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「十二月大歌舞伎」で二代目澤村精四郎襲名披露を控える澤村國矢 声を“特大”にして「きよしろう」の名をアピール

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12月3日(火)に初日を迎える東京・歌舞伎座での「十二月大歌舞伎」。その第一部で上演される『あらしのよるに』は、歌舞伎俳優・澤村國矢の二代目澤村精四郎(きよしろう)襲名披露の場となる。師匠である澤村藤十郎の芸養子となり、その前名を継ぐという大きな節目を控えた國矢が襲名、また舞台への熱い思いを明かした。

澤村藤十郎の誘いで、一般の家庭から歌舞伎の道へ

黒紋付の凛々しい姿で会場に現れた國矢。「このような嬉しいことはございません」と、冒頭の挨拶で襲名の喜びを述べた。
「あまり聞き慣れないことかと思いますが、歌舞伎では芸事での養子扱い、という制度があるそうでございます。師匠の藤十郎が芸養子という形で引き受けてくださり、並びに幹部昇進、本当に嬉しいことづくしです。2年前、(中村)獅童さんが松竹に“國矢を幹部に”と頼んでくださって、話が進んでこのようなことになりました。一般家庭から幹部になるということは稀なこと。責任を感じておりますが、子供の頃から憧れていた歌舞伎の舞台で、幹部の方たちがなさっていた役をやれると思うと、とても楽しみです。覚悟を決めて頑張っていきたいと思います」

中村獅童と尾上菊之助の共演も注目の歌舞伎座「十二月大歌舞伎」第一部『あらしのよるに』で、二代目澤村精四郎襲名披露

歌舞伎と全く関係のない家に生まれた國矢だが、当初は児童劇団に所属、テレビでの活躍を目指していたという。
「それが、昭和の顔立ちだからなのかわかりませんけれど(笑)、映像の仕事はほとんどなく、歌舞伎は10歳のとき、歌舞伎座での『義経千本桜』に小狐の役で、着ぐるみを着て出たのが始まりです。その後、『天衣紛上野初花 河内山』に松江出雲守の小姓役で出演、出雲守で出ていたのがいまの師匠の澤村藤十郎です。毎日気にかけてくださり、“歌舞伎、好きか?”とおっしゃってくださいまして、 “好きです──”なんて答えると、ならばいずれうちに来なさいと声をかけてくれた。それが、歌舞伎が生業となるきっかけでございます」

12歳からは世家真流家元・世家真ますみのもとで日本舞踊を学ぶ。1995年に藤十郎に入門、國矢の名とは、約30年の付き合いだ。
「2年前、幹部昇進のことを旦那(藤十郎)に報告しましたら大変喜んで、幹部になるのならば、紀伊国屋にもいろんな名前があるので考えておこう、という話に。自分の名を人に譲るのは初めてのことで、恥ずかしいのと名前が奪われる寂しさが混ざっていましたけれど(笑)、すごく喜んでおります」

近年は初音ミクの出演が話題の「超歌舞伎」でも活躍、その力強い存在感で新たなファンを掴んだ。自身も、2016年初演の超歌舞伎『今昔饗宴千本桜(はなくらべせんぼんざくら)』で演じた敵役、青龍の精がターニングポイントと振り返る。その超歌舞伎の中心にいるのが、中村獅童。2019年、南座での超歌舞伎『今昔饗宴千本桜』上演時には、國矢をリミテッドバージョンで主役の佐藤忠信役に押し上げた。

「勝手に兄貴と呼んでおります。ご自身も恵まれない時代があり、役者として舞台の真ん中に立てない悔しい思いをしてこられた。すごく尊敬する存在であり、親身になって考えてくださる方です。主役を演じたときは、本当に変な話ですけれども、歩くとライトがついてくるという感覚(笑)! 本当にスポットライトが当たっているんだなと思いました」

「きよしろう」の名と、ロックの精神を引き継ぐ!

