八木勇征が今、悩むファンに伝えたいこと「やるだけやって、後悔しない道を」
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八木勇征 (撮影:梁瀬玉実)
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すべて見る「一回きりの人生だから、後悔しない選択をしてほしいんです」。2025年2月、あと数ヶ月もすれば、進学や就職・転職などでライフステージが変わる方も多いだろう。進みたい道、叶えたい夢、達成したい目標を前に悩むファンへ向けて、俳優・アーティストとして活躍する八木勇征の発するメッセージは、いつだってシンプルで強い。彼が主演を務めた2月21日(金) 公開の映画『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』も、命や人生の“一回性”に迫る内容だ。
目指したのは、感情を“出しすぎない”演技

2024年3月31日で放送作家・脚本業から引退した鈴木おさむが、同名人気朗読劇を映像化した本作。「辞める前にどうしても」との強い思いで形になった『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』において、主人公・アキトを演じることになった八木勇征。アキトを演じるにあたり、八木は「たった一つ、自分の叶えたい夢を持っている、心のある子」と言葉にする。
「子どものころから真っ直ぐで、純粋なまま育ててもらったような子なんです、アキトは。だからこそ堂々としている。感情を表現するときも、まず彼の純朴さを大事にしながら向き合いました。誰かのために一生懸命で、本心で感じたそのままの思いを言葉にする。そんな素直さを大切に、撮影に臨んでいたと思います」
かつ、感情を表現しすぎない、というのも一つの課題だった、と八木は続ける。
「この作品の本読みに参加したとき、『本番と同じくらい100%の感情を出そう』と思って臨んだんです。そしたら、ほかのみんなも同じくらいの熱量でその場にいるのがわかって。本読みなのに、めちゃくちゃ間が空いたり、言葉に詰まったりして……。そんな本番さながらの本読みを経験したのが初めてだったので、反対に『危険だな』とも思ったんですよね。いまこの瞬間に感じた新鮮な感情は、本番にとっておかないといけないと思いました。」

八木が演じるアキト、井上祐貴が演じるハルヒ、櫻井海音が演じるナツキ、椿泰我が演じるユキオは、同じ場所で生まれ育った4人の幼馴染同士だ。彼らがこの作品の顔となる存在であり、4人の丁々発止なやりとりが成立しない限り、リアリティーが生まれない。
「だから、本番に向けて台本を読み込むとか、役を作り込むとか、準備をしすぎないように気をつけました。その場で感じたこと、向けられたお芝居を受け取ることに心を向ける。かつ、撮影のあいだは、この作品のことだけを考えるようにしました」
その研ぎ澄まされた集中力は、間違いなく八木の演技表現に滲み出ている。これまで彼の出演作を追ってきたファンにはもちろん、今作で初めて彼の演技に触れる層にも、あらためて俳優・八木勇征に惹きつけられる作品に仕上がっている。
八木勇征、泣きすぎ注意!?

今作で共演した同世代の俳優、井上・櫻井・椿とは「昔流行ってた遊びとか、観てきた作品の話とか、それこそ最近観た映画の話とか」と、話題が尽きなかったようだ。
「海ちゃん(櫻井)はサッカーをやっていて、僕もずっとサッカーをやっていたから、今度フットサルしようって話してます。バッキー(椿)は、ダンスボーカルグループに所属しているっていう共通点もあって、共感する部分が多くて。お酒を飲みながら、お互いのグループの話をしてると、ついつい熱くなったりしました。」
ハルヒを演じる井上とは、二人でのシーンも多かったという。作品のことを話す過程で「泣くのを我慢するのが結構大変」という課題を共有した。感情的に入り込みすぎると涙が止まらなくなってしまうシーンがあり、井上とともに「泣きすぎ注意だね」と言い合ったという。
「観客の方にも、一緒に感情を動かしてほしいシーンがあって。それよりも前に僕たちが泣いているシーンが続くと、なんというか……もったいないじゃないですか。感情の起伏でお芝居ができるのは素晴らしいことだけど、一つの作品として観たときに、やっぱり演者は泣きすぎ注意だなと(笑)。祐貴くんとのシーンはもちろん、アキトの父親役の田辺誠一さんとのシーンでも泣きすぎちゃって、テイクを重ねてしまって」
まだ演技経験が浅かった当時、凪良ゆう原作の大人気小説をドラマ化した『美しい彼』(2021,2023)シリーズに出演した八木(萩原利久とのW主演)。まさに、溢れ出る感情をベースに孤高の存在を体現してみせた。彼の演技や歌唱表現には、混じり気のない感情が流れていると、受け手に信頼させる力がある。

