ミュージカル『SONG WRITERS』より、左から)中川晃教、屋良朝幸、実咲凜音、武田真治
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すべて見る屋良朝幸と中川晃教が主演するミュージカル『SONG WRITERS』の再々演が11月6日に東京・シアタークリエにて開幕した。作詞家・森雪之丞と演出家・岸谷五朗がタッグを組み創作、2013年に初演されたもので、日本オリジナルミュージカルの傑作として名高い作品だ。今回は2015年の再演を経て9年ぶり、待望の登場となるが、キャスト陣のコメディセンスも冴え、いっそうパワーアップしたステージになっている。出演は初演から続投する屋良、中川、武田真治、コング桑田のほか、実咲凜音、相葉裕樹、青野紗穂、蒼木陣、東島京らが新キャストとして加わった。
物語の舞台は1976年のアメリカ。自信過剰な作詞家のエディ・レイク(屋良朝幸)と、気弱な作曲家のピーター・フォックス(中川晃教)の幼馴染ふたりは、自分たちの作ったミュージカルがブロードウェイでヒットすることを夢見ている。
ある日、音楽出版社のディレクター・ニック(武田真治)が「ふたりの曲をボスが気に入った」と言ってくる。ただし契約の条件は、その曲にふさわしい女性歌手を見つけること。偶然エディが出会った女優の卵マリーの歌声に全員が惚れ込み、ミュージカル制作は動き出す。
一方、エディが書き始めた物語の世界では、マフィアのボス・カルロ(コング桑田)が内通者の刑事・ジミー(相葉裕樹)のおかげでニューヨーク市警の手から逃れ、大きな取引をしようとしているところ。だがカルロの情婦であるクラブ歌手パティ(青野紗穂)は、ジミーの元恋人で……。
トリッキーな展開の中で、愛らしいキャラクターたちが右往左往しながらハッピーエンドを目指していく、パワフルな物語だ。コミカルなセリフの応酬や、ミュージカルファンのツボを突く“ブロードウェイ・オマージュ”にニヤリとしているうちに森雪之丞の仕掛けに嵌り、物語はとんでもない方向へ……。岸谷五朗らしいスピーディで躍動感ある演出も冴え、とにかく飽きさせない展開がいい。そしてこの世界の中、役者たちが本当に生き生きと躍動する。
すべてのキャラクターに俳優本人の魅力が満ち満ちていて、隅から隅まで楽しい。特に屋良と中川は台詞のやりとりのテンポ感のしっくり具合、歌声の溶け合い具合がまさに“バディ”。もはやエディなのか屋良なのか、ピーターなのか中川なのか、演技なのか素なのかわからないほど自然体で相棒になっている。
作曲はKO-ICHIRO(Skoop On Somebody)、さかいゆう、杉本雄治、中川晃教、福田裕彦。ミュージカルで複数人の音楽家がいることはややもすれば統一感がなくなってしまう危険性もあるのだが、本作においては様々に場面が飛ぶ複層的な構造を持つ物語にマッチ。ブロードウェイらしい煌びやかなナンバー、キャラクターの心情をしっとり歌い上げるナンバー、コミカルなナンバー、サスペンスフルな展開にぴったりのナンバー等々、音楽も玉手箱のようだ。俳優たちのパフォーマンスのレベルの高さもあり、ミュージカルとして満足度の高いものになっている。
この作品で、運命の人と出会った― 初日前会見で絆を再確認
初日前日の11月5日は、公開ゲネプロと屋良、中川、実咲、武田、森雪之丞、岸谷五朗による会見も。屋良と中川の息のあいっぷりを記者に指摘されたところ、中川が「伝わっちゃいました? やっぱりこの作品で出会って僕たち結婚したみたいな感覚あるから……」と嬉しそうに答え、屋良が「ないないない(笑)! いや、その発言は疑われるぞ!」と慌てるも、「それだけ運命の人と出会った」(中川)「それは、そう」(屋良)と話すなど、終始ふたりの絆の強さが伝わってくるものに。
