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香取慎吾、最新アルバム『Circus Funk』リリース直前インタビュー「音楽を作ることと絵を描くことは近い」

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Text:谷岡正浩

この人は根っからの表現者なのだと思った。音楽、絵、そして俳優としてなど、彼の中には広大な表現の地図が広がっていて、そのひとつひとつは点在しているとしても、決してバラバラではないという確かな手触りが彼の生み出す作品からは感じられる。11月27日(水) にリリースされる最新アルバム『Circus Funk』はまさにそんな香取慎吾の今が詰まった作品であり、1曲1曲の個性を突き詰めた楽曲がカラフルなひとつの世界を作り上げている。このアルバムの世界を存分に味わえるフェスの開催も迫る中、香取慎吾本人に話を聞いた。

言葉にしようと思って言葉にしたことって、これまでだいたい叶ってるんですよ

――まず、アルバムタイトル、そして第1弾先行配信シングルのタイトルにもなっている『Circus Funk』という言葉がすごく素敵だなと思いました。

うれしいですね。

――ワクワク感もあるし、時代に左右されない強さも含まれているなと感じました。この言葉は香取さんの中ではどのようなイメージとしてあるんですか?

これがいつ降ってきたか、というのをはっきりとは覚えていないんですけど、2022年から2024年にかけて個展をやっていたんですよ(※全国6カ所をツアーした大規模個展『WHO AM I』)。そこに出した絵の中にピエロが出てくるものがあるんですけど、それは何て言うんでしょう、20代とか30代の頃に描いたもので、とても目まぐるしい毎日にあって、いったい自分は何者だ? 俺なんてピエロだ、みたいな気持ちで描きなぐっていて(笑)。それは自虐でもあるんですけど、同時に好きな部分でもあって、音楽ではそこをまだきちんと表現していないなって思ったんですよね。さらに遡ると、僕がグループを離れてひとりでステージに立つようになったのがコロナの期間と丸かぶりしていて、ひとりでステージをやるんだという気持ちと、コロナという特殊な状況も合わさって、ちょっとグッと気持ちが昂ることも正直あったんです。そこから2024年になって、今音楽をやるんだったらダンサブルでハッピーで、気づいたら終わっているような、夢中で楽しめるもの――そういう作品をつくりたいなというところから“Circus”という言葉が降って来ました。

――なるほど。

で、2022年4月に出した『東京SNG』という2枚目のアルバムでジャズをやったので、そこからファンクへとつながっていったんです。ただ、音楽的なことももちろん大事なんですけど、それよりも“Funk”という言葉の響きに惹かれるものがありました。絵のタイトルでもそうですし、僕は洋服のブランドもやっているんですけど、何かを創作することと言葉を紡ぐことはとても密接な関係にあって、好きなんですよね。それで“Circus”と“Funk”を合わせて“Circus Funk”という言葉が生まれて、さあここから何をやっていこうか、という感じになりました。

――今回新たに使用されているアーティスト写真やジャケットのアートワークなどを拝見すると、かなりポップでカラフルな印象を受けました。1stアルバム『20200101』、2ndアルバム『東京SNG』のときは、もっとシンプルな色使いだったなと思ったんですよね。それが今回はいろんな色がヴィヴィッドに主張しながらも混ざり合っているというところが新鮮でした。

そこはちょっと面白くて、確かにパッと見はカラフルでポップなんですけど、実際蓋を開けてみると、もうちょっとダークなサーカスになったりしてるんですよね。

――ポップさの中にあるダークさとか、より深いレイヤーで感じられる体験というのは、音楽に限らず香取さんの創り出すアートの根本ですよね。

ああ、そうですね。そこの根っこはありつつ、今回の『Circus Funk』で言えば、大人のサーカスをいかに展開していくかというか。(収録楽曲の)タイトルだけ見てもやっぱりそのへんの感じはありますね。2曲目から「SURVIVE」ですからね(笑)。

――第2弾の先行配信シングルとしてリリースされた「TATTOO(feat. 中森明菜)」も、アルバムの収録曲順の流れで見ると、言葉ヅラの迫力というか、『Circus Funk』という世界観の中にきっちり刻印している感じがありますよね。

そうなんですよね。もともと中森明菜さんの「TATTOO」は好きで、いつかやってみたいと思っている中で『Circus Funk』の構想が生まれて、ここだ! って思ったんですよね。