お互いの信頼が増した「魔法会議」シーン

同世代の俳優たちとともに過ごした現場は「リスペクトが信頼に変わるような、心強い経験だった」という。
「作品に対する向き合い方を勉強させてもらいました。生きるってなんだろう、人生ってなんだろう、と考えさせられるメッセージが詰まった作品だからこそ、僕自身も緊張感を忘れずにいようと思っていて。同じくらいの熱量を持った4人が集まったからこそ、思い描いていたことがスルスルっと上手くいくし、撮影が進むたびにどんどん彼らへのリスペクトが高まっていくのを感じていました」
その感覚が顕著だったのが、幼馴染4人が集まった“魔法会議”のシーン。18歳になったら、人生で一回だけ魔法が使えることを教えられたアキトたちは、いつどんな魔法を使うかを話し合う。
「初共演の4人なのに、リハーサルの段階でスッと上手くいって、テンポ、リズム、会話の強弱とかもすべて完璧で。自分たちで合わせながら自然に流れが形作られていく感じがして、ただただ、すごいなと。魔法会議のシーンは8分くらいあるんですけど、ちょっとした舞台のようにも感じられて、またこの4人でやりたいなって思いました」

八木にとって、映画の良さ、映画の醍醐味を味わえた瞬間でもあった。映画、ドラマ、舞台。それぞれのフィールドで、それぞれの魅力を噛み分けてきた八木だからこそ「映画って素敵だなって、あらためて思えたんです」という言葉にも、力がこもる。
「魔法会議のシーンは、アドリブも結構あります。次にセリフを言う人のお芝居に影響が出ない範囲で、細やかなやりとりが散りばめられていて。考えながら言っている、というよりは、お互いを見ながら瞬発的に出てきた言葉のやりとり、という感じがして。もう、めちゃくちゃ楽しかったです!」

18歳〜20歳は「僕にとってのターニングポイント」

アキトたちは、18歳になったときに、村の秘密を教えられる。18歳から20歳までの、子どもでも大人でもない混じり気のある曖昧な時期は、誰にとっても一つの岐路に立たされるタイミングだろう。八木自身も「子どものころからずっと追いかけていた一つの夢に、終止符を打った時期でした」と当時の心境に焦点をあてる。
「ずっとやっていたサッカーを辞めて、新しい夢に舵を切ったのが、ちょうどそのころで、あれから人生が359度変わったんです。もう少しで一回転しちゃうくらい。それくらい目の前に広がる景色が変わったのがわかって、FANTASTICSというグループのツインボーカルの一人として、綺麗な面ばかり見えるのではなく、ほかのメンバーやファンの方々の思いを背負うプレッシャーもある。感謝の気持ちも含めて、しっかりと声に出して伝えていかなきゃならないポジションに立ったんだという自覚が、活動していくなかで少しずつ芽生えていきました」
サッカー選手として活躍する未来がなくなった瞬間、八木の目にはどんな景色が見えていたのか。彼なりの言葉で、当時抱いた感情の一つひとつが浮き彫りになっていく。
「たくさん、失敗しました。僕、失敗って悪いことだってずっと思っていたんです。いろいろな方から、さまざまな意見をもらうし。間違っているのかな、向いてないのかなって思うことばかりで。でも、時間とともに自分のなかで経験値がたまっていくごとに、後ろ向きな気持ちも少しずつ減っていったんです」
失敗するのは怖い、批判されるのは不安だ。そんな虚飾のない剥き出しの本心が、真っ直ぐに届く。八木の紡ぐ一言は、ときに言葉は鋭利に響くと知っているからこその、慎重さに満ちている。
「メンバーやスタッフさんがいてくれること、支えてくれる家族がいること、応援してくれるファンの方々がいること。そのおかげで、大変なことも一つひとつ乗り越えていくことができました。FANTASTICSの一員になったことが一つ目のターニングポイントだとしたら、お芝居を始めたことは二つ目のターニングポイントになると思います。グループ活動をしているだけでは見られない景色が見えるようになって、物事の捉え方も変わりました。演技に挑戦したことで、歌詞の読み取り方や歌唱の仕方や表情にも影響が出てきたと思っていて、それは僕にとってまた新たな自信になっています」
地元に帰って、友情の大切さを実感