なお、自分にはないお互いの魅力は「(屋良は)何事にも臆さないところと、舞台に立つ人間としての厳しさ。僕もかなり自分にストイックではあるのですが」(中川)「アッキー(中川)は、ある意味器用じゃないんだけど、だからこそ綿密に、一つのセリフも紐解いていく。僕はわからなくてもとりあえず動いてしまうのですが、アッキーはわからなかったらストップする、ちょっと動物的な感覚があって、そこはすごく羨ましい。あとはやっぱり同年代というのも大きい」(屋良)とのこと。
また初演から11年経ち変わったところは、という質問には「アッキーのダンスが上手くなりました! 振付を覚えるスピードも上がったし、技術的にもパワーアップしている。前回は絶対にできないステップが一ヵ所あったけど(今回はできている)」とダンサーでもある屋良が中川のダンスに太鼓判を押していた。
実咲も「マリーは舞台上を駆け回っていてハードなのですが、不安よりワクワクの方が断然大きい。お三方(屋良、中川、武田)は心の若さがみなぎり、稽古場では小学生かのようにワチャワチャしていたけれど(笑)、それがこの作品にパワーを与えてくださっている」と話し、武田も「稽古場に通うのがこれほど楽しい作品ってなかなかない。9年前の再演で僕は『SONG WRITERS』はやり切ったかなと思ったけれど、雪之丞先生の脚本は、まだまだ深掘りするところがたくさんあった。10歳齢をとりましたが、パワーアップした舞台を届けたい」と意気込んだ。
岸谷は「10年前の作品をまた上演できるというのは、ちょっとご褒美をいただいたような気持ち。キャストがめちゃくちゃ面白く、雪之丞さんの書いたキャラクターが役者の力で命を得てキュートに輝いている。普段の初日は不安が大きいので、こんなに初日が楽しみなのはなかなかない」と話し、森は「クリエイターとしては、僕がこの世からいなくなっても作品が残り、代々違うキャストが演じて、作品が受け継がれていくというのが最高のこと。なのだけれど、この作品はこのキャスト以外、考えられないというのが困ったところ。ひょっとしたらこの作品はこれで終わってもいいのかもと思うくらい」という最大の賛辞をキャストに贈っていた。
ゲネプロが行われた11月5日にちょうど誕生日を迎えた中川は「初演の2013年も、ツアー中に誕生日を迎えました。作品をきっかけに、自分の時間を振り返ることができる、これもまた舞台やミュージカルのいいところ。すべての思いを込めて愛おしい舞台になっています」としみじみとしたコメントも。屋良は「盛りだくさんという言葉がこんなに似合うエンターテインメントはない。最高に笑える作品なので、たくさん笑って、たくさんストレス飛ばしに来ていただけたら」とアピール。公演は11月6日(水)から28日(木)まで同劇場にて。その後12月には大阪、愛知公演もあり。チケットは発売中。
取材・文・撮影:平野祥恵
★屋良朝幸さん&中川晃教さんのインタビュー掲載中!
屋良朝幸&中川晃教の“名バディ”再び! 伝説のミュージカル『SONG WRITERS』から始まったふたりの絆
<公演情報>
ミュージカル『SONG WRITERS』
作・作詞・音楽プロデュース:森雪之丞
演出:岸谷五朗
音楽監督・作曲:福田裕彦
作曲:KO-ICHIRO(Skoop On Somebody)、さかいゆう、杉本雄治、中川晃教
出演:屋良朝幸 中川晃教
実咲凜音 相葉裕樹 青野紗穂 蒼木陣 東島京 コング桑田 武田真治 他
【東京公演】
2024年11月6日(水)~11月28日(木)
会場:シアタークリエ
【大阪公演】
2024年12月7日(土)・8日(日)
会場:森ノ宮ピロティホール
【愛知公演】
2024年12月11日(水)
会場:Niterra日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/song-writers/
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