『ヒプステ』松岡拳紀介×YUKIが語る2作目ゆえの緊張感と期待

――まずは3月の-New Encounter-で初めて『ヒプステ』のステージに立ってみての感想を聞かせてください。

松岡　本番公演中はすごく楽しかったんですけど、終わった後に感じるものがすごく大きかったですね。余韻というか「もう1回やりたい」という気持ちがより強くなっていきました。やはり本番中は、楽しみながらも一回、一回の公演を必死に、毎回全力でという意識があって、終わった後に「すごく楽しかったな」とより実感しました。

――最初にステージに立った時、「これが『ヒプステ』か！」みたいな感慨はありましたか？

松岡　めちゃくちゃヤバかったです。めちゃめちゃ緊張しましたよ（苦笑）。

YUKI　独特の緊張感があったね。「楽しもう」という気持ちはありつつも、初めてということで「どうやって新しい『ヒプステ』を見せるか？」という真剣な思いがすごく強かったので、緊張感と心臓バクバクな感じがありました。

松岡　初めて本番前に足が震えましたね。「ヤバい！ 落ち着かないと」って。

YUKI　-New Encounter-というタイトル通り、仲間と出会う物語で、僕らも一緒にチームを築き上げていくという部分で重なるところがありましたね。

――YUKIさんは最初に幕が開いた時はどんな気持ちでしたか？

YUKI　個人的には、やるべきことは完璧にこなしたと思えていたので、緊張はしましたけど、あとは「かますだけ」という気持ちでした。

松岡　カッコいい！

YUKI　自分ができる最も良いものを出すだけという思いでした。

――YUKIさんは、以前から『ヒプステ』が大好きだったそうですね。これまでも様々な舞台に出演されていますが、アーティストとして『ヒプステ』に出演することに特別な思いはありましたか？

YUKI　『ヒプステ』はめちゃめちゃ特別な存在ですし、僕が舞台に出るようになったのは『ヒプステ』に出るという夢があったからなので、ひとつ大きな夢がかなえられた瞬間でした。

――-New Encounter-を経た上で、今回の-Grateful Cypher-への思いをお聞かせください。

松岡　前回の-New Encounter-をやりきって、僕たちもそうですし、お客さんも熱量がいい感じに上がっていったところで終わって、ありがたいことにこの-Grateful Cypher-が決まったので、前回を超えられるような作品にしたいです。新しいキャストの方も出るので、より『ヒプステ』の世界を盛り上げて、いろんな方に届けられるような公演にしたいです。

YUKI　本当にその通り！ みんな、根がマジメなので、きっと同じことを思っているんじゃないかと思います。舞台用語で“二落ち（※1作目の盛り上がりの後の2作目で失敗すること）”という言葉があるように、2作目というのは一番ハードルが高くなっている状態だと思うので、そこを越えていかないとお客さんも付いてこないですよね。気を抜かず、1作目を超える熱量でやりたいです。

――改めて、ご自身の役の印象について、一度演じたことで理解が深まった部分なども含めて教えてください。

松岡　二郎は結構、自分に近い部分を感じてて、僕自身は長男で弟がいて、昔からすごく仲は良いけど、しょっちゅうケンカもしてたんですよね。何かを決める時はケンカで決めるみたいな（笑）。小さい頃から空手をやってたんで……。

YUKI　めっちゃ武力使うじゃん（笑）！

松岡　何を決めるにも「戦って決めようぜ」という家系でして……（笑）。二郎は三郎に対し、ちゃんと愛を持っていて、そこは通じる部分を感じています。

YUKI　いや、三郎に対して「めっちゃ強く出るなぁ」と思ってたけど、そういうことだったのね（笑）。

松岡　逆に自分が長男で兄がいないので、真ん中（次男）の立場で「もしお兄ちゃんがいたら……？」って考えながら演じていました。しっかり者の一郎がいて、弟たちは一郎が大好きという関係性ですけど、実際に楽屋でも徐々に兄弟っぽさが出てきたなと感じていますし、それは一郎役の石川凌雅くんが引っ張ってくれている部分が大きいのかなと思っています。

YUKI　傍から見てもそれはすごく感じたよ。凌雅の持っている包容力が、単に先輩としてのものじゃなく、兄のような雰囲気なんだよね。公演を重ねるごとに「本当に兄弟っぽいな」と思って見てました。

