ミュージカル『SIX』、ついに日本初上陸！ 来日キャスト&日本キャストが集結した興奮の初日公演と会見の模様をレポート

2017年にケンブリッジ大学の学生により制作されるやいなや話題となり、すぐにUKツアー、ウエストエンド公演、そして2020年にはブロードウェイをも熱狂させたヒットミュージカル『SIX』がついに日本初上陸。1月末には日本キャスト公演も控える中、まずは1月8日、東京・EX THEATER ROPPONGIで来日キャスト版が開幕した。日本初演ながら、トニー賞でもオリジナル楽曲賞含め2部門で受賞をしているだけあって、目の肥えたミュージカルファンの間では名が知れ渡っている作品である。まさに待望の日本上陸となった初日、客席は歓喜の歓声と熱狂的な拍手で『SIX』の上演を歓迎した。

物語は、16世紀に生きたイングランド王ヘンリー8世の6人の王妃たちが主人公。……と聞いて構えることなかれ。本作は歴史絵巻では決してない、むしろその真逆と言っていいほど現代的でパワフルなショーだ。暴君として知られたヘンリー8世は、カトリックでは本来離婚が認められていない中、さまざまな理由をつけ6人の妻を娶った――つまり5人の妻との縁を切ったことでも有名。そのヘンリーの妻として、離婚、打首、死亡、離婚、打首、死別……という運命をたどった王妃たちが現代に蘇り、ガールズバンドを結成！ しかし誰がこのバンドのリーダーなのか？ 6人の王妃は「ヘンリーに一番ひどい扱いをされた人が主役」と決め、それぞれの悲惨な運命をマイクにぶつけていく。

ミュージカルだが、体感はほぼライブだ。6人のキャストがのっけから「TOKYO！ 調子はどう!?」と客席を煽り、客席もそれに大盛り上がりで応える。ど派手な照明も気分がアガるし、ラインストーンとスパンコールがギラギラ輝く衣裳は各キャラクターにテーマカラーがあり、さながらアイドルグループのよう。何と言っても音楽が良い！ ノリノリな楽曲だらけの上、シャウトも自由自在に操るキャスト陣の歌唱力も気持ちが良い。

見るからにパワフルな6人の王妃たちが、「離婚されたなんて可哀想ね、私？ 打首よ」等々、ブラックなマウントを取り合うさまはシュールで笑えるのだが、どれだけ暴君ヘンリー8世にひどい目にあわされたかを競い合っていくうちに、次第に「なぜ“元・妻として”の私を語らなければいけないのか」「私自身はどんな人間だったのか語ってもいいのでは」と気付いていく。このあたりは非常に現代にフィットしたテーマで、世界で受け入れられている理由もよくわかる。個性的な6人がライバルであり同志のようでもある関係性も、観ていて楽しい。様々な壁に立ち向かっていく女性のパワーが詰め込まれたような作品である。

「東京は私が行きたい場所ナンバーワンだった」
「自分らしく」というメッセージを少しでも受け取ってもらえたら

初日終演後にはキャスト、スタッフの囲み取材も実施された。皆、この日のショーに興奮気味で、キャストは「東京は私が行きたい場所ナンバーワンだった。この場所でこの素晴らしいショーを上演できたというのは、夢のようです」（キャサリン・オブ・アラゴン役、ビリー・カー）、「（日本の観客の）反応が素晴らしかった。どの国にも特徴はあるが、日本はLOVEが感じられたのが大きい。ステージに笑い声や皆さんの感性、エネルギーが伝わってきた。それは本当にLOVEという言葉でしか表現できません」（ジェーン・シーモア役、リバティ・ストッター）等々、口々に日本初上陸の印象を語る。

また、初日のカーテンコールは特別バージョンで、6人のキャストだけでなくオルタネイト＆スウィングキャスト（代役）の5名、さらに日本版キャスト12人も登場。23人のクイーンが一堂に会するという豪華なパフォーマンスを披露。このパフォーマンスに関しては「信じられないような感動的な瞬間でした。このような機会がなければ会うこともできなかった、地球の反対側にいる皆さんと一緒にステージに立ててパワーをもらえました。日本のクイーンたちと一緒にいられて嬉しかった」（キャサリン・ハワード役、リジー・エメリー）、「同じ演出家と振付師が（自分たちと日本版の両方を）担当しているので、大きなひとつのファミリーが集結したような気持ちになりました。本当に大切な思い出になりました」（キャサリン・パー役、エロイーズ・ロード）と思いを口にした。

