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鯨井康介、北村健人、瀬戸祐介が挑む名作『マクベス』

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左から)瀬戸祐介、鯨井康介、北村健人 (撮影:石阪大輔)

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2024年9月26日(木) より開幕するCasual Meets Shakespeare『MACBETH SC』。

Casual Meets Shakespeareとは、“普段着でシェイクスピア”をコンセプトに掲げ、今もなお愛され続けているシェイクスピア作品を“高尚かつ難解なもの”ではなく、ストーリーの軸や独特な台詞回しは活かしつつ、現在の日本で上演する演劇作品として脚色、上演していくシリーズ作品となる。

本作で、前王を殺害しスコットランド王の座についた主人公・マクベスを演じるのは鯨井康介。そして、マクベスに妻子を殺され復讐を誓う貴族・マクダフを演じるのは、北村健人(シリアス)、瀬戸祐介(コメディ)だ。Casual Meets Shakespeareシリーズ初参加となる鯨井、北村、瀬戸の3名に、本作に懸ける想いを語ってもらった。

――みなさんは、もともとシェイクスピア作品にはどのような印象をお持ちでしたか?

鯨井 僕はそもそも、役者たちはなぜこんなにもシェイクスピアが好きなんだろうというところに純粋な疑問を抱いていました。学生時代から演劇は好きだったので、シェイクスピアが題材の舞台もいろいろと観に行ってはいましたが、使われる言葉たちが美しくもあり難解で、作品そのものをしっかりと理解していたかというと、そうではないような気もしていて。だから、本作の“普段着でシェイクスピア”というコンセプトを聞いて、「とてもいいじゃん!」と思いましたね。難しい作品をよりわかりやすい表現で演じられるということに期待を感じました。

鯨井康介

北村 シェイクスピア作品は、役者として避けては通れない道であると同時に、いつかは挑戦してみたいという思いがある作品でしたね。演じる側にも観る側にも、ある種の知的さを求められる高尚な作品というイメージがあったのですが、本シリーズの前作『OTHELLO SC』を観させていただいた時に、「戯曲の元祖であり最高峰と言われている作品はこんなにも見やすかったんだ」ととても驚きました。

――役者側からしても、より理解しやすく、演じやすくなっているということですね。

北村 そうですね。どうしても時代背景や世界観の違いで、理解が難しいという部分もあると思うのですが、そこを脚色・演出の松崎史也さんがとても分かりやすく描いているなと感じます。

瀬戸 最初にシェイクスピア作品に触れたのは、大学生の頃でした。その時に四大悲劇と言われる、「ハムレット」「オセロー」「リア王」「マクベス」を全て読みました。役者になってからは、シェイクスピアをモチーフとした作品にも何作か出演させてもらっていますが、やはり、役者をやるからにはいつか通るというイメージが強い作品ですよね。いろいろな解釈でやり尽くされている作品でもありますが、本作の脚本は読んだ時にとてもスッと頭に入ってきたのが印象的でした。

瀬戸祐介

――鯨井さんは、松崎史也さんからの熱い思いを受けてのご出演とのことですが、最初にオファーが来た時はどのようなお気持ちだったのでしょう?

鯨井 とても嬉しかったのですが、同時に、僕でいいのかなという気持ちもありました。史也さんとは、MANKAI STAGE『A3!』という作品でご一緒したことがあるのですが、その中で僕のどういうところにマクベスらしさ見出してくれたんだろうと不思議な感覚でした。僕自身も主演という立ち位置は久々でもありますし、シェイクスピアという題材というのもあって、僕にとっても挑戦となる作品です。「この作品が主演をやるラストチャンスだ」というぐらいの気持ちで挑みたいと思っています。

――これまで培ってきたものを全てぶつけるような?

鯨井 そうですね。「愛には愛で答えてやるぜ」みたいな。……ちょっと滑りましたね(笑)。

瀬戸 全員大爆笑って書いといてあげてください!

北村 あはは!

北村健人

――北村さんは鯨井さんとは本作が初共演、瀬戸さんは何度か共演経験があるとのことですが、鯨井さんに対してはどのような印象をお持ちでしたか?

