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ついに全貌が明らかに! 熊川哲也による新作バレエ『マーメイド』世界初演開幕レポート

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熊川哲也 K-BALLET TOKYO Autumn Tour 2024『マーメイド』より (C)Yoshitomo Okuda

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熊川哲也が芸術監督を務めるKバレエ トウキョウによる『マーメイド』が、9月8日東京文化会館にて世界初演の幕を開けた。熊川が演出、振付、台本、音楽構成を手掛けた、設立25周年を記念しての新作だ。数々の全幕バレエで多くの観客を魅了してきた熊川。その初日の満席の劇場は、彼の最新作をいち早く体感したいという観客の期待と熱気に包まれた。

海の世界のファンタジー

古典作品の改訂や、壮大な構想をもって立ち上げるオリジナル作品まで、年に一度のペースで大規模な新作を手掛けている熊川が今回取り組んだ題材は、アンデルセンの童話『人魚姫』。より多くの子供たちにバレエに興味を持ってもらいたいという思いから選んだというが、アニメやミュージカルで人気を得ている物語だけに、熊川がどんな世界を打ち出してくるのか、果たして海の中を自由に泳ぐヒロインはどのように描かれるのか、様々に想像しながら客席へ。

物語の世界へと皆を誘うのは、グラズノフのワクワクするような音楽。第1幕第1場の舞台は、海の近くの酒場だ。舞台奥には、陽の光をキラキラと反射する美しい海。時間の経過とともに、その色合い、表情が少しずつ変化していく様子が美しい。

酒場では、プリンスとその友人たちが、船乗りや娼婦たちと楽しんでいる。そこへやってきた父王の命に従い、幻の大クジラを仕留めるという冒険に嬉々として出発するプリンスは、『白鳥の湖』の憂いを帯びた王子と対照的、朗らかで冒険心に満ちあふれている。この日は山本雅也が、航海への意欲に燃える若きプリンスを爽やかに演じた。

ヒロインの登場は、第2場だ。海の中を自在に遊泳するマーメイドの姿は、リフトを多用して表現。裾がきゅっと反り上がった衣裳も人魚らしさを引き立てる。この日のマーメイドは、飯島望未。海面から船上のプリンスに一目惚れし、全身全霊で彼を愛するひたむきなヒロインを丁寧に演じ、観客を虜にした。

大クジラの出現で、物語は大きく動き出す。波間に現れる大きな尾びれが、観客の想像力を大いに刺激、独創的な仕掛けに目を奪われる。プリンスに攻撃されたことで、嵐を起こし反撃するシャークの存在や、クマノミ、サンゴ、ロブスターといった海の仲間たちもユニーク。魚たちが列をなして登場するさまは、まさに海の中のファンタジーだ。

声と引き換えに脚を手に入れ、「愛が実れば永遠の魂を得られるが、そうでなければ泡になって消えてしまう」という厳しい条件を受け入れたマーメイド。大掛かりな彼女の浮上シーン、そのインパクトが、ヒロインの思いの強さに重なって、胸を打つ。

第2幕も見どころ満載。とくに第3場で繰り広げられるプリンスとプリンセスの婚約式は、クラシカルなバレエの魅力、熊川振付ならではの見応えある踊りがたっぷり詰まった贅沢な場面だ。この日プリンセスを演じたのは日髙世菜。美しいチュチュ姿で華やかなシーンを牽引、マーメイドの恋敵を嫌味なく演じた。

飯島望未、山本雅也が明かした『マーメイド』への思い

終演後に実施された囲み取材には、主演の飯島、山本が登場。開口一番「ほっとしました」と述べたのは、マーメイドを演じた飯島だ。「いままでも少女の役は演じてきましたが、今回はこれまで以上に無邪気で、だからこそ、恋をして、それが破れた時の気持ちの落ち方をすごく意識しました」と、役への思いを語る。「全部のシーンで、それぞれの役が立っている。とくにプリンスとプリンセスの婚約式は見ていてとても楽しい。技の組み込まれ方が本当に素晴らしく、また、それができるダンサーたちもすごい。ぜひ注目してみてください」と見どころをアピールした。

いっぽうの山本は、「皆さんと同じ気持ちで、すごく感動しています」と興奮冷めやらぬ様子。「冒険に出ていきたいという純粋な気持ちを持つ王子。作っていく段階で、これは熊川ディレクターのようだなと思った部分があります。彼の作品を体現することができ、とてもありがたく思います」とも。「船の上から鯨の尾が見えた時には少し、うるっときました。素晴らしいシーン! マーメイドとプリンスの唯一のパ・ド・ドゥもとても素敵。ぜひ観ていただきたいです」。

音楽は、Kバレエ トウキョウ/シアター オーケストラ トウキョウ音楽監督・井田勝大の提案により、バレエ『ライモンダ』の音楽で知られるグラズノフ、その交響曲を中心に、その他の管弦楽曲、バレエ音楽などで構成。舞台美術は、ミュージカルやストレートプレイの舞台で数々の実績を誇る二村周作、衣裳デザインは世界の名だたる劇場でバレエの衣裳を手がけてきたアンゲリーナ・アトラギッチが担当した。様々な才能が集結して熊川オリジナルの感動の物語を立ち上げた『マーメイド』。“子供だまし”のない本物のバレエだからこそ、子供たちも大人も夢中になれる作品となった。

このあと愛知、大阪、札幌での上演を経て、9月21日(土) から10月6日(日) には東京・Bunkamuraオーチャードホールでの公演を予定。主演は日替わりで、ほかに小林美奈、岩井優花、堀内將平、栗山廉が登場、それぞれの個性あふれる演技が期待されている。

取材・文:加藤智子
撮影:(C)Yoshitomo Okuda

<公演情報>
熊川哲也 K-BALLET TOKYO Autumn Tour 2024『マーメイド』

公演期間:2024年9月21日(土)~2024年10月6日(日)
会場:Bunkamuraオーチャードホール
ほか、愛知・大阪・札幌公演あり

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2452774

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