松岡　本当に「お兄ちゃん」って感じで、思わず「お兄ちゃん」と呼んじゃいそうな瞬間がありました。

――-New Encounter-では各ディビジョンのメンバーたちの“出会い”が描かれましたが、“Buster Bros!!!”の3人は実の兄弟なので他のディビジョンとはまた違った関係性の構築が求められたかと思います。

松岡　そうなんですよね。チームの結成ではあるんですけど、他のディビジョンとは違った角度での3人の絆が描かれていて、最後は一郎と戦うという展開だったのでこの“先”がさらにワクワクするような公演になりました。

――銃兎に関しては演じられてみていかがでしたか？

YUKI　銃兎の「やるときは徹底的にやる」という部分であったり、「信念を曲げない」というところは、自分との共通点を感じていました。彼は「リスクを取る勇気がなければ、何も達成することがない人生になる」というポリシーがあるんですが、それがすごく勉強になったというか、僕はリスクを恐れてしまうタイプの人間だったんですけど、-New Encounter-に出演して、いろんなことを背負いながらステージに立つ中で、その言葉がすごく響きました。

新たな発見という意味では、稽古を進めていく中で、『ヒプノシスマイク』が好きであるがゆえに声優キャストさんの完璧なモノマネを目指してしまっていたところがあったんですよね。それは僕だけでなく、もしかしたらみんなあったんじゃないかと思います。

松岡　そうですね。

YUKI　でも（演出の）植木豪さんとお話しする中で、舞台でこの作品をやる意味、僕がこの役を演じる意味というものにフォーカスすることができて、そこでの気づきによって、役柄への解像度が上がった気がします。銃兎がアニメでもやっていない動きを「でも、銃兎ならこういうことするんじゃないか？」と解釈を深めていくことで生み出すこともできましたし。

松岡　いや、YUKIくんはお芝居ももちろんだけど、パフォーマンスが本当にエグくて、カッコよくて、みんな憧れてました。公演を見に来た僕の友達も「銃兎のパフォーマンスヤバいね」って。しかも、みんなマネしようとするけどできない（笑）！ 下手にマネしたら、股関節をケガしちゃうから。舞台袖や裏で見てテンション上がってました。

YUKI　足技に関しては、アニメで一度だけ銃兎が膝蹴りを入れるシーンがあったので、手じゃなくて足を使うんじゃないか？ というイメージがあったのでやってみたんだよね。

――“MAD TRIGGER CREW”のメンバー（碧棺 左馬刻役・植原卓也／毒島 メイソン 理鶯役・益永拓弥）との関係性に変化はありますか？

YUKI　そこは案外、出会った頃から変わらないですね。たっくん（植原）がリーダーとしてドンとそこにいつつ、それぞれのメンバーを尊重し合うという感じです。拓弥はひとつひとつのシーンを全て完璧に作り上げていきたいというタイプで、僕もその姿勢に影響を受けましたし、その中でうまく力を抜けるところを話し合っていったり、すごく良い関係性だなと思います。

松岡　最初から3人でいつも一緒にいるイメージがありました。

YUKI　そうだね。ずっと一緒にいても平気というか、落ち着くんだよね。

――銃兎というキャラクターを通してラップで何かを表現するというのは、普段のアーティスト活動でのラップと違うものですか？

YUKI　めっちゃ違います。めちゃめちゃ難しいです（苦笑）！ 僕は（原作で銃兎の声を担当している）駒田航さんとも何度かお会いさせていただいてるんですが、お話を伺うと、ものすごくこだわって声を出されているんですよね。研究すればするほど難しさがわかるし、それを全てコピーすることもできないし、その中で自分の“色”とキャラクターの個性をどう混ぜ合わせていくのかを勉強するのも楽しいところですね。

――ラップというものがそもそも、自分の個性を乗せて歌うものだという部分もあると思いますが、原作があることで、キャラクターを演じることも求められるということですね。

YUKI　そうなんですよね。自分を出すものとしてラップがあるので、キャラクターというフィルターを通して自分を出すというのは、またひとつ別のやり方が求められて、すごく勉強になりました。

