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渡邊圭祐の変わらないもの「ポリシーはない。ただ、何事も楽しく生きていたい」

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渡邊圭祐 (撮影/映美)

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俳優・渡邊圭祐。「仮面ライダージオウ」でデビューを飾り、6年。着実に、その歩みを進めてきた。デビュー当時からミステリアスでクールな印象だった彼は、年齢を重ね、より大人の余裕と洗練を身につけた。

30代を迎えた渡邊圭祐は今、どんな変化が訪れたのか。そう尋ねると、彼は艶やかな笑みをたたえながら話しはじめた。

刀にふれることで近づいた武士の心構え

映画の中の渡邊圭祐は、まさにヒーローそのものだった。

10月25日公開の映画『八犬伝』で渡邊が演じるのは、八犬士の一人・犬塚信乃。日本のスペクタクルファンタジー小説の原点であり、のちの作品に多大なる影響を与えた滝沢馬琴の傑作『南総里見八犬伝』の世界を、渡邊圭祐は生き抜いた。

「監督からまず言われたことが『ケレン味を持たせてほしい』ということでした。そういう意味でも、この世界観に溶け込む上で最初の入口になったのが、アクション稽古。実際に体を動かしながら、犬塚信乃という役のエッセンスを抽出していきました」

これまで『ブレイブ -群青戦記-』『鋼の錬金術師 完結編』などアクションの経験はあるが、自ら刀を握っての殺陣は初挑戦。撮影前からおよそ1〜2ヶ月にわたって事前に稽古期間を設けた。

「シンプルな刀で戦うのは初めてだったので、とにかく基礎からという感じでした。刀の握り方に振り方、美しい太刀筋というのを一つずつ学んでいって。やっぱり足の運びだったり腰の落とし方だったり、普段の生活とは体の使い方が全然違うので、結構下半身に来るんです。いつも稽古の後は、サッカーをした後のような筋肉痛が来ました(笑)」

現場に入ってからも、意識的に刀にふれる時間をつくっていたと言う。それは、単に所作を馴染ませるためだけではなかった。

「やっぱり武士としての心構え、というものが大事になってくるので。そういうものは、現代を生きる僕にはわからない。だからこそ、せめて刀にさわって慣れていくことで、少しでも近づければと思っていました」

恒司くんは、やんちゃでわんぱくないたずらっ子でした

見せ場は、水上恒司演じる犬飼現八との決闘のシーン。絢爛豪華な芳流閣の瓦屋根の上で繰り広げる死闘は、『南総里見八犬伝』を知る者なら誰もが湧き立つ本作きっての名場面だ。

「あそこは結構アクロバティックな動きも入っていて、たぶんいちばん練習したんじゃないかな。信乃にとっても、一対一で戦うのはあそこだけなんですよ。だからすごく気合いが入っていたし、現八との一騎打ちに辿り着くまでの間に建物の中を上っていくんですけど、そこでのアクションも含めすごく記憶に残っています」

芳流閣を再現したそのシーンでは、最新のVFXがふんだんに用いられている。目の前に本物の芳流閣が現れたような精巧な映像技術は、日本のファンタジー映画の進化の証でもある。

「実際には、机を斜めにしたようなものの上で撮影してたんです。それが、本編では見事な瓦屋根になっていて、やっていた僕ですら驚きました(笑)。演じている側は意外とわからないんです。だから、初号試写を観ながら、なるほど、あそこはこうなっていたんだっていろいろ思い返していました」

何もない場所に、まるで実物があるように演じなければいけない。VFXが進化するほど、問われるのは俳優の力だ。

「そこはやっぱり想像力を働かせてやらなくちゃいけないですよね。でも、スタッフのみなさんがいろいろサポートしてくださるので。今回も、スタッフさんが本番ではこういう感じになりますという絵を見せてくれたり。アクションもVコン(アクション部が事前にアクションを行い、それを映像におさめたもの)を用意してくださったので、それを観ながら、自分の中でイメージを膨らませていきました」

相対する水上とは『MIU404』以来の共演となるが、本格的に一緒に芝居をするのは今回が初めてとなる。

「恒司くんは、こんないたずらっ子っているんだというくらい、やんちゃでわんぱくな男の子でした(笑)。八犬士が集まると、いちばんよく喋っているのが恒司くん。現場の盛り上げ役を担ってくれていました」

大人といえど男が8人も集まれば、やはり男子校のノリが生まれるようで、現場ではよくキャストをイジって遊んでいたそう。

「いちばんイジられていたのが、(犬田小文吾役の)佳久(創)さん。小文吾が役の設定上、歯に汚しを入れていたんですが、それを見て『歯が汚い!』とイジるのが定番のネタでした。年上なのに損な役周りを引き受けてくださって、佳久さんにはお礼が言いたいです(笑)」

正義か悪かは、どちらの視点で見るかで決まる

『南総里見八犬伝』といえば、これまで映画や舞台で何度もリメイクされてきた。本作と先達の作品との大きな違いは、信乃らの冒険活劇を描く「八犬伝パート」と、生みの親である滝沢馬琴が『南総里見八犬伝』を書き上げるまでを描く「創作パート」という二つの物語が同時に進んでいくところだ。

