ミュージカル『SIX』日本キャスト版が開幕――感動を呼ぶ6人の王妃が魅せる熱狂のパフォーマンス
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ミュージカル『SIX』日本キャスト版より (撮影/岩田えり)
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すべて見る英国史上最もスキャンダラスな王として知られるヘンリー8世の元王妃6名が現代に甦り、ガールズバンドを結成するミュージカル『SIX』。現代のポップスターをイメージした個性と魅力あふれる王妃たちが「誰がいちばん悲惨な目に遭ったのか」を競う斬新なストーリーとエネルギッシュなパフォーマンスは世界中で熱狂を巻き起こし、2025年1月8日からの来日キャスト版も大盛況となった。1月31日からは、世界基準のオーディションを勝ち抜いた日本キャストによる日本キャスト版がスタートした。
幕が開くと、まずは6人揃って「Ex-Wives」をパワフルに歌い上げて観客の心を掴む。王妃というより戦士のような強さを感じるいでたちながら、キュートで品のある6人が奏でる美しいハーモニーとビートが心地よい。自己紹介のような楽曲が終わると、「SIXのリーダーを決めるコンテストを行う」という説明のもとで王妃たちがヘンリー8世との結婚生活や自らの人生を披露していく。

1人目の妃キャサリン・オブ・アラゴン(鈴木瑛美子・ソニン)は、ヘンリー8世が愛人との結婚を希望したことで離婚。スペインからイギリスに渡り、様々な苦境を乗り越えて長年に渡って結婚生活を続けてきたプライド、王の浮気を許しながらも言いなりにはならなかった厳しい人柄がパフォーマンスからひしひしと伝わってくる。
2人目、アン・ブーリン(田村芽実・皆本麻帆)は略奪婚に成功し王妃の座を得るも、ヘンリー8世の地雷を踏んで打首に。コケティッシュでどこか幼く、よくも悪くも素直。アラゴンとは真逆のキャラクターがハマるポップでキュートな楽曲がチャーミングだ。スマホをいじったり自撮りしたりと、現代っ子のような言動が面白い。
3人目、ジェーン・シーモア(原田真絢・遥海)は染み込むような歌声で深い愛と悲しみを歌い上げる。ここまでの流れからガラリと雰囲気を変え、しっとり聞かせる楽曲で会場を包み込んだ。女好きで短気なヘンリー8世に辛抱強く寄り添い、王待望の息子を産むも産褥死した彼女の人生がドラマティックに美しく描かれている。
結婚相手を国内で見繕えなくなったヘンリー8世の王妃探しを描く「Haus of Holbein」では、クラブハウスミュージックに合わせて王妃たちがコミカルに歌い踊る。ノリのいいビートと様々な声色が楽しい楽曲だ。

そこで描かれた肖像画によって見初められた4番目の妃アナ・オブ・クレーヴス(エリアンナ・菅谷真理恵)は、肖像画と似ていないという理由で即離婚。前の3人とはまた違う悲劇と、めげずにたくましく生きた軌跡を、ソウルフルなパフォーマンスで魅せた。お茶目な一面も強く出ており、パワフルだが愛嬌のあるキャラクターが可愛らしい。
続く5番目、キャサリン・ハワード(鈴木愛理・豊原江理佳)は、知名度が低いぶん遠慮がち……かと思いきや、言葉の端々に毒がある。元恋人との密会を疑われ斬首された彼女の生い立ちがあざとくしたたかな歌詞で語られた。一見すると様々な男性と関係を持って奔放に生きていた彼女だが、その影にある本音と苦悩が胸に刺さる。
6番目のキャサリン・パー(和希そら・斎藤瑠希)は、王に先立たれた最後の王妃。ヘンリー8世に求婚されたことで、本当に愛していた相手との別れを選ばなければいけなかった苦悩と覚悟をまっすぐな声で届ける。王に対して宣戦布告するような言葉を放つ彼女に、他の王妃5人も晴れやかな笑顔を向けているのが印象深い。
6人の生涯を知っていると楽曲の合間で起きる小競り合いや嫌味も面白さがわかるが、知らなくても魅力的な楽曲とパフォーマンスに身を委ねて存分に楽しむことができる本作。それぞれの魅力と欠点がコミカルに描かれており、ちょっとブラックな面白さもある。
また、悲惨さを競い合っていた王妃たちが思いを通じ合わせ、自らの人生を誇るように力強く歌う「SIX」から、撮影可能となっている「The MegaSIX」への流れも素晴らしい。ボルテージとスピードをさらに上げ、各王妃の楽曲のサビを振り返ったり、バンドメンバーによるソロがあったりと、ラストにふさわしい熱量で共に客席を大いに盛り上げていた。

ロックな曲からアイドルのようなポップソング、バラード、R&Bやテクノの要素……と多彩な楽曲によって緩急がついており、約80分があっという間に過ぎる。それぞれに“悲惨”な人生だが、ここまで格好良いパフォーマンスを目の当たりにすると、「可哀想」ではなく「最高!」という感想になる。個性豊かな王妃たちが巻き起こす熱狂の渦に、ぜひ飛び込んでほしい。
取材・文/吉田沙奈
撮影/岩田えり
<公演情報>
ミュージカル『SIX』 日本キャスト版
【東京公演】
2025年1月31日(金) 〜2月21日(金)
会場:EX THEATER ROPPONGI
【愛知公演】
2025年2月28日(金)〜3月2日(日)
会場:御園座
【大阪公演】
2025年3月7日(金)〜16日(日)
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2453921
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