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名コンビが見せる、時を超えた究極のラブストーリーを大画面で 『ぢいさんばあさん』がシネマ歌舞伎に登場!

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シネマ歌舞伎『ぢいさんばあさん』より

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歌舞伎の公演を撮影、映画館のスクリーンで楽しむことのできる〈シネマ歌舞伎〉に、森鷗外原作の、心に染みる名舞台が登場する。片岡仁左衛門、坂東玉三郎ほか豪華キャストで平成22年(2010年)に上演された『ぢいさんばあさん』だ。

物語の舞台は江戸。おしどり夫婦として知られる美濃部伊織とその妻るんは、子どもも生まれ幸せに暮らしていたが、怪我を負った義弟の久右衛門に代わり、伊織が京都に勤めに出ることに。勤めは1年、翌春には江戸に帰ってくるはずだった伊織はしかし、ささいな言い合いから同輩の下嶋甚右衛門を斬ってしまい、越前にお預けの身となってしまう。月日は流れ37年後、罪を許された伊織が懐かしい我が家へ帰ってくる……。

伊織とるんの夫婦を演じるのは、昭和、平成、そして令和の今もなお、歌舞伎界随一のゴールデンコンビとして不動の人気を誇る仁左衛門と玉三郎。姿かたちの良さはいわずもがな、何といってもふたりの息の合いっぷりは感心するばかり。若夫婦時代のイチャイチャぶりは「一体、我々は何を見せられているのだ……?」と思ってしまうほど(もちろん、そこがいいのだが)。そして白髪の老人となった37年後の、若夫婦時代とはひと味違う品のある可愛らしさも最高なのである。

伊織が江戸に帰れなくなる原因を作る下嶋甚右衛門は十八世中村勘三郎。執拗に伊織を挑発する厭らしさを、芝居巧者の勘三郎がねっとりと演じている。久右衛門役の中村鴈治郎(当時 翫雀)、その息子夫妻を演じる中村芝翫(当時橋之助)と片岡孝太郎も爽やかで、作品に通底する清らかな心根をしっかりと伝えてくれる。

脚本は昭和の黙阿弥と呼ばれた宇野信夫。鴎外の原作では1行で簡潔に表現されていた伊織とるんの再会を一場面として膨らませ、歌舞伎作品として深みのあるものに作り上げた。庭の桜の樹の変化や、手紙に添えた桜の花びらなど、情感溢れる描写も美しい。

そして新歌舞伎ならではのリアリティある俳優たちの芝居は、表情のアップも捉える映像作品との相性がいい。歳月が流れても変わらぬ夫婦の情愛の深さと、それでも“失われてしまった37年”を思うやるせなさと――。溢れ出る思いをぐっとこらえるような仁左衛門と玉三郎の繊細な演技は、涙なしには観られない。名コンビが見せる、時を超えた究極のラブストーリー。ぜひ映画館の大画面でじっくり味わってほしい。

文:平野祥恵


<公演情報>
シネマ歌舞伎『ぢいさんばあさん』

シネマ歌舞伎『ぢいさんばあさん』本予告

上映期間:2025年1月3日(金)~2025年1月23日(木) 全国の映画館にて上映

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