詩楽劇『めいぼくげんじ物語 夢浮橋』 尾上菊之丞が語る、中村莟玉・和田琢磨ら出演『源氏物語』の世界
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尾上菊之丞
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東京・有楽町にある東京国際フォーラムが、「“伝統と革新”をコンセプトに、日本文化に親しみ、新たな価値発見の機会をご提供することを目的に」(公式サイトより)2017年からスタートした「J-CULTURE FEST/にっぽん・和心・初詣」シリーズ。2020年からは「J-CULTURE FEST presents 企画」として、伝統文化の美を継承・創造する京都の老舗・株式会社井筒と共催、豪華な出演者と雅やかな本格装束が毎回話題となっている。
その最新作である詩楽劇『めいぼくげんじ物語 夢浮橋』は、尾上流家元の尾上菊之丞が構成・演出を、松竹所属の戸部和久が脚本を担当。歌舞伎版『風の谷のナウシカ』など新作歌舞伎でも名作を生み出しているコンビだけに期待が高まる。
タイトルの「夢浮橋」は、『源氏物語』54帖のうち終盤の「宇治十帖」に出てくる章のこと。菊之丞は本シリーズで『源氏物語』をモチーフにした作品を多く手掛けているが、今回特に「夢浮橋」に着目した理由を尋ねると。
「これまでの作品では六条御息所や夕顔、紫の上といった『源氏物語』でも人気のくだりを取り上げてきたのですが、数作重ねてきたところで、今回は新たな挑戦をしてみたいなと。実は舞踊でも『夢浮橋』を上演する機会は少なくて、(本作のメインとなる)薫や匂宮が活躍するというのもなかなか無いんですよ」と菊之丞は語る。
物語は光源氏が亡くなった後の時代。光源氏の正妻・女三宮と柏木との間に生まれた薫(中村莟玉)は、表向きは光源氏の息子として成長するが出生の苦悩を抱き続ける。一方、光源氏の孫である匂宮(和田琢磨)は、その華やかで奔放な性格を受け継いでいた。薫と親王の匂宮という、主従でありながら幼馴染み、さらには宮中で人気を誇るがゆえに好敵手でもある2人を中心に物語は展開。宇治の大君(北翔海莉)や中君(天華えま)らとの恋を、歌や音楽、美しい装束と共に描き出してゆく。

普段は歌舞伎俳優でどちらかといえば可愛らしい女方のイメージが強い莟玉が、本作では薫を演じるという配役の妙に注目だ。
「物語と並行して脚本の戸部さんとキャスティングを考えていた時、莟玉さんに出ていただきたいけれど、(プレイボーイの)“光源氏”は違うなと(笑)。莟玉さんは誠実さをもった二枚目で、人としての可愛らしさもある方。まだ若手なので見た目と中身にいい意味でのアンバランスさもあり、今の莟玉さんなら薫を演じるのにピッタリではないかと思ったんです」と菊之丞。
物語は薫と匂宮、さらに彼らが愛する姫君たちの愛憎が絡み合う形で進む。「莟玉さんにはどこまでボロボロになってもらえるか、ですね(笑)」(菊之丞)というから、また新たな莟玉の表情が観られそうだ。

匂宮には2.5次元ミュージカルやTVドラマでも活躍中の和田。
「和田さんは昨年別の作品で初めて共演した時に、好青年で気品があり、肩の力が抜けた感じもありながら、色気があるところが素敵な俳優さんだなと思いました。匂宮役ですから色気は絶対に必要なんですが、より気品がある役どころを彼なら存分に演じられるのではないかと」と菊之丞は話す。
さらに中君や浮舟の姉で、薫に想いを寄せられるも気高く生きる宇治の大君には北翔が配された。
菊之丞は「北翔さんとは初めてご一緒するのですが、宝塚に在団中からいろいろと拝見していて、何でもできる方という印象。本格的な宮中装束を着るので、まず様式美として成立する方でないといけないですし、劇中では演奏のシーンも予定しているので、北翔さんなら! ということで出演をお願いしました」と明かした。


尾上流の四代目家元として、日本舞踊はもちろん歌舞伎や宝塚歌劇、さらにはフィギュアスケートや本作のような新作まで振付や演出を手掛け、そのどれもが高い評価を得ている菊之丞。ここ数年はさらにひっぱりだことなっているのも納得だ。
「本当に機会に恵まれていることに感謝しています。ただ、どのジャンルの方ともお話ししていて感じるのは、一流の方たち、さらにお客様を楽しませたいという方たちが集まれば、自然とジャンルの垣根は越えられるということ。私も日本舞踊という自分だけの強みや経験を活かして、いつでも勉強する気持ちで、これからも挑戦していきたいと思っています」と笑顔で語ってくれた。
取材・文/藤野さくら
<公演情報>
詩楽劇『めいぼくげんじ物語 夢浮橋』
日程:2025年2月8日(土)〜12日(水)
会場:東京国際フォーラム ホールD7

チケット情報
https://w.pia.jp/t/j-culturefest2025/
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