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監督が語る『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』「道徳的に二面性のある体験をしてほしい」

映画

インタビュー

主演のセバスチャン・スタン(写真左)とアリ・アッバシ監督 Photo Pief Weyman (C)2024 APPRENTICE PRODUCTIONS ONTARIO INC._PROFILE PRODUCTIONS 2 APS_TAILORED FILMS LTD

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映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』が明日から公開になる。本作は間もなく米大統領に就任するドナルド・トランプの知られざるドラマを描く衝撃作だが、監督を務めたアリ・アッバシは本作を「政治的な作品ではない」言い切る。

トランプの過去を描く本作は、彼を非難したい観客には興味がわく作品かもしれない。しかし、映画を観れば観るほどに問題はそう簡単なものではないと気づくはずだ。アッバシ監督はこう宣言する。「道徳的に二面性のある体験をしてほしいんだ」。その体験の先にあるものは?

圧倒的な財産を持ち、強気な発言で世界を掻き回す男、ドナルド・トランプ。本作が描くのは彼が20代の頃の物語だ。現在のトランプからはイメージできないほど弱気で、危機に立たされている若き日のドナルドは、政財界のメンバーが集うクラブで弁護士のロイ・コーンに出会う。

すご腕で、各方面に顔の効くコーンは勝つためには手段を選ばない男。そんな彼はなぜか優柔不断なドナルドを気に入り、自身の勝つためのメソッドを伝授する。ドナルドは、コーンの見習い(アプレンティス)として活動する中で変化し、我々がメディアで見る“ドナルド・トランプ”への道を歩んでいく。

本作はプロデューサーと脚本家が始めたプロジェクトだった。題材はトランプの若き日の物語。内容によってはアメリカでのキャリアを危険に晒すことになるかもしれない。そこで彼らは『ボーダー 二つの世界』や『聖地には蜘蛛が巣を張る』など強烈な作品を数多く手がけるイラン系デンマーク人監督のアリ・アッバシに声をかけた。

「ふたりは僕の履歴書を見て『こいつはあらゆる人と敵対しているから、こいつにしよう』と思ったんだろうね(笑)。脚本には引き込まれた。ロイ・コーン自身のことや、トランプとの関係、またトランプにとってどんなに重要な人物だったのかを知らない人が多く、私もそのひとりだった。トランプのあのキャラを創り出したのはロイ・コーンで、権力について教えたのも彼だ」

しかし、アッバシ監督は本作を描く上で"ロイ・コーンがトランプを生み出した”というような単純な演出をしていない。

「“親が厳しかったからああなった”というような、ありきたりの心理学理論で見たトランプよりも、トランプの葛藤や人間味を描きたかったんだ。基本的なシナリオは同じだとしても、もっと複雑で、二面性が必要だと考えた。何よりも本作は映画だ。政治的な作品ではない。ドナルド・トランプの秘密を人々に明かしたり、投票の仕方を教えたり、人々に何かを教えるものとは違うんだ。この映画はひとつの体験であり、私は観客にその体験をしてほしい。道徳的に二面性を持っているキャラクターに非常に近づいたと感じる、道徳的に二面性のある体験をしてほしいんだよ」

登場人物は「このシステム」の中で前に進んでいく

この映画は監督が語る通り、ひとりの男の中にある複雑な二面性を覗き見、体感できるような作品になっている。

「ドナルド・トランプという人物が、どのように創り出されたかに関する私の一番の収穫は、彼が巧みに影響力のあるものを選び出し、どのようなことがうまくいくか、何が人気を集めるか、何が人々の興味を引くか、人々がどのようなことを見聞きしたいと思うかなどを見極めて、それをスポンジのように吸収することを非常に得意としてきたし、今現在も得意としているということだ。

ドナルド・トランプの政治的背景を見てみると、父親をはじめとする彼の家族全員は、ニューヨークで影響力を持つ多くの人々と同様に民主党支持者だった。しかし、ドナルドはリベラルな民主党支持者から、MAGA(アメリカを再び偉大にする)を提唱する保守派へと、とてもスムーズに変わっていった。

政策や政治信条において、ある意味で田舎者っぽくなったんだ。この変化こそが、彼がいかにやり手であるかを象徴している。世間での生き方がとてもうまいんだ。人々は彼が他人に耳を傾けず、他人からの影響は受けないと言うが、実際の彼は人の話をよく聞くし、好奇心も旺盛だ。人と討論はするが、人々が思うかたちではやらないんだよ」

本作に登場するドナルド・トランプは狡猾でも、頭脳明晰でも、高圧的でもない。あえて言うなら主人公と思えないほど平凡で、しかし目的のためなら極めて“ひたむき”な人間として描かれている。彼には“自分が成功したい”以外の主張はない。そのために彼はコーンの考えも、誰かの主張も欲望も容赦なく取り込む。だとしたら、この映画の本当の主人公は誰だろう? ドナルド・トランプを生み出したのは誰だ?

「本作はとても面白い体験になると思う。その体験を通して、登場人物を人間として理解することができると同時に、舞台となっているシステムを理解することもできる。登場人物は、このシステムの中で仕事をし、その中で前に進んでいくんだ」

本作が描くのはトランプの過去でも秘密でもない。彼を生み出した“システム”を描く。あなたはこのシステムと関係ないと言い切れるだろうか? 誰もが知る男の過去を描いた映画だと思って観に行くと、意外な展開と問いが待っている。

『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』
1月17日(金) 公開

(C)2024 APPRENTICE PRODUCTIONS ONTARIO INC. / PROFILE PRODUCTIONS 2 APS / TAILORED FILMS LTD. All Rights Reserved.

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