――しかもアレンジと演奏が、SOIL&“PIMP”SESSIONSというのも最高ですね。

SOILには前作の『東京SNG』のときにお声がけさせてもらっていたんですけど、スケジュールの都合で実現しなかったんです。でも大好きだから絶対またやりたいなと思っているところで、「TATTOO」をやるならSOILじゃないかと閃いたんです。それで明菜さんサイドに、カバーだけではなく、もしよろしければSOILのアレンジと演奏でご一緒させていただけませんか? と(笑)。普通に考えたら、なかなかハードルが高い思い切ったオファーだというのは分かっているんですけど、でもどこかで思い切ってないというか、言葉にしようと思って言葉にしたことって、これまでだいたい叶ってるんですよ。本当にそれが出来なさそうだったら、そもそもカバーさせていただくことだけしか言ってないと思います。でも、カバーって思った後に、自然と一緒にっていう発想になったんですよね。「ぜひ」っておっしゃっていただいたときは、本当にうれしかったですね。面白かったのは、SOILの社長(Agitator)がオリジナルとは違うBPMなんかを探りながらオケを作っているときに、「もしものときは僕が歌います」って言ってました(笑)。実際にレコーディングの現場に明菜さんが現れるまで、だんだん誰かに騙されてるんじゃないか? っていう気持ちになったりして、だからレコーディングを終えた後は感動でしたね。本当に実現したんだって。「今回なんで来てくれたんですか?」って聞いたら、「香取くんに呼ばれて来ない選択はないです」と。「応援していましたよ」って言われて、もう言葉にならなかったですね。

音楽を作ることと絵を描くことは近い

――僕は先行配信になった「Circus Funk(feat. Chevon)」は勝手に1曲目、オープニング楽曲なんだろうなって思ってたんですよね。煌びやかで妖しげなサーカスの幕が、いよいよ開きますよっていうその瞬間のワクワクと猥雑を表現した曲だから。

分かります。分かるんだけど、でもこの曲は最初からこの位置、3曲目というのはずっと変わってないですね。

――そうなんですね。となると、その前の2曲がどんな内容なのか、めちゃくちゃ気になりますね。

1曲目は、ヒューマンビートボックスのSHOW-GOくんをフィーチャリングに迎えた楽曲なんですけど、実はこの曲がギリギリまで出来なくて。「君の曲がどうしても1曲目に必要なんだ!」って励まし続けて(笑)、レコーディングスタジオで歌詞を1行書いてはブースに入って録音してっていう感じでなんとか完成しました。

――はははは。

他のみなさんはあまりこういうやり方はしないと思うんですけど、僕の場合は参加していただくアーティストやミュージシャンの方々に、全部説明します。この曲がアルバムの何曲目に来て、その前後にどういう曲があるのかということを。さらに、ライブではこういう演出になって、こんなふうにステージに出てきて、照明はこんな感じになってて、っていうところまで説明して、なのでこういう曲なんですよって言うと、すごく分かるってみなさんおっしゃいますね。下手したら、この曲のエンディングはこうなっていくイメージなんですけど、次の曲はこんな感じで始まるので、ということで実際に次の曲を聴いてもらうこともあります。

――その楽曲の音楽的な構造を説明されるよりも、前後の流れとか、もっと言えば舞台表現としてのビジュアルを共有する方が、もしかしたら音楽的な共通理解は深まるのかもしれませんね。例えば、こういう照明を作るためにイントロはこれくらいの長さが必要なんだ、という具合に。

そうですね。それで言うと、今の楽曲のトレンドとしてイントロが極端に短かったり、なかったりという曲が主流になっているんですけど、僕は、場合によっては長いイントロの曲もあったりしますね。それはまさにおっしゃったように、そのイントロで必要な演出や照明があるから必要なわけで、ただ長くてかったるいだけのものではないんですよね。

――「Circus Funk(feat. Chevon)」の話に戻りますと、Chevonは北海道在住の3人組バンドで、元々香取さんが好きだったんですよね?

サブスクで聴いて知ったんです。たまたま札幌で行うファンミーティングの日に普通にChevonの曲を聴いていて、あれ? そういえばこの街にいるんだよな彼らはって思って。それで、会場に向かう車の中で地元のイベンターさんに「Chevonって知ってますか?」って聞いたら、「知ってます。札幌のバンドですよね」っておっしゃってコンタクトをとってくれたんですよ。そしたらファンミーティングが終わった楽屋にChevonがいました。「香取慎吾!」って言ってました(笑)。

――そりゃ、そうなりますよ(笑)。だってわけが分からないですもん。「香取慎吾が会いたいって言ってるからどこそこに来てくれ」って言われて、実際に行ったら本当に本人が現れるって。

でも僕からしたら、Chevonのすべてを知り尽くしてるくらい好きで聴いているバンドだから、「Chevonじゃん!」って(笑)。「会いたかったよ! 一緒に曲を作りたいんだよ」ってそこから始まりました。

――もう『Circus Funk』が始まっていたんですね?

はい。そこで「『Circus Funk』ってアルバムが作りたくて、その言葉がそのままタイトルになると思うんだけど、その表題でChevonと一緒に曲を作りたい」っていうのを、そのときにもう伝えていたと思います。僕はイメージとして持っているから、例えばノートか何かにメモをしているわけではないんですよ。だからもしその日に彼らに会えなかったら、そうなってないんですよね。札幌にいて、Chevonを聴いて、そしたら彼らが目の前にいる――『Circus Funk』だ! って閃いた瞬間に物語の扉が開くみたいにブワッとイメージが溢れてくるんですよ。だから、“Circus”という言葉を、他の曲では1回も使ってないんですよね。『Circus Funk』というアルバムではあるんですけど。

――そこは意図的だったんですか?