初日公演を観劇し、カーテンコールにも登場した日本キャストは「すごく刺激的だったし、叫んだし、泣いたし、笑った。お客さまも同じふうに感じてくれればいいなと思いましたし、この興奮のまま（日本キャスト版の）上演に繋げていきたいので、明日からも稽古を頑張ろうと思いました」（ソニン）、「毎日（稽古が）大変で、それぞれが己の限界まで追い込まないとこの『SIX』は皆さんにお届けできない作品だなと思っています。でも共演者の仲間のレベルが高く、エネルギーに溢れているので、みんなに支えられながら命がけで頑張っています」（田村芽実）、「来日版から受け取るバトンが大きい。しっかり受け取って日本版も盛り上げていきたいなと背筋が伸びました」（原田真絢）、「23人の王妃が集まるのは世界初だとききました。まあやん（原田）が言うようにバトンを受け取った気持ちで、頑張りたいという気持ちが増しました！」（遥海）、「ヘンリー8世と6人の妻と言うと簡単に聞こえますが、歴史は男性中心に書かれたものが多い中で、一人ひとりの女性にも歴史があるというのを稽古ではしっかり学ぶ時間もありました。稽古は笑う日もあれば泣く日もあるが、本当にかけがえのない12人。まだ幕が上がっていないのに終わるのがすごく寂しい」（鈴木愛理）、「私たちの団結力も楽しみにしていてほしい」（豊原江理佳）、「今日の来日版も大盛り上がりだったので、日本版をご観劇いただく皆さまにも今から盛り上がる準備をしていてほしい。レスポンスをいただくと私たちも幸せになれるので、観劇日は朝から発声練習をしてきてくださったら嬉しいです(笑)」（和希そら）等々、この日の感想や、日本版への意気込みを語った。

来日キャスト版公演ののち、1月31日(金)からは同劇場で日本キャスト版の上演も始まる。6人の王妃はすべてWキャスト、キャサリン・オブ・アラゴンは鈴木瑛美子とソニン、アン・ブーリンは田村芽実と皆本麻帆、ジェーン・シーモアは原田真絢と遥海、アナ・オブ・クレーヴスはエリアンナと菅谷真理恵、キャサリン・ハワードは鈴木愛理と豊原江理佳、キャサリン・パーは和希そらと斎藤瑠希と12人の実力派たちが配役されている。振付補のニコール・ボンジーは「日本のキャストの皆さんは勤勉で真面目でプロフェッショナル精神に溢れている。さらに冒険心もある。日本で過ごす1秒1秒が大切で、喜びに溢れたものになっています」と語り、音楽スーパーバイザー補のケイティ・リチャードソンは「この作品で歴史の勉強もしていただきたいですし、ポップな音楽に酔いしれてもほしい。同時に、作品に込められたメッセージを少しでも受け取っていただければ。そのメッセージは『自分らしく』ということです」とアピール。来日版、日本版とも必見だ。

取材・文：平野祥恵

＜公演情報＞
ミュージカル『SIX』

原作：トビー・マーロウ＆ルーシー・モス
演出：ルーシー・モス＆ジェイミー・アーミテージ
振付：キャリーアン・イングルーユ

【楽曲リスト】

1. Ex-Wives（全員）
2. No Way（キャサリン・オブ・アラゴン）
3. Don‘t Lose Ur Head（アン・ブーリン）
4. Heart of Stone（ジェーン・シーモア）
5. Haus of Holbein（全員）
6. Get Down（アナ・オブ・クレーヴス）
7. All You Wanna Do（キャサリン・ハワード）
8. I Don‘t Need Your Love（キャサリン・パー）
9. SIX（全員）
10. The MegaSIX（全員）

■来日版
原作：トビー・マーロウ＆ルーシー・モス
演出：ルーシー・モス＆ジェイミー・アーミテージ
振付：キャリーアン・イングルーユ

【配役／キャスト】
キャサリン・オブ・アラゴン：ビリー・カー
アン・ブーリン：イナ・トレスヴァレス
ジェーン・シーモア：リバティ・ストッター
アナ・オブ・クレーヴス：ハンナ・ヴィクトリア
キャサリン・ハワード：リジー・エメリー
キャサリン・パー：エロイーズ・ロード

（オルタネイト）
アラゴン／パー：ミリー・ウィローズ
ブーリン／シーモア：エリン・サマーヘイズ
クレーヴス／ハワード：ローレン・サント＝クイン

（スーパースウィング）
イジー・フォームバイ＝ジャクソン

日程：2025年1月8日(水)～1月26日(日)
会場：東京・EX THEATER ROPPONGI

■日本キャスト版
翻訳・訳詞：土器屋利行
演出補：アレクサンドラ・スペンサー・ジョーンズ／西祐子
振付補：フレイヤ・サンズ／飯作絵梨子
音楽スーパーバイザー補：ケイティ・リチャードソン／田中葵

【配役／キャスト】（全役Wキャスト・各役五十音順）
キャサリン・オブ・アラゴン：鈴木瑛美子・ソニン（東京のみ）
アン・ブーリン：田村芽実（東京・愛知のみ）・皆本麻帆
ジェーン・シーモア：原田真絢・遥海
アナ・オブ・クレーヴス：エリアンナ・菅谷真理恵
キャサリン・ハワード：鈴木愛理・豊原江理佳
キャサリン・パー：和希そら・斎藤瑠希

（バンドメンバー）
キーボード：田中葵、ベース：shizupi、ギター：中村芽依、ドラム：山内楽

【東京公演】
2025年1月31日(金)～2月21日(金)
会場：EX THEATER ROPPONGI

【愛知公演】
2025年2月28日(金)～3月2日(日)
会場：御園座

【大阪公演】
2025年3月7日(金)～3月16日(日)
会場：梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

チケット情報：
https://w.pia.jp/t/six-musical/

公式サイト：
https://www.umegei.com/six/