なにわ男子 西畑大吾の“生きててよかった”瞬間「5万5000人の前に立ったとき、ずっと終わりたくないと思いました」
映画
インタビュー
西畑大吾 (撮影/梁瀬玉実)
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すべて見る写真撮影の準備のため、暗い室内に間接照明だけが点いている状態を見るや否や「なんかこれ、取り調べみたいですね!?」と言って、場の雰囲気を和やかにしてくれた西畑大吾。男性アイドルグループ・なにわ男子のメンバーであり、俳優としても活躍する彼が出演するのは、大人気シリーズの映画化『劇場版ドクターX』。12月6日の公開直前、11月30日(土)にテレビ朝日にて放送される特別ドラマ『ドクターY』と合わせ、撮影現場の雰囲気や作品の魅力を語ってもらった。
緩急の激しい役を演じる難しさ
『ドクターX』シリーズといえば、米倉涼子演じる大門未知子を主人公にした大人気医療ドラマ。「私、失敗しないので。」のセリフは、たとえドラマが未見でも耳にしたことがあるだろう。すでにチームワークが出来上がっている撮影現場に入っていくことは、西畑にとってどんな経験だったのか。
「最初は不安しかなかったですね。スタッフやキャストの皆さんなど、深い信頼関係が仕上がっているカンパニーのなかに新しく飛び込んでいくのは、正直とても不安でした。でも撮影が始まった途端に吹き飛んだんですよ、その不安が! 皆さんが、すごくあたたかく、柔らかく受け入れてくださったからだと思います」
特別ドラマ『ドクターY』ならびに『劇場版ドクターX』で西畑が演じたのは、エリート医学生(のちに研修医)の東村練。『ドクターY』と『ドクターX』それぞれに出演する西畑にとって、東村練のキャラクターは「ガラッと変わっている」という。
「『ドクターY』では首席でエリートで俺様キャラの練くんが、『劇場版ドクターX』では医療現場に立って現実を突きつけられ、ちょっと成長して穏やかになる。この緩急がすごく難しかったです。でも田村(直己)監督から『等身大でいてくれたらいいよ、何ならドクターYの練くんのことは忘れちゃってもいいから!』って言っていただけて。いやいや、それはあかんでしょ! って思ったんですけど(笑)。監督と話し合いながら、エリート俺様医学生→大門先生を尊敬する研修医、という練くん像を作りあげていきました」
最初はプライドが高く、人と群れたがらない性格だった練。演じるにあたり、目つきを鋭くすること、他者を視界に入れないことなどを意識したという西畑。そんな練と自身との共通点は薄く、強いていうなら『劇場版ドクターX』での練のほうが身近に感じたという。
「大舞台とかドキドキしちゃうタイプ。ついこの間、大阪でのスタジアム公演が終わったばかりで(取材日は9月後半)、あまりにも広すぎてオドオドしちゃいました。緊張しすぎて、上手と下手の番号を間違えちゃったんですよ。僕の目の前にWEST.の神山(智洋)くんが立っているのを見て『神山くん、間違えてるで?』と思ってたくらい。本当は僕が間違えてるのに(笑)」
「優しいおじさんに囲まれた現場でした(笑)」
主演・米倉涼子を筆頭に、岸部一徳、内田有紀、西田敏行、遠藤憲一、鈴木浩介、勝村政信らベテラン俳優陣が集結している本作。西畑は「『ジモトに帰れないワケあり男子の14の事情』(2021/朝日放送テレビ系列)でも共演した勝村政信さんには、特別ドラマ『ドクターY』でも『劇場版ドクターX』でも、とってもお世話になりました」と振り返る。
「当時も勝村さんとの二人芝居で、がっつり共演させてもらって。一日ずっと一緒だったので、たくさんお話させてもらったのを覚えています。勝村さんが現場にいらっしゃるだけで、すごく安心感があるんですよ。当時も『またいつか共演したいね』と話していて、今回実現したので、とても心強かったですね。勝村さんはもちろん、鈴木浩介さんも遠藤憲一さんも、ほんと優しいおじさんばっかりで、ほんまに!(笑)一応、皆さんの前では『お兄さん!』って言ってたんですけど、『お兄さん呼びはやめて、おじさんでいいから!』って言われてました(笑)」
日頃はなにわ男子の年長組としてチームを俯瞰しつつ、崩すところは崩すバランス感覚が魅力な西畑。一回りも二回りも先輩の役者陣に対しても、心を掴み場に溶け込む術を心得ているのだろう。主演・米倉涼子についても「圧で場をまとめるんじゃなく、自然と包み込むように巻き込んでいく力のある方」と印象を語る。
「堂々たる主人公・大門未知子のイメージを大事にしつつ、米倉涼子さんご本人の人柄ありきで現場の一体感が仕上がっている感じでした。新参者の僕に対しても『なんて呼ばれてるの?』って気さくに話しかけてくださって。『大ちゃんって呼ばれてます!』と言ったら、それ以降、米倉さんや内田さんから大ちゃんって呼んでいただけるようになって……。もう、間違いなく生まれてきたなかで一番嬉しい大ちゃん呼びでしたね!(笑)」
ベテラン陣の凄さは、撮影期間中、ほぼ毎日現場に差し入れが届いていたことからも察しざるを得なかったという。「食べすぎて、ほっぺたのあたりとかちょっとプクッてなってたと思いますもん」と嬉しい悲鳴をあげていた。