そうです。「Circus Funk(feat. Chevon)」以外の曲では“Circus”とか“ピエロ”という言葉を使わずに作ろうということは最初から決めていました。

――曲の歌詞の中では〈CIRCUS FUNK〉と大文字なんですよね。そこはセリフでもあるんですけど、『Circus Funk』というアルバムの中の「Circus Funk(feat. Chevon)」ということもあって、曲自体が劇中劇のような面白さを感じました。

ああ、なるほど。

――そして音楽的にはビッグバンド的なジャズがベースにありつつも、Chevonとの化学反応の結果だと思うんですけど、詰め込んだ言葉をものすごい速度でメロディに乗せていく感じがボカロっぽさもあって、どの時代にも不思議とマッチするような曲だなと思いました。

この曲は、僕のバンドのバンマスをやってもらっている村田陽一さんにホーンセクションのアレンジで入ってもらっているんです。それも良かったんですよね。バンド自体もそうなんですけど、村田さんがいることで僕とChevonがより自由になれるというか、本当にここしかないっていうところでバランスをとってもらえるので。

――なるほど。そのへんのバンド感が特定のジャンルに拠らないサウンドにつながったということですね。

あとはやっぱり、先ほども言ったみたいに、ビジュアルのイメージを共有するところが大きいのかなと思います。ミュージックビデオを作るわけでもないのに、ミュージックビデオの話をしてますからね(笑)。

――そう考えると、香取さんの音楽の創作方法は絵を描くことと近い感覚でもあるのでしょうか?

そうかもしれませんね。譜面とか理論とか、いわゆるルールではない部分での判断がまずは重要で、聴いて気持ちいいかそうじゃないか、なんですよね。例えば譜面上、コード進行なんかは確かに盛り上がっていく感じにはなっているんだけど、聴いている感覚としては盛り上がった感じにならないのはなぜだろう? という僕自身の感覚値を一緒に作っているみんなに分析してもらうんですよ。そうすると、ギターのリフを一回外してるからかな? とか、そこで音楽的な文脈と僕の感覚が一致することがあるんですよ。絵の場合も、キャンバスの中で描いているとだんだん小さくなっていくことがあって、そこからいくら大きく描こうとしても全然広がらないんですよ。そこを突破しようと思ったら、大きな筆を使うのを飛び越えてモップを使うくらい型破りなことをして、ようやく自分の中の感覚と一致するっていうこともあるので、何より感覚を大切にするという意味では音楽を作ることと絵を描くことは近いと言えるでしょうね。

――最後に、12月3日(火)、4日(水) の2日間にわたって国立代々木競技場 第一体育館で開催される『“Circus Funk” Festival』について伺います。そもそもの話なんですけど、ツアーではなくフェスだったというのは、もうそうしたイメージが最初からあったから、ということですか?

(フェスは)いつかやりたいなとは思っていたんです。そのタイミングが今回だったということですね。2日間で7組ずつくらいのアーティストが来てくれるんですけど、今まさに自分の理想に近づけるフェスになるように仕上げていっている最中です。ちょっと変わったフェスになると思うので、楽しみにしていてください。

<配信情報>
3rdアルバム
『Circus Funk』

2024年11月27日(水) 配信リリース

香取慎吾『Circus Funk』ジャケット

【収録曲(全11曲)】
01. COLOR BARS(feat. SHOW-GO)
02. SURVIVE(feat. LEO from ALI)
03. Circus Funk(feat. Chevon)※先行配信
04. 愛の言霊(ことだま)~Spiritual Message~(feat. Night Tempo)
05. Full Moon(feat. 村田陽一)
06. UNERI KUNERI(feat. Kroi)
07. カツカレー(feat. 在日ファンク)
08. TATTOO(feat. 中森明菜)※先行配信
09. 一億人の恋人(feat. 乃紫)
10. 夢々Ticket(feat. 緑黄色社会)
11. Not Too Good Not Too Bad(feat. Yaffle)

<ライブ情報>
『“Circus Funk” Festival』

『“Circus Funk” Festival』ビジュアル

2024年12月3日(火) 東京・国立代々木競技場 第一体育館
開場16:00 / 開演17:00
ゲスト:SHOW-GO/LEO from ALI/Chevon/Night Tempo/村田陽一/在日ファンク/SOIL&"PIMP"SESSIONS/乃紫

2024年12月4日(水) 東京・国立代々木競技場 第一体育館
開場14:00 / 開演15:00
ゲスト:SHOW-GO/Chevon/Night Tempo/村田陽一/Kroi/SOIL&"PIMP"SESSIONS/乃紫

【チケット料金】
全席指定:11,000円(税込)
車イス席:11,000円(税込)

チケット一般販売中
https://w.pia.jp/t/katorishingo-t/

『“Circus Funk” Festival』公式サイト:
https://circusfunk.com/

香取慎吾 X:
https://x.com/ktrsngofficial

新しい地図 公式サイト:
https://atarashiichizu.com

フォトギャラリー(5件)

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