特に、善因善果/悪因悪果(良い行いは良い結果をもたらし、悪い行いは悪い結果をもたらすという考え)を標榜する滝沢馬琴が、善因悪果/悪因善果(良い行いをした者が報われるとは限らず、悪い行いをした者がいい思いをすることもあるという考え)を唱える鶴屋南北と対立する場面は、本作ならではの見応えだ。

「僕は滝沢馬琴の考えもわかるし、鶴屋南北の考えもわかる。自分の中に両方ある気がします。というか、結果をコントロールすることなんてできなくて。だからこそ、つい後から理由をつけたくなるものなんじゃないかな、というのが僕の考え。たとえば何か悪いことが起きたときに、後から『きっとあのとき、ああしてたからこうなったんだ』って考えがちじゃないですか。でも本来そこに因果関係はなくて、人が勝手に結びつけて納得したいだけなんじゃないかなと」

その合理的な考え方は、渡邊のスマートな雰囲気にとても合っている気がした。

「結局、理想か現実かみたいな話で。人ってそういうのが好きだから、つい論争が起きるんだと思います」

そう泰然と構える渡邊に、渡邊圭祐は現実主義者か理想主義者かと尋ねると、笑みを崩さず、さっぱりと答えた。

「どちらとも思っていないです。現実とか理想とか、正義とか悪とか、そういう事柄に対して何とも思わない性格なんだと思います。ヒーローものって、大抵正義と悪が出てくるじゃないですか。あれも主人公の視点によって、どちらかが正義で、どちらかが悪と決まるだけで、悪とされた側も本人たちは正しいと思ってやっている。結局、見方の問題なんですよね。だから両方それぞれに納得できる理由があるなら、僕はどちらも正義だと思う人間です」

「僕はたぶん、『楽しい』の幅が広いです」

初めて彼に話を聞いたのは、今から5年前。そのとき、彼は「何事も楽しく」がポリシーだと話していた。歳月を経て、その信念に何か変わりはあるだろうか。

「それがびっくりするほど変わらないんです(笑)。今でも『何事も楽しく』と思っている。ただ一つ付け加えるとするなら、そもそもポリシーというもの自体が僕にはないんです。さっきからどちらとも思わないと言ってるのも、自分の中で『これ』という決まった考えがないから。そこにこだわるより、楽しけりゃいいじゃんと思ってしまうんです」

だが、年をとればとるほど嫌でも歯を食いしばらなければいけない局面が出てくる。「楽しい」だけでは太刀打ちできない現実を見て、それでも「楽しけりゃいいじゃん」と言えるタフさは何から生まれてくるのだろう。

「たぶん、僕、『楽しい』の幅が広いんですよ。だれかと一緒に仕事をするときは『この人を認めさせたら面白いな』というマインドに切り替わる。いかに攻略するかを楽しめちゃうんです。おおむねそれで大丈夫ですね」

あっけらかんとした口ぶりには、見栄も強がりもまるで感じられない。ネガティブに支配されない楽観力を、彼は備えているのだ。

「それとこの仕事は締め切りが明確なところがいいのかもしれない。たとえば作品の撮影だったら、いつからクランクインでいつがクランクアップというのが決まっている。だから、どんなにキツいなと思ってもいずれ終わるし、だったらそこまで突っ走ってやろうという気持ちになれる。これが、明確な期限がなかったり、そもそもその選択肢を自分でとれない環境にいる方は大変だと思うんですけど。そういう意味では僕は恵まれているなと思うし、この仕事にも合っているんだと思います」

だが、同じ環境にいても、渡邊のようにどんなことも「楽しい」と捉えられる人ばかりではない。そこにはやはり渡邊独自の何かが、きっとある。

「もしそういうものがあるとしたら、たぶん口にして言うことが大事なんだと思います。僕が今話したことも、言ってしまえば『言ってるだけ』みたいなところはあります。でも不思議なもので、一度言葉にしてみると、そういうふうに生きなくちゃなという感覚になっていくんですよね」

言霊が、人をつくる。彼を鼓舞するのは、自らの言葉だった。

「だから、僕、取材って面白いなと思っていて。質問された以上、たとえ自分が考えたことのないことでも言語化しなくちゃいけない。そして、その言語化した言葉は自分の考えになる。それが仮に昨日観た映画の影響であっても、一度自分の喉を通って口から出た以上、自分の考えなんです。そうやって口に出して言葉にしていくことで、自分を何でも楽しめる人間にしていってるところはある気がしますね」

滝沢馬琴は生涯を懸けて『南総里見八犬伝』を書き上げた。ならば、渡邊圭祐が生涯を懸けて貫きたいものは何か。その答えは、もう口を開く前から決まっていた。

「何事も楽しく、ですね。死ぬまで楽しんで生きたいです」

渡邊圭祐は、変わらない。どんな難局も楽しみながら、自分の道を歩んでいく。

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映画『八犬伝』10月25日(金)より公開

https://www.hakkenden.jp/


取材・文/横川良明 撮影/映美 ヘアメイク/荒木美穂 Miho Araki スタイリスト/九(Yolken) 衣装クレジット/ジャケット/¥81,000- /KOH’S LICK CURRO /KOH’S LICK CURRO パンツ/¥49,000- /KOH’S LICK CURRO /KOH’S LICK CURRO シャツ /¥4,950- /Casper John /Sian PR その他スタイリスト私物 (問い合わせ先) ・Sian PR 〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-2-3 ルカビル3F/4F TEL:03-6662-5525

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