【ネタバレあり】白石加代子「素敵な一夜でした」　『カタシロ～Relive vol.1～』初日レポート

パルコ・プロデュース 2024 PARCO 劇場スペシャル版『カタシロ～Relive vol.1～』が12月20日(金)、東京・PARCO劇場で開幕した。

プレイヤー同士で会話しながら物語を進めていく対話型のテーブルゲーム、“大人のごっこ遊び”とも呼ばれるこのTRPG（テーブルトーク・ロールプレイングゲーム）を、出演者が生身でプレイすることで、リアルでスペシャルな体験を届ける『カタシロ』は、YouTubeや舞台版の無観客生配信、映画版の限定上映など、幅広いフィールドで人気を博している。

その大きな特徴は「一度内容を知ってしまうと、患者役としては出演できない」ということ。今回の患者役の出演者たちも、シナリオの全貌をまったく知らないまま、舞台という大きなテーブルに臨む。会話をしていく中で知らず知らずのうちに“素の自分”が明かされ、展開も結末もキャスト次第。一度限りの物語が劇場という場でリアルタイムに生み出される。

『カタシロ～Relive vol.1～』では毎回、様々なフィールドで活躍する12名の豪華ゲストが集結する。そのトップバッターとして、公演初日に出演したのが、白石加代子だ。演じるのは、「雷に打たれて記憶を失っており、その治療のために医者と対話する患者」という役どころ。本作の作者であり、ゲームマスター（進行役）となる「医者」を全公演通して演じるディズム、そして、もうひとりの患者役を勤める相羽あいなとともに、御年83歳を迎えた日本を代表する大女優は、どんなエンディングを導き出したのか？

【ネタバレあり】熱い拍手に包まれた、患者役・白石加代子の初日公演とアフタートークの模様をレポート

※以下、【ネタバレ】を交えながら公演初日の様子と、上演後に行われたアフタートークをレポート。未見の方は十分にご注意ください。

雷鳴が響き渡るなか、幕を開けた『カタシロ～Relive vol.1～』。手術台に拘束された患者（白石）が目を覚まし、医者（ディズム）とのスリリングな会話劇が始まった。顔の半分が隠された状態の、怪しげな容貌の医者に対し、白石が開口一番「変な医者」と先制パンチを繰り出すと、早速客席からは笑い声が起こった。

その後、記憶を取り戻す治療という名目で、様々な思考実験が行われるが、この日は不利なシチュエーションにある患者側が、緩急をつけた言葉の投げかけで、医者側を圧倒する展開が続いた。即興の会話劇だとしても、そこは百戦錬磨の大女優である白石の独壇場。“創造主”であるゲームマスターのディズムも防戦一方だった。

また、相羽演じるもうひとりの患者の登場によって、物語は転調し、さらに予測不可能の様相。客席を巻き込んだ演出もあり、観客もまた、思考実験の参加者として『カタシロ』の世界に没入していった。

クライマックスでは、SF映画を連想させる大掛かりなセットが登場し、もうひとりの患者の正体、医者の本当の目的が明らかに。“肉体と魂”をめぐる衝撃的な結末には、さすがの白石も一瞬たじろぐ様子を見せたが、そこから生まれる緊張感こそが、女優・白石加代子の真骨頂。物語を締めくくる最後の台詞を発すると、劇場全体が大きな拍手に包まれた。

上演後のアフタートークでは、まず、白石による最後の台詞について、ディズムが「本当にしびれました。雷に打たれた気持ちでしたね」と衝撃を語り、相羽は「本当に涙が出ました」と感動の声。当の白石本人は「分かりません」と答え、「ものすごく気持ちが揺れたんですね。それがその時に生まれた本当の本心ということですもんね」と、台本がないからこそ生まれた言葉について語った。

ディズムから、即興劇に臨んだ心境を問われると、白石は「何も心境なんて（笑）。本番前の楽屋では、もうドキドキして不機嫌で（笑）。でも何とか耐えられたのは、私、今年でついに83歳になったんだけど、その83年間の積み重ねのおかげでしょうね」と笑顔で語った。「舞台もそうですけど、日常のたくさんのエピソードや、そこからの経験が積もっていて。伊達に歳はとってないのよ（笑）」とおどけると、客席は再び拍手に包まれた。

そんな白石だが、観客を巻き込む演出には、「あの時は本当に動揺して」と本音を明かす。また、緊張感あふれたクライマックスについても「あそこまで怖いところにたどり着くとは思ってなかったですね」と、自身が舞台上で感じた恐怖を語った。いずれにせよ、白石にとって、新たなチャレンジとなった『カタシロ～Relive vol.1～』。白石は「素敵な一夜でした」という言葉で、アフタートークを締めくくった。

取材・撮影・文：内田涼

＜公演情報＞
パルコ・プロデュース 2024
PARCO劇場スペシャル版『カタシロ～Relive vol.1～』

2024年12月20日(金)～28日(土)
会場：東京・PARCO劇場（渋谷PARCO 8F）
脚本・演出：ディズム

出演者〈公演日時 ＝ 患者役／もう一人の患者役〉
12/20(金)19:00 ＝ 白石加代子／相羽あいな
12/21(土)12:30 ＝ 七海ひろき／堰代ミコ
12/21(土)17:30 ＝ 木村達成／堰代ミコ
12/22(日)12:30 ＝ 立川志らく／堰代ミコ
12/22(日)17:30 ＝ いとうせいこう／堰代ミコ
12/23(月)19:00 ＝ 足立梨花／藍月なくる
12/24(火)19:00 ＝ 伊藤理々杏／える
12/25(水)19:00 ＝ エル・デスペラード／健屋花那
12/26(木)19:00 ＝ 尾上右近／健屋花那
12/27(金)19:00 ＝ スギちゃん／える
12/28(土)12:30 ＝ 紅ゆずる／千春
12/28(土)17:30 ＝ 安元洋貴／周央サンゴ

〈医者役〉ディズム（全公演出演）

※公演回毎に「患者役」「もう一人の患者役」が異なります。出演日を必ず事前にご確認ください

チケット情報：
https://w.pia.jp/t/katashiro/

公式サイト：
https://stage.parco.jp/program/katashiro/