瀬戸 初めて会った時からすごい役者だなと思っていました。同世代でこんな役者がいるんだと驚きましたし、本作でもしっかりと真ん中に立ってくれています。本作は、シリアスとコメディの2バージョンある作品ですが、マクベスの二面性をとても上手く演じ分けているなと感じますね。

北村 僕は今回初めて共演させていただきますが、鯨井さんが素敵な役者さんという噂はいろいろなところから聞いていました。だから、共演できるのを楽しみにしていましたし、実際に今稽古をしている中で、“怪物だな”と思うぐらい、素晴らしくて存在感を放っているなと。鯨井さん演じるマクベスと、僕が演じるマクダフは、ラストに向かって関係性が濃くなっていく間柄なので、お客様の前でラストシーンを一緒に演じさせていただけるのが今から楽しみです。

――本作はS(シリアス)とC(コメディ)の2パターンでの上演となる作品です。とても斬新な上演方法だなと。

鯨井 僕も最初に聞いた時は同じ感想でした。すごいことするなと。同じ内容の脚本を、側面を変えて表現するというのは、とても面白い試みですよね。そもそも、『マクベス』自体がシリアスなストーリーですし、普通に舞台化されたら、シーンによっては笑いのシーンも入っているんですよね。でも本作では、それぞれシリアス、コメディという側面を強化していて、各キャラクターの抽出する部分の濃度を変えて作り上げています。

――シリアス、コメディともにご出演される鯨井さんは、混乱することもあるのでは?

鯨井 今はまだ混乱しまくっていますね(笑)。でも、シリアスではこう、コメディではこうすればいいというのが掴めてきているので、本番に向けて上手く切り替えができていくんじゃないかなと思っています。

――北村さんはシリアス、瀬戸さんはコメディで同じマクダフという役を演じますが、お互いのことは意識されているのでしょうか?

瀬戸 実は、今回取材を受けさせていただくということで、シリアスの稽古を見学してきました。結論から言うと、意識は全くしてないですね。というのも、意識しようがないぐらい、全くの別物なんです。マクベスとマクダフの関係性も、シリアスとコメディでは少し違っていますし、マクダフの家族構成の部分でも、ちょっと仕掛けが入っていたりと、本当に違う役のような感覚です。

北村 僕も初めてコメディの稽古を見学した時は、本当に違うなと感じました。シリアスバージョンでバンクォーを演じる⽥⼝涼さんと一緒に見ていたのですが、涼さんが「シリアスはコメディの盛大なフリに使われている」と言っていて。その言葉がとても的を射ているなと思ったんですよね。だから、両方観ようと思ってくださっているお客様には、シリアスを観てからコメディを観ていただくと、どう崩されていくのかが分かって、より面白いのではないかなと思います。

――シリアスはコメディのフリと言われていますが、コメディチームとしてはいかがですか?

瀬戸 たしかに、もともとの台本を崩している面白さがコメディにはあると思います。でも、シリアスバージョンをご覧になっていない方がコメディを観た時に、内輪ノリのような、自分たちだけが面白いものにならないかという恐怖もあるんですよね。もちろん、コメディとしてしっかりと洗練されたものに仕上げて、誰が見ても笑えるものを作らないといけないですが、そこのバランスがとても難しいなと感じています。

北村 コメディの稽古を見学した時に驚いたのが、全てのシーンで、笑いのネタを各役者さんが持ち込みで作られているというところでした。役者自身が「これ作って来たんですけど、どうですか」と提案して、それを史也さんが調理されていますよね。

鯨井 みんなネタ見せと言っています(笑)。

瀬戸 これまで見たことのないスタイルの稽古ですよね。だから役者全員が脚本家であり、演出家であり、みたいな。特に、僕と鯨井さんは2人とも稽古に遅れての参加だったので、最初は困惑しました。

鯨井 とあるシーンの稽古に2人で初めて入った時、すでに完成されすぎていて「僕たちいらないね」という空気になりましたね。例えるなら、初めて来たテーマパークに自分のアトラクションを作れと言われたような感覚。

瀬戸 本当にそう! 僕たち2人が入った時は、もうジェットコースターも観覧車も揃っていましたからね。

北村 そういう意味では、たくさんの人の感性の笑いが入っているということですよね。

瀬戸 そうなのよ。それが全部史也さんの手柄になりますからね!