アキトたち幼馴染が、長い付き合いだからこそのざっくばらんなやりとりで仲を深めているのを見守っていると、友情の深遠さに思いを馳せることになる。八木自身も、ちょうど取材日の一ヶ月前にゆっくり休める日ができ、久々に地元に戻って家族や旧友との時間をつくったのだとか。
「せっかく時間ができたから、普段はできないことをやろう! って思ったんです。ずっと、家族や友達と会ってゆっくり話したいと思っていたので、3〜4年ぶりくらいに実現することができました。一人の友達に連絡したら、その子がほかの友達にも声をかけてくれていて、6人くらいかな? 集まってくれて一緒にご飯を食べたりして」

FANTASTICSとしての活動はもちろん、テレビ番組や雑誌、映画やドラマと露出が続く八木。地元の旧友とは、物理的にも心理的にも距離が離れてしまう安直なイメージがわくが、「仕事の話をしたり、みんなそれぞれ大人になっている部分はもちろんあるけど、良い意味でなんにも変わってなくて」と思い返す八木の表情は自然と柔らかくなる。
「本当に何気ないことでゲラゲラ笑って、久々に仲間内のノリを思い出しました。芸能界に入って、表に立たせてもらう機会が増えたことで、僕はもちろん地元の友達も変化を感じていると思います。でも、変に気を遣わずに昔と変わらない関係で接してくれることが、すっごく嬉しくて……。案の定、飲み過ぎてしまいました(笑)」
もう少し時間が経って、30歳や40歳になったら、いつの間にか結婚をしている友人もいるかもしれない。「それでもいいんです。変化したって、お互いに頑張っていることがわかっていれば」と言う八木の声からは、昔から自分を見守ってくれている家族や友人への、揺るぎない信頼が感じられた。
夢は、器に収まらないものだから

ピアニストになりたい夢をめぐり、田辺誠一演じる父・シンヤと対立してしまう場面もあるアキト。「身も心もアキトになっていたからか、お父さんの言葉を素直に聞き入れられなくて。それはあくまで、自分じゃなくてお父さんが経験してきたことを元に示されているから」と、八木の視点は冷静で中立だ。
「夢に大小なんてないし、測りきれないものじゃないですか。器に収まらないのが夢なんです。サイズを決めてしまっている時点で、それは夢じゃない。アキトにとっての夢がピアニストであるように、僕には僕の夢があるし、それぞれの人にとっての夢がある。自分には不相応な大きく思える夢を抱いたからといって、諦める理由にはなりません」
迷っても、失敗しても、それらを怖がる弱さがあってもいい。八木の、ただ強く響く真っ直ぐな言葉は、目指す地点を指し示してくれる。
「夢を持つことは、周りからいろいろ言われることもあると思います。『現実を見なよ』とか。でも、自分の人生ですよ? 一回きりじゃないですか。絶対に後悔してほしくないんです。僕だったら、後悔しないような選択をしたいし、選ばなかった進路のことを思って我慢したり『やっぱり挑戦しておけばよかった』って思いたくない」
どうせ後悔するなら、やるだけやったほうがいい。きっと、一度は自分の夢を諦めざるを得なかった悔しさがあるからこそ、八木は一回きりの人生で「挑戦する」ことに重きを置いている。
「叶う、叶わないの前に、まずはやるだけやる。たとえ後悔したとしても、挑戦したという事実が、自分を強くしてくれるはずです。」


取材・文:水野こころ 撮影:梁瀬玉実
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<作品情報>
『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』
2月21日(金) より全国公開

公式サイト:
https://bokumaho-movie.com/
(C)2025 映画「僕らは人生で一回だけ魔法が使える」製作委員会
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