、すごくやりやすかった。アプローチは以前のラスアラと変わらないドラムですね。自分らしさも考えず、思うように叩いているだけだから。ドラムって違う人が叩くと、違う表情になるじゃん。これは新しいことをやっているつもりはなくて、往年のラスアラを出した感じ(笑)。

MATSUMURA 一番HIROSHIっぽいよね。ドラムはこの曲が好きだもん。

HIROSHI 「盲目のストレンジャー」の方が新しいことにトライしてる。何もしてないから(笑)。曲がかっこいいから、ドラムを入れる必要がなくて。

MATSUMURA 今の言葉に集約されてますね。これが10年前だったら、曲はかっこいいけど、俺のドラムでもっとかっこ良くするという感じだったから。

ANZAI ははははは。

MATSUMURA それで曲が崩れて、忖度が働いて、何も言えないみたいな。それがすんなりいけるようになったんですよ。

HIROSHI 時を経て、メンバーに対する敬意がすごく出てきて、そこがでかいかな。以前は俺が俺がという感じだったけど、敬意があるから、まかせられるようになったから。

MATSUMURA HIROSHIが大人になったんだよ、マジで(笑)。

――HIROSHIさん、思い当たるところは?

HIROSHI 何だろう、それも時の流れじゃない?(笑)。この10年間でいろいろ振り返ったときに、あのときにああやっていたら、どうなっていただろうと考えることもあったから。まかせていたら変わっていたのかな、と思うこともあるしね。

HIROSHI(ds)

――それが曲のまとまり感にも表れているんでしょうね。

MATSUMURA それはあるかもしれない。まとまってると思う。

――「Rewind」はギターの音色もキラキラしてますよね。

MATSUMURA 「盲目のストレンジャー」、「Rewind」に関してはメジャー第一線でご活躍されてるエンジニアさんにお願いしたんですよ。そこはチャレンジでしたけど、総じて満足してます。だから、いままでのラスアラとは全然違うと思う。皆さんいいヘッドホン、いいスピーカーで聴いてほしいですね。

――確かに今回のサウンドを聴いた後だと、以前のラスアラの音像は平坦な印象を受けました。

MATSUMURA そう! 平面だったものが立体的になって……今活躍されてるアーティストと同じレベルに行きたいという気持ちがあったから。

――なるほど。そして、ラスト2曲は「Last Alliance Ⅱ」、「シオン」とメロコア・ナンバーが続きます。やはりこの手の曲は外せない?

MATSUMURA そうですね。「Last Alliance Ⅱ」は俺が曲を作って、ANZAIが歌詞を書いて、それは「Last Alli-ance」と同じなんですよ。「Last Alliance Ⅱ」という曲名を見たときは滑稽だなと思ったけど、過去も背負った上で今からスタートという気持ちを込めているんだなと。僕らはどこまでいってもメロコア出身だし、加えて、そこに新しい要素も入っているから。

――「Last Alliance Ⅱ」の歌詞を読んだときはちょっと驚きました。「同盟に亀裂が入った」、「今は錆びたリングが一つ欠けているけど、俺たちは待つよ」、「答えはまだ届いてないけれど スタートラインで待ってるよ」と歌詞(いずれも訳詞)でバンドの現場や今の心境を赤裸々に綴ってますね。

ANZAI 歌詞は英語で若干オブラートに包まれるから。最初にデモを並べて、どの曲をやろうと思ったときに、絶対この曲をやりたいなと。それを「Last Alliance」と同じようにしたいと思っちゃって、それで作りました。

――新しい名刺代わりとなるアンセム・ソングを作りたかった?