歌舞伎俳優としての自身について、また歌舞伎への取り組みについて問われると、「小さい頃から踊りが好きで、自分の中でのひとつの武器であるかなとは思っておりますが、歌舞伎の真ん中に捉えられる芝居をしていくにあたっては、所作、時代物の形、見得をするときの形が綺麗、ということが必要になる。そうした古典でのきっちりとしたことを、ちゃんとしていきたいなと、思っております」と意気込む國矢。

そんな彼も、思春期の頃は歌舞伎にどう向き合うべきか悩み、踊りの稽古は続けながら、一時は歌舞伎から遠ざかったという。「どこまで喋っていいのかわかりませんが──」と打ち明けたのは、国立劇場養成所の研修生として学び始めるも、2カ月でやめてしまい藤十郎をひどく怒らせてしまったこと。
「謝りに行っても“顔も見たくない”と門前払い。そこでハッとして、歌舞伎ができなくなるのはとても嫌なことだし、覚悟を決めて向かっていなかったことを反省、お詫をしようと通い詰めまして、ようやく許しを得て、翌年に澤村國矢を名のって入門いたしました。その後は師匠に毎日怒られていました。『お前はゼロからのスタートではない。人の2倍、3倍も頑張らなきゃダメだ』と」

厳しく突き放すことで、彼を歌舞伎の世界に繋ぎ止めた藤十郎。名女形として知られ、紀伊国屋を背負って立つ俳優だったが、現在は病気療養中だ。紀伊国屋の後継者のひとりとして、國矢はその伝統を受け継いでゆく役割も期待される。
「途絶えてしまうかもしれないものを繋いでいかなければいけない立場にもなるのかな、と思うと、いずれ挑戦していきたいと思い始めました。お家のものでできるものは限られますし、いまさらですが女形を、やってみることもあるかもしれません(笑)。皆さんの力を借りて、そういうことができたらいいですね」

いっぽう、國矢の活躍、昇進は、家や血筋を重視する歌舞伎界の変化を象徴する出来事ともいえそうだ。
「最近は我々のような名題でもいい役をくださる機会が増えていますので、それが一過性にならなければと思います。皆さんのモチベーションを上げるためにも、こういうふうに一般家庭から幹部になる道があるのだと、僕は頑張って見せていかなければならないし、希望になれたかなとは思っています」

自身が名題となり、一人前の歌舞伎俳優として認められるようになったときは、とても喜んでくれたという両親。
「もう他界しておりまして──今回の幹部昇進は、いの一番に報告しました。喜んでいると、思います」と、涙ぐむ。

精四郎と書いて、“きよしろう”。取材会の和やかな空気の中、同じ響きの忌野清志郎は意識するか、という質問も飛び出した。
「僕は意識してなかったんですけれども、兄貴──獅童さんはロックなんで(笑)、『いい名前だよ!だってロックの神様だぜ』とおっしゃってくださいまして──そこは意識して、ロックの精神を引き継がなければいけないなと思っております」

読み方を間違えやすい名前だけに「声を“特大”にして、“きよしろう”とアピールしたい」とも。その力強い眼差しは、未来をしっかりと見据えている。

<公演情報>
『十二月大歌舞伎』

【第一部】11:00~
『あらしのよるに』
 二代目澤村精四郎襲名披露

【第二部】15:00~
一、『加賀鳶 本郷木戸前勢揃いより 赤門捕物まで』
二、『鷺娘』

【第三部】18:20~
一、『舞鶴雪月花 上の巻 さくら/中の巻 松虫/下の巻 雪達磨』
二、『天守物語』

2024年12月3日(火)~12月26日(木)
※11日(水)、19日(木)休演
※21日(土)第一部は貸切(幕見席は営業)
※下記日程は学校団体来観
第一部:4日(水)・5日(木)・6日(金)・12日(木)・18日(水)・20日(金)・23日(月)・24日(火)
第三部:4日(水)・10日(火)

会場:東京・歌舞伎座

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2455488

公式サイト:
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/882

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