――松岡さんも、二郎という役柄をラップで表現するという経験はいかがでしたか？

松岡　山田 二郎という個人としてラップで表現する難しさもありましたし、イケブクロの3人がそろって、タイミングを合わせたりしながら歌う部分もあって、結構練習しましたね。三郎役の（高野）渉聖とも、張り合いながらラップで歌う部分があって、そこもかなり練習しました。踊る部分もあったので、かなり大変でした（苦笑）。ただ、毎回、公演ごとに新鮮な気持ちで「今日もかましてやろうぜ！」という感じで、常に更新し続けている感覚があったので、それはすごく楽しかったです。

YUKI　それはすごく感じたよ。めちゃくちゃ迫力あったね。

松岡　「やったろうぜ！」って気持ちがすごかったですね。-New Encounter-の最初のシーンなのですごく気合も入っていたし、楽しかったです。「生きてるな！」、「いま、人生やってるな」というヒリヒリする感じがありました。

――いま、お話を聞いていると、意外とみなさん、他のディビジョンのことを普段からよく見ているんだなと…。

松岡　見てますね。ヨコハマの3人は実際は優しいんですけど、知らなかったら近寄りがたく感じるような“圧”がありますね。みんなスタイリッシュで、オシャレです。公演中にアップする集合写真や、私服もカッコいいですもん（笑）。

YUKI　イケブクロを見ているとちょっとうらやましかったですね。すごく楽しそうで、本当に家族みたいで。けんぱ（＝松岡）がムードメーカーで、ディビジョンごとの垣根を越えてこうやって仲良くなれたのはムードメーカーが空気をつくってくれるからなんですよね。それぞれ最初は緊張してたし、作品をちゃんと創り上げないといけないという、立ち向かう気持ちが強くて、どうしても内側を向きがちだったけど、こういうキャラの子たちがいてくれて、それはすごくよかったですね。

松岡　ありがとうございます！

YUKI　どのディビジョンを見ても、本当にバランスが良いんですよね。

松岡　それは本当に思いますね。役柄、それぞれのディビジョンと同じ関係性になっていましたよね。意識している部分もあると思うんですけど、自然と役柄のキャラクターに見えてくるんです。

YUKI　稽古や本番以外のところでもそれが見えてくるのが面白いよね。

――良い意味でライバル意識も抱いていましたか…？

YUKI　ありますね。それぞれが「かましてやろう」って思って挑んでるのが伝わってくるし。

松岡　そうやって他のディビジョンが盛り上がっているのはサイコーなことなんですけど、悔しい気持ちというか「俺たちもやってやろうぜ」って気持ちに……。

YUKI　なるよね（笑）。その意味では、この夏、『ネルフェス2024』に『ヒプステ』として出させていただいたんですけど、作品を背負って出ていくという意味で、ディビジョンの垣根を越えて「『ヒプステ』を盛り上げてやるぜ！」みたいな雰囲気があったよね？

松岡　ありましたね。

YUKI　あれが-New Encounter-と今回の-Grateful Cypher-の間にあったのは、すごくよかったなと思ってて。みんなで「『ヒプステ』一発かましたるぜ！」っていう雰囲気があったよね。感動したなぁ。

――最後に改めて、-Grateful Cypher-に向けて楽しみにされていること、こんなところを期待して見てほしいというところを教えてください。

松岡　最初にも言いましたが、-New Encounter-が終わって「早く次をやりたい」という気持ちがかなり大きくなっていて、いつ破裂してもおかしくないくらい膨らんでいます。ようやく、みなさんの前でやれるのが楽しみだし、今回も悔いなく一公演、一公演、全員でやり切って、来てくださったみなさんにも「また来たい」と思っていただけるように頑張ります。

YUKI　台本を読ませていただいて、個人的にすごくチャレンジのしがいのあるシーンもありますし、やはり前作があっての僕たちなので、期待をちゃんと超えられるように――なんなら前作とはまた違う大きな緊張感もって挑もうと思っています。新しいディビジョンも加わって、また新たな化学反応も生まれると思いますし、僕自身は前回と同様にリスペクトを忘れず、挑んでいきたいです。

取材・文：黒豆直樹
撮影：源賀津己
ヘアメイク：三輪千夏

＜公演情報＞
『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage -Grateful Cypher-

公演期間：2024年10月4日(金) ～ 2024年10月14日(月･祝)
会場：TOKYO DOME CITY HALL

チケット情報：
https://w.pia.jp/t/hypnosismic-stage-gc/