ANZAI そうそう。

MATSUMURA 曖昧なバンドなんですよ、僕らは。今年の『焼肉ロックフェス』もHIROSHIがいいよと言ったから、出演することができましたからね。それに向けて、リハはKEITAを含む4人で初めてスタジオに入ったんですよ。そしたら、「いやあ、初めてラスアラに入った気がする」とKEITAが言ったんですよ。前回の『焼肉ロックフェス』は俺とANZAIに加えて、KEITA、YASUの元TRAIBAL CHAIRで出演したから、2:2という構図だったんですよ。

――今の話を「Last Alliance 2」に繋げるなら、ラスアラとしては必ずしも完全体ではないけれど、前に進める強さが自分たちにはあると。

MATSUMURA そう! 「答えはまだ届いてないけれど スタートラインで待ってるよ」の歌詞も曖昧だし……でもその先にはいろいろと超えてやっていけるんじゃないかと。個人的にも期待感がありますね。

――「Last」もこれまでのメロコア曲とはまた違うテイストですね。

MATSUMURA サウンド感もレベルアップしたんじゃないかと。特に2ビート……今回実験的なことをやってみたけど、もし次に2ビートの新曲を入れるなら、さらにいいものができるかなと。

Photo:umihayato

――「シオン」も2ビートですが、ホーンが入っていて、このアレンジも新鮮でした。

MATSUMURA サビを聴いたときに、これはホーンを入れるでしょ!って、パッと思いついたんですよ。本当は生でホーンを入れて、HEY-SMITHみたいにやれたら、すごく音が抜けてバンド感出てさらに良く出来そうなんですけど。まあ、手弁当なので。MIDIでやってね。一見、明るいんだけど、2ビートでも僕らの曲はどこか泣けるという。

――「片膝の汚れ落とし」(「片膝の汚れ」)と以前の曲から引用した歌詞もファンはニヤリとするポイントです。

MATSUMURA あれも遊び心ですね。これは確固とした意味のある曲で、ANZAIは2秒でわかったからね。「ヨウコさんのことだろ?」って、俺の母親のことなんですよ。これを言うと、それに限定されてしまうけど……ANZAIとはツーカーだから。レコーディング中も「ええ曲やなあ」と言ってくれたし、HIROSHIも「盲目のストレンジャー」のことを冗談抜きで、「めちゃくちゃいい曲!」と言ってくれたからね。メンバーからの賞賛は何よりも嬉しいですね。

HIROSHI 俺はいままで言わなかったからね。昔はツッパっていたから。

MATSUMURA そうだねえ(笑)。

――今なら面と向かって、素直に言えると。

HIROSHI そうだね。

MATSUMURA 変なバンドなんですよ、俺も言えなかったし(笑)。

HIROSHI 過去にもシビれる曲はあったけど……照れ臭くて言葉にしなかったから。

――今はラスアラとして活動できることに尊さを感じる?

HIROSHI それはあるよ。

――では、今回の音源を発表後にアルバムも予定しているんですよね。気は早いかもしれませんが、どんな内容になりそうですか?

ANZAI アルバムはこの延長線上で、荒金さんが直感で感じたように、ラスアラなんだけど何か新しい。それは間違いなくそういう方向になると思う。今回はそれをかいつまんだ代表曲というか。久しぶりに出た新曲だし、11年分の思いが詰まってますね。

――来年にはニュー・アルバムを発表できそうですか?

ANZAI 来年中には出したいですね。

MATSUMURA 今回ラスアラのメンバー3人+KEITAで曲を作って……みんなスキルが揃った奴らが集まっているなと。だから、本当に過去の最高到達点は超えられるんじゃないか、という期待感はありますよ。活動はそんなにしないけど、夢は広がりますよね。ちゃんと音楽シーンの現役の人たちの中に潜り込めたら、最高にかっこ良くないですか? 各々の人生を歩みながら、バンドは捨てずにね。

<リリース情報>
デジタル・シングル
「Bring Back Blue」

配信中:
https://VAP.lnk.to/Bring_Back_Blue

【収録曲】
1. 盲目のストレンジャー
2. Rewind
3. LAST ALLIANCEⅡ
4. シオン

LAST ALLIANCE「盲目のストレンジャー」Official Lyric Video

<ライブ情報>
ONEMAN SHOW
『Bring Back Blue』

2025年3月1日(土) 東京・WWW X
開場17:00 / 開演18:00

【チケット情報】
前売:4,500円(税込)
※ドリンク代別途必要

■オフィシャル最速先行:9月1日(日) 23:59まで
https://w.pia.jp/t/lastalliance-2025/

公式サイト:
http://www.last-alliance.com/