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やんちゃで硬派なふたりが奏でるベートーヴェン 清水和音と三浦文彰のヴァイオリン・ソナタシリーズがラスト公演

クラシック

インタビュー

チケットぴあ

左から)三浦文彰、清水和音

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高い技巧で安定感のあるピアニスト・清水和音と、世界最難関と言われるハノーファー国際コンクールを史上最年少の16歳で優勝した注目若手ヴァイオリニストの三浦文彰。
2024年からベートーヴェン・ヴァイオリンソナタ全曲の演奏に挑み、今年2月にサントリーホールでのシリーズラスト公演を迎える。
年齢差30歳以上のふたりは、取材が始まる直前まで、「それいいな。どこで買ったの?」「これは……」と肩を並べて、話に夢中になっていた。
「普段はくだらない話しかしない、でも音楽はまじめ」
まるで男子校の休み時間のような雰囲気で、対談が始まった。

男はやっぱりベートーヴェン

清水和音

清水 文彰と対談なんて言われても困ったな。普段の俺たちは音楽の話なんて1%もしないんだよ。

三浦 普段の練習中もこんな感じですよね。弾き終わったとたん、ぜんぜん違う話になっちゃう。

清水 そうそう。人前で言えない話ばっかりだよ。

三浦 あはは(笑)そういえば、和音さんと初めてちゃんとお話ししたのも対談企画でしたね。

清水 2020年のコロナ禍だったから、出会ってからもう4年も経ってるのか。

三浦 母校である桐朋学園の徳永二男先生が、「清水さんと対談してみないか」ってセッティングしてくれたんですよ。

清水 えっ、そうなの? 知らなかった。

三浦 その時もけっこうぶっちゃけトークで(笑)和音さんと喋るのがすごく楽しかったのを覚えてます。

清水 俺と似たようなやつが出てきたなって嬉しくなっちゃったんだよ。

三浦 僕は和音さんほどやんちゃじゃないですよ!

清水 文彰は平成生まれなのに、なぜか佇まいが昭和の男なの。それこそ俺より上の世代の人と接する感じとあんまり変わらない、珍しいフィーリングがある。

三浦 ちょっとでたらめな感じが好き。でもそれが演奏になると一変して、“やんちゃ要素”がゼロになる。

清水 客観的に聴いても、俺たち以上に真面目なデュオはいない。

三浦 クラシックでは楽譜が一番大切だという意識も共通しています。

清水 楽譜は法律だと思わなきゃいけないからね。絶対守らないといけない。

三浦 作曲家が書いたものに忠実に、音で伝えるという意識が同じ。だから、和音さんとは最初からアンサンブルしやすかった。

清水 ふたりでベートーヴェンをやろうっていうのもすぐに決まったし。

三浦 一緒にご飯食べながら話し合いましたよね。

清水 「偉大な作曲家の中で、誰が一番男を感じるか?」「やっぱりベートーヴェンしかいないだろう!」ってね。文彰と演奏するなら、男らしい音楽をやりたいと思ってたんだよ。

意思の疎通ができると、室内楽が一番楽しい

三浦 室内楽は面白さと難しさの両方がありますね。

清水 ピアノは普段ひとりで弾くことが多いし、みんな自分のペースで弾こうとするから、他人と合わせるのが苦手なピアニストが多いんだよ。(笑)

三浦 確かに、自分の音だけに集中するタイプもいます……。

清水 違う個性がぶつかり合うなんて、キャッチコピーとしていいかもしれないけど、アンサンブルとしては成立しない。逆に、相手と意思の疎通がしやすいと、室内楽が一番楽しい。

三浦 和音さんと僕はテンポやビート感が合ってるから、演奏するのがすごく快適なんです。それに、世界的に見てもこれだけ室内楽ができるピアニストはいないと思います。

清水 文彰とは音楽の方向性が同じだから弾きやすい。最近は音を延ばさずにシュッと弾くのがクラシックで流行ってるみたいだけど……。

三浦 ふたりとも、それは好きじゃない。

清水 うん。表現が難しいんだけど、音を端折らずに、1小節の中の音がパンパンに膨らんでいるような“密度のある音楽”っていうイメージが欲しい。

三浦 ベートーヴェンは分かりやすくて、楽譜の中に「クレッシェンドからのスビト・ピアノ(音をだんだん強くして、ただちに弱くする)」みたいな指示がすごく多い。自分が思っている以上に音の強弱をつけないとだめなんです。

清水 よりディープな音を追求できるのも、ベートーヴェンの面白さだね。

エンターテインメントか芸術か

三浦文彰

清水 ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲公演シリーズはこれがラストになるけど、いつも通り淡々とやるっていう以上のことはないかな。

三浦 ヴァイオリンを歩き回って弾くとか、派手なパフォーマンスをして会場を盛り上げることはできますけど……。

清水 絶対やらないでしょ。

三浦 そうですね。誤解を恐れずに言えば、あえてお客さまのために弾かないことも重要だと思っています。

清水 クラシック音楽はエンターテインメントであると同時に、芸術の分野でもあるからね。

三浦 片方に寄らずに、両方が成立しないといけない。

清水 ベートーヴェン作品のコンセプトとして、大衆を喜ばせるというのはすごく大事なことだったはず。例えば、モーツァルトは貴族に向けて作曲したけど、ベートーヴェンは初めて一般の大衆に向けて曲を書いているわけで。

三浦 すでに曲自体がエンターテインメントになっている。

清水 だから、舞台上で派手なパフォーマンスをしなくても、お客さまは曲を聞くだけで、ベートーヴェンのエンターテインメント性を感じられると思う。

三浦 たぶん、初めての方が来ても楽しんでもらえる演奏会だと思いますよ。

清水 特に今回はヴァイオリン・ソナタ第9番の「クロイツェル」があるでしょ。

三浦 この曲は人気があるし、曲自体がエンターテインメントになっている。

清水 ベートヴェンが本気で書いた作品に対峙するなら、演奏家も本気で弾かないとね。

三浦 和音さんは本当に真面目ですよね。いろいろやんちゃしてきたけど(笑)

清水 なに言ってんの、30代前半の元気な若者についていくのが大変で、もう息切れしてるよ。

三浦 和音さんは俺より食べますから余裕ですよ。全然大丈夫です。

清水 文彰とは気が合うというか、舞台で遊べるような感覚になれるのが嬉しい。

三浦 お互いに楽しんで演奏している雰囲気が、客席にも伝わってくれたらいいな。

清水 あと、いつも思うのはベートーヴェンっていいよって、それだけだね。ベートーヴェンっていいよってことが伝われば、それが一番いい。

三浦 そうですね。ラスト公演も楽しみましょう!

取材・文:北島あや

<公演情報>
清水和音×三浦文彰 ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会Ⅲ

2月23日(日・祝) サントリーホール

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2452018

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