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お正月はこれ! 痛快!容赦なし! ジェイソン・ステイサム『ビーキーパー』──【おとなの映画ガイド】

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『ビーキーパー』 (C)2024 Miramax Distribution Services, LLC. All Rights Reserved.

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1月3日(金)、2025年ロードショーのトップをきって『ビーキーパー』というアクション映画が公開される。『エクスペンダブルズ』シリーズなどで人気の豪腕スター、ジェイソン・ステイサムが主演。フィッシング詐欺の悪党を徹底的にたたきのめす、痛快極まりない娯楽作。正月気分のなかで、難しいことを考えずに楽しむのにぴったりの映画だ。

『ビーキーパー』

強い! 容赦がない! どのくらい容赦がないか、というと、黒澤明の『赤ひげ』で、三船敏郎がうでっぷしひとつ、街のごろつきをべきべき、なぎ倒して行く、あの迫力にも似ている。韓国の筋肉むきむきマン、マ・ドンソクもすごいが、本作のジェイソン・ステイサムの方が、一枚上と思ってしまうほど。

もちろん、ただ力を誇示するために、暴力をふるうってわけではない。敵が極悪な奴らだから、人間のクズなんだから、容赦しない、のだ。このリーズンがいかにももっともだ。

ジェイソン・ステイサム演じる主人公、アダム・クレイは、アメリカの片田舎で静かに養蜂業を営んでいる。ひとり黙々と、ミツバチの世話をする“ビーキーパー”。何かワケありのようで、人との付き合いを避け、世捨て人のように暮らしている。

唯一の例外は、農場の一角を養蜂用に貸してくれている、隣人のエロイーズ(フィリシア・ラシャド)。いつも彼のことを心にかけてくれる母のような存在だ。

その日も、昼に声をかわし、夕食に誘われていた。ところが、ハチミツを手土産に彼女の家を訪ねたクレイは、銃で自殺したエロイーズの姿を発見する。先ほどまで元気だったのに、この短い時間に何があったのか……?

エロイーズは元教師で、堅実につつましく暮らすなか、多少の貯蓄もし、慈善団体の理事として資金管理を行うなど、世の中の役にたつ活動をしていた。

パソコンに向かっていつものデスク仕事をしていると、突然、画面が変わってしまい、システムトラブルを知らせてくる。オタオタ、オロオロしながら、画面の指示に従って電話をかけると……。巧妙にしくまれた“フィッシング詐欺”! 彼女の全財産、あずかっている金、すべてがゼロになってしまう。ほんの一瞬のできごとだった。

エロイーズの死に直面したことで、封印していたクレイの別のキャラにスイッチが入る。それは、ブルドーザーのような処理能力と無敵の殺傷スキルをもち、鋼鉄の意志で戦う、最強破壊マシーン。彼はその能力を見込まれ、「極秘プログラム」の工作員をしていた過去がある。そのプログラムこそ、通称“ビーキーパー”。その名から、引退後の仕事をおもいついたにちがいない。

クレイは独自の情報網を駆使し、詐欺を仕掛けたのが「ユナイテッド・データ・ グループ」という会社だということを突き止める。さあ、ここからは一本道。情け容赦ゼロ、相手を死ぬまで追い詰める痛快リベンジアクションが始まるのだ!

脚本を手掛けたのは、カート・ウィマー。高齢の叔母が、住み込みで働く従業員に銀行口座をハッキングされ、全財産を奪われ、 無一文のまま世を去った。身内におきたそんな事実が物語の着火点。彼の書いたオリジナル脚本は、『エクスペンダブルズ ニューブラッド』の時にチームを組んだジェイソン・ステイサムにわたり、監督のデヴィッド・エアーが加わって、映画化が進んだ。

エロイーズが被害にあった「フィッシング詐欺」を含む「テレマーケティング詐欺」は、コンピュータを通じて偽物のアンチウイルスをダウンロードさせ、あらゆる個人情報を奪う手口。全米での2021年の被害額は合計400億ドルにのぼり、被害者の6割が60歳以上の高齢者だという。映画には、キャリア30年以上という元FBI捜査官が犯罪監修にあたっている。

詐欺集団のトップの青年社長デレク役は『ハンガー・ゲーム』シリーズなどのジョシュ・ハッチャーソン。彼の護衛兼アドバイザー役に雇われている元CIA長官ウエストワイルド役には、英国出身の名優ジェレミー・アイアンズが扮している。

“ビーキーパー”という組織も謎めいていて面白い。国の組織か、それとも何か別の大きな力がバックにあるのか。クレイが元“ビーキーパー”だと知ると、元CIA長官は「ビーキーパーに“殺す”と言われたら、死ぬしかない」と言い放つ。

容赦のないクレイの行動がどこまで、つきぬけるか。みていて飽きることがない。犯罪のリアリティと、殺人マシーンの手際のいいアクション。その魅力で、2024年1月に公開され、全世界No1ヒットとなったこの映画。お正月のシネコンで、運よく巡りあえたら、是非ご覧になるのをオススメする。映画ファンにとってパワーをもらえるお年玉のような作品です。

文=坂口英明(ぴあ編集部)

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植草信和さん(フリー編集者、元キネマ旬報編集長)
「……たとえ絵空事であっても爽快感を感じたいと思っている人には、ストレス解消効果あり……」

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