現代音楽の始まりをレクチャーとコンサートで紐解くスリルに満ちた知の饗宴《『月に憑かれたピエロ』をめぐる冒険》
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コンサート編で用いられる山城大督氏制作の字幕画像の一部(イメージ)
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すべて見る取材・文:逢坂聖也(音楽ライター)
現代音楽はなぜコムズカシイのか?そんな疑問を現代音楽が生まれた時代にさかのぼって考えてみよう、というコンサートが大阪のあいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホールで開催される。題して『「月に憑かれたピエロ」をめぐる冒険』だ。中心となるのは2024年に生誕150年を迎えたオーストリア出身の作曲家、アルノルト・シェーンベルク。彼はクラシック音楽の基調となる"調性"を脱して無調を推し進め、やがて十二音技法を創始した重要人物であり、クラシック音楽の19世紀と20世紀をつなぐ新ウィーン楽派を代表する存在である。

『月に憑かれたピエロ』はシェーンベルクがウィーン出身の歌手、女優であったアルベルティーネ・ツェーメの委嘱により作曲。1912年、ベルリンで初演されている。1人の歌手と5人の演奏者が織りなす独特の音楽は、当時のキャバレー文化を背景に後続の作品に大きな影響を与えた。ハプスブルク家の支配が翳り、ヨーロッパを第一次世界大戦前夜の享楽的な影が覆った20世紀初頭、芸術家たちは旧来の手法に捉われない新たな価値の創造を目指していた。『月に憑かれたピエロ』はこうした時代に生まれた作品だ。本公演は2025年1月13日のレクチャー編と1月25日のコンサート編の2日に分かれた構成。レクチャー編ではシェーンベルクとともに彼が親交を結んだ抽象絵画の創始者カンディンスキーに光を当て、現代芸術の始まりを音楽、美術、双方の立場から気鋭の評論家らが紐解いてゆく。

コンサート編では、ソプラノの太田真紀をはじめ、この作品に深く思いを寄せる6人のメンバーが集結。前半に同じく新ウィーン楽派のベルク、ウェーベルンの作品やシェーンベルク自身のキャバレーソングほかを演奏する。そして後半の『月に憑かれたピエロ』では映像作家、山城大督が手掛ける月の形を模した字幕映像の下で、太田真紀扮するピエロがシュプレッヒゲザング(語る歌)あるいはシュプレッヒシュテンメ(語る声)と呼ばれる独特の歌唱法で21の詩を歌う。孤独と愛、諧謔と狂気、そして生と死。幻想的な月灯りがピエロの姿とともに、現代芸術誕生の時間を鋭く照らし出す。
<公演情報>
「月に憑かれたピエロ」をめぐる冒険<レクチャー編>
日時:1月13日(月・祝) 15:00
会場:あいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホール ビル内会議室
出演@小味渕彦之(音楽評論家)/三木学(美術評論家)/太田真紀(演奏家)/山城大督(美術家)/他
「月に憑かれたピエロ」をめぐる冒険<コンサート編>
日時:1月25日(土) 15:00
会場:あいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホール
出演:太田真紀(S)/石上真由子(vl)/福富祥子(vc)/上田希(cl)/若林かをり(fl)/北村朋幹(p)
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2456227
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