「手術シーンはマスクをしてたから、セーフだったと思うんですけどね。それこそほかのキャストの方々もマスクをしてらっしゃいましたけど、だからこそ目の動きや、視線で作りだす表情によって感情を表しているのが、ほんまにすごかった! 本番前のリハーサルの段階ともまた違った、緊迫感のある白熱さに満ちた演技をされていて、その場にいた僕も心が動きました。本物の医療現場でも、こういった感情になるんだろうなと想像しながら、僕も目元での演技を意識しました。皆さんについていくので精一杯でしたけど……!」
周囲のキャストへのリスペクトを忘れず、その場を冷静に観察し、学び得たものを即座に吸収していく。西畑自身は当然のことのように言葉にするが、誰しもが簡単にできることではないだろう。持ち得たバランス感覚や集中力、貪欲さを表に出さず、先輩俳優たちへの敬意、そして作品に参加できた感謝を常に滲ませる姿勢は、現場でも存分に発揮されていたに違いない。
『劇場版ドクターX』は一つひとつのセリフやシーンが“濃い”映画
現場で初めて「私、失敗しないので。」を耳にした瞬間は「涙が出そうになった」という西畑。そんな彼に、撮影現場で“絶対に失敗しないくらい自信がついたこと”を訊いてみた。
「『手術で失敗する演技』を失敗しない自信がつきました!(笑)『劇場版ドクターX』では、僕はエリート医学生というよりポンコツ研修医になっているので、手術で絶対にやってはいけないミスをするシーンがあるんです。歴代シリーズでも『あ!』って手元が狂って血が噴き出してしまうシーンがあると思うんですけど、代々やってきた失敗シーンを受け継がせてもらいました。監督からも『リアクションが良い!』と褒めてもらえましたね」
手術シーンは、手元の細やかな動きまで映る繊細なシーン。西畑も例に漏れず、ピンセットなどを駆使しながら縫う練習を重ねた。自宅でも現場でも練習する姿に、なにわ男子のメンバーからは怪しまれたらしい。「裁縫でも始めたんか? って言われたりして」と当時の様子を思い出す西畑の表情から、常に彼は別の現場にいてもチームのことを考えているのが伝わってくる。
「『劇場版ドクターX』、一つひとつのシーンが本当に濃いんですよ。ひとつの映画によくぞここまで詰め込んだな! って思うくらい。一難去ってまた一難、落ち着く暇を与えません。僕も一視聴者として観させてもらって、これまでのシリーズのファンの方はもちろん、初見の方にも楽しんでいただける素晴らしい作品になっていると感じました。大御所の皆さんのアドリブも、まあすごくて……」
とくに西田敏行さんのアドリブが、もう、と話しながら思い出してしまうのか、笑みが絶えない西畑。「西田さん、ほとんどアドリブだったんちゃうかな。西田さんが撮影しているのを見させてもらっているあいだ、笑いを堪えるのに必死でした」と振り返る様子は、いかに本作での撮影現場が実りあるものであったかを語っている。
5万5000人の前に立つ経験「やっぱり、この仕事はおもしろいなって」
取材中、繰り返し特別ドラマ『ドクターY』ならびに『劇場版ドクターX』の魅力を熱弁する西畑。「『ドクターY』を観ていないと、僕が演じた東村練くんに『誰!?』ってなってしまうので、ぜひ合わせて観ていただきたい! もちろん劇場版だけでも存分に楽しめるんですけどね」と場を緩ませてくれる。『ドクターY』では、西畑演じる東村練がどんな人物なのか、その背景についても描写されているので、ファンは必見だ。
予期せぬハプニングはもちろん、難易度の高すぎる手術を華麗にこなしてみせる大門未知子の手腕が魅力のひとつである『ドクターX』シリーズだが、コミカルなシーンに絶妙なバランスで混じり合う「命の大切さ」に肉薄する様も見所。最後に、西畑がこれまでの人生で、命の大切さを実感するような瞬間について水を向けると「やっぱり、大阪でのスタジアム公演です」との返事が。
「本当に、一昨日くらいに終わったばかりで。一昨日の僕、スタジアムで5万5000人を前にしてたって考えると、変な感覚ですもん。ほんまに、なんて言ったらいいんやろ……。スタジアム公演って、こんなにすごい景色が見られるんだなって思いました。割れるような歓声を浴びせていただいて、皆さんの前で歌って踊って。ここまで連れてきてくれた先輩方、スタッフの皆さん、ファンの皆さんに感謝しかないですし、ずっと終わりたくないって思ってました。生きててよかった、この仕事を頑張ってきてよかった、って」
公演後、自宅に帰ってお風呂の浴槽を洗っている瞬間「いや、緩急すごいな」と思ったという。そのギャップも含め、あらためてこの仕事のおもしろさや魅力に気づいた。華々しく輝くステージ上でのエピソードのみならず、親近感の持てる日常についても開示してくれる。そんな一面が、どんな現場でも自然に溶け込み愛される、西畑の愛嬌の所以なのだろう。
『劇場版ドクターX』
12月6日(金)より全国公開
監督:田村直己 脚本:中園ミホ
出演: 米倉涼子 田中圭 内田有紀 今田美桜 勝村政信 鈴木浩介 染谷将太 西畑大吾 綾野剛 遠藤憲一 岸部一徳 西田敏行
(撮影/梁瀬玉実、取材・文 北村有、ヘアメイク/yuka(JOUER)、スタイリング/井元文子)
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