一同 (笑)。

――一方、シリアスはどのように稽古をされているのでしょう?

北村 コメディとは全く違って、台本に沿って、というスタンダードなやり方ですね。でも、史也さんの現場の特徴なのですが、最初からこの方向に向かっていくというのが全員に見えているんですよね。だから一度、早い段階で抜き打ちの通し稽古をすることがあったのですが、無事に通すことができましたし、それをキッカケに全員のモチベーションがさらに上がったのを感じました。

鯨井 僕はその抜き打ち通し稽古には参加できなかったのですが、次の日ぐらいに稽古場に行ったら、北村くんの喉がガッサガサだったんです。どうしたの?と聞いたら、「1回通したんです」と言われて、「一体どんな芝居やってんの⁉」と驚いたぐらいで(笑)。シリアスチームのその結束力というか、一気に世界観に入り込む力はすごいなと思いますね。

北村 あと、シリアスではマクダフの息⼦役を村山董絃くんが演じているのですが、董絃くんがとにかく可愛くて……。この間、たまたま稽古場で董絃くんのお母様とお会いする機会があったので、その際に「何かあったら僕が董絃くんのことを守ります!」とご挨拶させてもらいました。

鯨井 カッコいい! サラッとそういうこと言うタイプだよね。いろいろなことをスマートにこなすというか。シリアスチームで集合写真を撮る時も、自然な流れで自分の膝の上に董絃くんを座らせて、まるで本当の父親のような顔をしているんですよ(笑)。

北村 それぐらい可愛いんです。

――最後に、公演を楽しみにしているファンのみなさんに向けてメッセージをお願いします。

瀬戸 本作で初めてシェイクスピアに触れる方もいらっしゃるかと思いますが、本音を言うと、シリアス、コメディの両作品とも観ていただきたいぐらい、カンパニー一同で思いを込めて作っています。マクベスは、予言の魔女に出会ったことがキッカケで破滅へと歩んでいってしまう人物です。魔女が全ての元凶だと思われそうですが、結局、悪いのは魔女ではなくてその道を選んだ自分自身なんじゃないかと僕は思っていて。きっと、現代の人の心にも重なる部分があると思うので、ぜひ期待をして劇場に足を運んでいただければと思います。

北村 『マクベス』という作品は、これまでたくさんの方々が上演してきた作品です。そして僕が演じるマクダフも、さまざまな役者さんが演じてこられた役だと思いますが、自分にしかできない最後の一滴のようなものを、本作を通して見つけていきたいと思っています。実は僕、最初に原作を読んだ時に、マクベスはとても悪いやつだという印象を持っていたんです。でも今、鯨井さんが演じられるマクベスを間近で見て、もしかしたらマクベスは巻き込まれた可哀想な人なのかもしれないと思うようになりました。演じられる役者によって受け止め方が変わる作品だと思うので、お客様にも“僕らの『マクベス』”をお届けしたいです。ぜひ観に来てください。

鯨井 僕は本作への出演が決まってから原作を読んだのですが、僭越ながら、とてもマクベスの気持ちに共感してしまったんです。自分でも、マクベスに対して不思議な寄り添い方ができているなと思っているので、だからこそ、本作ではあまり役作りはしていません。カジュアルに、より内容をわかりやすく作っている本作ですが、紛れもなくシェイクスピアが生んだ『マクベス』という作品でもあると思います。先程、健人も言っていたように、僕もマクベスは運命に翻弄されている人だと感じています。コメディとシリアスでは、その翻弄のされ方が、真っ直ぐに翻弄されるのか、思いもよらない方向に翻弄されるのかという違いを見ることができると思いますので、人間のちょっと可愛くて愚かな部分を皆様にお届けできるように頑張ります。ぜひ期待して劇場にお越しください!

取材・文:榎本麻紀恵
撮影:石阪大輔

<公演情報>
Casual Meets Shakespeare『MACBETH SC』

公演期間:2024年9月26日(木)~10月6日(日)
会場:新宿村LIVE

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/casual-meets-shakespeare/

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